第13話 再出発②
ジャンヌは一番に駆け寄る。
部屋の外まで銀の血が溢れていた。
部屋をのぞけば、部屋中が銀色に染まっていた。部屋の隅でノエルは布団を巻いて怯えていた。いまでも体中から銀の血が溢れている。
「来ないで・・・」
ノエルが怯えている。
「来ないで・・・」
ジャンヌはノエルに近づく。
「誰?」
記憶を失っている。
「私のこと覚えていないの?」
ジルの麻酔と宝石心臓に入れられていたからだろうか。
「誰ですか・・・ここはどこですか・・・」
ノエルが体を震えている。
何もしらない場所に連れ込まれ、怖がっているのだろう。
「ここは聖女の地よ」
「聖女の地?聖女様やイヴ様やマリア様がいらっしゃるんですか?」
教会で教わったのだろうか。
「ええ。私が天光の聖女イヴよ」
イヴが部屋に入り、ノエルの元へ寄る。
「イヴ様・・・」
「あなたは、聖女としてジャンヌとアガタがここに連れてきたんですよ」
「私・・・本当に聖女になったんですね・・・でも」
「まだ聖女としては未熟よ。でもあなたなら扱える。そのためにジャンヌがここに連れてきたかったんでしょ」
ん?
「ジャンヌ」
イヴが恐喝な笑顔を見せる。その笑顔で察してしまった。
「この子の面倒を見なさい」
やはり。
「そうね。あなたが戦闘までの面倒とは言わないわ。修行はこっちでやるから。あなたのやり方をまねされたくないから。せめて、その子がなじむまでならいいわよ」
イヴの思惑は分かっている。
ジャンヌを大人しくさせるための提案。
今すぐにジルの行方を知りたいところだが、今のノエルも心配だ。不安ですぐに力が暴走する。
考えた果て。
「分かりました・・・この子がなじむまでなら」
ノエルが嬉しかったのか、強く抱き着く。
「よかったわね。キアラ」
「キアラ?」
ノエルは首をかしげる。
「聖女としての新しい名前よ」
以前の名を捨て、聖女として名をイヴやマリアから新しい名を与える。
イヴは、ノエルにキアラと名前を与え、立ち去った。
アキセは、聖女の銀の血を浴びてしまい、重傷を負っていた。皮が破れ、体中が火に溶かれていくように熱い。おまけにジルが打った弾の中に銀の水が入っているようだ。内臓からも溶かされているようで苦しい。
ここはどこだ。窓一つもない石壁の部屋だった。
確かラプラスが呪力を発動したまでは覚えている。その後は全く思い出せない。
逃げ出そうにも、体中に痛みが走って動けない。
扉が開いた。
「よかった。生きてて」
書館の魔女ラプラス・ライプラーが見下ろす。
「あなたが噂に聞いたリリムね」
扉から開いた本が鳥のように飛び、座り込むラプラスを椅子として支える。
「俺に・・・何の用だ・・・」
話すだけでも痛む。
「その手を見たいだけ」
ラプラスは答える。
「手?」
片手は、火傷に負ったように皮がむけ、赤くなっている。
魔力を知っている。隠してはいたが、伝説級の魔女となれば、どこかで分かってしまうのだろう。
「なんだ・・・伝説級の魔女に・・・手厚い看病してくれないのかよ」
「何期待しているのかしら。頭の中は性欲しか回らないのもリリスの血が濃い証拠ね」
その時だった。
「ラプラス!こんなところにいた!」
以前にもあったラプラスの名を語った魔女のルシア・ファンタジアだ。
「あ!確か、ジャンヌとか一緒にいた奴でしょ」
ルシアは、アキセに指を指して言う。
「何?拷問?」
「なんでそう思うの」
ラプラスが睨みつける。
「ごめんなさーい」とルシアは素直に謝る。
「私の部屋を汚したくなかったから、この部屋に置いたの」
「ふ~ん」
興味なさそうに返すルシア。
「そのリリムどうするの?」
ルシアが尋ねる。聞きたくないことを。
「もう用事終わった」
いやな予感がした。
「私を失望させないで」
ラプラスが指を鳴らす。
その意味を聞こうにも穴が開き、底へ落とされる。




