第2話 女の国 後半⑤
アガタは城にいるはずと戻ってみれば、城はなぜかもぬけの殻だった。街の騒ぎに急いでいるのか。騎士はいなかった。
長い廊下を走っている中、あちこちで轟音がした。アガタが戦っているだろうか。玉座の方から音がした。ゆっくりドアを開けば、アガタとサッフォーと戦っていた。
予測通りサッフォーが魔女だった。
魔術を使わず、人を操ると言えば、魔女しか考えられない。魔族も考えられるが、『呪い』をまき散らすのが魔女しかいないからだ。
その時、アガタと目が合い、サッフォーを飛ばした。
ジャンヌを試そうとしている。
「たく!」
ジャンヌは玉座に飛び込む。
くの字に飛ぶサッフォーにロザリオで上半身を切る。体を二つに分かれ、地面に落ちるサッフォーは、『光』の浄化に苦しんでいる。
ジャンヌは滑りながらアガタの前に着く。
「遅いぞ」
「アガタさんが肝心なことを言わないから」
反抗して返す。
「修行不足。まあ来たから良しとしよう」
アガタのそういうところが嫌い。いつも試されていることに。
「さて」
アガタはサッフォーを念のためなのか逃がさないようにシチリア・リングでサッフォーの胸に刺す。
「最後の質問。協力した魔女を話しな。どうせ、魔女の頭はその魔女からもらったところだろう」
サッフォーはこの国に潜んでいた。魔女の頭を探すはずがない。手に入れるためにも第三者がいないと成立できない。
「さっさと言えば、痛みなく殺してあげるよ」
アガタが笑顔で言う。
「おい!いるんだろ!早く手を貸せ!」
答えることなく、サッフォーが誰かに声をかける。
やはり他に魔女がいる。
だか一向に姿を見せない。どうやら見放されたのか。魔女の裏切りはよくあることだ。
その時、鈴が鳴った。
「鈴?」
城からロランが逃げた時と同じ音。魔女からの音だったのか。
鈴の音と共に風が吹き荒れる。
風が止んだ時には、逃げたはずのロランとクレアだった。
「ここは?」
ロランが顔を上げ、周囲を見ていた。
視線をずらした瞬間、下半身のサッフォーはアガタの腹に蹴る。サッフォーから『シチリア・リング』が離れ、ただのリングになり、床に落ちる。サッフォーは下半身と合体し、一目散にロランとクレア女王の元へ走る。ロランを蹴り、クレア女王をつかみ取る。
「動くな!この女を殺す!」
サッフォーは片腕でクレア女王の首を絞める。
「クレア様!」
「魔女が人質取るなんて、みっともないんじゃないの」
魔女が人質使うほど、追い込まれている証拠だった。
「うるさい!お前らから逃れるならなんでもやる!」
サッフォーは顔が歪むほど怒声を上げる。
その時だった。
唐突にスタンドグラスが割れ、サッフォーに何が当たり、急に倒れる。
その衝動でクレア女王は離れる。
「クレア様!」
クレア女王がすぐに離れ、ロランに駆け付ける。
「ご無事で」
「私は平気です。」
サッフォーはゆっくりと片目を抑えながら立ち上がる。
「雑種うううううううううううううううううう!」
片目に穴を空いたサッフォーは割れたスタンドグラスの窓に向かって叫んだ。
一斉にアガタとジャンヌは、目に映らない速さでシチリア・リングとロザリオでサッフォーを切る。
真っ二つに離れるサッフォーは、『光』に包まれ、消えていった。
「魔女が死にもがくんじゃねえよ。死ぬことがないくせに」
ジャンヌは冷たく言う。




