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魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク  作者: 白崎詩葉
第1章

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第6話 ナリカケ 後半⑦ 挿絵あり

  目を覚めれば、白い部屋だった。

 窓から日差しが入り込んでいる。何もない白い部屋にベッドが一つあるだけの部屋。

「なんだ。ここか・・・」

 ジャンヌはこの場所に見覚えがあった。

 聖女の地。

 最も『光』が差し込んでいる地。魔女や魔族はもちろん、人間でさえ、『光』で浄化されたこの地に入ることすらできない。聖女にとって安全な地。

 ジャンヌが死にかけたところに誰かが救出したのだろう。

 今、聖女は貴重だ。病や重症した聖女は、連行することになっている。だか、それはすべての聖女ではないが。

「起きましたか」

 優しく包まれたような声。

 その声がした方向に向いた先に、部屋の扉から女が現れた。

 金の中にかすかに銀を混ざった髪。金色の目。頭に白いローブ。白いドレスに足を見せている。背中に6本の翼が背中から垂れ下がっている。


挿絵(By みてみん)


 聖女の頂点を立ち、(いにしえ)の聖女の1人。日を司る天光の聖女イヴ。ジャンヌの上司で、苦手な相手である。

「イヴ様…」

 部屋に入ったイヴは、静かに近づく。ジャンヌは知っている。あの優しい目は心配する目でないことを。危機を察し、ベッドから起き上がろうとしたが、

「こら」

 その言葉で体が動けなくなった。

「どこに行くのかしら?」

 優しい声の中に恐喝が混じっている。ジャンヌは大人しくベッドに戻った。

「マリアだったら、激怒もんよ」

 古の聖女はもう一人いる。月を司る月光の聖女マリアも存在する。

「イヴ様も十分怒っているんじゃないですか」

「ええ、それなりに」

 視線をそらす。

「あなたは、昔から協調性がないわね」

 呆れたイヴは、ベッドの上に座る。

「え~と、誰かここに・・・」

「アガタよ」

 鳥肌がたった。

 アガタは、ジャンヌの先輩にあたる聖女。苦手な聖女の1人でもある。

「なんでアガタさんなんですか」

「近くにいたのもアガタだったし。あなたと組みたい聖女が少ないもの」

「そうですか」

 ぶっきらぼうに返す。

「なぜ、来るまで待てなかったの」

「魔女の襲撃があって、待っている余裕がありませんでした。それにあのくらいでしたら、対処できると思ったので」

 頭にチョップされる。頭の骨が割るほどの痛みだった。

「イタイ・・・」

 ジャンヌは頭をさすりながら言う。

「いくらあなたが聖女から嫌われているからって、なんでも一人でやらないの」

「だったら、一人でやらせないようにすぐに増援してください」

 今度は首筋にイヴのチョップを食らう。

――これは痛かった・・・

「そういう態度を取るから嫌われるんでしょう」

 イヴは呆れながらいう。

これ以上話が進んだら、説教コースになりそう。話題を変えよう。

「ちなみに私。どのくらい寝ていましたか」

 ジャンヌは首筋をさすりながら言う。

「そうね。3日は寝ていたかしら」

「3日もですか…」

「ええ。日が沈んでも起きなかったら、叩き起こすつもりでしたよ」

 笑顔で返すイヴ。

――そうだ。この人はこういう人だった。

「あの後どうなりました?」

「話から聴くにはリリスは、リリムを連れて帰ったわ」

 連れて帰ったリリムは、おそらくレオンのことだろう。リリスのおもちゃにされていることは本当らしい。ただアキセの情報が入ってなかった。心配などではない。消息を確認したいだけである。

「もう一人いませんでしたか」

「もう一人?その話は出でなかったわね。仲間でもできたの?」

「仲間ではありません!」

 はっきり言い切る。

 情報がないなら、それでもいい。

「まあ、いいわ。あまり無理をしないでよね。ただでさえ、聖女が生まれづらいのに、死んでしまうのは困ります」

 生まれづらい。

 聖女は人間だった。

この世界は何度も大きい戦争が起きた。そして、人類最大の事件。知識の強奪。

 しょかんの魔女ラプラス・ライブラーが、全人類から知識を奪った事件で大戦争の終わる要因となった。

 それ以来、人類は衰退し、聖女は生まれづらくなった。

 いずれ人間が絶滅し、聖女が生まれなくなる。『光』と『呪い』のバランスが崩れていく。『光』を守る者が、古の聖女のイヴとマリアのみとなり、この世界は完全な魔女の世界になるだろう。

 イヴは、そういう未来を心配しているのだ。必ず来る未来に。

 だかそれは、ジャンヌが死んでからのもっと先のことだった。

「次、また無理をしたら、この地にとどめておきますから」

 それは全力で阻止しなければ。ここはイヴとマリアが決まったルールがあり、面倒くさいのが一番の理由だった。

「え、それは・・・」

「何?まだ口答えがあるのかしら」

 表情に出さず、口調を強める。

「以後気を付けます・・・」

「そうして」

 イヴはベッドから立ち上がる。

「話はここまで。あなたは完全に回復するまで休みなさい」

 イヴは優しく見つめてから、部屋から出でいった。



 それから3日で回復し、すぐにこの地から離れた。

 苦手なイヴとマリアから離れたかったからだ。

 ジャンヌは、森の中を歩いていた。

 結局アキセは死んだか分からない仕舞いだった。

 戻って死体を確認したいところだが、あれから1週間近く立っている。死体が残っているかも怪しいところだ。

「まあ、あんなやつ死んでせいぜいしたわ」

「そんな言いぐさ、ないんじゃないのか」

 聞き覚えのある声にびくっと肩が震える。恐る恐る振り向けば、アキセが木の枝の上で座っていた。

「生きていたのか・・・これでやっとトラブルメーカーから解放されると思ったのに」

「なんだよ。協力した仲じゃないか。いい加減心広げてくれないか」

 これまでのアキセを振り返る。

 始めは、魔女ハンターとか言って、魔女に売ったこと。勝手に話を進められたこと。仕返しに魔女を使ってきたこと。それに今回は信用得るために操ったフリをしてナイフで腹を刺したのだ。アキセと関わっていい思い出などなかったが、確かに協力して助けてもらったこともあった。それでもろくなことはなかった。

「なんだよ。黙り込んでさ。それに気になることがあってね」

「気になることって何よ」

「俺が本当に魔女に操っていたらどうやって正気に戻そうとしたのかなってさ」

「は?」

 アキセにナイフで刺された時のことだろう。

 あの時もまさか正気に戻っているとは思わなかった。思い出しただけで腹が立ってきた。

「あの時、キスで直接『光』を入れようとしたんだろ」

 気付いていたのか。

「その様子だと図星か。まあおしいこともしたけど、君からのキスって俺にとっては毒だからな」

 魔族であるアキセは聖女の『光』が直接体内に入れられ、体内から浄化することになる。

「大丈夫。一生ないから安心しな」

「ええー」

 アキセが残念そうに言う。

「なんで残念がる」

 アキセは木の枝から降りた。

「まあいいか。別のことで楽しむし」

「おい。何をするつもりだ」

「それに」とアキセは無視を続け、ジャンヌに近づく。

「生きていないとこっちとしちゃあ、困るんだよ。後処理とか俺の援助とか」

――この男また私を利用するつもりだ

「これからもよろしくってことで」

「はあ!?何がこれからって!」と振り返った時、アキセはジャンヌに瞬時に近づき、顎に手をつけられ、口へと近づく。

「なーんてすると思った」

 アキセはそそのかして言う。

ブチ。

 ジャンヌは殺意を込め、アキセの顎に拳をぶつける。

 アキセは情けない声と共に空の彼方へ飛ばした。

「せいぜいした」

 晴れ晴れした顔で再び歩き出す。



 これ以来、あいつとは長い長い付き合いとなってしまった。



 第1章 完


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