第6話 彩花の魔女⑤
ジャンヌが目を覚めると部屋の中のベッドの上で寝ていた。
窓辺から見て、まだフィオーネが襲った村にいることを確かめた。
フィオーネが浄化した影響か、死体に咲いていた花が枯れ、骨になっていた。
よく見れば、白いワンピースに着ている。
以前にも似たようなことがあったような・・・
思い出そうとしたが、頭痛がする。
「ようやく起きたか」
白いシャツと黒いズボンと少しラフな格好をしているアキセが立っていた。
「この服どうした?」
「最初のセリフがそれ?そこはお礼を言うところだろうか」
「勝手に服に着替えさせられてお礼を言えるか」
「だって仕方がないだろうが。服はボロボロだし、手当てもしてやったんだから、少しは対価として目をつぶってやれよ」
「その対価って何。裸を見せたってことにか」
少し切れ気味になる。
その時、頭痛がする。妙に記憶があやふやになっている。
そういえば、フィオーネの戦いでアキセがムカつくような邪魔したような。
「一応病み上がりなんだから、暴れるなよ」
アキセは、ジャンヌに向かって投げだす。
ジャンヌは受け取り、見れば、果実だった。
「腹減っているだろう」
アキセが妙に優しくしている。何か怪しい。
「なんだよ。さっきから目つき悪いぞ。本当に何もしていないって」
アキセは、ジャンヌのベッドの上に座りこむ。
「座るな」
「いいじゃねえか。今回はヤバかったじゃないか。5日も寝込んだし、体中穴だらけだし」
聖地以外では回復が少し遅い。
ジャンヌは体を触る。傷口がなかったが、傷跡があちこちにあった。
窓辺で寝ていたため、『光』を含んだ日差しや月明かりのおかげで、回復したのだろう。
「そうね。油断したわ」
相性がよくても油断をしてはいけない。この戦いで思い知った。今回も前回も。
「お!反省している。珍しいこともあるんもんだ」
「うるさい」
ジャンヌは果実を食べる。
腹ごしらえをしたジャンヌは、着替えて家を出る。
「なんだ。もう行くのか」
「これ以上相手したくない」
家を出れば、一凛の芽が芽生えている。
『根の塊』はジャンヌを助けにきた。
怒鳴って追い出したにしても、魔女に勝てないと分かっていても、『根の塊』はジャンヌを助けに来た。
「ごめんね。でもありがとう・・・」
ジャンヌは一言言って去った。
とりあえず、誤魔化せたとアキセは肩を軽くする。
まず、あの使い魔に襲われてからジャンヌは豹変した。
急に殴り、眠らされた。当然、起きれば、ジャンヌはいなかった。
おそらく魔女狩りに行ったに違いない。
今回の魔女に執着している。何があるのだろうとジャンヌを追うことにした。
『探しモノ地図』でジャンヌを見つけ、急いでその場所に行く。
村に着き、隠れて様子を見れば、ちょうど魔女と立ち会っていた。
話を聞いてみれば、ジャンヌとは因縁があるようだった。
これはジャンヌの過去を知るチャンスだった。
ジャンヌは絶対に過去を話さない。
ジャンヌから記憶を奪えなくはないが、それでははっきりバレ、ボコられるのが目に見えている。それに多く記憶を奪えば、混乱して頭が壊れる場合もあるが、過去を知っている魔女であれば、いくらでも記憶が奪える。
狙うには魔女が弱り切ったところだったが、魔女が隠れ、その隙がない。
『探しモノ地図』で魔女を見つけた。
魔女をジャンヌの前に動かすには、『探しモノ地図』と魔女文字を使い、転移をさせることにした。
まず、『探しモノ地図』を利用し、爪飾りで術式を描く。術と『探しモノ地図』をリンクさせ、魔女と繋げる。術と魔女文字を刻んだ術式弾を相手に当てた瞬間、転移が始まる作戦を立てる。
あとはタイミングを計るだけだった。
それが、花の狼と魔女を転移させた仕組みだった。
ジャンヌが花の狼を切りつけようとしたところで作戦を実行する。
作戦は成功した。
ジャンヌが魔女を切り、魔女が弱きったところを狙って記憶を奪った。
ジャンヌは当然怒るし、ボコられるのは目に見えている。
そこで、寝ている間にその部分の記憶だけを奪うことにした。
あと、思っていたより魔女が頭を使っていたため、苦戦した。
『探しモノ地図』で魔女の情報がある程度知っていたが、魂を転移するために分身を使うとは思わなかった。
このままではジャンヌでは退治できない。
魔女文字で封じる文字『封』を刻んだ術式弾を使い、魔女の体内に入れた。
術式弾は、相手の魔力、呪いで発動する弾。
魔女の『呪い』で発動させ、呪力を封じ、魔女を倒すチャンスができた。
今回は、頭を巡らせたおかげで、一段と疲れた。
手の中には、今回のお目当てのコインを見つめる。
奪う魔力で奪った際に別の形に具現化する。
自身の頭に入れることは可能だか、他人の入った記憶も混乱の元となるため、コインに具現化した。ちなみに何に具現化するのかは、ランダムになる。
コインを手に強く握れば、あの時奪った記憶を読み取れる。
雨の中だった。
前世の魔女は誰かと戦っていた。
ジャンヌではない。別の女だった。おそらく聖女だろうが、苦戦しているようだ。
その奥で幼い女が眺めている。
ジャンヌだろうか。
幼いジャンヌも可愛げがあるが、そこではない。
ジャンヌが何かを食べている。
もう一人の聖女は何か必死で止めようとしている。
その時、ジャンヌの体から『光』が漏れている。そして三日月のように笑う。
そこで記憶が途切れた。
分かったのはこれだけだった。
あの記憶からしてフィオーネを殺したのは、おそらく幼いジャンヌだろう。
だか、あの時のジャンヌは何を食べたのだろうか。
とても気になるが、分かっていることは一つ。
「ろくな生き方してないな。お互いに」とアキセは呟く。
そんなアキセを眺めていた魔女がいた。
「ふ~ん。やっぱりからからがいがあるわね」
鈴の音を鳴らしながら去った。




