第6話 彩花の魔女④
「どうだったかしら。サプライズは?」
フィオーネは見下ろして言う。
「魔女はいつもサプライズがあるから、慣れているわよ」
「つまらない」
「なんであんたは、普通に復活しているのよ」
ジャンヌはフィオーネに問いかける。
「ん~」
フィオーネは、立てた人差し指を頬に当てながら考え込む。
「ちっぽけな頭で考えたら~」
フィオーネは、勝ち誇ったような不気味な笑みを見せる。
「分身を使った」
フィオーネの視線がアキセに向けられる。
「死にかけたところで用意していた分身に移動したんだろう」
大きい桃色の花を動かし、アキセの前まで動かす。
フィオーネがアキセに向けている隙にジャンヌは、手と足に『光』を結晶化し、トリモチを切り剥がす。
アキセに近づいたフィオーネは足を伸ばし、アキセの顎を足で上げる。
「生意気」
フィオーネが足でアキセの顔を蹴る。
「さっきのあれ。結構気色悪かったけど」
フィオーネはアキセを見下ろす。
「それはやりがいがありました」
顔に傷ついたアキセが余裕そうに言う。
「後でじっくり相手してもらうかしら」
「遠慮しときます」
「あなたの意見はいらない」
フィオーネが桃色の花から降りる。
「さて」
フィオーネが振り向こうとした時、飛び掛かるジャンヌが白い炎の剣が振り下ろそうとしていたが、 フィオーネは後ろへ下がる。
「野蛮な放火魔」
「悪趣味枯れ女」
にらみ合うジャンヌとフィオーネ。
どうする。
フィオーネが燃やしても、すぐに復活する。これではいくら『光』が無限に使えても、切りがない。
「あら、もしかして困惑してるの」
フィオーネが煽るように言う。
「私がだだ燃やされるためにあなたの前に出たと思う」
フィオーネは不気味な笑みを見せる。
まだ何を企んでいる。
「そろそろかしら」
何かを企んでいる笑みを見せるフィオーネ。
「え?」
ジャンヌは、突如力が抜けたように倒れる。
背中に重みを感じる。
背中から服が破け、植物のような獣が現れる。細長い葉を伸ばし、黄色の花の頭の異獣だった。
植物型の異獣。エンゲ。
寄生植物のキティヌスが異形化した異獣
生き物に寄生し、相手が死ぬまでエネルギーを吸収する。相手が死ねば、種を生み出し、巻き散った後でしおれて死ぬ。
「いつの間に・・・」
ジャンヌは思い出す。
昨日の夜、『根の塊』をかばい、花の狼に背中に攻撃を与えられた時から体に寄生していた。アキセが見た時には何もなかった。ジャンヌの体に植物の怪物が寄生し、エネルギーを吸収し、成長していた。
「ああ、いい眺めよ」
高い声を上げながら興奮するフィオーネは、ジャンヌの顔に踏み、見下す。
「今回はね。『光』を効かないエンゲちゃんを使ってみましたー」
フィオーネが陽気に言う。
「こんな日中でも『光』を吸う元気もなければできないでしょ」
『光』を吸わせないように体力を奪っているのか。
エンゲは、魔力を持たない異獣の仲間。
異獣は、異形化前から持っていた本来の能力を引き伸ばし、進化した獣。
『光』の浄化を効かないところを利用し、今回の作戦に出たのだろう。
フィオーネは勝ち誇ったのか悪い笑みをみせる。
ジャンヌは、抵抗するようにフィオーネをにらみつける。
「あら。まだそんな目つきするんだ。じゃあもう一押し」
フィオーネはパチンと指を鳴らす。
地面から茎針が伸び、ジャンヌの体を貫通させ、さらにジャンヌのエネルギーを吸われている。
さらにフィオーネはジャンヌの顔を踏みつける。
「もう、浄化する力はない。でも安心して。まだ死なせないから」
悪意のある笑みを見せる。
「生きたまま皮を引きはがしてやる!一つ一つ骨を引き抜いてやる!肉体を崩してこの子たちの養分にしてやる!」
一言ごとに怒声を上げる。
「もう想像しただけでたまらない~」
声を高らかに興奮するフィオーネ。
その時だった。
ジャンヌを囲むように根が伸び、ジャンヌに貫いたツルを切った。
「はあ?」
フィオーネが、向いた先にあの『根の塊』が立っていた。
「あんた・・・」
強く言って離れたあの『根の塊』が、ジャンヌを助けに来てしまった。
だか、魔女に勝てるはずがない。
「やめろ!」
ジャンヌの声を聞きもせず、『根の塊』は、根を伸ばし、フィオーネを襲うが、フィオーネは、ツルを掴む。
「何これ」
フィオーネは、さらにツルを強く握る。
「私の邪魔をしていてくれる。雑魚が!」
ツルを握り千切る。
ピ!と『根の塊』は驚く。
そして、地面から茎針が伸び、『根の塊』を絡める。
『根の塊』はじたばた暴れるが、茎針は取れやしない。
フィオーネはジャンヌから離れ、『根の塊』に近づく。
「生意気な雑魚。邪魔したおしおきをしないとね」
フィオーネは笑顔の中に悪意を感じる。
ジャンヌはフィオーネがこれからする行動に予想がつく。
「やめて!」
「はい、散って」
フィオーネは笑顔で手を握ると、ツルは、種の魔物を強く絡み付け、バラバラにされる。
バラバラになった根が落ちていく。
あの時も何もできなく、ただ目の前でルチア様が傷つけていくのか。
「あら~聖女のくせにあんな魔族にまで嘆くわけ~あははははははははははは!」
フィオーネが高笑いする。どこまでも続く笑い声が銃声で打ち消される。
「銃声?」
その銃声は、アキセが茎針からわずかな隙間から手を伸ばし、銃を構えていた。
アキセが狙ったのは、ジャンヌの背中にいるエンゲだった。
エンゲの頭がなくなっていた。
「貴様!」
フィオーネが怒声を上げた途端に腹に弾が当たる。
フィオーネには何も起きなかったが、アキセに絡まれた茎針が枯れていく。
「どうして・・・どうして力が使えない!」
フィオーネの顔色が変わった。
「何をした!あの弾はなんだ!」
フィオーネが叫ぶ。
立ち上がったアキセは、答えることなく、不適な笑みを見せる。
その時、白い炎がフィオーネの頭に当たる。
「ああああああああああああああああああ」
フィオーネが叫ぶ。
ジャンヌはふらつきながら立ち上がる。
殺意を込めたような目つきをするジャンヌは、一歩一歩フィオーネに近づく。
「来るな・・・」
白い炎で髪が一部燃やされ、顔には火傷のような跡がついたフィオーネが怯えながら、下がっていく。
「来るな来るな来るな来るなああああああああああああ」
フィオーネの頭をジャンヌが掴む。
「くたばれ」
ジャンヌはフィオーネを白い炎で燃やす。
フィオーネはどこまでも続く悲鳴と共に消えていった。
ジャンヌは、膝をつく。
「まだあの時と・・・」
ジャンヌは力尽きて倒れる。




