第2話 女の国 後半③
悲鳴や轟音が閉じた窓でも聞こえていた。
歴代の女王が住むこの部屋は、一人だけでは広い部屋に扉を開く音が響いた。
「サッフォー。あなたの仕業ね」
クレア女王は、部屋に入ってきたサッフォーに問い詰める。
「何のことかしら」
「とぼけないで。講演会の時も私に魔女を襲わせたのも」
「考えすぎはよくないですよ」
サッフォーは静かに近づく時だった。
クレア女王とサッフォーの間に急に輝き出した。その輝きは、陣が浮かび、その陣から人影が映っていた。輝きが止み、人影が露わになった。
「ロラン・・・」
手に枷をつけていたロランだった。
「クレ・・・ア・・・様・・・」
ロランは、見開いていた。
「なぜおまえがここにいる!」
サッフォーは怒鳴る。
「サッフォー・・・」
サッフォーは、ロランの顔を蹴る。
「様をつけろ!ただの男のくせに!」
鋭い目つきをするサッフォー。
「貴様のおかげで計画がつぶれるところだったろうが!」
サッフォーはロランを踏みつける。
「さあ!言え!脱走させたのは誰だ!あの魔女が!」
その時だった。
サッフォーの顔に何かがかする。そして、ロランに拘束された枷にも当たった。それは、黄色に輝く刃だった。黄色の刃が消え、刺された枷が割れ、ロランの手が自由になった。
「君のせいで後輩の成長を見れないじゃないか」
サッフォーは、声をした方へ鋭い目つきを向ける。
暗闇から聖女のアガタが姿を出す。
「あなたは・・・」
ロランは言う。
「ここは僕がやるから、ロランは女王様を連れていきな」
「感謝します」
ロランは、サッフォーから離れ、クレアを引っ張り、部屋から出る。
この部屋にはアガタとサッフォーの二人となった。
「君さ~ひどいことするね。女性を操って、僕を毒殺しようとしてさ」
アガタは睨みつける。
ジャンヌに監獄に行かせる時、女性が集まった。女性たちは、食事を振る舞そうとしたが、操られていることに気づき、静かに眠らせた。
「おまえだろ。この事件の発端の魔女は」
アガタは決定打に言う。
「聖女様。何を言っているんですか。今、魔女が暴れていますよ。いいんですか」
「あっちは後輩一人で十分なので、ご心配なく。いつまでも臭い芝居に付きあるつもりはない」
アガタは鋭い目つきでサッフォーを見る。
「あの魔女が来る前から女性を誘拐していたんだろう。事件をカバーするために、あの魔女の頭を使って呼び出した。それにか弱い女王をいじってさ。いい加減正体を出しな!魔女!」
アガタは声を上げる。
黙り込んだサッフォーは、大きい溜息をする。
「いつから気付いた」
サッフォーが皮を破ったように顔色が変わった。
「最・初・から!」
区切りながら強く言う。
聖女は、無意識に『光』を放出し、『呪い』を浄化しているため、魔女が人間に化けている時は気付けない。
アガタのような熟練の聖女は、気配で魔女を感じ取れる。
「伊達に魔女を狩っていないからね。そのくらい気付くさ。まあジャンヌはまだ修行不足だけどね。あと経験と女の勘」
「あなたのどこが女なのよ。わざわざ男装までして気持ち悪い」
「この格好だと似あうし、決まるだろ。それに喜んでくれる女性もいる。僕は女性が好きだからね」
「そこは同意するわ。私も女性は好きよ。だからこの国が大好き。女は穢すこともなく美しくいられる。それにこの国なら男を水ぼらしく貶めて眺めるのも嫌いじゃない。なのにさ。あの女王様。男に権利を与えるなんて考えているのよ。せっかくの楽園を荒らされたくないわ」
「じゃあ、なぜ女王にしたの」
サッフォーは人を操る呪力を持っている。操って手中に収めるものだか。
「あの子、抗体を持っていたのよ。だからタタリをかけても効かないもの」
『呪い』の抗体が高ければ、魔女や魔力も効かない。
クレア女王は『呪い』の抗体が持っているため、操られないということだった。
「だから、いじりたくなったの。あの二人の関係を知ってね。あんな嫌がる顔も苦しむ顔も快感だったわ。もうちょっと見たかったけど。聖女が来るって聞いてね。今暴れている魔女に全部押し付けて、逃げる計画だったのに。あの魔女が余計なことを」
「あの魔女?」
他に協力者がいるようだ。
「そうよ。あの魔女が昨日男を逃がしたの。何をしてかすと思えば・・・まさか、騎士に変装していたとは思わなかったけど」
サッフォーは鋭い目つきをする。
「もしかしてあなたが招いた?」
「見かけたからさ」
アガタは講演会の時に、観客に紛れていたロランを見つけていた。人気のない場所にロランを連れ出し、事情を聴いた。
「一時しのぎに変装させて、あとでジャンヌと一緒に作戦を考えるつもりだったけど、首なし魔女のおかげでさ」
「本当に驚いたわ。まあ探す手間を減らしてくれてどうも。おかげで牢獄に爆弾を仕掛ける羽目になったわ」
「証拠隠滅のためにロランを別の監獄に送ったのか」
計画の支障しないようにロランを殺害したかったのだろう。
「もういらないからね。それに聖女に話しては計画が台無しになるところだったわ。そういえば、牢獄に聖女行かせたでしょう。心配しなくていいの?」
「聞こえなかったのか。後輩に任せるって。あのくらいの爆発で死ぬように修行させてないさ」
そこまでジャンヌは軟弱ではない。立派な聖女の一員だ。
「さて、話は十分だろう。魔女は他にもいるんだよね。教えてくれるかな」
サッフォーは黙りこむ。
「私を見逃してくれるなら、いいわよ」
「君のような女性を弄ぶ魔女を逃がすわけないだろう」
アガタは、腰につけていた二つの半径のリングの径を掴む。柄頭にある黄色の宝石から黄金の光の刃を生み出し、カットラスのような剣を作り出す。
アガタが持つ聖剣『シチリア・リング』の二刀を構える。
「僕はね。何より女性を騙したり、弄ぶ愚か者は嫌いなんだ。淫魔もおまえみたいな魔女も」
「そうね。私も男の格好する聖女も嫌いだわ」
サッフォーは黒いモヤに包まれながら、衣装が変わる。
スレットのように片ズボンは肌を見せているが、等間隔でベルトの飾をつけている。へそが見えるほどの短いジャケットに、胸は太い布で巻いている。殺意を向け、手に二本の棍棒が現れる。
「黄色の聖女アガタ。僕は聖女の中でそれなりに強いよ」
「寵姶の魔女サッフォー・ムーア。貴様を叩き潰す」




