第4話 魔法少女③
アキセは近くの町に逃げ、食堂でジャンヌから隠れることにした。
「ジャンヌもそうだか。もう何、あの魔女・・・」
カウンターに座り、手を組み、頭を抱えていた。
様々な魔女がいるとはいえ、今回の魔女はまだこれで変わっていた。魔女には善悪の考えがない。常識がなく、ただ思いのままに生きている。
今回の魔女は、正義の味方と言っている。正義と語っている奴ほど、まともではない。関わらないようにしよう。それにジャンヌは正体を探っている。また会えば、あの拷問で済まない。殺される。しばらくはジャンヌに会わないようにしよう。
でもとりあえずは、
「店長。俺に酒」
酒で気を晴らそうと注文をしようとした時だった。
「いたああああああああああ」
店の中で反響するほどの声を出す女の声がした。
アキセはジャンヌだと思い、身を固まってしまう。恐る恐る振り替えるとそこには茶色の少女がアキセを睨んでいた。
「どうしたのかい?お嬢さん・・・」
ジャンヌではないことは安心したが、見知らぬ少女に対応が困る。
「もう私から離れちゃダメじゃん!」
彼女は知っているらしい。
「君、どこかで会ったかな?」
「あ!そうか今この姿だから分からないよね」
よく聞けば、声に聞き覚えがあった。ごく最近聞いたような声で見た少女といえばと思い出す。該当する少女がいた。
「え、君もしかしてペル・・・」
バン!
少女はアキセの腹にパンチをくらう。骨が折れるほど腹にめり込んでくる。
「ちょ・・・君・・・」
顔色が変わったアキセは、見た目とは違った重いパンチで、腹にきた痛みを抑える。
「それは秘密よ」
少女はかわいらしく、口の前に指を立てる。
「ちょっと場所変えましょ」
アキセの首元を掴み、椅子から引きずり降ろし、店を後にする。
アキセはあの時の魔法少女らしき少女に人通りの少ない場所に連れてこられる。
「君はあの時の魔女でいいのかな?」
呆れた声で少女を見る。
「魔法少女。綿花の魔法少女ベルチェ・ル・コトン」
言い換えられた。
「今は人間姿のベルちゃんよ。魔法少女は仮の姿が必要なの」
「あっそ」
魔法少女持論は、アキセに理解しがたいものだ。
魔女は人間の姿に変えることはできる。その際に『呪い』を調整しているため、人間と見分けがつかないので、名乗るまで気づけなかった。
「そういえば、名前訊いてなかった。君、名前なんて言うの?」
「あ~、俺・・・」
本名は避けておくか。後が怖いからだ。
「アレック」
「そう。アレック君。よろしく」
「なんでまた俺のところに来たんだ?」
「えっ?だってあの悪人を殺していないし。また襲ってくるかもしれないでしょ。君に」
「え?」
間抜けな声を出す。
悪人とはジャンヌのことだろうか。あの現場に見れば、ジャンヌが悪人だと思わざるのも仕方がないだろう。
「だから、あの悪人が殺すまで君を護衛するって言っているのよ」
「え?護衛?殺す?」
「そうだよ。殺すよ。悪いことした時点で死刑実行よ」
「さすが魔女の考えですわ」
魔女に常識はない。わが道を進む者。
「そういえば、あの悪人に拷問なんて何かあったの?」
ベルは、首をかしげて訊いてくる。
「あれは・・・あ」とアキセは思いついた。
そうだ、さっきの仕返しとしようと、口の端を上げる。
「助けて下さい!あの女に虐待されているんです!」
アキセは泣きじゃくる。
「虐待ですって!?」
ベルは絵にかいたような驚きをする。
「そうなんですよ!こっちは何もしていないのに殴ってきたりと蹴ってきたりとしてくるんです。やめてやめてって言っても止めてくれないし。可愛い顔をした悪女なんですぅ~」
大げさに演技をさせ、同情させる。
「そう、大変だったね」
ベルは優しく慰めてくる。よし、食いついた。あともう少し。
「どうかあの悪人を倒し、この世の中をよくしてください。魔法少女様!」
その言葉が効いたのが、ベルは嬉しそうだ。
正義の味方として頼まれたことに嬉しかったのだろう。
「分かった!この綿花の魔法少女ペルチェちゃんが成敗してあげるわ!」
アキセは思惑通りにいったことに小さく笑う。




