第13話 再出発①
目を覚めれば、いつもの白い部屋だった。
「あ~またこの部屋か」
ジャンヌは、気怠く起き上がる。
確か銀の街でラプラスが出現し、街をノレッジと紙に覆われたところまでは覚えている。その後は何も思い出さない。いつの間にか気絶したそうだ。
「やっと起きたのか」
部屋にアガタがいた。
「アガタさんが私を?」
「そうだよ。イヴ様から聞いた時は驚いたよ。騎士団に連行されたって」
アガタが言う。
「でもよかった。救出許可が入って」
教会に連行された聖女の救出は許されていない。
過去に聖女を送ったが、教会に洗脳された聖女と戦わせるなど策略により、逆に捕まること何度もあったからだった。
アガタも助けたかった聖女もいたのだろう。救出許可を下りたということはあまりないこと。つまり。
「許可もらえたというのは・・・」
「銀の街はラプラスに滅ぼされたからだと思うけど」
やはりラプラスは、銀の街の技術や知恵を奪い、街を滅ぼした。だから、聖女の救出を許可したのだろう。
「そこは魔女に感謝するしかないかもな」
認めたくないが、素直に受けとめるしかない。
アガタは部屋の扉の前に立つ。
「イヴ様をお呼びする」
「アガタさん」
アガタが開けようとした時にジャンヌは引き止める。
「私と他に聖女はいませんでしたか」
「もう一人いた聖女なら大丈夫。まだ部屋で寝ている」
それだけで安心した。
「救出に言った時、私とノエルだけでしたか?」
「そうだったよ。二人だけだった」
アガタは部屋を出る。
二人だけ。つまりアキセはいないということ。
ノエルから宝石心臓を奪った手は火傷のように皮を焼け、銀の血をまともに浴びた。重症な怪我を負っている。普段なら死んでも構わないが、まだ死んでは困る。
――どうせ、しぶこく生きているだろう。
イヴは、ベッドの近くにある椅子の上で座る。
アガタは、イヴからノエルの様子を見に行かせた。
イヴに騎士団に連行されてからラプラスの知識の略奪まで話した。ジルやヴァルキリーのことも。
アキセに関してはその場にいたリリムと脱出図るために協力したことにしている。少し無理あるけど。
「そうだったのね」
イヴは納得してくれたようだ。
「人間の発想も時に怖いわね」
「本当に思います」
聖女の血を利用し、街からノレッジを守らせ、技術の向上に使わされた。
「だとしたら、もう力を受け継いだ。。長く先代の宝石心臓と接触していたからでしょう。町を包み込むほどの血を数年、垂れ流していた。今までは、感情を希薄していたからどうにかできた・・・目覚めた時はどうなるか」
「それでは・・・あの子は・・・」
安心させるようにイヴは笑う。
「以前にも似た子はいたわ。大丈夫。乱れた『光』を調整したから、あの子も制御ができる」
「なら、よかったです」
本当に。
「次の話をしてもいいかしら。そのリリムについて」
やはり訊いてくるか。
「そのリリムって以前言ってた子?」
「違います!」
反射的に言ってしまった。本当は組みたくないけど。
「そう。その割には、一緒にいることは多いようだけど」
「もしかして、ご存知でしたか?」
「ええ。全部ではないわ。確かに魔族と組むのは、禁止されていないけど」
聖女は、『光』を調整できても微量ながら『光』を放出している。そのため、『呪い』や魔力を感知することができない。その補助として魔族と組むのは禁止されていない。
「そのリリムが宝石心臓を奪えるほどの魔力の抗体を持っているとしたら、少し危険ね」
「驚かないんですね」
以外に驚かない。コルンの発明品を使ったとはいえ、宝石心臓を奪えるほどの光の抗体を持っている。おそらく魔力の中でも珍しい方だ。
「過去にも似たような者がいたからよ。無駄に長生きはしていないわ。その時は、危険とみなしたら抹殺したけど、あなたもそうするつもりだったの?」
「はい」と即答した。その内やるかもしれない。
「なら、そのリリムの監視は任せようかしら」
どさくさに面倒な指示をもらってしまった。
「私からも訊いてもいいですか」
「何かしら」
「ヴァルキリーのことはどこまでご存知ですか」
イヴは直接指示があった場合、イヴの使者である白い鳥を作り、直接伝えてくる。つまり、聖女の現状位置を知っているということ。
「生死は分かるわ」
「では・・・」
「知ってあなたはどうするつもりだったのかしら」
イヴは真剣な眼差しで見つめる。
「追放した聖女は、追及しないことは知っています。私も教会に関わりたくないから、もし生きていたとしても助けにはいかないと思います。だた死にかけたヴァルキリーを改造され、人形になるなんて思いませんよ。しかもジルに改造されるなんて」
洗脳され操られている聖女はよく聞く。ヴァルキリーの場合、もう完全に意思を失い、人形になってしまった。
「ジルは生かしてはいけない。多くの聖女を殺したんです。ヴァルキリーの想いを踏みにじり、ルチアさんのことも」
「そういえば、ルチアのことで話してないことがあるの」
「え・・・」
その発言に言葉を失った。
「ルチアがなぜ教会に捕まったのか話してなかったわね」
「それは・・・」
その時扉が開いた。
アガタが部屋に入ってきた。
「イヴ様。来てください。あの子が目覚めました」




