第4話 魔法少女①
「私ね。いい加減に学習しなきゃって思うの。最近の魔女狩りはなぜこんなに面倒くさくなっているのか」
聖女であるジャンヌは目をつぶり、今までのことを思い返す。
「利用され、裏切られ、おまけに噛み乱され、本当に苦労したわ。なので、これから私が楽に生きるために、さっさと死んでください」
ジャンヌは、椅子に縛られているアキセにロザリオを向けていた。
「いやいや、待って!待ってください!」
「待つか!最初からこうするべきだったわ」
「てか、拷問なんて、聖女がやることか!」
「はあ!」
ジャンヌは顔を歪めながら、アキセを見下ろす。
「何を言っているのか・し・ら。ちゃんと聖女として、悪事を働く愚か者に正義の鉄槌を与えようとしているじゃないの。何も間違っていないわ」
「普段は聖女って言えば、嫌がるくせに変なところで聖女の特権使うな。職権濫用か」
「うるさい」
ジャンヌは怒声を上げる。
「まあ、あんな手に引っかかったわね」
あの時を思い出す。
数時間前。
森と平野で歩いていた時だった。
あれからアキセは姿を見ていない。しょくあいの魔女の件で思惑に気づいたからだ。いざ探すと見つからない。そこでジャンヌは別の手段を使う。
「あ~あ。アキセに会えなくて、寂しい」
愛おしくアキセの名を使った瞬間。
「呼んだ」
アキセは呑気に目の前に現れるも、地面に足が触れたとたんに地面が割れる。
「え?」
叫びと共にそのまま穴の奥へと落ちていった。
作戦が思い通りにいったことにジャンヌはにやつく。
現在。
「俺のしたことか・・・初めて名前を呼ばれたからあまりへの嬉しさに体が勝手に・・・」
「こんな簡単に捕まるとは私も思わなかったわよ。あんなこともあったのに」
正体を明かすために魔女を利用し、多少痛い目にあっても、名前を呼んだだけで現れるとは、アキセの知能が疑わしくなった。
「さて。いい機会だし、いろいろと聞かせてもらいましょうか」
ジャンヌはアキセをにらみつける。
しょくあいの魔女グレモリー・アムールのことを思い出す。グレモリーは、人間しか食べられない魔女。アキセを齧っただけで苦しませた。アキセがただの人間でないことは明らかになった。ただグレモリーがなぜ人間でないことに気づかずに食べてしまったのか。それにグレモリーが言っていたあの女とは誰のことだろうか。
ジャンヌはその答えを見つけるため、こうしてアキセを捕まえた。
「単刀直入に言う。あんた、人間と魔族のハーフでしょ」
アキセは表情を変えることなく黙り込む。
「まず、メドゥーサの件。毒を抜いたあの力を見て確信した。どう考えても人間ができる技じゃない…」
魔術であれば、陣や記号を描く必要がある。だか、そのような仕草はなかった。
「あの力は奪う力」
決定打に言うが、アキセは黙り込む。
「触ったものは奪い取れるといったところかな。エリザベートの時。『光』がなくなったのは、あんたと握った時。そして私を鎖から外そうとした時に手に触れて、『光』が戻った」
「それだとおかしいんじゃないのか。魔力を使ったとしたら、『光』で浄化されて使えないんじゃないのか」
魔力は『呪い』の抗体を持ち、潜在能力を引き上げた力。元を辿れば『呪い』であるため、『光』で浄化される。
「そうね」
ジャンヌは思いつくことがあった。
「あと考えられるとしたら、『光』の抗体かしら」
「へ~」
「人間が『呪い』から生き残るために抗体を得たように、魔女や魔族にも『光』に対する抗体を持っている。だからあの魔力にも『光』の抗体を持っていたから、奪えた」
この世界は黒女神が放たれた『呪い』が広がっている。その環境になじむため、生き物は『呪い』に抗体を持つようになった。
その逆に魔女や魔族でも『光』に抗体を持つものも現れでも不思議ではない。
「私の推測はどうかしら」
ジャンヌの推測にアキセはどう答えるのか見ものだった。
アキセは溜息を吐く。
「君は鋭いねえ~。2回しか見せていないのに。ここまで当てられるとはね」
「じゃあ、私の推測は当たっているね」
「まあね。俺の魔力は結構珍しいだろ。あまり知られるといろいろと狙われるし、面倒くさくなるからな」
「ふ~ん」
「さて、ネタ晴らしはしただろ。これで終わりだったら・・・」
「はあ、誰か終わったっていったかしら」
ジャンヌは不適な笑みを見せる。
「え…」
アキセは冷汗をかく。
「あんたが魔族の血が流れて、魔力が奪う力。戦闘向きでないから魔術を覚えたのは分かる。ただ。その魔族の血が何なのかしらね」
ジャンヌは目を鋭くする。
「う~それはどうしようかな。聞いたら驚くと思うし」
「へ~、なんで私が驚かなきゃいけないわけ」
「どうしようかな~」
シュ!
アキセのすぐ横で小さな刃物が通り、後ろの壁に刺さる。
アキセは一滴の汗が流れる。
「あら、ごめんなさい。手が滑っちゃった。危うく殺すところだった。私。じらすの嫌いなのよ」
「どこから刃物を出した?」
「話せ」
「そこまで脅されると話せるものも話せないぞ」
「いいから話せ」
「ヤダ」
さっさと話してくれない。呆れて溜息を吐く。
「もういいわ。一番の疑問は解決したし、今後のことを考えたら、死んでもらうわ」
ジャンヌが殺意を込めた目で見つめ、ロザリオに光の刃を作り出す。
「おいおい、魔女みたいなことをするなよ。聖女だろ。慈悲を下さる人だろう」
「そんな聖女知らん。男なら覚悟を決めろ!」
ロザリオを上げる。
「いや、そんな覚悟いらないから!」
「死ね!」
「いやーやめて!」
アキセが叫んだとたんに、ドアが大きく開く音がした。
視線を向ければ、そこに人影が映っていた。
「ちょっと待った!」
少女の声がした。
「何の罪のない人間を監禁し、拷問するなんて、まさに悪人!すなわちこの世にいてはいけない厄介物。この綿花の魔法少女ペルチェ・ル・コトンが正義の鉄槌を与えちゃうぞ!キラ!」
よく分からないセリフを放ち、ペルチェと言った少女を見て、唖然としてしまったジャンヌとアキセだった。




