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魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク  作者: 白崎詩葉
第1章

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第5話 ナリカケ 前半②

「あ~。どうしたものか」

 アキセは、小さな町の中の食堂にいた。

 ジャンヌは確実に正体を探っている。

このところ魔女に食われかけたり、拷問されたりとろくなことがなかった。もう魔力も話した。ジャンヌの推測を答えてあげた。だか、正体を掴まれていない。正体を分かった瞬間、ジャンヌはどんな対応するのか。想像ができない。

「隣いいかしら」

 声をかけられた。振り向けば、片目を前髪で隠した綺麗な女性だった。

「いいですよ」

 ただ席は混んでいない。わざわざ隣に座りこむとはどういうことだろうか。

 女は隣に座り、頬杖を立ちながらアキセを見つめてくる。

「なぜお隣に?」

「あなたとお話ししたいと思いまして」

 女は不気味な笑みを見せる。



「あの~、あれはごめんね」

 ジャンヌは視線をそらしながら謝る。

「あれがまさか『呪い』で作ったものとは思わなかった・・・」

 『呪い』で作った服よりも最も驚いたのは、なぜ女の格好をしたのかということ。

「それに・・・君男とは・・・」

 エルフは、黙ったままだった。確実に怒っている。いつの間にか用意してあった男の服に着替え、長い金髪を一束に縛る。

「趣味なの?」

「違う!」

 否定された。そうだよね。

「もういいだろ!この話は!」

 さらに不機嫌にさせてしまった。

「分かったから。話を変えるから」

 話題を変える。事情が聴けなくなる。

「あなた、なぜ魔女に襲われているの?何かした?」

「それは俺が知りたいところだ。あいつらが急に襲ってきたんだ」

「そう」

 あの魔女たちは、たったエルフ一人をわざわざ襲いにきた。それに魔女が言っていたあの女ということに気になる。

 エルフと二つの魔女とは何か関係があるはず。

「もういいだろ。俺はこれ以上巻き込みたくないんだ。魔女狩りは聖女の仕事だろう。さっさと仕事しろ!」

 ブチっとジャンヌは切れそうになった。

――この女装魔が。

 エルフの口の悪さに切れそうになったが、服の件もあるので怒りを抑える。今は小さなことで怒る場合ではない。

「じゃあ、俺は聖女の仕事の邪魔になるので、これで」

「まだ話が!」

 エルフが歩き出したその時だった。

 ドスドスと地面が揺れる。

「今度は何よ」

 揺れが段々と強くなった。何かが近づいている。

 ジャンヌは呆れながらロザリオを構える。エルフも警戒する。

 音や揺れが納まったとたんに、上から何かが落ちてくる。

 ジャンヌとエルフは左右に避ける。

 落ちた正体は根まで抜き取られている大木だった。手が鎌になっているムカデの魔女と触れただけで溶けるナメクジの魔女ではできないことだ。別に敵がいるということ。

 ジャンヌは地面に足がつく前に、何かに捕まってしまう。

 「何?!」

 確認してみれば、巨大な手がジャンヌの体を掴んでいる。

 エルフは横腹に巨大な拳が当たり、木にぶつかり、そのまま気絶をしてしまう。

「み~つけた」

 木をなぎ倒し、正体を明かす。

「サイクロプス?」

 3メートルほど大きい一つ目の巨人の異形種。サイクロプス。

 だが、サイクロプスは少し違っていた。

 口が二重。歯がノコギリのように密集し尖っている。それに4本腕に背中から2本の腕がはえている。

 通常のサイクロプスは、2本しか腕がなく、背中に生えているとは思わなかった。

 「コロ…ス…ママが…みてくれる…」

 ママ?やはりサイクロプスを仕向けている者がいるのか。別に敵がいる。

サイクロプスは、さらに強く握ってくる。

「こいつ!」

ロザリオで反撃しようにも握られた際に落としたらしく、手元になかった。

サイクロプスは亜人種(デミ・ヒューマン)。『呪い』や魔力を持っていないため、『光』の浄化が効かないが、ここまで『呪い』でより異形(デミ)化している。おそらく魔族(アビス)に近い変化をしている。異形(デミ)化し、さらに『呪い』を受けていたら、魔族(アビス)化する傾向がある。魔力を持っていれば、『光』が効く。

 白い炎を体から生み出し、サイクロプスの手を浄化させる。

「アツイ!」

 やはり『光』が効いている。しかし、サイクロプスが手を高く挙げ、勢いよく投げ込もうとした時だった。

 サイクロプスの手首が切れた。

「ああああああああああああ!」

 その衝撃でサイクロプスはジャンヌを手放す。

 ジャンヌは地面に落ちることなかった。ふと顔を上げれば、アキセに抱きかかえていた。

「あんた…」

「どう?俺に抱きかかえる気分は?」

 ゴツっと顔に一発殴る。その衝撃でアキセはジャンヌを抱えたまま後ろに倒れる。

「せっかく助けたのに…」

「この前の仕返し」

 この前とは、魔法少女ペルチェの件。尋問の仕返しに彼女をたぶらかし、襲わせたことである。

「まだ根に持ってたの・・・」

「ええ。まあ助けてくれたから、これくらいにしてあげる」

 ジャンヌは立ち上がる。

「イタイイタイイタイイタイ!」

 サイクロプスは、アキセの魔術で手首が切られ、大げさに泣く子供のように痛がっていた。

「まさかとは思うけど、あんたが仕向けたわけ?」

 アキセを疑う。

「いやいや。違いますって」

 アキセも起き上がる。

「なんでもかんでも俺を疑うなよ」

「前科があるからよ」

「そこまで言うとこれ捨てるぞ」

 先ほど落としたロザリオをアキセが見せびらかすが、すぐさま奪い取る。

「あれ・・・」

 目にも留まらない速さでロザリオを取り戻したことにアキセが目を見開く。

「一応、ありがとう」

 ぶっきらぼうに礼を返す。

「可愛げがない」

 アキセは嫌味に返した。

 その時だった。

「やれやれ。サイクロプスも役に立ちませんね」

 別の男の声がした。

 木の陰から現れたのは、体が細く、眼鏡をかけた黒髪の男だった。

 いかにも気取っていそうな男だった。

「また現れた・・・」

 サイクロプス、アキセに敵と思われる眼鏡の男と次々に現れた。うんざりする。

「勘弁してよ。これ以上雑魚を相手する暇がないんだけど」

「そーだそーだ。雑魚は、土の底まで引っ込んでそのまま息絶えろ」

 アキセは毒を吐く。

 男は目を吊り上げる。

「先ほどサイクロプスに苦戦した聖女とは思いませんね」

「あれは、油断しただけよ」

 ジャンヌは反抗していう。

「それに」と眼鏡をかけていた男はいう。

「いつから聖女と組んだんだ?ガルム・・・」

 眼鏡の男は、聴いたことない名を放つ。

「ガルム?」

 ジャンヌはその名に首をかしげる。

「あ~違った。今はアキセ・リーガンでしたか」

「は?」

「おや、知らないのですか」

 男は答える。

「聖女の横でヘラヘラしている彼、僕と同じ。魔女の子供リリムなんですよ」


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