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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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82/88

EP 7

忘年会費の強制徴収に咽び泣く社畜と、ブラックフライデー独占&裏アカ粛清で純資産7億6,000万円へ!

 十一月上旬、立冬を過ぎた地方都市の朝は凛と張り詰めた冷気に包まれ、工場の周囲を取り囲む山々は鮮やかな紅葉から冬枯れの装いへと表情を変えつつあった。

 だが、正午のサイレンが鳴り響いた三晃紙器工業の第一工場・社員食堂の空気は、冬の寒風以上にドロドロとした怨嗟と悲鳴で埋め尽くされていた。

「……ぎゃあぁぁぁっ! 忘年会! まだ十一月の上旬なのに、職場の忘年会費【八千円】を今すぐ前金で払えってどんな強盗だよぉぉぉっ……!!」

 パイプ椅子を蹴倒して床に突っ伏し、班長から渡された集金袋の茶封筒を握りつぶして頭を打ちつけていたのは、同期採用四年目の山岸だった。

 今年で二十一歳になった山岸だが、作業着の下に着込んだ安物のフリースは毛玉だらけで、目の下には消えないドス黒い隈が三重に張り付いている。

 手元のテーブルには、スーパーの見切り品コーナーで買った【半額の素うどん】が、冷え切ったつゆに浸かってポツンと置かれていた。

「おい山岸、床で頭を打つな。埃が舞ってうどんに入るぞ」

 俺――倉科湊が、保温ランチジャーから熱々の豚汁と、母が持たせてくれた若鶏の治部煮と丹波の黒豆ご飯弁当を取り出しながら声をかけると、山岸は涙と鼻水を撒き散らして俺のズボンの裾へすがりついてきた。

「うどんに入ったって構うかよ倉科ぁぁぁっ!

 先月の灯油代高騰(一缶二千三百円)で、すでに一日三百円の極貧生活を送ってる俺に……

 班長が『おい山岸、十二月の部署忘年会の居酒屋を予約したから、キャンセル防止で会費八千円を今日中に集金な』って言ってきたんだぞ!?

 行きたくもねえ職場の説教飲み会に、なんで貴重な八千円を先払いしなきゃいけねえんだよ!

 さらに今週末はインフルエンザの予防接種代四千円、来月には車の冬用スタッドレスタイヤの履き替え工賃五千円……

 四年も真面目に働いて手取り十二万なのに、そこから八千円取られたら、今月の残りの食費……一日【百五十円】だぞ!?

 もやしを一袋買って水で煮て塩振って啜るしかねえじゃねえか!

 なんで工場で油まみれになって四年も耐えてる俺が、冬が来るたびに餓死寸前に追い詰められるんだよぉぉぉっ!!」

 周囲のベテラン工員たちも、手元の財布を覗き込みながら「忘年会の会費八千円は本当にキツいよな」「断ると職場で浮くし、ボーナス前にこの出費は胃に穴が空くよ」「灯油代も電気代も上がってるのに、付き合いの出費だけは昭和のままだな」と、力なくため息をついて安売りのカップ麺をすすっている。

 俺は小さく息を吐き出し、水筒の温かいほうじ茶を一口喉へと流し込んだ。

「山岸。中学生でもわかる、同調圧力の儀礼コストとサンクコスト効果の算数をしよう」

「算数なんか聞きたくねえ! 俺の八千円を返せ!」

「返せと言ってもお前が同調圧力に屈して財布を開いたんだ。

 そもそも、職場の忘年会という名の儀礼的行事は、若手にとって『上司の武勇伝や愚痴を聞かされ、気を使って酒を注ぎ、自腹で数千円をドブに捨てる【完全なるマイナス投資(ROIマイナス百%)】』だ。

 生活防衛資金すら枯渇している人間が、職場で浮くのを恐れて八千円を差し出し、一日百五十円のもやし生活を送る……。

 『みんなが払っているから』という思考停止で他人の価値観に小銭を毟り取られ続ける人間が、資本主義の檻から抜け出せる日など一生来ないんだよ」

「ぎゃあぁぁぁっ! 正論でもやしを喉に詰まらせるなよぉぉぉっ!!」

 耳を塞いで食堂の隅へと逃げ出していく山岸。

 山岸は震える指でスマホを取り出し、自暴自棄に画面をスクロールした。

「……あ、そういや倉科! 先月の内定式でワイングラス掲げてイキがってた、東京の大学四年組のエリートどもだけどさ……!

 いま、とんでもないパニックに陥ってるらしいぜ……!!」

「同級生がどうした?」

「ざまぁみろだぜ! 本物の地獄絵図だ!

 あいつらの内定先の大手企業各社から、来春の【初期配属予定先・内示通知】が内定者ポータルに届き始めたらしいんだけどさ……

 『本社経営企画一択w』ってイキがってたリーダー格のやつ、なんと【北関東の物流倉庫・現場ピッキング管理】に配属決定だってよ!

 別のやつも【東北支社のテレアポ新規開拓飛び込み部隊】だ!

 グループLINEで『なんで俺が倉庫なんだよ!?早慶出てるのに現場作業とか聞いてねえよ!』『内定式のアンケートで人事の悪口書いたのがバレたのか!?』って、狂乱状態で発狂してタイムラインが阿鼻叫喚だぜ!

 しかも、タワマンの内見を自慢してたやつも、家賃審査で『新卒の初任給手取り二十万じゃ入居不可』って門前払いされて、結局家賃六万円のボロ木造アパートしか借りられねえらしいし!

 あいつら……東京でエリート気取って俺たちを見下してた連中が、入社前から地方左遷とボロアパートに叩き落とされて泣き叫んでるのを見るのだけが……俺の唯一の心のストーブなんだよぉぉぉっ!!」

 他人の転落を唯一の暖房器具にして、自分の極貧をごまかそうとする山岸。

 だが、その山岸自身も、一日百五十円のもやし生活と忘年会費の恐怖に怯えて震えているのだ。

(山岸、お前には見えていないんだよ。

 東京の内定者どもが地方倉庫と飛び込み営業への配属内示に発狂し、お前が八千円の忘年会費に泣いている横で……

 あいつらにその残酷な配属先を宣告したAIの所有者であり、内定先企業の大株主である男が……

 目の前で豚汁をすすっている、この高卒四年目のライン工だという現実がな)

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百四十五日。

 前話(第81話)で、ふるさと納税メガプラットフォームと地方再生D2Cの独占により、確定総純資産は【7億400万円】を突破。

 運用総資産は十四億円を超えている。

 そして十一月――年末商戦の口火を切る世界最大のセールスイベント【ブラックフライデー&サイバーマンデーの先行仕掛け】と、東証プライム企業連合からの【内定者コンプライアンス管理・年間成果報酬の着金】が、今夜同時に炸裂する。

「定時で上がるぞ。今夜、俺たちの城はさらに新たな高みへ登りつめる」

 午後十七時零二分、定時退社。

 タイムカードをパチンと切った俺は、夕暮れの心地よい初冬の風を切り裂き、地方都市の駅前に構えたミナト・ホールディングスのオフィスへと自転車を疾走させた。

 ◇ ◇ ◇

 午後十七時三十分、合同会社ミナト・ホールディングスのオフィス。

 ダイキンの最新エアコンが静かに二十四度の快適な室温を保ち、ディフューザーからはペパーミントとベルガモット、そして上品な白檀と焼き林檎の甘やかなアロマがふわりと漂っていた。

「湊くん……! お帰りなさい!」

 扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。

 淡いスモーキーピンクの上質なカシミヤ混ハイネックリブニットに、清楚なオフホワイトのロングキルティングスカート。

 ショコラブラックの豊かな髪を首元ですっきりとハーフアップにまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。

 二十一歳の洗練された美しさと落ち着きをたたえ、株式会社スタジオ・シオリの代表取締役としても誰もが息を呑むような大人の気品と透明感を放っていた。

 部屋に入った瞬間にふわりと広がる甘い石鹸と果実のアロマに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。

 デスクの上には、最新のM4搭載iPad Proと、湯気を立てる特製の耐熱グラスが用意されていた。

「白石、待たせたな」

「ううん、全然待ってないよ! 湊くん、寒風の中の工場のライン作業お疲れ様……!

 これ、外はすっごく冷え込んできたでしょ? 買収したハーブ園の無農薬シナモンと、青森県産の初摘み蜜入りサンふじ林檎をじっくり煮詰めた『特製ホットハニーシナモンアップルティー』だよ! 温かいうちに飲んでね!」

「サンキュー、白石。生き返るよ」

 グラスを受け取り、一口喉へと流し込む。

 林檎の濃厚でフレッシュな甘みと、シナモンのスパイシーな香り、そして蜂蜜の上品なコクが、冷えた身体の芯までじんわりと温めていく。

 めちゃくちゃうまい。

 だが、俺は彼女の華奢な指先に、ブラックフライデー特設ECモールおよび大手企業向けHR管理画面の集中デザイン監修による微かな強張りがあるのを見逃さなかった。

(……いかんな。また俺の経営者センサーが過敏に作動している)

 俺はデスクの引き出しから、あらかじめ用意しておいた重厚な桐箱をスッと取り出し、詩織の前に差し出した。

 銀座の老舗名門サロンが初冬限定で完全予約生産した『最高級・完熟蜜入りサンふじ林檎とフランス産発酵バターの極上キャラメルタルトタタンパフェテリーヌ』と、高密度ナノグラフェン温熱と超音波ナノミスト温冷機能で指先から手根管までを深層ケアする最新型コードレスメディカルハンドエステ機だ。

「ほら、白石。これを受け取れ」

「えっ……!? これ、飴色に輝く大きな林檎がぎっしり敷き詰められたタルトタタン……! それに、最新のエステ機……!?

 湊くん、私がお茶を出しただけなのに、どうしていつもこんなに高価なものをくれるの……?」

「勘違いするなよ」

 俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。

「中学生でもわかる組織財務とブラックフライデーメガ商戦突入に伴う人的資本BCP防衛の講義だ。

 純資産七億円を突破した我がグループの最高アートディレクター(お前)が、初冬の急激な気温低下によって浅指屈筋および手根管周辺の柔軟性を低下させ、これから即時解禁される全国ブラックフライデー特設セール会場の最終キービジュアル検収を〇・四秒遅延させた場合、年末商戦初動のCVR低下に伴う事業機会損失は【試算で最低でも月額一億一千万円】に跳ね上がる!

 サンふじ林檎の高濃度リンゴ酸とプロシアニジンによる血管拡張作用、ならびにグラフェン温熱による指先の微細神経機能維持は、グループ中核クリエイターの【中長期的アジリティを担保するための戦略的初冬BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!

 お前への甘やかしなどではない!

 今夜生み出される何億円ものメガ商戦純利益から逆算すれば、このタルトタタン代などROI(投資対効果)は【実に十五億%】を超える!

 極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」

 息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。

 詩織は桐箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。

「ふふっ……あはは! キービジュアル……? ROIがじゅうごおくパーセント……?

 湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」

「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」

「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、十五億パーセントのお返しができる世界一可愛いデザインを描き続けるね!

 ……あ、湊くん! タルトタタン、お林檎がとろとろでキャラメルの香りがすっごく香ばしいよ! はい、あーん!」

 フォークに濃厚なキャラメリゼ林檎とサクサクのパイ生地、上品なバニラクリームをたっぷり乗せ、夕陽に照らされた満面の笑顔で差し出してくる詩織。

 至近距離から漂う甘酸っぱい果実のアロマと香ばしいバターの香り、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。

「お、おい……自分で食える……」

「ダメー! ブラックフライデー突入の景気づけなんだから! ほら、あーん!」

 観念して口を開けると、濃厚でほろ苦いキャラメルとジューシーな林檎の果汁が口いっぱいに広がり、サクサクのパイが絶妙に調和した。

 めちゃくちゃうまい。

 そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。

(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、資本主義のどんな強固なセキュリティをも一瞬で溶かしてしまう……)

「ふふっ、美味しい? 湊社長!」

「……ああ、最高だ。……よし白石、本題に入るぞ」

 ◇ ◇ ◇

「白石、今から中学生でもわかる、資本家のメガ収穫祭――【ブラックフライデー独占先行予約&内定者コンプライアンス成果報酬】の算数をしよう」

 俺はノートPCを開き、ホワイトボードの前に立った。

「十一月下旬に開催される世界最大の消費爆発イベント『ブラックフライデー』。

 世間の一般人は『安くなった家電や服を買って散財するカモ』に過ぎない。

 だが、資本家にとってのブラックフライデーとは――

 【年間で最も大衆の財布の紐が緩む津波に向けて、自社のアセットを一斉に投下してキャッシュを根こそぎ刈り取る収穫祭】だ!」

 俺は画面に、グループ全体のブラックフライデー先行予約ダッシュボードを展開した。

【ミナト・ホールディングス ブラックフライデー先行予約メガオペレーション】

① 老舗温泉旅館『翠月亭』:冬の雪見露天風呂・特選カニ会席VIPプラン(先行早割予約):

・客室稼働率:【冬休み・年末年始の全室が開始1時間で即日満室!】=【売上 4,200万円】

② D2Cサプリ&ハーブ園:年間定期サブスク・ブラックフライデー限定大容量セット:

・新規定期獲得件数:【2,800件突破!】=【売上 3,500万円】

③ 古民家茶房『花咲庵』:お歳暮・特製生ショコラテリーヌ桐箱ギフト予約:

・予約注文件数:【3,000セット完売!】=【売上 1,800万円】

④ 5大メディア連合:Amazon・楽天・Yahoo!のBF特設アフィリエイト特単報酬確定:

・確定成果報酬:【+1,200万円】

「……えぇっ!? 先行予約だけで……一億円以上の売上……!?」

 詩織が大きな瞳を見開いた。

「そうだ。

 そして白石、もう一つの決定打がこれだ。

 第80話で稼働させた【内定者裏アカ特定AI(ミナト・リスクスコープ)】。

 東証プライム企業連合六十社に対して、炎上リスクを未然に防ぎ、問題分子の配属を最適化したことに対する【年間セキュリティ成功報酬(一社あたり一律百万円)】が、本日全額一括で着金した!」

 カタカタ、ターンッ!

 俺はエンターキーを叩き、銀行口座のリアルタイム着金通知を大画面に映し出した。

『【送金完了】東証プライム企業連合60社より、コンプライアンス管理成功報酬 60,000,000円が法人口座へ即時着金いたしました』

「……ろくせん万円が一括着金……!」

 詩織の息が止まった。

「そうだ!

 同級生のエリート気取りどもが、裏アカで内定先の悪口を書き散らし、

 『なんで俺が北関東の倉庫なんだよ!』『飛び込み営業なんて聞いてねえ!』と発狂している横で、

 その裏アカを特定して企業を守った俺たちは、企業側から【六千万円の純現金】をボーナスとして受け取っているんだよ!

 あいつらの浅はかなプライドそのものが、俺たちの会社の利益に化けたんだ!」

「きゃぁぁぁっ! すごい……! あいつらが悪口を書けば書くほど、湊くんの会社にお金が入ってくるなんて、完全に資本主義の神様のバチが当たってるよ……!」

 詩織は歓喜の声を上げ、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。

 至近距離で弾む少女の息遣いと、柔らかなカシミヤニットの温もり。

 俺の心拍計が激しく跳ね上がり、脳内プロセッサが心地よい熱を帯びる。

「BF先行予約利益、裏アカ特定成功報酬、SaaSの月割ARR、そして大学包括提携の収益が全方位から合流した、今夜の確定データだ!」

 俺は資産管理スプレッドシートの最終統合確定ボタンをクリックした。

【合同会社ミナト・ホールディングス グループ連結資産集計(11月10日時点)】

・前回までの確定総純資産:704,000,000円

・ブラックフライデー先行予約確定純利益:+42,000,000円

・東証プライム60社裏アカ特定成功報酬純利益:+36,000,000円(納税引当後実質プール分)

・老舗旅館『翠月亭』通常インバウンド確定純利益:+19,500,000円

・古民家茶房『花咲庵』初冬スイーツ特需純利益:+8,200,000円

・BtoBエンタープライズ+大学包括+配属SaaS月割純利益:+25,100,000円

・個人向け就活SaaS+メディア連合+D2C定期純利益:+25,800,000円

・月額アカデミー(MRR 700名分純利益):+6,900,000円

・コア資産運用配当&米国債利息:+1,320,000円

・東証プライム主要株主配当金(月割り分):+1,800,000円

・法人税・消費税追加納税引当プール金:▲104,620,000円

★ 確定総純資産残高(純資産ベース):【766,000,000円(祝・純資産7億6,600万円突破!)】

★ グループ運用総資産規模(バランスシート総額):【15億2,840万円(総資産15億円突破!)】

★ グループ月間経常純キャッシュフロー:【+1億3,800万円(月利1億3,800万超え!)】

「……な、ななおく……ろくせんにひゃくまん……!! そして総資産は十五億円突破だよぉぉぉっ!!」

 息が止まった。

 『766,000,000』。

 高校を卒業したあの日、ポケットの中にあったのは、バイト代の残りわずか三万二千円。

 「高卒の工場勤務とか無理w一生ライン工頑張れよw」と同級生たちに嘲笑されてから、三年と八ヶ月。

 手取り十四万の食品工場ライン工が、

 資本主義のルールを完璧にハックし続けた結果――

 ついに、二十一歳にして純資産七億六千万円の巨大な要塞を築き上げ、

 グループ運用総資産は十五億円を完全に突破したのだ!

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!! 湊くん、七億六千万円だよ……! 私の『スタジオ・シオリ』の口座にも、もう【八千万円】以上の純資産があるんだよ……!?

 湊くんと一緒に歩んできて、本当によかった……! 湊くんは、私にとっても、世界中の誰にとっても、最高で世界一のヒーローだよぉぉぉっ!!」

 詩織は俺の胸に顔を埋めたまま、嬉し涙で服を濡らしながら抱きしめてきた。

 俺はそっと手を回し、彼女の柔らかな髪を優しく撫でた。

「白石……お前のおかげだよ。お前が作ってくれた圧倒的なデザインとUIがあったからこそ、ブラックフライデーも大企業との提携も完全勝利できた。最高のパートナーだよ、白石」

「湊くん……っ!」

 詩織は顔を上げ、耳まで真っ赤に染めながら、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。

 夕暮れのオフィスに、二人だけの温かく甘い至福の時間が静かに流れていた。

 ◇ ◇ ◇

 午後二十一時、地方都市の小高い丘の上に建つ、九条源蔵の屋敷。

 欅の一枚板テーブルの前で、俺が提示した『766,000,000円』と刻まれた最新の資産管理スプレッドシートを見つめていた源蔵が、ふっと老眼鏡を外した。

 そして――。

「……カッカッカッ!! ワッハッハッハッ!!」

 屋敷の太い梁をビリビリと震わせるほどの、豪快な大爆笑が初冬の夜空に轟いた。

 源蔵はバシバシと欅の一枚板テーブルを叩き、テーブルを揺らした。

「ブラックフライデーの津波を呑み込み、阿呆どもの裏アカ特定で六千万抜いて【純資産7億6千万】を突破したか!

 ワッハッハッハッ! 痛快だ湊!

 エリートを気取ってワインを飲んでいた連中が、てめえのアルゴリズム一つで地方の倉庫や飛び込み営業に叩き落とされ、そのペナルティがそのままてめえのキャッシュに化ける……

 ケッ、完全に本物の絶対支配者(ゴッドファーザー)の手口じゃねえか!」

「ええ。人事役員たちも『おかげで現場の引き締めができる』と大喜びしています。

 純資産は七億六千六百万円、月間純キャッシュフローは一億三千八百万円に達しました」

「ケッ! 月利一億三千八百万か! 工場の初任給の約千年分を毎月口座に叩き込む怪物の誕生だな!」

 源蔵のぎょろりとした鋭い眼光が、獲物を仕留める直前の猛獣のようにギラリと光った。

「いいか湊。二十一歳にして日本の全世帯の上位〇・一%の絶対頂点に君臨した今、

 忘年会費八千円に咽び泣く山岸や、配属内示に発狂する同級生どもが、何万回生まれ変わっても拝めねえ【七億六千万円の絶対王者の絶景】へ、てめえは到達した!

 来春の卒業式まで、残り百四十五日!

 このまま圧倒的な資本の暴力を研ぎ澄まし、あいつらが手取り二十万の社畜として社会に出てくるあの日、完全なる【人生の最終回答】を叩きつけてやれ!」

「はい、じいさん!」

 俺の力強い咆哮が、初冬の静寂を切り裂いた。

 窓の外を見上げると、澄み切った夜空に、神々しいまでの満月が輝いていた。

 高校卒業から三年と八ヶ月。

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百四十五日。

 手取り十四万の食品工場ライン工社長と、覚醒した天才美少女絵師。

 純資産七億六千万円を突破し、総資産十五億円の要塞を手に入れた二人の快進撃は、ここから来春の卒業式へ向けた「絶対王者の最終回答」という、伝説のフィナーレへと突き進んでいく!

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:21歳/食品工場ライン工・合同会社ミナト・ホールディングス 代表社員(祝・純資産7億6,000万突破!)

・総資産残高:766,000,000円(前話比:+62,000,000円 ※BF先行予約+裏アカ特定成功報酬+MRR)

・グループ運用総資産:1,528,400,000円(バランスシート15億円完全突破!)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+138,000,000円(グループ連結月間純利益・過去最高益更新!)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「大企業の内定に浮かれて裏アカで悪口を撒き散らす奴らは、自ら絞首刑のロープを首に巻く愚か者だ。その愚行を検知して企業の秩序を守り、莫大な成果報酬を吸い上げる奴が真の資本家だ。7億6千万を超えたてめえに、来春の卒業式での答え合わせは完全なる処刑台になるんだよ!」

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