第6話 彩花の魔女①
昼が過ぎ、もうすぐ夕方になる頃、ジャンヌが森の中を歩いていた時だった。
ぴーと高い鳴き声が聞こえたと思えば、後から頭に何かが当たる。
ゴキッ!
衝撃があまりにも重く、首に嫌な音がした。
その衝撃でジャンヌは膝をつく。
言葉にならないほどの痛みだった。
「いったー。何?」
首を手で押さえながら、振り返れば、石だと思っていたが、目があり、根で包み込んだ体に足が生えている生き物がピーと鳴いてジャンヌを見つめている。
「魔獣でも異獣ではないし。それに使い魔でもない・・・」
植物の生物は、魔獣と異獣との判別は難しい。
魔族化・異形化以前に本来持っている能力なのか判断がしづらいからだ。
特に敵意を向いていなかったので、退治する必要もなかった。
敵意のない相手を切るほど、残忍ではない。ジャンヌの信条は、襲ってくるものは、皆切る。
「次は気をつけな」
ジャンヌは、『根の塊』に一言言ってから、歩き出すが。
「ついてくる」
どんなに歩いても『根の塊』は、親鳥に付いていくひな鳥のように追ってくる。
振り返れば、木の陰に隠れ、こちらの様子を覗き込む。前を向いて歩けば、ピーピーと歩いてくるというその繰り返しだ。
どうしよう。なぜかついてくる。
このまま付きまとっても困る。
どうやって追い払おうかと悩んできた時にあの男は現れる。
「なんだ、ここにいたのか?」
黒い髪と目の優男。中指に指輪がはめ、黒いロングコートで全体的に黒を基調とした服を着ているアキセだった。
木の陰から出できた。
なぜ、この男はタイミング悪くも良くも現れるのかとジャンヌは、頭を抱えながら、アキセを無視続ける。
「無視するなよ。おいってば・・・」
陽気に言うアキセだったが、言葉が途切れる。
「ん?」
ジャンヌは気になって振り向くが、『根の塊』の頭から根が伸び、アキセの顔を縛り、身動きを封じていた。
「な・・・何これ」
ピー!と高い鳴き声で『根の塊』がアキセを弧に描くように振り上げ、地面にたたきつける。
「おえ!」と汚い声を出すアキセ。
「あー」と抜けたような声を出すジャンヌ。
『根の塊』は、まるで飼い主を守るようにジャンヌの前に立ち、アキセを威嚇する。
「くそ生意気な・・・」
顔に土をつけられたアキセは、『根の塊』をにらみつける。
『根の塊』はアキセの顔を見てあざ笑う。
「ジャンヌ!なんだ!その生物は!」
「ん~私の新しいボディーガートかな」
ジャンヌは、いたずらな笑みを見せる。
小さな村だったが、静けさがあった。
家が花に包まれたように草が絡まり、花がところどころに咲いていた。
まるで花園ような村で一人の女が歩いていた。
華やかなドレスで足を見せている。バラのような赤い目。根のような髪が後ろにまとめていた。
「ああ、綺麗に咲いてくれたわ」
茎針が体中を絡め、口から花を咲く人間だったものを女は顔を近づけ、甘い声で花の匂いをかいでいた。
「いい匂い」
他にも腹から赤い花が咲いている人間、手足が体から千切られ、断面から花を咲かせているなど、人間だった花を女は眺めていた。
そこに地面から一輪の花が伸び、女の耳元に話しかける。
「何?あの聖女が近くにいる・・・」
女は思い出す。
体中が燃えながらあざ笑いする少女の声が頭から響く。
「また、燃やすのか・・・憎い」
女は、噛み砕く。




