第3話 喰愛の魔女④
ジャンヌは、町である魔女の噂を聞いた。
その魔女と恋としたら、食べられるという。
人間を食する魔女はよくいる。その中でも人間しか食べられない魔女がいると思い出し、あることを閃く。
「人間を食べる魔女って聞いてさ。どうやら、今回の魔女は人間以外食べられないタイプのようね」
「てことは…」
アキセも察したようだ。
「まさか・・・」
「そう。ためさせて頂きました」
ジャンヌは笑顔で返す。
「つまり、あんたはただの人間じゃないってことが確かめられたわ。これで謎は一つ解けてスッキリ」
「じゃねーだろ!それが聖女のやることか!人間を助けるのが聖女だろ!」
はあ、ジャンヌはにらみつけてきた。
「あんたは、その人間の中に入っていないから。タイ・ショウ・ガイ!」
「はあ!助けてやっているのに、恩を仇で返しやがって!」
「おかしいな~私の記憶の中では、敵に売ったり、勝手に乱したりしか思い出せないけど」
「あれは、俺なりの気遣いです」
「ウソつけ!」
アキセに怒鳴った。
アキセに憂さ晴らしをしたので、本題に入る。
「さてと、ストレス発散したし、結果も分かったことだし。さっさと生意気な魔女を殺して、尋問の続きとしましょうか」
ジャンヌは、光の刃を作ったロザリオをもがき苦しんでいる魔女に向ける。
「え、まだこの状態が続くの・・・」
アキセがいう。
「よくも・・・よくも・・・」
グレモリーが立ち上がる。顔から焼ける音がし、蒸気が発生していた。
「だましたなああ」
振り返ったグレモリーの口の周りの皮が破れ、豚の鼻が露わする。
「なるほど。それがあんたの正体ね」
「人間じゃない・・・あの女のにおいがする・・・」
「あの女・・・」
誰のことだろうか。
後からモノ音がした。振り返れば、いつの間にか縄を解いたアキセが逃げ出そうとしたところだった。
「あ!いつの間に!」
「おっと!」
肉が引き裂く音がした。その音の正体はグレモリーからだった。
「逃がさない・・・殺してやる・・・無残に殺してやる!」
グレモリーは、みるみる人から獣の姿に変えていく。
「ヤバ・・・」
冷や汗をかく。
ぶひいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!
廃れた小さな屋敷から巨大な豚が大きく鳴き叫ぶ。夜の静かな森が揺れ動くほど響いていた。よく見れば豚の足がムカデのように伸びた手になって気持ち悪い。
「あんなにでかくなるなんて・・・」
近くの木の陰で隠れているジャンヌは、大きくなった豚を見ていた。
屋敷が潰される前に脱出に成功していた。
グレモリーは、鼻をひくひくさせ、周囲を見ている。
「探しているのか。そういえばあの元凶どこにいった?」
ジャンヌも探してもアキセは見当たらなかった。
グレモリーは見つけたのか、動きだす。
「あっちにいるな、元凶」
「やべぇ。こっちにくる」
アキセは、木の陰から迫ってくるグレモリーを見ていた。
上着を召喚し、着替えていた。グレモリーに食べられた肩の痛みや血も流れ、肩を抑える。
「おまけに快晴で月が出でいるから、ろくに魔術使えねえし」
月から出る『光』によって、『呪い』の濃度が低くなっている。魔術は使えなくないが、威力が弱い。使えるとしたら、グレモリーから出る『呪い』を利用するしかなかったが、あの巨大な豚と戦う気はない。
「さっさと逃げないと・・・」
アキセが動く瞬間、身動きが取れなくなった。それは、グレモリーがアキセを木丸ごと掴んでいたからだ。
「見つけたぞ!毒物!雑菌!有害物!」
グレモリーが切れたように言う。
「そんなに俺は汚くないが・・・」
「うるさい!」
グレモリーはさらに強く握る。木がきびきびと音が鳴る。
「ぐわ!」
体が締め付けられ、肩から血がさらに流れてくる。
「よくも騙したな!握りつぶす!」
グレモリーは、アキセを握りつぶそうとしたが。
「いったああああああああああああああい!」
グレモリーの悲鳴が響く。
その衝動で握った手が緩んだ瞬間、唐突にアキセが引っ張られ、グレモリーの距離を取った木陰に隠れる。
顔を見上げれば、ジャンヌが立っていた。
ジャンヌはあの時グレモリーの手首を切り、手が緩んだ隙にアキセを引っ張ったのだろう。
「死にたくなければ協力しろ」
聖女とは思わない乱暴なセリフだった。
「そこは大丈夫って心配かけるところじゃないの?」
「さよなら」
「分かった!分かった!助けてください!」
「最初から素直に言えばいいもの。魔術は使える?」
「まあなんとか。あの魔女の『呪い』を使えば。作戦はあるのか?」
ジャンヌは、口の端を上げる。悪だくみをする顔だった。
「今夜は快晴で月が出でいるのよ。たっぷりうっぷんを晴らしてやる」
モナの時の鬱憤がそれなりに溜まっていたようだ。




