第4話 水鱗の魔女④
水面から竜巻が発生し、ジャンヌとアキセが地面に落ちる。
やっと地上に出られたことに喜びたいところだが、背中に刺さった鱗の痛みが続き、うつ伏せの状態で立っていられないところだった。
その横でアキセが、四つん這いで息を上がっている。
「おい、ここで倒れちゃこっちが困るんだが」
「あんたが・・・招いたことじゃないか」
苦しみながらも反論する。元はといえばアキセがドジを踏まず、鱗の女たちにジャンヌのことを話したことが今回の元凶だ。
「ヤバいな。もう夕方だ。大分日が傾いているし。早くに日に当てないと」
とアキセがいってもジャンヌは理解していた。
この場所は、浅瀬の水がクモの糸のように広がっている。さらに、太陽を遮るように木の枝も広がっていた。日差しは、多少届いているが、鱗を浄化するには不十分だった。
「とりあえず、この場から離れるぞ」
アキセがジャンヌに手を伸ばそうとした時だった。
ズル!
アキセが引きずられている。
ジャンヌは、振り返れば、池から青紫色の手が伸び、アキセの足に掴んでいる。鱗の女だろう。アキセは足を払っても、鱗の女の手が離れることもなく、水の中へ引きずられてしまった。
「もう追い付いてきたのか…」
ジャンヌはどうにか体を起こすが、
「あら、まだ元気なのね」
その声に振り返ると、水の上でペグが立っていた。
「聖女はしぶといわね。ゴキブリ並みにね」
ペグは見下ろす。
「ゴキブリと一緒にしないでくれる」
弱みを見せないように反論する。
「あなたの彼氏。怪しい術を使って時間稼ぎしたつもりけど。大したことなかったわ」
「ちょっと・・・あれは彼氏でもないわよ」
「ふ~ん。でもまあいいわ。これでじっくりおもてなしできるもの」
ペグは、不敵な笑みを見せる。
今、『光』がほどんとないため、背中についた鱗さえ、浄化できず、これ以上『光』を使えば、『呪い』に侵される。さらにアキセが水の中へ引きずられてしまった。危機的状況を変える方法を必死に考え出す。
その時だった。
ビュー!
池から何かが飛び出してきた。あれはアキセの弾。水中でアキセが打ち出しだのだろう。
その弾は、西の方角へ進み、ペグの横を通り、後ろの木に当たる。陣を発動し、大爆発を起こす。
顔を上げられないほど、爆風が襲われる。
風が止んだ。
爆発に巻き込まれた木が焼け、赤く染まった空を見せる。
西に傾いた日差しが、ジャンヌに当てる。背中の鱗が溶けるように浄化され、力が漲ってくる。
察したのが、ペグは手を伸ばし、池から鱗と混ざった水がカラカラと鳴らしながら、ジャンヌに向かって放つ。
ジャンヌは、横に飛び込み、白い炎を打ち出す。
ペグは、池から水の盾を作り、白い炎が蒸発するように消えていった。
晴れた時には、ペグが鋭い目つきで睨んでいた。
「あら、元気になったのね」
ペグは嫌味に言う。
「ええ。これで十分にお返しできるわよ」
ジャンヌは、疲れ切ったような殺意がある目でペグをにらみつけ、光の刃を作ったロザリオをペグに向ける。
お互い火鉢がなる中。
「はあ~死ぬかと思った…」
アキセが池から這い上がっていた。
「よく生きてこられたわね?」
冷たく言う。
「死ぬところだったぞ!協力してくれてるんだから、心配くらいしてくれ!」
「元凶のあんたがいうか!生きていれば平気でしょ。どうやって逃げ出したんだよ」
「日差しが池の中まで届いて、使い魔が逃げていった隙に」
アキセは立ち上がるが、二人の間を割るように水が襲いかかる。
左右に避ける。
アキセが後ろへ下がった時、ペグがアキセの背後を取り、回し蹴りで、森の奥まで飛ばす。
「小僧をやりな」
ペグは、池から出できた鱗の女に命令を出す。
鱗の女は命令に従い、池の中に入り、アキセを追いかける。
「少し回復したからっていい気になるなよ。もう日が暮れたというのに」
ペグは、表情が何一つ変わらず、悪い笑みを見せる。
日は、西へ暮れて、空は黒く染まり始めた。




