第2話 女の国 前半①
この国は、女だけの国。
魔女狩りの被害にあった女たちが逃げた先で村を作り始めたのが、始まりと言われている。そして、様々な理由で逃げてきた女たちが集まるようになり、一つの国へとなった。
その国に訪れていたジャンヌは、カフェで紅茶を飲んでいた。
「は~、おいしい。ここでは本当にゆっくりできる」
なぜなら、この国は男子禁制であるため、やかましいアキセは入ってこないという解放感に浸している。
「さすがにこんなところに入ってこないでしょ。あのストーカー」と紅茶を飲もうとした時だった。
「すみません。相席よろしいですか」
女が後ろから話しかけられた。店はほぼ満席だった。まあいいかとジャンヌは席を譲ることにした。
「どうぞ」
笑顔で振り返ると、見たことがある顔でいつもと違うとしたら、ワンピースにジャケットを着ている。長い黒髪。女の格好をしたアキセが立っていた。
「よ!」
思わず体が固まった。
何事もないように手を挙げ、声をかけるアキセ。ジャンヌは、アキセの胸倉を掴み、顔を近づかせる。
「おい。そこまでやるか」
美人の顔が崩れるほど、にらみつける。
「ちょっと、落ち着けって、これには事情が・・・」
ジャンヌは、雑に胸倉を離す。
「事情?そんなの知らん。消えろ」
事情を聞いたら逃げ出せないような気がする。
「話聞けって」
アキセは、ジャンヌと向かい合うように座る。
「座るな。聞きたくない」
「実はな」
勝手に話してきた。
「指輪が盗まれたんだ」
指輪は、自在に道具を呼び出したし、仕舞えたりする道具。こうさくの魔女コルン・コボルドが作った発明品でアキセが盗んだものである。
その指輪を失くしたと。
「それでなんでその格好になるわけ」
レオンほどではないが、女装のクオリティが高い。からかいがない。
「あの指輪は契約しているから、離れても分かるんだ。辿っていけばこの国なんだ。それで仕方なくやっているんだ」
「あっそ」
「おい、聞いているのか。なあ、俺の指輪を探してくれないか」
「無理。頑張れば。後言っておくけど、男ってばれたら、どうなることかしらね。男に恨みをもつ女もいるらしいし」
ジャンヌが立ち上がり、カフェから離れる。
「待てって。なあ、今回は助けてよー聖女様」
アキセがしつこく追いかける。
「じゃあ、そういうことで!」
去ろうとしたが、一気に青ざめる。その遠くで見たことのある顔を見たからだ。
ジャンヌは必死で走り出す。
「ここまでくれば・・・」
ジャンヌは人気のない小道に入り、壁に手をつけ、上がった息を落ち着かせる。
「おい」
肩を掴まれる。
「うわ!」
思わず声を上げてしまった。慌てて振り返れば、女装したアキセだった。
「いい叫び声頂きました」
ブチ。
アキセを地面にめり込むほど一発殴る。
「私を驚かさないでよ!」
ジャンヌはアキセに怒鳴る。
「くそ・・・マジで殴りしやがって・・・」
地面から顔をアキセが言いながら、立ち上がる。
「俺の答えを出さずに逃げるなよ」
「違う!あんたからじゃないわよ!」
「はあ?」
アキセが首をかしげた時だった。
「ジャンヌ」
アキセではない。別の声がした。
見つかってしまった。
振り返れば、声の主は立っていた。
金髪。オレンジの目。騎士のような白と黄色を基調とした正装。腰に小さな半径の銀リングを二つつけている。
男かと思えたが、男ではない。ジャンヌは彼女を知っている。
「アガタさん・・・」
顔を引きづりながら言う。
黄色の聖女アガタ。ジャンヌの先輩にあたる聖女だった。




