第5話 ナリカケ 前半③
リリム。
よきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャ―の子供のことを指す。魔女が誕生してから生きている古い魔女であり、この世で最強と言われる魔女でもある。リリスは、様々な種族と性行為をし、多く産んだ子供がリリムと言われている。
アキセはそのリリムの1人だった。
「え~と。誰?」
アキセはもう一人のリリムに問いかける。
「ほう。このタンガを忘れたというのが!一応君とは兄弟だか・・・」
タンガの口調が強くなった。
「兄弟?何言ってるんだ?リリムはな。あのビッチ魔女があちこちにやってできた子供だぞ。急に兄弟ですって言って仲良くできるか。ただ血が流れてるだけで、他人同然。いちいち覚えていられるか。特に雑魚に」
アキセの性格を考えれば、やはり敵が多いようだ。
「僕は覚えているぞ。僕の力を奪ったんだからな!」
タンガは怒声を上げる。
「あんた、そんなこともできるの!」
アキセの奪う魔力は、どうやら人の力を奪うことができるらしい。
「まあな」
「何、鼻を高くしてるのよ。ほめてない」
ほめてたまるか。
「本当に貴様は・・・」
タンガは、視線を変えた。
「おや、よく見たら噂のコゼットもいるではないですか」
先ほど気絶していたエルフが逃げようとしていた。
「お、ほんとだ。コゼットちゃんじゃん」
アキセがからかう顔をする。
エルフの名前がコゼットらしいが、どう考えても女の名前なのだか。
――いや、待てよ。リリムのアキセとタンガが知ってるということは。
「もしかして・・・あなたもリリム?」
コゼットはぴくっと体が震えた。図星らしい。
まさか同時にリリムが3人現れるとはジャンヌは思わなかった。頭が痛くなる。
「コゼットがいるってことは、近くにいるのか」
タンガが呟く。
「まあいい。貴様らは・・・」
大木が飛んできた。タンガの間に割り込むように落ちる。
「ダレダ!ぼくのてをきったのはああああああああああ」
サイクロプスは怒声を上げながら、手に持った木を地面に叩きつける。
一斉に避ける。
持っていた木は、サイクロプスの力に耐え切れずに割れてしまう。
「ニゲルナ!ニゲルナ!」
太鼓をたたいているように6本の手で地面をたたき、手を横に振って木をなぎ倒す。
地面が立てないほど激しく揺れる。
体を保つために重心を低くする。
「もうめちゃくちゃ」
「ここは撤退した方がいいんじゃないのか」
いつの間にか横にいたアキセから提案される。
ここは乗るしかなかった。
「逃げられるの?」
「見てろ」
アキセが前に出る。
「おまえにはこいつをやる!」
アキセはサイクロプスの口に何かを投げ、口の中に飲み込む。
「ああああああああああああ!」
サイクロプスは口から泡を吹く。暴れたサイクロプスの動きが鈍くなった。
「よし、今のうちに逃げるぞ」
サイクロプスが鈍くなったことを考えるより、森の奥へと走り出す。
サイクロプスは力を尽きたのか、口に泡を吹きながら、その場で倒れる。
「知能が低い生物は使いづらい」
タンガは、倒れたサイクロプスに言い放つ。
「さて、追いかけ・・・」
タンガが急に止まる。口の端を上げる。
「そういうことですか」
タンガは消え去る。
サイクロプスの指がぴくっと動く。




