第6話 彩花の魔女③ 挿絵あり
日が昇り、昼手前になると思う。
あれから、『根の塊』は付いてこなくなった。これでよかった。
これから先は、魔女がいる。かばう余裕はない。
おそらくあの魔女であれば、本当に邪魔されたくない。
だから、アキセを殴らせ、気絶させた。勝負が終わるまで眠ってほしい。
森を抜ければ、村が見えた。誘うように『呪い』が可視化した黒いモヤが漂っている。
魔女は『呪い』を生み出す。あそこに魔女はいる。
ジャンヌは、村へ向かう。
レンガで作られた小さな家が点々と建てられていた。
村には着いたが、人の気配がない。
ロザリオを出し、光の刃を作って、村の中を警戒する。
家や井戸に花が咲いていて、花園の中にいるようだったが、村の広場に行けば、倒れた人間から花が咲き乱れ、不気味さを増した。
「魔女にやられたか・・・」
その時だった。
地面から茎針が伸び、ジャンヌに襲いかかるが、白い炎で焼け払う。
「やっぱりあの時の聖女ね」
咄嗟に声をした方へ白い炎を飛ばす。
バラのような大きい花が開き、白い炎を受け止め、燃えていく。
燃えていく花が消え、姿を現した。
華やかな花びらのドレスで片足を見せている。バラのような赤い目。根のような緑の髪が後ろにまとめている女だった。
やっぱり。
以前とは少し違うが、面影があった。
「彩花の魔女フィオーネ・ガーネリア。覚えているわよね」
フィオーネは見下ろす。
「私ははっきり覚えている」
魔女は、『呪い』がある限り生まれ変わり続ける。魔女によっては、記憶や呪力を受けついたり、欠けたりする。
「あの時は小さな子供の割に私をよくも燃やしてくれたわね!」
だんだんと口調が強くなる。
「本当に言葉にならないほどの熱さだった」
フィオーネは恨みのある目でジャンヌをにらみつける。
「だからね。今度生まれ変わったらね。肉体が無いほど、痛めつけようとね!」
フィオーネは悪い笑みを見せた瞬間、ジャンヌの足元から茎針が地面から伸び襲い掛かるも、白い炎で返り討ちした。
「だったら、あの時以上に燃やしてやる!」
ロザリオを白い炎の波を放つ。
地面から伸びる茎針が伸びる。盾になり白い炎を防がれる。
四方八方から、茎針や昨日襲った花の狼も襲ってくるが、ロザリオを大きく振り、白い炎の波を放つ。
白い炎の波は茎針と花の狼を包み、燃やしていく。
頭上から黒い影が覆う。
咄嗟に前へ飛び込み、敵の正体を確認する。
赤い果実のような蛇の頭。首には大きい葉が生えている。体が大きいツルを持つ巨大な蛇だった。
口から果実が吐き出すが、白い炎の波で果実を燃やし、果実の蛇も燃やしていく。
「燃やして何が面白いの?放火魔」
姿を現れず、声だけが響く。
「あんな気持ち悪い花を咲かせる魔女に言われたくない」
本当に魔女だけには言われたくない。
「いい加減出できなさいよ。私を恨んでいるんでしょ!」
「そんなやすやす出できてやられる私じゃないわよ」
果実の蛇と花の狼に囲まれる。
「ちっ!これ以上おまえらと相手する気ねぇんだよ!」
切れ気味になったジャンヌが、花の狼にロザリオで切ろうとした時だった。
目の前の花の狼が「あう」と呻き声を上げた瞬間、花の狼が消え、フィオーネが現れたからだ。
「え?」
勢いを殺せず、そのままフィオーネをロザリオで切る。
「ああああああああああああああああああああああああああ」
真っ二つに切られたフィオーネが叫ぶ。
果実の蛇と花の狼が枯れていく。
なぜ、フィオーネが現れた。これでは殺されに行くようなものだ。
しかし、考えられるとしたら、アキセの仕業だろう。やっぱり来ている。指輪まで奪えばよかったかなと少し後悔する。何をしてかすが、分からない。邪魔するかと思えば、援助してきた。
邪魔しないなら、それでいい。今は弱っている魔女を殺すだけ。
「今度こそ」
後は止めを刺すだけ。
ロザリオを振り下ろそうとしたが。足に何かが当たり、急にバランスが崩し、倒れる。足を見れば、トリモチだった。
「これって・・・」
明らかにフィオーネの呪力ではない。
手にトリモチがつけられる。
うつ伏せになり、足と手もトリモチがつけられ、身動きが取れなくなった。
その時、ジャンヌの横を通る。それはアキセだった。
「おまえ!」
ジャンヌは叫ぶが、アキセは無視して、浄化しかけているフィオーネに近づく。
「よし。いい頃合いだ」
アキセはフィオーネの頭に触る。
手を使った。奪う魔力を使ったということ。何を奪っている。
その時だった。唐突にフィオーネの体が枯れ、塵の山へとなった。
「何?」
アキセが首をかしげる。アキセが奪う魔力で起こった現象ではない。
『光』で浄化されたとは違う。それに魔女は体を残らない。
魔女はまだ死んでいない。
「やべ。早くジャンヌを・・・」
アキセが言いかけたところだった。地面から茎針が伸び、アキセを絡め、膝をつかせる。
地面が盛り上がり、大きい蕾が生えた。
蕾は、大きい桃色の花が開き、優雅に座るフィオーネがいた。
「驚いた~あ?」
フィオーネは、不適で不気味な笑みを見せる。




