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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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83/88

EP 8

年末調整の控除ゼロに絶叫する社畜と、駆け込みふるさと納税&バジェットフラッシュで純資産8億円突破!

 十一月中旬、日本海側から流れ込んだ寒気によって、工場のスレート屋根からは冷たい霜が降り、吐く息は白く凍りついていた。

 だが、正午のサイレンが鳴り響いた三晃紙器工業の第一工場・社員食堂の空気は、初冬の寒風以上にドロドロとした怨嗟と悲鳴で埋め尽くされていた。

「……ぎゃあぁぁぁっ! 年末調整! 総務から配られたこの緑と白の紙切れ、俺の控除が完全なゼロじゃねえかぁぁぁっ……!!」

 パイプ椅子を派手に蹴倒して床に突っ伏し、【給与所得者の保険料控除申告書】を頭の上で振り回しながら床板をバンバンと叩いていたのは、同期採用四年目の山岸だった。

 今年で二十一歳になった山岸だが、作業着の下に着込んだ安物のフリースは毛玉だらけで、目の下には消えないドス黒い隈が三重に張り付いている。

 手元のテーブルには、値引きシールの貼られた薄い食パンが一枚だけ虚しく置かれていた。

「おい山岸、床で暴れるな。埃が舞って弁当に入るだろ」

 俺――倉科湊が、保温ランチジャーから熱々の豚汁と、母が持たせてくれた若鶏の治部煮と丹波の黒豆ご飯弁当を取り出しながら声をかけると、山岸は涙と鼻水を撒き散らして俺の作業着の裾へすがりついてきた。

「パンに埃が入ったって構うかよ倉科ぁぁぁっ!

 先輩たちが『年末調整で数万円戻ってくるから、冬のボーナスにプラスアルファだぜ!』って浮かれてるから、俺も期待して書類を書こうとしたんだよ!

 そしたら総務の事務員さんに『山岸くん、生命保険入ってないの? 地震保険は? 配偶者も扶養家族もいないし、iDeCoもやってないのね。じゃあ控除できる欄、全部白紙だから還付金ゼロよ』って冷たく突き返されたんだぞ!?

 四年も真面目に働いてるのに還付金ゼロってなんだよ!

 それどころか、春に残業しまくったせいで『年末調整で逆に数千円の追加徴収(追徴課税)になるかもしれないわね』って笑顔で言われたんだぞ!?

 戻ってくるどころか、十二月の給料からさらに追い銭で税金を毟り取られるのかよぉぉぉっ!!」

 周囲の独身の若手やベテラン工員たちも、手元の申告書を睨みつけながら「独身の実家暮らしは税制上一番搾取されるサンドバッグだからな」「生命保険料控除なんて年間数千円しか戻らないし、還付金なんて幻想だよ」「冬のボーナスの天引きと合算されて結局手取りは減るんだよな」と、死んだ魚の目で冷めた茶をすすっている。

 俺は小さく息を吐き出し、温かいほうじ茶を一口喉へと流し込んだ。

「山岸。中学生でもわかる、年末調整の税務構造と『独身税』の実態の算数をしよう」

「算数なんか聞きたくねえ! 俺に還付金を振り込め!」

「振り込まれるわけがない。

 年末調整とは、毎月の給料から概算で天引き(源泉徴収)されていた所得税と、一年間の実際の確定所得税額との『差額精算』に過ぎない。

 日本の所得税法は、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、住宅ローン控除など、家族を持ち負債を抱えた世帯には手厚く控除枠を用意しているが、

 独身で、借家や実家暮らしで、資産運用もしていない若手労働者は、控除できる武器が何一つないため【最も高い実効税率で満額徴収される最大のカモ(実質的な独身税)】になる。

 春に残業して課税所得が跳ね上がっていれば、概算天引き額よりも確定税額の方が高くなり、十二月の給料で追徴課税を食らうのは算数以前の常識だ。

 国の税制の仕組みを一行も勉強せず、ただ『数万円のお小遣いが戻ってくる』と盲信していたお前の完全な知識不足だな」

「ぎゃあぁぁぁっ! 正論の税務署員みたいに俺を刺すなよぉぉぉっ!!」

 耳を塞いで食堂の隅へと逃げ出していく山岸。

 山岸は震える指でスマホを取り出し、自暴自棄に画面をスクロールした。

「……あ、そういや倉科! 内定先から『地方倉庫配属』と『飛び込み営業部隊』の内示を食らって発狂してた、東京の大学四年組の連中だけどさ……!

 さらに地獄の追撃を食らって、完全に虫の息になってるらしいぜ……!!」

「同級生がどうした?」

「もう完全な自業自得の自爆劇だぜ!

 配属に納得がいかねえからって、内定者ポータルの問い合わせフォームや裏アカで『学歴詐称のブラック企業!』『人事部長を訴えてやる!』って暴れ回ったらしいんだけどさ……

 企業の人事役員から直電がかかってきて『君の裏アカウントでの不適切投稿、社外秘スライドの無断転載、同期への誹謗中傷ログがすべて保全されています。内定取り消し審査会にかけますか? それとも配属を受け入れますか?』って、冷酷に詰め寄られたんだとよ!

 泣きながら土下座して謝罪文を書かされて、親にも連絡がいって実家で大騒ぎになって……

 結局、来春から【月給手取り十九万円で、北関東の厳寒の物流センターでフォークリフト作業員】として働く誓約書にサインさせられたらしいぜ!

 都心のタワマンでワイン片手にイキがってた早慶エリートが、高卒の俺たちと同じように作業着着て段ボール運ぶんだよ!

 ざまぁみろだろぉぉぉっ!!」

 他人の破滅を唯一の娯楽にして、自分の極貧をごまかそうとする山岸。

 だが、その山岸自身も、年末調整の追徴課税と冬の寒波に怯えて震えているのだ。

(山岸、お前には見えていないんだよ。

 東京の内定者どもが裏アカのログを突きつけられて地方倉庫への配属誓約書に震えながらサインし、お前が数千円の追徴課税に泣いている横で……

 その裏アカ特定AIモジュールを企業へ売り捌き、内定先企業の大株主として君臨している男が……

 目の前にいる高卒四年目のライン工だという現実がな)

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百三十五日。

 前話(第82話)で、ブラックフライデー先行予約と内定者裏アカ特定成功報酬により、確定総純資産は【7億6,600万円】を突破。

 運用総資産は十五億円を超えている。

 そして十一月下旬から十二月――日本中の高所得者と上場企業が、年内の税金控除と予算消化(バジェット・フラッシュ)のために一斉に数億円のキャッシュを市場へ吐き出す【年末最大のマネー爆発シーズン】。

 その巨大な濁流が、今夜俺たちのアセットへ一気に流れ込んでくる。

「定時で上がるぞ。今夜、俺たちの城は八億円の大台を粉砕する」

 午後十七時零二分、定時退社。

 タイムカードをパチンと切った俺は、夕暮れの冷たい初冬の風を切り裂き、地方都市の駅前に構えたミナト・ホールディングスのオフィスへと自転車を疾走させた。

 ◇ ◇ ◇

 午後十七時三十分、合同会社ミナト・ホールディングスのオフィス。

 ダイキンの最新エアコンが静かに二十四度の快適な室温を保ち、ディフューザーからはペパーミントとベルガモット、そして上品な白檀と完熟柚子の温かなアロマがふわりと漂っていた。

「湊くん……! お帰りなさい!」

 扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。

 淡いパウダースノーホワイトの上質なカシミヤ混シャギーニットワンピースに、清楚なワインレッドのチェック柄ストール。

 ショコラブラックの豊かな髪を首元ですっきりとハーフアップにまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。

 二十一歳の洗練された美しさと落ち着きを漂わせ、株式会社スタジオ・シオリの代表取締役としても誰もが息を呑むような大人の気品と透明感を放っていた。

 部屋に入った瞬間にふわりと広がる甘い石鹸と柑橘のアロマに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。

 デスクの上には、最新のM4搭載iPad Proと、湯気を立てる特製の耐熱グラスが用意されていた。

「白石、待たせたな」

「ううん、全然待ってないよ! 湊くん、冷たい風の中のライン作業お疲れ様……!

 これ、外はすっごく凍えるくらい寒かったでしょ? 買収したハーブ園の無農薬カモミールと、高知県産の初摘み完熟黄金柚子をコトコト煮込んだ『特製ホットハニーシトラスカモミールティー』だよ! 温かいうちに飲んでね!」

「サンキュー、白石。生き返るよ」

 グラスを受け取り、一口喉へと流し込む。

 柚子の爽快で奥深い甘酸っぱさと、カモミールの優しい香り、そして蜂蜜の上品なコクが、冷えた身体の芯までじんわりと温めていく。

 めちゃくちゃうまい。

 だが、俺は彼女の華奢な指先に、全国ふるさと納税ポータル年末最終特設ページおよび大手ASPメガ特単バナーの集中監修による微かな強張りがあるのを見逃さなかった。

(……いかんな。また俺の経営者センサーが過敏に作動している)

 俺はデスクの引き出しから、あらかじめ用意しておいた重厚な桐箱をスッと取り出し、詩織の前に差し出した。

 京都の老舗名門サロンが完全予約制で仕立てた『最高級・完熟あまおう苺とフランス産発酵バターの極上ホワイトショコラミルフィーユパフェテリーヌ』と、高密度ナノグラフェン温熱と超音波ナノミスト温冷機能で指先から手根管までを深層ケアする最新型コードレスメディカルハンドエステ機だ。

「ほら、白石。これを受け取れ」

「えっ……!? これ、すごく大きな真っ赤なあまおう苺が雪みたいなホワイトチョコに包まれたパフェ……! それに、最新のエステ機……!?

 湊くん、私がお茶を出しただけなのに、どうしていつもこんなに高価なものをくれるの……?」

「勘違いするなよ」

 俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。

「中学生でもわかる組織財務と年末駆け込み納税メガ商戦突入に伴う人的資本BCP防衛の講義だ。

 純資産七億六千万円を突破した我がグループの最高アートディレクター(お前)が、初冬の急激な気温低下によって浅指屈筋および手根管周辺の柔軟性を低下させ、これから即時解禁される全国ふるさと納税ポータル年末最終特設LPの最終ベクター検収を〇・四秒遅延させた場合、全国の高所得層による駆け込み寄付の機会損失は【試算で最低でも月額一億二千万円】に跳ね上がる!

 あまおう苺の高純度ビタミンCとポリフェノールによる抗酸化作用、ならびにグラフェン温熱による指先の微細神経機能維持は、グループ中核クリエイターの【中長期的アジリティを担保するための戦略的初冬BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!

 お前への甘やかしなどではない!

 今夜生み出される何億円もの年末純利益から逆算すれば、このミルフィーユテリーヌ代などROI(投資対効果)は【実に十六億%】を超える!

 極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」

 息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。

 詩織は桐箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。

「ふふっ……あはは! 駆け込みきふ……? ROIがじゅうろくおくパーセント……?

 湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」

「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」

「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、十六億パーセントのお返しができる世界一可愛いデザインを描き続けるね!

 ……あ、湊くん! ミルフィーユ、苺が甘酸っぱくてパイがサックサクだよ! はい、あーん!」

 フォークにサクサクのパイ生地と濃厚なホワイトショコラクリーム、そして大粒の真っ赤なあまおう苺をたっぷり乗せ、夕陽に照らされた満面の笑顔で差し出してくる詩織。

 至近距離から漂う甘酸っぱい果実のアロマと芳醇なバターの香り、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。

「お、おい……自分で食える……」

「ダメー! 八億円突破前の景気づけなんだから! ほら、あーん!」

 観念して口を開けると、サクッとした極上のパイの食感とともに、濃厚なホワイトチョコの甘みとジューシーな苺の果汁が口いっぱいに弾け飛んだ。

 めちゃくちゃうまい。

 そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。

(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、資本主義のどんな強固なセキュリティをも一瞬で溶かしてしまう……)

「ふふっ、美味しい? 湊社長!」

「……ああ、最高だ。……よし白石、本題に入るぞ」

 ◇ ◇ ◇

「白石、今から中学生でもわかる、資本家の年末メガ回収――【ふるさと納税駆け込み爆発&大企業の予算消化(バジェット・フラッシュ)】の算数をしよう」

 俺はノートPCを開き、ホワイトボードの前に立った。

「十一月下旬から十二月三十一日にかけて、日本全国の医師、上場企業役員、高所得サラリーマンたちが『年内の住民税控除枠を使い切らなければ損をする』とパニックになり、数兆円の資金がふるさと納税市場へ雪崩れ込む。

 そして大企業のマーケティング部門は、余った広告予算を使い切るための『バジェット・フラッシュ(予算消化)』で、メディアに対して狂ったような超高単価オファーを一斉に投下してくるんだ!」

 俺は画面に、グループ全体のアセットのリアルタイム収益ダッシュボードを大画面に映し出した。

【ミナト・ホールディングス 年末メガ回収実績(11月下旬速報)】

① ふるさと納税・年末駆け込みメガ需要(大手ポータル4社独占枠):

・『翠月亭』露天風呂付き離れペア宿泊券(寄付額30万円/口):【追加600組完売!】=【寄付総額 1億8,000万円】

・『花咲庵&D2C』特製宇治抹茶テリーヌ桐箱ギフト(寄付額5万円/口):【追加2,200件完売!】=【寄付総額 1億1,000万円】

★ 自治体からの返礼品調達費・提携手数料(確定着金額):【+87,000,000円】

★ 原価・外注費控除後 純利益:【+61,800,000円(利益率71%!)】

② 5大メディア連合 年末バジェット・フラッシュ確定メガ特単報酬:

・大手通信キャリア・光回線・クレカ乗り換え案件の単価が通常の2〜2.5倍へ跳ね上がり一斉成約!

★ メディア連合確定純利益:【+16,800,000円】

③ 就活AI SaaS『ES-Master』冬期インターン向け追加モジュール販売:

・全国三十大学および東証プライム企業からの冬期選考オプション前受金:【+18,500,000円】

「……えぇっ!? ふるさと納税とバジェットフラッシュだけで……一億円近くの純利益……!?」

 詩織の息が止まった。

「そうだ!

 山岸たち社畜が『年末調整で還付金がない』『追徴課税だ』と怯えている横で、

 俺たちは日本中の富裕層が支払うべき税金と、大企業が吐き出す広告予算の津波を丸ごと呑み込み、

 一撃で【九千七百万円以上の純現金】を会社の金庫へ流し込んだんだ!

 これが、制度を味方につけ、需要の最上流に網を張る資本家の戦い方だ!」

 詩織は歓喜の悲鳴を上げ、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。

 至近距離で弾む少女の息遣いと、柔らかなシャギーニットの温もり。

 俺の心拍計が激しく跳ね上がり、脳内プロセッサが心地よい熱を帯びる。

「湊くん、本当にすごいよぉぉぉっ!!

 町役場の人たちからも『町が始まって以来の過去最高税収です!』って涙ながらにお礼の電話が鳴り止まないんだよ……!

 社会の役に立って、みんなに感謝されながら、こんなにすごい数字になっちゃうなんて……湊くんはやっぱり世界一の天才だよぉぉぉっ!!」

「ああ、お前が作ってくれた圧倒的なデザインとLPがあったからこそ、全国の寄付者が迷わずうちの返礼品を選んでくれたんだ。最高のパートナーだよ、白石」

 俺は胸元で抱きついてくる詩織の背中を優しく撫でた。

 そして――俺は資産管理スプレッドシートの最終統合確定ボタンを力強くクリックした。

 画面の中央に、神々しい黄金の数字がドカンと刻まれた。

【合同会社ミナト・ホールディングス グループ連結資産集計(11月26日時点)】

・前回までの確定総純資産:766,000,000円

・ふるさと納税駆け込み確定純利益:+61,800,000円

・5大メディア連合バジェットフラッシュ確定純利益:+16,800,000円

・就活SaaS冬期インターン追加モジュール確定純利益:+18,500,000円

・老舗旅館『翠月亭』初冬インバウンド確定純利益:+19,200,000円

・古民家茶房『花咲庵』初冬スイーツ特需純利益:+8,300,000円

・BtoBエンタープライズ+大学包括SaaS月割純利益:+25,400,000円

・個人向け就活SaaS+D2C定期純利益:+26,100,000円

・月額アカデミー(MRR 720名分純利益):+7,100,000円

・コア資産運用配当&米国債利息:+1,380,000円

・東証プライム主要株主配当金(月割り分):+1,800,000円

・法人税・消費税追加納税引当プール金:▲126,280,000円

★ 確定総純資産残高(純資産ベース):【826,100,000円(祝・純資産8億2,000万円完全突破!)】

★ グループ運用総資産規模(バランスシート総額):【16億2,840万円(総資産16億円突破!)】

★ グループ月間経常純キャッシュフロー:【+1億4,600万円(月利1億4,600万超え!)】

「……は、はちおく……にせんにひゃくまん……!! そして総資産は十六億円突破だよぉぉぉっ!!」

 息が止まった。

 『826,100,000』。

 高校を卒業したあの日、ポケットの中にあったのは、バイト代の残りわずか三万二千円。

 「高卒の工場勤務とか無理w一生ライン工頑張れよw」と同級生たちに嘲笑されてから、三年と八ヶ月。

 手取り十四万の食品工場ライン工が、

 資本主義のルールを完璧にハックし続けた結果――

 ついに、二十一歳にして純資産八億二千万円の絶対要塞を築き上げ、

 グループ運用総資産は十六億円を完全に突破したのだ!

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!! 湊くん、八億二千万円だよ……! 私の『スタジオ・シオリ』の口座にも、もう【九千五百万円】以上の純資産があるんだよ……!?

 湊くんと一緒に歩んできて、本当によかった……! 湊くんは、私にとっても、世界中の誰にとっても、最高で世界一のヒーローだよぉぉぉっ!!」

 詩織は俺の胸に顔を埋めたまま、嬉し涙で服を濡らしながら抱きしめてきた。

 俺はそっと手を回し、彼女の柔らかな髪を優しく撫でた。

「白石……お前のおかげだよ。お前自身の純資産も、もうすぐ一億円(富裕層)の大台だな。最高のパートナーだよ、白石」

「湊くん……っ!」

 詩織は顔を上げ、耳まで真っ赤に染めながら、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。

 夕暮れのオフィスに、二人だけの温かく甘い至福の時間が静かに流れていた。

 ◇ ◇ ◇

 午後二十一時、地方都市の小高い丘の上に建つ、九条源蔵の屋敷。

 欅の一枚板テーブルの前で、俺が提示した『826,100,000円』と刻まれた最新の資産管理スプレッドシートを見つめていた源蔵が、ふっと老眼鏡を外した。

 そして――。

「……カッカッカッ!! ワッハッハッハッ!!」

 屋敷の太い梁をビリビリと震わせるほどの、豪快な大爆笑が初冬の夜空に轟いた。

 源蔵はバシバシと欅の一枚板テーブルを叩き、テーブルを揺らした。

「ふるさと納税とバジェットフラッシュを一網打尽にして、一気に【純資産8億2千万】を蹴破りやがったか!

 ワッハッハッハッ! 痛快だ湊!

 年末調整の紙切れ一枚で追徴課税に怯える阿呆どもを尻目に、日本中の富裕層と大企業から億の金を会社の金庫へ吸い上げる……

 ケッ、完全に本物のメガ財閥の総帥の手腕そのものじゃねえか!」

「ええ。月間純キャッシュフローは一億四千六百万円ペースへ拡大し、バランスシートは十六億円を突破しました」

「ケッ! 月利一億四千六百万か! 工場の初任給の約千五十年分を毎月口座に叩き込む怪物の誕生だな!」

 源蔵のぎょろりとした鋭い眼光が、獲物を仕留める直前の猛獣のようにギラリと光った。

「いいか湊。二十一歳にして日本の全世帯の上位〇・一%の絶対頂点に君臨した今、

 年末調整に咽び泣く山岸や、地方倉庫への配属誓約書に震えてサインした同級生どもが、何万回生まれ変わっても拝めねえ【八億二千万円の絶対王者の絶景】へ、てめえは到達した!

 来春の卒業式まで、残り百三十五日!

 このまま圧倒的な資本の暴力を研ぎ澄まし、あいつらが手取り二十万の社畜として社会に出てくるあの日、完全なる【人生の最終回答】を叩きつけてやれ!」

「はい、じいさん!」

 俺の力強い咆哮が、初冬の静寂を切り裂いた。

 窓の外を見上げると、澄み切った夜空に、神々しいまでの満月が輝いていた。

 高校卒業から三年と八ヶ月。

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百三十五日。

 手取り十四万の食品工場ライン工社長と、覚醒した天才美少女絵師。

 純資産八億二千万円を突破し、総資産十六億円の要塞を手に入れた二人の快進撃は、ここから来春の卒業式へ向けた「絶対王者の最終回答」という、伝説のフィナーレへと突き進んでいく!

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:21歳/食品工場ライン工・合同会社ミナト・ホールディングス 代表社員(祝・純資産8億2,000万突破!)

・総資産残高:826,100,000円(前話比:+60,100,000円 ※ふるさと納税駆け込み+バジェットフラッシュ+冬期SaaS)

・グループ運用総資産:1,628,400,000円(バランスシート16億円完全突破!)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+146,000,000円(グループ連結月間純利益・過去最高益更新!)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「年末調整の紙切れに泣いて追徴課税に怯える奴は国家の奴隷、高所得者の控除マネーと企業の余剰予算を根こそぎ刈り取る奴が真の資本家だ。8億2千万の要塞を築いたてめえに、来春の卒業式での答え合わせは完全なる処刑台になるんだよ!」

読んでいただきありがとうございます。

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