第6話 彩花の魔女②
あっという間に夜になり、森の中で過ごすことになった。
「ジャンヌ!いい加減!あの生物を退治しろよ!」
「なんでよ。あなたが悪いんじゃないの。てか何気にいるな」
焚火をしながら呆れて言う。
アキセは、あれから『根の塊』に襲われている。
正確にはアキセがジャンヌに手を出そうとした時に、『根の塊』が頭から根を伸ばし、アキセの顔にしかみつけては投げ、足に絡んでは転ばせるとガード(たぶん、嫌がらせ)していた。そのおかげでアキセの体は、泥だらけだった。いい気味だ。
「もうおまえが退治しないなら俺が・・・」
ドンと『根の塊』がアキセの腹に銃弾のように突っ込んだ。
何が折れるような音がした気がした。
アキセは後に倒れ、腹を抱える。
「この・・・雑魚か・・・」
ジャンヌの横で『根の塊』に立って、アキセに威嚇していた。
「優秀なボディーガードでよかった」
「何、お供にする気ですか・・・」
アキセは、嫌そうな目をする。
『根の塊』は理解したのか、ぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねている。
「さあ、どうでしょうね」
ジャンヌは、『根の塊』を見つめる。
アキセに対して優秀なボディーガードだか、このままにしてはいられない。まだ幼く、力量は低い。魔女と戦って、かばってやるほど、余裕がない。どうやって離れさせようと考えた時だった。
殺意が感じる。
ジャンヌは、白い炎を暗闇の中へと放つ。
白い炎が敵に当たったのが、呻き声を上げる。
暗闇から白い炎に包まれた獣がジャンヌに向かって飛び掛かるが、ジャンヌは、懐からロザリオを出し、光の刃を作り、横に振り、獣を真っ二つになる。
それが合図になったのが、暗闇から次々と獣が現れる。
その獣たちは、普通ではなかった。
毛が花びらで覆われたような狼。花びらの羽をもつ鳥。背中に棘を持つ大きいネズミのような獣。そしてその獣から微量に『呪い』が漏れている。
「使い魔か」
それに見たことのある使い魔だった。
あの時の魔女かもしれない。
棘のネズミは、背中にある棘を飛ばす。
花の鳥は、花びらの羽を羽ばたき、花びらを飛ばす。
ジャンヌはロザリオで大きく振り、白い炎の波は花の鳥と棘のネズミを包み込まれ、消えていった。
アキセは花の狼と相手していた。
銃で炎を打ち出し、花の狼に立ち向かっていく。それほど苦戦していない。手助けは必要ない。
次々に使い魔を白い炎で払えても、絶えることはなかった。
おそらく、ただの襲撃ではない。目的が他にある。考えようとした時だった。
唐突に体中に痺れ、膝をつく。
なぜ急に。よく見れば、細かい塵のような物が降っていた。見上げれば、紫色の鳥のような植物の生き物が羽ばたいて、鱗粉を撒いている。
アコニー。有毒植物のトリカブトが異形化した異獣。
異獣は『呪い』を使ってなく、本来持っている能力をさらに引き延ばしている。アコニ―は、本来トリカブトが持っていた毒をさらに攻撃特化に進化している。
早くアコニ―を退治しなければと思ったが、大きいツルがアコニ―を地面に叩きつける。地面に亀裂が走ったほどの衝撃を受け、アコニ―はそのまま息絶えた。
その大きいツルは、『根の塊』の頭からだった。
ピーと『根の塊』が心配そうに近づいた時だった。
『根の塊』の背後から花の狼が、口を四方に割き、塊を吐き出す。
このままでは『根の塊』に当たってしまう。
痺れた体を無理やり動かし、『根の塊』を覆うように身を呈してかばう。
塊は、ジャンヌの背中に当たる。
「あ・・・」
ピーと『根の塊』が心配そうに上げる。
「ジャンヌ!」
アキセが声を上げる。
アキセは、爪飾りから赤い線が伸び、鞭のように花の狼を払う。
花の獣たちは、暗闇の中へと消えていった。
アキセは爪飾りを指輪の中に仕舞い、ジャンヌの元へ駆け寄る。
「あーあ、見事に背中やられちゃって」
「心配している割にそのセリフはないと思うけど・・・」
心配しているようで、からかっているアキセに軽くイラつかせる。
「それにおまえ、アコニ―の毒にやられたのか」
「あんたの魔力で毒を取りなさいよ」
アキセの奪う魔力は、相手の能力や『光』までも奪える。毒も取れないはずがない。
「いいの」
アキセが嬉しそうに言う。
「毒だけよ。それ以外に盗ったら、ぶっ潰す」
「じゃあ、刺さったこの物体も取らなくていいのか」
「・・・それも取って下さい・・・」
素直に頼んだ。
アキセは魔力で毒を奪い、背中に刺さった塊を取った。
「何か刺さってる?」
アキセは、ジャンヌの背中を覗き込む。
「ん~。服が少し破られているくらいだな」
「あっそ」
つまり、何もないってことになる。
「…もう『光』ないのか?」
「まだあるわよ」
使い魔は、魔女の一部であり、『呪い』で作られた存在であるため、『光』がある限り浄化される。
だが、花の狼から『呪い』とは別の何かを出したのだろうと考える時だった。
ピーと根の塊が心配そうに近づいてくる。
根の塊の横に白い炎が飛び、驚いて後ろにごろんと回る。
「邪魔だ!さっさと消えろ!」
ジャンヌは、『根の塊』に鋭い目つき視線を送る。静かに歩いていく。
ピーと『根の塊』は、悲しいそうな背中を見せながら、。
「やっと追い出してくれたか。これで二人っきりに・・・」
ゴツっとジャンヌはアキセを一発殴る。




