第1話 工作の魔女⑥
「は~どうにか逃げられた・・・」
ジャンヌとコルンが、戦っている間にアキセは一目散に逃げ出していた。今は町が小さな灯りの点になっているほど遠くに逃げきれた。
「よし。ここまでくれば・・・」
今回の魂胆にジャンヌが気付かれてしまっては、生きていられるかと思った矢先だった。
「待ってたわ」
唐突の女の声。しかも聞いたことがある声。アキセは背筋に寒気が走る。恐る恐る振り返れば、岩の上で座っていたジャンヌだった。しかもジャンヌは、笑っている。不気味に。
「げ!」
顔が引きずる。
「なんで驚くの?いつも会いたがっているのに」
ジャンヌは歩き出す。ロザリオに光の刃を作る。
「今はいいかな・・・てかいつの間に・・・」
「親切な魔女さんがここに送ってくれたのよ」
コルンが何かの発明品を使って送ったのだろうと思いながら、アキセは後ろへ下がっていく。
「なんで後ろに下がるの」
「気のせいではないですか…」
冷や汗が止まらない。ジャンヌの表情が一切変わらない。
「あなたから聴いていた情報と違っていたけど。あれはどういうことなのかな?」
ジャンヌは一歩一歩近づく。ロザリオを引きずる。
「あれ・・・別人じゃないのか・・・」
「いいえ。あんたが言っていたこうさくの魔女コルン・ゴボルドでしたよ」
「…」
アキセは逃げ出す。
「死ね!」
ジャンヌは怒声を上げ、アキセは悲鳴がどこまでも続いていた。
「さて、こいつをどうしようか」
縄で縛り、逆さで木に吊るしているアキセをジャンヌは見上げている。
アキセを捕まえ、コルンから借りた転送装置でコルンの元へ戻り、これから後処理をするところだった。
「え~殺すに決まっているでしょう」
ジャンヌの横にいるコルンも見上げて言う。
「おい、ジャンヌ・・・聖女が魔女と組んでいいのかよ」
アキセは眉を吊り上げる。
「何を言っているの。懲らしめるためなら、相手が魔女だろうが、手段なんて選ばない」
堂々と言う。
「最初から組めばよかったね」
「「ね~」」
コルンと当時に言う。
「いつの間に意気投合しやがって・・・」
「日頃の行いが悪いから、罰が当たったのよ。ざまあ」
ジャンヌは悪態をつく。
「ねえねえ!どうする?どう殺す?」
コルンがおもちゃを欲しがる子供のようにせがんでくる。
「ん~そうね。簡単に殺してはつまらないわね」
ジャンヌは考え付いた結果。
「そうだ!プライドを徹底的に叩き潰しましょ。とびっきり効くような」
「あ!いいね~それ!」
「生き地獄を味わいましょう!一生バカにできるようなのかいいわね」
ジャンヌとコルンの話が盛り上がる。
「何。この女子トーク。こわ」
アキセを無視してトークを進めるが、ぐすっとアキセが笑う。
「ジャンヌ、まだ甘いな」
「はあ?」
アキセの言葉に首をかしげる。
「あ!指輪を先に外さないと!」
コルンが叫ぶ。
「指輪?」
ジャンヌが首をかしげた瞬間、アキセから煙が広がる。
視界が真っ白に覆われた。
「あいつ!」
煙が晴れた時にはアキセはいなくなっていた。
「ちっ!逃げられた・・・」
縄で縛られているのにどうやって逃げたことだか。
「コルン。さっき言ってた指輪って?」
「あの指輪もワイの発明品なんだ」
あの指輪もか。
「指輪と契約をかわせば、なんでも指輪の中にしまえるし、呼び出すことができるんだ」
「どうりで道具が召喚すると思ったら、その指輪だったか」
今の魔術師の技術では、できない代物だ。魔女が作ったモノであれば、納得いく。
「ねえねえ聖女でもいいからさ。ワイのボティーガードになってよ」
「嫌よ」
即答に断る。
魔女が聖女にボディーガードの依頼するとは、コルンはアキセに対して相当悩まされているようだ。それもそれで面倒くさい。
「じゃあ、気が向いた時に発明品を取り返すから、代わりに私にもなんか頂戴」
「え~」
「ただでやるわけないでしょ」
ジャンヌは笑顔で言う。
「そんな~」
ジャンヌは魔女の知り合いができ、コルンは発明品の泥棒が増えたのだった。




