第1話 工作の魔女⑤ 挿絵あり
あの魔女は頭を狙っても動いている。つまり、別の箇所で視認できるということ。
だとしたら・・・
「逃がすが!」
コルンはジャンヌを追いかける。
ジャンヌは、先ほど倒した鉄の球体を掴み、てっちゃん32号に投げる。
頭に血を上らせ、考えさせないためだ。
てっちゃん32号に当たる。
「よくもこんなにしやがって・・・」
コルンはさらに怒り狂い、走り出す。
大きく振り、白い炎を生み出す。白い炎は盾に触れない距離を取りながら、渦を巻きながらてっちゃん32号を包み込む。
「あ~見えない!」
てっちゃん32号に向かってロザリオで片足を切る。
片足を切ったことバランスを崩すてっちゃん32号は走ったため、勢いが殺せず石のように転がっていく。
あーとてっちゃん32号から情けない声を上げながら、境界線の壁にぶつかる。びりびりと電撃が走る。
「し~び~れ~た~」
てっちゃん32号は、境界線の壁から離れ、片足しかないため倒れる。
痺れと片足の喪失で鉄の人形はもう動けないと思っても、相手は魔女であるため、油断ができない。
ジャンヌは、最後の後押しをする。
「さてと」
近くにあった建物に向かって、白い炎の波をぶつける。建物は崩れ、痺れたてっちゃん32号へ流れる。
「わ!わ!わあああああああああああああ」
てっちゃん32号は動くこともできずに埋もれるのであった。
てっちゃん32号と呼ばれる鉄の人形は、鉄くずとレンガの山へと変わった。
その山から人影が見えた。
ジャンヌは近づき、ロザリオを向ける。
「あんたが魔女のコルン・コボルドね」
こうさくの魔女コルン・コボルドは、5歳児の子供の姿をしていた。大きい帽子。大きい手袋と靴。作業着のような服を着ていた。
アキセから聴いた情報と印象が違う。
見た目が子供でも相手は魔女。ジャンヌはロザリオを下ろすことはない。
「さ~て。死ぬ前にいくつか質問に答えてもらおうか」
魔女に脅すところが、顔を見上げたコルンは涙目になっている。
「だって~ワイの発明品を返してくれないだもん!うえ~ん!」
おもちゃを取り上げたように泣き出す。魔女の威厳の無さで気が抜けてしまう。
「どういうこと?」
首をかしげる。
「だってー。あのコソ泥クズ野郎がワイの発明を勝手に盗むし。しかも返ってきた発明品が壊れてるものばっかりだし!いつも手紙落ちていくけど、なんで書いてあると思う?修理よろしくだってよ。まだ盗む気だよ~」
悲痛な叫びと泣き声が響く。
「何・・・あいつそんなこともしているわけ!?」
魔女とはいえ、子供相手にそんなことしていることに顔を引きずってしまう。コルンの魔女の威厳の無さもそうだか、アキセの行動にも呆れてしまう。
「ほんと。なんてあんなクズ男に惚れているのか分からない!見る目ないよ~」
「だがら!散々言っているでしょうが!彼氏でもないって!」
「だって噂で聞いたんだもん!できてるって!」
「噂?どこからよ!」
「風の噂でさ。まあ噂なんで当てにならないから、確かめようとしばらく聖女を観察していたんだ」
「は?!」
「噂がウソだったらさ。ぐす。クズ男の被害者ならさ。ぐす。討伐に協力してほしいと考えていたけど・・・」
涙をぬぐいながらコルンはいう。
聖女だろうがアキセの被害者なら協力してほしいとコルンも精神的にやられているんだろうか。
「でもいくら観察してもクズ男は現れるし!やっぱできてるし!」
「待て!監視していたなら、なんであれでできてるって思うんだ!」
夜這いや裏切り、搔き乱すと言った嫌がらせが多かったと思ったが。
「だからクズ男2号になるの嫌から抹殺計画を始めたんだ!うえ~ん!」
コルンは大泣きする。
「あんな奴と一緒にするなって!ん・・・ちょっと待て・・・」
もしかして、アキセが頻繁に会ってきたのは、コルンの監視があったから。あの噂がガセであれば、コルンがジャンヌを引き入れ、アキセの討伐に参加すると思ったのだろう。つまり、アキセの敵が増える。それにジャンヌがコルンを退治することになったら、コルンから発明品を盗めなくなる。
アキセがコルンの退治に必死で止めた理由に納得した。
アキセの魂胆に気づき、怒りがこみ上げるロザリオを力強く握り占める。
「アキセえええええ!」
怒りの叫びがどこまでも続く。




