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天使の憂鬱②

シリアス皆無です。

少し天界の設定などの話を書きました。

 

 今日も今日とて一生懸命に世界の秩序と平和の為に頑張っている人達が天界にいます。

 

 天使です。

 

 そんな天使達のトップに立つ四人の大天使達と天界の頂点に君臨する神様は毎日頑張っていました。

 日頃会議を行い、悪魔たちとの戦いの為にどのような準備と対策をすればいいかなどを話し合っています。

 

 天界にいる神様と大天使の人達の下で、仕事をしている天使の人達もいます。

 その人達は、天界の事務処理や軍事対策などの仕事を毎日せっせと頑張っています。

 その中で世界に蔓延る悪魔達の事を調べる諜報の仕事についている天使がいます。

 

 その天使の名前はアラエル。

 鳥の名を持つアラエルさんは常日頃から鳥に扮して世界を飛び回っています。

 

 

 

 今回はアラエルさんが、ある物を持ってきたことで起きた事件のお話です。

 

 

 

 

 

「ミカエル様。先日の調査報告の資料です」

 

「アラエルか、ご苦労。それで悪魔の関わりなどは確認出来たか?」

 

 どうやらアラエルさんがミカエルさんに報告をしに来たようです。

 

「いえ、例の調査検体は悪魔との関係性はありませんでした。歴とした猿の魔物です」

 

「そうか。魔物の名称などは確認とれたか?」

 

「猿の魔物は恐らく狒々種の変種または亜種かと思われます。特異な能力を持っておりますが、地上世界で起こり得るに十分な確証も得れました。それについては報告書をお読みください」

 

 アラエルさんの今回の調査内容は、地上のとある小さな島に生息しているとされる猿の魔物の生態調査と悪魔との関係性の有無だったそうです。

 

「わかった。では後で読ませてもらう。

  ん? その後ろにある箱はなんだ?」

 

 ミカエルさんは、調査報告にしっかりと答えます。そして、アラエルさんの後ろにある何かが入っていると思われる箱が気になるようです。

 

「あっ! こちら今回の調査中に手に入れることが出来ました物品でございます。地面に埋まっている箱の中に沢山の地上のお酒がありまして」

 

 アラエルさんが、後ろにある箱の中身をミカエルさんに見せます。どうやら今回のお仕事の途中で手にいれた物みたいです。

 

「またお前は…勝手に地上の物を持って来て…このお酒がなくなってて困る人がいるかも知れないのだぞ?」

 

「いえ、人間一人しか住んでおりませんでしたし、このお酒も恐らく今回の調査対象の猿の魔物の隠した物だと思われまして…魔物が飲むにしては勿体無いと…」

 

 アラエルさんが、このお酒は猿の魔物の物と言います。そして、猿の魔物が飲むにしては、とても高級品であるから持って帰って来ちゃったと。

 

「それで、こちらのお酒を大天使様達に献上致そうと思いまして………」

 

 どうやらアラエルさんは、いつも大変なお仕事をしているであろう大天使達の苦労を労おうと思い、お酒を持ってきたようです。勝手に地上の物を持ってきていますが、上司想いの大変出来た部下です。

 

 

「…はぁ…わかったわかった。その箱は受け取る。しかし、今回の様に勝手に所有者の分からない物は持ってくるなよ。もしも人間や魔族の物であり、なくなってるのに気づかれると騒動が起きるからな」

 

「そ…そうですよね…すいません。以後気をつけます…」

 

 ミカエルさんもアラエルさんの気持ちがわかった様です。注意はしていますが、今回は受け取ることにしました。

 

「勝手に天使が地上の物を持って来て、それが周知に知られたりするとこの間の騒動が起きてしまう。私たちの使命を忘れてはいけないぞ?」

 

 天使の使命。

 その一つに地上世界への完全非介入があります。悪魔や世界の理を崩壊させる者が出ない限り地上世界に介入してはいけないと言うことです。

 しかし、この使命が実際の所かなり曖昧であり、他の天使の人達は人間や魔族にばれないように地上の嗜好品やらをとってきていました。ばれなければいいんです。物は言い様です。

 

「あ…この間の神力増量騒動ですよね? でも、結果的にみれば地上側と天界側がどちらもwin-winであった筈では…?」

 

 アラエルさんが質問します。

 神力増量騒動とは、人間の国のひとつアルカディア国で、とある人間達を天使と勘違いした国民が毎日お祈りをしてしまう事により、天界に住む人達の力の源、神力がとんでもなく増えてしまった事件の事です。

 

「確かにそこだけ見ればそうなる。

 だが、先を見るのだ。我々は使命の名の下でしか地上の問題に介入できない。端的に言うであれば、今回の神力を齎す国が崩壊の危機になったとしても使命に反するのであれば我らはただ傍観するだけだ。」

 

 ミカエルさんは説明します。

 天使によって国の危機を救ってくれたと勘違いしている人達に、また危機が迫ったすると。そうなれば、その国の人達は天使に助けをこうであろうと説明します。

 

「なるほど。そうなってしまったら今の神力の量が激減してしまうと…ミカエル様はそう言いたいのですね?」

 

「そうだ。だから私たちは問題として見たのだ。」

 

 アラエルさんは理解しました。

 もし崩壊の危機になった国の人達が必死に祈った結果、天使が助けに来なかったらどう思うか。

 答えは簡単です。

 今度は掌返しで天使の存在を真っ向から否定する人になってしまう可能性があると言うことでした。

 

「わかりました。次からなるべく地上の物はとって来ない様にします。」

 

「ああ。まぁ、実際の所神様もそこの所は黙認してるから事件を起こさなければいいぞ。節度を弁える事が大事だ。息抜きは必要だからな」

 

 アラエルさんにミカエルさんがフォローを入れます。神様だって大天使達だって嗜好品で楽しみたい時があるのです。仕方ないね。

 

「ミカエル様にそう言ってもらえて感謝の極みです。では私はこれで失礼します。

 この後にラミエルとパラキエルの二人と少し予定がありますので」

 

「下がっていいぞ。あとな、お前のこのあとの予定なども言わなくていい。どうせまたラファエルの事であろう?」

 

 わざわざこの後の予定を言うアラエルさんにミカエルさんが答えます。

 

「へへへ…すいません。どうしても楽しみで。ではこれで」

 

「ほどほどにしておけよ。ラファエルにばれたらお前達変な目で見られるぞ?」

 

 ニヤニヤと笑いながらアラエルさんがミカエルさんから走って離れて行きます。この後のご予定がとても楽しみな様です。

 走り去りながらアラエルさんが何かを言っています。

 

「侮蔑の目で見られるなら、それもまた一興です!!」

 

 捨て台詞を言ってアラエルさんが見えなくなります。

 ミカエルさんはそんな見えなくなったアラエルさんの事を思い、肩を下げます。

 

「あれさえなければ…とても優秀な部下なのだがな…なんでこうなった…」

 

 アラエルさんはとても熱心に仕事をして、他の天使達とも交流を取り、とても社交的で有能なのです。しかし一つだけ問題があります。

 

 それはラファエルさんに大変ご執心の事。

 

 天使には性別があります。

 それは神の手によって作り出された存在だからです。雌雄同一などと言う伝承もありますが、ちゃんと別れています。特に考えもなく神様が決めました。

 

 男と女に別れている天使達は、創生の頃であるなら性別の事などを特に気にしていませんでした。

 しかし、人間魔族の文化などを学ぶうちに俗世に染まって行ってしまったのです。

 そのうちの一つに、綺麗な女性を崇拝する事があります。崇拝されるべき天使が崇拝するなど冗談であって欲しい事実であるのですが、現に天界に存在しています。

 その中の一つに、大天使ラファエルさんを崇拝する天使達がいます。アラエルさんはその崇拝している人達の一人なのです。

 

 日々、同志達と熱く討論をしているアラエルさんの事をミカエルさんはしっかりと理解していました。

 

「あれさえなければ……まぁいいか。仕事に支障がでている様でもないしな」

 

 ミカエルさんは、自分に語りかけながらアラエルさんの持ってきてくれた地上のお酒が入っている箱を持って、他の大天使達と飲もうとみんながいると思われる場所に向かいます。

 

 *

 

「お!ミカエル!その箱なんだ?」

「お仕事お疲れ様です。今日は少し遅かったですね?」

「今日はソフィエルから貰った野菜がたくさんありますよ」

 

 ミカエルさんが向かった場所は、ウリエルさんの家でした。中には他の大天使のウリエルさん、ラファエルさん、ガブリエルさんがいます。

 大天使の地位にいる四人が、他の天使達がいるような場所にいくと騒ぎが起きてしまうので、いつもローテーションで集まる場所を変えています。

 ソフィエルさんはガブリエルさんの部下になります。野菜などの作物を栽培する天使です。本来であれば豊潤を地上に与える天使です。

 

「ああ、少しアラエルから仕事の報告を受けててな。あとこれアラエルからの差し入れだ」

 

 ミカエルさんは遅かった理由を言いながら、両手で抱えている箱を三人に見えるようにします。

 

「アラエルからの差し入れか。お前は本当にいい部下持ってるよな。俺の部下にも見習って欲しい…」

「あら!?こんなに沢山の地上のお酒!」

「これ大丈夫なんですか?問題とかありませんよね?」

 

 ガブリエルさんがお酒の事に質問します。

 やっぱり前回の騒動の事もあり、少し気になるようです。

 

「大丈夫大丈夫。アラエルの話だと魔物が隠していたお酒みたいだから。問題はないだろう」

 

 ミカエルさんが説明します。

 

「なら大丈夫だな!俺、グラス出しておく」

「うーん。確証がないですけど…まぁ大丈夫でしょうね」

「いざとなったら神様が何とかしてくれると思いますし。折角ですから頂きましょう」

 

 四人は特にお酒の元手を気にしない様で、早速飲むようです。お酒についてるタグを気にしないで。

 

 *

 

「今日のつまみは野菜チップスか」

 

「そうですよーソフィエルの作った美味しい野菜の味を楽しむならやっぱりこれが一番かと思いまして」

 

「話はあとあと。とりあえず乾杯しておこうぜ」

 

「そうですね。このお酒とっても芳醇な香りがします。とっても美味しそうです」

 

 四人はテーブルに座って、今日の疲れを労うためにお酒とおつまみを交えてお喋りをする様です。これも人間魔族の真似事です。

 人間に加担している天使ですが、魔族の事もちゃんと見ています。何故魔族に加担しないのかと言うと、魔族が天使と神を毛嫌いしているからです。その話は別の機会に。

 

「それでは、今日も一日お疲れ様でした!乾杯!」

 

「「「かんぱーい」」」

 

 ラファエルさんが音頭をとり、四人はお酒を飲みます。

 

「ん〜やっぱり地上のお酒は美味しいな」

「すっげぇ濃いな。これは何のお酒だ?」

「多分梨だと思うわよ。甘みが深い種類の梨を使ったお酒ね」

「とっても美味しいです!」

 

 四人はアラエルさんから貰ったお酒の味にどっぷり浸っています。どうやら琴線に触れたようです。

 

「それにしてもアラエルの奴は偉いな。俺だったら一人で飲んでるぞ」

「確かにこれだけ美味しいお酒なら独り占めもしちゃうかも知れないわね」

「一人で飲むより皆で飲んだ方が美味しいですよ」

 

 ミカエルさんに三人が言います。

 

「俺もまさか貰えると思わなくてな。それにしても美味しいな。地上のどこの酒だ?」

 

 ミカエルさんがお酒の詳細、誰が作ったのか気になり出します。

 

 

 それは遅すぎた確認でした。

 

 

「魔物が人間か魔族から盗んだみたいだったな。これ作った人は、地上でも有名な人なんじゃないか?」

「そうね。是非お酒を作った人に感謝の神託を与えたくなるわね!」

「ラファエル、そんな簡単に神託与えたら大変な事になっちゃうよ」

 

 ミカエルさんの疑問に三人が答えます。

 ミカエルさんはお酒の入った瓶についてあるタグを見ます。

 

「ん?何も書いてないな…なんだこのタグは?」

 

 お酒に括り付けられている紐についている紙には何も書かれていませんでした。

 

「ミカエル、ちょっと貸してください」

「ん。わかった」

 

 ミカエルさんはガブリエルさんに酒瓶を渡します。

 

「このタグ二つ折りになってますね。わざわざ開かないとタグに書いてある事見れませんよ」

 

 ガブリエルさんがお酒についてるタグの事を説明しながら紙を開きます。

 

「え〜っと…何々?……………」

 

 ガブリエルさんがタグに書かれている事を読みます。

 

「なんて書いてある?」

「人間と魔族のどっち?」

「地上で有名な人?私たちも知ってる人だと面白いんだけど?」

 

 ガブリエルさんに三人が質問します。

 

「………」

 

 しかしガブリエルさんは答えません。

 そしてガタガタと椅子から転げ落ちそうになるほど震え始めます。

 

「え?ど…どうした!?」

「ガ…ガブちゃん!?大丈夫!?」

「ちょ…ちょっと俺に貸してみろよ。声に出して読んでやるって」

 

 ガブリエルさんの震えを止めようとラファエルさんが席を立ち、ウリエルさんが酒瓶を受け取ります。

 

「何々…え〜と…

『勝手に飲んだら許さないby伊吹(いぶき)』 …い…いぶき…」

 

「え…ちょ……」

「…は?」

「………」

 

 ウリエルさんの口から言われた言葉に、ウリエルさんも含め四人の顔から血の気が引きます。タグについてあるお酒の持ち主の人の名前にはしっかりとルビまでふってありました。

 

 このお酒の作った人が誰なのかを気になっていた四人のよく知る人物でした。そして、その人物がどんな人であるかも知っています。

 

 天界に住む人達なら誰でも知っている常識を説明しましょう。

 この世界、地上世界に住む人間魔族の人達にはそれぞれちゃんと名前があります。時々なかったり奪われたりしてしまいますが、時と場合によります。

 そんな世界に住む人達の中で、特に珍しい名前を持つ人達がいるのです。

 その人達は漢字と言われる特殊な文字を使い、名前に当てがっているのです。

 

 だから皆知っているのです。

 このお酒の持ち主が誰なのか知っているのです。

 

 

「…おい…やべぇよ」

「…やべぇどころの問題じゃないわよ…」

「…あの村人達のかよ…」

「それも…よりにもよって太刀の女性のですよ…」

 

 四人は一気に酔いが覚めたようです。

 そして、ウリエルさんの家で神様抜きの会議を始めます。

 

「これ俺達が持ってきたって暴露てるのか?」

 ウリエルさんが疑問を投げかけます。

 

「いや、天界まで取りにきてない事から暴露てないと思う」

 ミカエルさんが答えます。

 

「も…もし暴露たらどうするの?もう結構飲んじゃったわよ?」

 二桁に入るほどの量を飲んでしまった事にラファエルさんが質問します。

 

「わ…私に考えがあります…」

 ガブリエルさんがこの絶体絶命な状態に一筋の光をもたらします。

 

「「「なんだ!?」」」

 

 三人が即座にガブリエルさんに聞きます。

 

「少し…汚い手口ですが…よろしいですか?」

 

「「「無問題(もーまんたい)!!」」」

 

 打開策があるのであればすぐにでも使おうと思っているようです。

 

「えっと…タグを外して…残りのお酒を神様に献上しましょう…」

 

 ガブリエルさんが言います。大変外道な答えです。罪をなすりつけようと考えているのでしょう。

 

「それで決定」

「うん。反対する理由がないな」

「さすがガブちゃん!」

 

 三人が即座に了承します。

 自分たちの生みの親、天界の頂点に立つ神様に罪をなすりつける事を決めました。

 天使であるのに、正に悪魔の所業です。

 そこまで大天使達はこのお酒の持ち主を恐れているのです。神様よりも恐れているのです。仕方ないね。

 

「また斬られるの嫌だしな」

「私は斬られるよりも、叩き潰されるのが嫌だ」

「確かにそうね。私もあんな思いもう一度味わいたくない」

「で…では、早速神様に持って行きましょう!」

 

 四人は一旦ウリエルさんの家から出て、残りの酒瓶が入った箱を神様に持って行きます。

 

 *

 

 四人からお酒を貰った神様は大変喜び、四人に感謝の言葉を述べました。

 勿論、事の真相を神様は知りません。

 四人は冷や汗を流しながら空き瓶も神様の座する場所に隠して事の隠蔽を完璧に行いました。

 

 当のお酒の持ち主のいぶきさんは、自分のお酒よりも美味しいお酒をもらっていた事と魔物が飲んだと思っているので、特に気にしてはいません。

 勿論そんな事を大天使達は知りません。

 

 こうして大天使達は襲い迫る危機を脱した四人は、ウリエルさんの家にあるお酒を飲みながらお話を再開します。

 お話の種は、最近の天界事情と例の村人達です。そんなこんなで大天使達は楽しんでいました。自分たちのした事など関係なしに。

 

 

 

 

 そして、後日四人の大天使はアラエルさんを呼びつけ、大変なお叱りを与えます。

 自分達の事を棚にあげて怒りました。

 アラエルさんは、怒られながらもラファエルさんの事を見て恍惚の笑みを浮かべていました。そんなアラエルさんを見て、ミカエルさんは深いため息をこぼしています。

 

 

 

 

 今日も天使さん達はある意味頑張っています。

 

 

 

 


天使達は人間魔族達の真似事をして過ごしています。お店なども今後出そうと思います。


天使の名前、設定などは活動報告に参考サイトを載せてあるのでそちらをご覧ください。


誤字脱字のご指摘、ご感想お待ちしております。

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