第6話 ナリカケ 後半⑥
「ほんと、あなたはゴギブリ並に生きていること」
リリスは呆れて言う。
「それは…お母様から頂いた…この丈夫な体のおかげで・・・」
「あなたの体を一緒にしないでくれないかしら」
リリスは鋭い目つきをする。その目つきにアキセは、びくつく。
リリスの視線が変わり、口の端を上げる。
「コゼット。こんなとこにいたのね。」
リリスは奥にいるレオンに視線を向く。
レオンも気が付いたようだ。たが、いつの間にか骨折した左腕と右足が動いていた。
「リリス・・・」
レオンも冷や汗をかいている。
「あら、どうしたの?かわいい顔に傷つけちゃって・・・」
レオンは逃げようとしたが、
「おやすみなさい」とリリスが一言言った瞬間、レオンは眠ったように急に動かなくなった。
「もう手間を取らせないでよね」
リリスは髪をなびかせながら言う。
「ママ・・・」
吹き飛んだラギャムがリリスに近づく。
リリスはその声に耳を傾けず、歩き出す。
「ボクダヨ。ラギャムダヨ。オボエテイナイノ?ママノコダヨ・・・」
ラギャムは、泣き出す子供が母親に甘えるように問いかける。
「ボクダヨ・・・ママ・・・」
リリスは答えてくれずに歩く。
「ママあああああああああ!」
ラギャムはリリスに手を伸ばすが、リリスに届く前に肉も残さずにラギャムが塵のように消えてしまった。
「あら、何かいたかしら」
リリスは何もなかったようにいう。
そして、リリスはセイラムに視線を向く。
「あら気付かなかったわ。あなたが今回の首謀者でいいのかしら」
「リリス…」
セイラムは顔を歪めるほど鋭い目つきをする。その目には怒りを感じる。
「あなた、ナリカケを使うなんて大げさなことしてくれるわね」
「大げさ・・・ですって。全てはお前を殺すためだ!」
それがセイラムの目的だった。
「あら、前に会ったかしら」
リリスはとぼけたように首をかしげる。
「はあ、覚えてない・・・この顔を見てもが!」
前髪を上げたセイラムの顔には、肉が見えるほど皮が抉られ、片目が潰れている。
「あら~髪上げた方が似合っているわよ」
リリスは平然と言う。
その発言に切れたのか、セイラムは眉を吊り上げる。
「似合っている・・・ふざけるな!」
セイラムが怒声を上げる。
「何叫んでいるのよ。ほめてあげたっていうのに」
顔に手を当てるリリス。
切れていたセイラムの表情が緩む。
「あ~そうか。それなりに年取っているものね。忘れるにも仕方ないか。ごめんなさ~い」
セイラムは煽り立てるように言う。
その時リリスの眉が吊り上げる。
「ねえ、気に入らないでしょ。だったら・・・」
リリスは、瞬きする暇もなくセイラムに近づき、紙を破くようにセイラム顔の皮を抉り取る。
「うわああああああああああああああああ!」
セイラムは、痛みの衝撃で顔を抑える。
「私がもっと似合うようにしてあげる」
リリスの目は、悪意に満ちていた。
肉質を露わになったセイラムは、顔を崩れるほどリリスをにらみつける。
「いいわよ。やっぱりその顔ね~」
リリスは満足したように言う。
「そうだ!」とリリスは何かを閃いたのか手を合わせる。
「顔だけじゃ、あなたの魅力が伝わらないわね」
その瞬間、セイラムの髪が抜け、頭から血がじんわりと流れていく。
「あ・・・あー髪が!」
セイラムが頭を抑えながら叫ぶ。
「髪をお手入れしなきゃ」
リリスはセイラムの叫びを気にもせずに言う。
「後、声も少し変えましょうか」
セイラムの声が枯れてきていた。さらに背中から骨がむき出し、棘が生えたようだった。
「あら、よく見たら片腕ないのね。腕と足もやんないと」
肉がひきちぎる音と悲痛な叫びが響いた。
子供が無邪気におもちゃを壊していくような仕草だった。
「あら~とても似合っているわよ~ありのままで」
リリスは満足していた。
セイラムは、もはや原型がない。頭皮が見え、髪がみずぼらしく残し、頭が赤い血で覆われている。背中から棘が生えたように骨が伸びていた。失った腕には、不気味な腕が生えていた。手と足がむりやり伸ばしたせいか、骨がむき出している。
セイラムが息を上がりながら、筋肉むき出した赤い顔がリリスをにらみつける。
「殺してやる!殺してやる!」
ガラガラとした声で叫ぶセイラム。
「あらせっかく似合うようにしたっていうのに失礼な魔女ね」
「コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!コロシテヤル!」
何度も繰り返す。
「あら、頭壊れちゃったかしら」
「コロシテヤル!」
セイラムは、リリスに襲い掛かる。
「飽きた」
リリスの目の色が変わった。
リリスの手がセイラムの顔を貫通させる。セイラムは動かなくなり、黒い塵状に散っていった。
「あら、汚い。爆発させるんだった」とリリスは、まるで手についたゴミを掃うように手払う。
リリスは、ふと向きを変え、倒れているジャンヌに気付く。
「あなたがあのナリカケを倒した聖女ね。生きているの?」
リリスがジャンヌに近づいてくる。
何をされるのか、ジャンヌは考えられなかった。
もうここで死ぬのかと覚悟をした時だった。
「離れて頂けないでしょうか」
別の声がしたが、確かめる気力もなく、力を尽きてしまった。




