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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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EP 6

秋の灯油代高騰に凍える社畜と、ふるさと納税×地方再生D2C独占で純資産7億円突破!

 十月中旬、朝晩の冷え込みは一段と厳しさを増し、工場の外壁を撫でる北風がカサカサと乾いた落ち葉を巻き上げていた。

 だが、正午のサイレンが鳴り響いた三晃紙器工業の第一工場・社員食堂の空気は、木枯らしよりも遥かに寒々しい、絶望の凍土と化していた。

「……ぎゃあぁぁぁっ! 灯油! 今年の冬、灯油一缶十八リットルが【二千三百円】を突破する見込みってマジかよぉぉぉっ……!!」

 パイプ椅子から転げ落ち、石油ストーブの正面の床に突っ伏しながら、頭を抱えて絶叫していたのは同期採用四年目の山岸だった。

 今年で二十一歳になった山岸だが、作業着の下に着込んだ安物のフリースは毛玉だらけで、手元のスマホに表示されたガソリンスタンドの灯油価格のニュースを血走った目で睨みつけている。

「おい山岸、床で喚くな。埃が舞って豚汁に入るだろ」

 俺――倉科湊が、保温ランチジャーから熱々の豚汁と、母が持たせてくれた秋鮭の幽庵焼きと丹波栗ご飯弁当を取り出しながら声をかけると、山岸は涙と鼻水を撒き散らして俺の足元へ這いずり寄ってきた。

「豚汁どころじゃねえよ倉科ぁぁぁっ!

 先月の社会保険料増額で手取り十二万円台に落とされ、食料品のステルス値上げで腹ペコ生活を送ってる俺に……

 今度は『冬の暖房費ショック』だぞ!?

 寒冷地のこの工場街で、冬にストーブを焚いたら一ヶ月に灯油が四缶……それだけで【毎月一万円近く】消し飛ぶんだぞ!?

 さらに電気代も値上げされて、来月からはインフルエンザの予防接種代四千円の集金だ!

 四年も真面目に働いてるのに、手取り十二万から家賃、光熱費、灯油代、リボ払いを引いたら……

 手元に残る食費、一日あたり【三百円】だぞ!?

 もやしと水道水だけで凍える冬を越せってか!? 国も石油元売りも、貧乏人を凍死させる気かぁぁぁっ!!」

 周囲のベテラン工員たちも、手元の小銭入れを覗き込みながら「灯油二千三百円超えはマジで死活問題だよな」「冬はこたつだけで耐えるしかないか」「ボーナスなんて車のローンと車検の積立で消えるしな」と、力なく肩を落として安売りのカップうどんをすすっている。

 俺は小さく息を吐き出し、温かいほうじ茶を一口喉へと流し込んだ。

「山岸。中学生でもわかる、エネルギー需給の外部依存と季節的コストプッシュインフレの算数をしよう」

「算数なんか聞きたくねえ! 灯油をタダで配れ!」

「配るわけがない。

 原油価格の高騰、地政学リスク、そして止まらない歴史的円安……。

 日本は化石燃料の九割以上を海外からの輸入に依存している以上、為替と国際市況の跳ね返りはダイレクトに末端価格へ転嫁される。

 そしてエネルギーは、どんなに値上がりしても命を守るために買わざるを得ない『価格弾力性の低い必須消費財』だ。

 手取り十二万という固定されたパイの中で生きている労働者が、国際エネルギー市場の荒波を無防備に受ければ、冬が来るたびに暖房費で家計が破綻するのは数学的に確定した未来だ。

 為替や資源価格のリスクを分散する金融知識も持たず、ただ『国がなんとかしろ』と叫ぶだけの人間は、資本主義の寒波に永久に凍え続ける運命にあるんだよ」

「ぎゃあぁぁぁっ! 暖房器具の前で凍え死ぬ宣告をするなよぉぉぉっ!!」

 耳を塞いで食堂の隅へと逃げ出していく山岸。

 山岸は震える指でスマホを取り出し、自暴自棄に画面をスクロールした。

「……あ、そういや倉科! 内定式を終えた東京の大学四年組の連中、また一段と調子に乗ってやがるぜ……!」

「同級生がどうした?」

「もう完全な勝ち組セレブ気取りだ!

 先週の内定式で内定証書をもらった連中、いま『卒業旅行の積立』だの『春からの都心のタワマンの内見』だのをSNSにアップしてんだよ!

 『内定祝いに親から百万円の仕送りもらったわw』『春からは恵比寿か麻布十番に住む予定!初任給で家賃払えるか不安だけど見栄は大事っしょ!』って、ワインバーで乾杯してる写真を連投してやがる!

 さらにグループLINEで『高卒四年目で工場勤務の山岸や倉科は、灯油代にビビってコタツで震えてるのかなw一生みかんの皮でも齧ってろよw』って、俺たちの名前を出して大爆笑してんだぞ!

 裏アカで内定先の悪口を書いてるやつもいて、完全に無敵の人になった気でやがるんだ!

 あいつら……春から高級マンションでキラキラ生活を送ると思うと、悔しくて爪が全部剥がれそうだぜぇぇっ!!」

 他人の傲慢さに歯ぎしりし、パイプ椅子を蹴る山岸。

 だが、その山岸自身も、一日三百円の食費と灯油代の恐怖に怯えて震えているのだ。

(山岸、お前には見えていないんだよ。

 東京の内定者どもが見栄でタワマンの内見をしてワインを煽り、お前が灯油代に震えている横で……

 前話(第80話)で導入された俺たちの裏アカ特定AIによって、あいつらのコンプラ違反ログが企業の人事部に着弾し、水面下で過酷な配属の粛清が始まっていること……

 そして、目の前にいる高卒四年目のライン工が、今夜どんな【国家公認の巨大キャッシュインフラ】を支配しようとしているのかがな)

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百六十五日。

 前話で、内定者裏アカ特定AIモジュールの導入により、確定総純資産は【6億5,250万円】を突破。

 運用総資産は十三億円を超えている。

 そして十月下旬――年末に向けて日本全国の富裕層・サラリーマンが一斉に動き出す【年間最大のマネー還流イベント】。

 それこそが、市場規模一兆円を超える【ふるさと納税制度と地方創生M&Aアセットの完全独占シナジー】だ。

「定時で上がるぞ。今夜、俺たちの城は七億円の山頂へ到達する」

 午後十七時零二分、定時退社。

 タイムカードをパチンと切った俺は、秋の心地よい夕暮れの風を切り裂き、地方都市の駅前に構えたミナト・ホールディングスのオフィスへと自転車を疾走させた。

 ◇ ◇ ◇

 午後十七時三十分、合同会社ミナト・ホールディングスのオフィス。

 ダイキンの最新エアコンが静かに二十四度の快適な室温を保ち、ディフューザーからはペパーミントとベルガモット、そして上品な白檀と完熟洋梨の甘やかなアロマがふわりと漂っていた。

「湊くん……! お帰りなさい!」

 扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。

 淡いフォレストグリーンの上質なカシミヤ混リブニットワンピースに、清楚なアイボリーのチェック柄ストール。

 ショコラブラックの豊かな髪を首元ですっきりとハーフアップにまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。

 二十一歳の洗練された美しさと落ち着きをたたえ、株式会社スタジオ・シオリの代表取締役としても誰もが息を呑むような大人の気品を放っていた。

 部屋に入った瞬間にふわりと広がる甘い石鹸と果実のアロマに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。

 デスクの上には、最新のM4搭載iPad Proと、湯気を立てる特製の耐熱グラスが用意されていた。

「白石、待たせたな」

「ううん、全然待ってないよ! 湊くん、肌寒い工場のライン作業お疲れ様……!

 これ、外はすっごく風が冷たくなってきたでしょ? 買収したハーブ園の無農薬エルダーフラワーと、山形県産の初摘み完熟ラ・フランスを煮詰めた『特製ホットリッチペアーハニーティー』だよ! 温かいうちに飲んでね!」

「サンキュー、白石。生き返るよ」

 グラスを受け取り、一口喉へと流し込む。

 ラ・フランスのとろけるような芳醇な甘みと、エルダーフラワーのマスカットのような爽快な香り、そして蜂蜜の上品なコクが、冷えた身体の芯までじんわりと温めていく。

 めちゃくちゃうまい。

 だが、俺は彼女の華奢な指先に、大手ふるさと納税ポータル専用LPおよび高級ギフト返礼品パッケージの集中監修による微かな強張りがあるのを見逃さなかった。

(……いかんな。また俺の経営者センサーが過敏に作動している)

 俺はデスクの引き出しから、あらかじめ用意しておいた重厚な桐箱をスッと取り出し、詩織の前に差し出した。

 銀座の老舗名門サロンが完全予約制で仕立てた『最高級・完熟ル・レクチェと京都丹波黒豆の極上初秋クリスタルパフェテリーヌ』と、高密度ナノグラフェン温熱と超音波ナノミスト温冷機能で指先から手根管までを深層ケアする最新型コードレスメディカルハンドエステ機だ。

「ほら、白石。これを受け取れ」

「えっ……!? これ、すごく大きな幻の洋梨がぎっしり敷き詰められたパフェ……! それに、最新のエステ機……!?

 湊くん、私がお茶を出しただけなのに、どうしていつもこんなに高価なものをくれるの……?」

「勘違いするなよ」

 俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。

「中学生でもわかる組織財務と全国ふるさと納税商戦突入に伴う人的資本BCP防衛の講義だ。

 純資産六億五千万円を突破した我がグループの最高アートディレクター(お前)が、秋の急激な寒暖差によって浅指屈筋および手根管周辺の柔軟性を低下させ、これから即時公開される全国大手ふるさと納税ポータル四社向け特設返礼品ページの最終ベクター検収を〇・四秒遅延させた場合、年末メガ商戦立ち上げ遅延に伴う事業機会損失は【試算で最低でも月額一億円】に跳ね上がる!

 洋梨の高濃度カリウムとポリフェノールによる血流改善、ならびにグラフェン温熱による指先の微細神経機能維持は、グループ中核クリエイターの【中長期的アジリティを担保するための戦略的初冬BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!

 お前への甘やかしなどではない!

 今夜生み出される何億円もの地方創生純利益から逆算すれば、このパフェテリーヌ代などROI(投資対効果)は【実に十四億%】を超える!

 極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」

 息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。

 詩織は桐箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。

「ふふっ……あはは! ふるさと納税商戦……? ROIがじゅうよんおくパーセント……?

 湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」

「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」

「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、十四億パーセントのお返しができる世界一可愛いデザインを描き続けるね!

 ……あ、湊くん! テリーヌ、洋梨がとろとろでジュレが宝石みたいだよ! はい、あーん!」

 フォークにみずみずしいル・レクチェの果肉と上品な抹茶ジュレをたっぷり乗せ、夕陽に照らされた満面の笑顔で差し出してくる詩織。

 至近距離から漂う芳醇な果実のアロマ、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。

「お、おい……自分で食える……」

「ダメー! 七億円突破前の景気づけなんだから! ほら、あーん!」

 観念して口を開けると、濃厚で滑らかな洋梨のとろけるような甘みと、上品なジュレの酸味が口いっぱいに広がった。

 めちゃくちゃうまい。

 そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。

(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、資本主義のどんな強固なセキュリティをも一瞬で溶かしてしまう……)

「ふふっ、美味しい? 湊社長!」

「……ああ、最高だ。……よし白石、本題に入るぞ」

 ◇ ◇ ◇

「白石、今から中学生でもわかる、大富豪と国家制度の究極の共鳴――【ふるさと納税メガプラットフォーム×地方再生アセット独占】の算数をしよう」

 俺はノートPCを開き、ホワイトボードの前に立った。

「十一月から十二月にかけて、日本中の高所得者やサラリーマンが、税金を控除するために一斉に駆け込むのが『ふるさと納税』だ。

 だが、世間の一般人は『返礼品のお肉やカニをもらって数千円得した』と喜んでいるだけに過ぎない。

 資本家の視点に立ってみろ。

 ふるさと納税とは、国民が支払うべき住民税の一部を【特定の自治体と提携事業者に合法的に流し込む、年間一兆円超の国家公認マーケット】なんだ!」

「一兆円のマーケット……!」

 詩織が大きな瞳を見開いた。

「そうだ。そして俺たちが保有しているアセットを見ろ。

 ① 創業八十年の老舗高級温泉旅館『翠月亭』(敷地三千二百坪、自家源泉掛け流し)

 ② 登録有形文化財クラスの古民家茶房『花咲庵』(歴史観光地区の一等庭園)

 ③ 創業十二年の国内無農薬オーガニックハーブ園&D2Cサプリ事業

 ……すべて、地方自治体が喉から手が出るほど欲しがる【最高級の地域観光・伝統産品リソース】そのものだ!」

 俺は画面に、地元県および観光協会の提携ダッシュボードを展開した。

【ミナト・ホールディングス ふるさと納税メガ返礼品独占ラインナップ】

①『翠月亭』露天風呂付き離れペア宿泊券(年間限定300組):

・寄付金額:【1口 300,000円】(自治体からの還元率30%=90,000円/件)

②『花咲庵』特製・宇治抹茶生ショコラテリーヌ&無農薬ハーブティー定期便セット:

・寄付金額:【1口 50,000円】(自治体からの還元率30%=15,000円/件)

③ 大手ポータル4社(楽天ふるさと納税・さとふる・ふるなび・チョイス)での独占掲載:

・詩織の神デザインによる「日本の美を旅する極上返礼品」特設ランディングページ。

・俺たちの5大メディア連合(月間数十万PV)からのSEO完全送客!

「……えぇっ!? 一口三十万円の寄付……!?」

 詩織が息を呑んだ。

「そうだ。

 年収数千万円から数億円の富裕層や上場企業役員は、数百万から数千万円の住民税控除枠を持っている。

 彼らは日用品ではなく、『翠月亭のような最高級温泉のプライベート宿泊券』を一括で何口も申し込む。

 本日、受付開始からわずか四十八時間で――」

 カタカタ、ターンッ!

 俺はエンターキーを叩き、各社ふるさと納税ポータルのリアルタイム決済画面を大画面に映し出した。

【ふるさと納税返礼品 初動48時間実績】

・『翠月亭』宿泊ギフト券寄付申込:【520件完売!】=【寄付総額 1億5,600万円】

・『花咲庵&D2C』定期ギフトセット寄付申込:【1,400件突破!】=【寄付総額 7,000万円】

★ 自治体からの返礼品調達費・提携手数料(確定入金額):【67,800,000円(約6,780万円!)】

★ 原価・外注費控除後 純利益:【+48,200,000円(利益率71%!)】

「……よんせんはっぴゃくにじゅうまんえん……!?」

 詩織の息が完全に止まった。

 両手で口を押さえ、目をこれ以上ないほど見開いて画面を凝視している。

「湊くん……! たった二日間で……自治体から四千八百万円の純利益が入ってきちゃったの……!?

 しかも、お客さんは税金が安くなって、町役場の人たちも『町の税収が一気に増えました!』って大喜びだよ……!?」

「そうだ、白石!」

 俺は不敵に口元を吊り上げた。

「これが【制度を支配する側】の破壊力だ!

 大衆が灯油代に震え、数千円の返礼品に群がっている横で、

 俺たちは国家の税制インフラそのものを味方につけ、一円の広告費も使わずに何千万円もの純現金を会社の金庫へ吸い上げる!

 自治体、寄付者、宿泊客、そして俺たち……全員が完全勝利する究極の資本主義だ!

 さらに、BtoBエンタープライズSaaSの月割ARR、大学包括提携、メディア連合の確定収益が合流した結果――」

 カタカタ、ターンッ!

 俺は資産管理スプレッドシートの最終統合確定ボタンを力強くクリックした。

 画面の中央に、神々しい黄金の数字がドカンと刻まれた。

【合同会社ミナト・ホールディングス グループ連結資産集計(10月22日時点)】

・前回までの確定総純資産:652,500,000円

・ふるさと納税メガ返礼品初動確定純利益:+48,200,000円

・老舗旅館『翠月亭』通常インバウンド確定純利益:+18,800,000円

・古民家茶房『花咲庵』秋スイーツ特需純利益:+7,900,000円

・BtoBエンタープライズ+大学包括+配属SaaS月割純利益:+24,800,000円

・個人向け就活SaaS+メディア連合+D2C定期純利益:+25,400,000円

・月額アカデミー(MRR 680名分純利益):+6,700,000円

・コア資産運用配当&米国債利息:+1,280,000円

・東証プライム主要株主配当金(月割り分):+1,800,000円

・法人税・消費税追加納税引当プール金:▲83,380,000円

★ 確定総純資産残高(純資産ベース):【704,000,000円(祝・純資産7億円完全突破!)】

★ グループ運用総資産規模(バランスシート総額):【14億2,840万円(総資産14億円突破!)】

★ グループ月間経常純キャッシュフロー:【+1億3,480万円(月利1億3,400万超え!)】

「……な、ななおく……よんひゃくまん……!! そして総資産は十四億円だよぉぉぉっ!!」

 息が止まった。

 『704,000,000』。

 高校を卒業したあの日、ポケットの中にあったのは、バイト代の残りわずか三万二千円。

 「高卒の工場勤務とか無理w一生ライン工頑張れよw」と同級生たちに嘲笑されてから、三年と七ヶ月。

 手取り十四万の食品工場ライン工が、

 資本主義のルールを完璧にハックし続けた結果――

 ついに、二十一歳にして純資産七億円の巨大な壁を粉砕し、

 グループ運用総資産は十四億円の大台を突破したのだ!

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!! 湊くん、七億円だよ……! 純資産七億円突破だよぉぉぉっ!!」

 画面を見つめていた詩織の大きな瞳から、大粒の涙が滝のように溢れ出した。

 彼女はそのまま、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。

 柔らかな温もりと、想いが報われた最高のカタルシス。

「二十一歳で七億円……! 私の『スタジオ・シオリ』の口座にも、もう【六千五百万円】以上の純資産があるんだよ……!?

 町の人たちも、観光客の人たちもみんな笑顔にして……湊くんは本当に、世界で一番誇らしい私のヒーローだよぉぉぉっ!!」

 詩織は俺の胸に顔を埋めたまま、嬉し涙で服を濡らしながら抱きしめてきた。

 俺はそっと手を回し、彼女の柔らかな髪を優しく撫でた。

「白石……お前のおかげだよ。お前が魂を込めて描いてくれた返礼品の意匠とポスターがあったからこそ、全国の寄付者が一瞬で申し込んでくれたんだ。最高のパートナーだよ、白石」

「湊くん……っ!」

 詩織は顔を上げ、耳まで真っ赤に染めながら、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。

 夕暮れのオフィスに、二人だけの温かく甘い至福の時間が静かに流れていた。

 ◇ ◇ ◇

 午後二十一時、地方都市の小高い丘の上に建つ、九条源蔵の屋敷。

 欅の一枚板テーブルの前で、俺が提示した『704,000,000円』と刻まれた最新の資産管理スプレッドシートを見つめていた源蔵が、ふっと老眼鏡を外した。

 そして――。

「……カッカッカッ!! ワッハッハッハッ!!」

 屋敷の太い梁をビリビリと震わせるほどの、豪快な大爆笑が秋の夜空に轟いた。

 源蔵はバシバシと自分の太ももを叩き、テーブルを揺らした。

「国のふるさと納税制度を丸ごと呑み込んで、二日で四千八百万抜いて【純資産7億円】を蹴破りやがったか!

 ワッハッハッハッ! 上等だ湊!

 灯油代に震える大衆や、タワマンの内見でイキがる阿呆どもを尻目に、国家公認の集金マシンを完成させやがったな!」

「ええ。自治体からも『来年度はさらに枠を広げてほしい』と正式要請が届いています。

 純資産は七億四百万円、月間純キャッシュフローは一億三千四百万円に達しました」

「ケッ! 月利一億三千四百万か! 工場の初任給の約九百五十年分を毎月口座に叩き込む怪物の誕生だな!」

 源蔵のぎょろりとした鋭い眼光が、獲物を仕留める直前の猛獣のようにギラリと光った。

「いいか湊。二十一歳にして日本の全世帯の上位〇・一%の絶対頂点に君臨した今、

 灯油代に怯える山岸や、内定証書を掲げて有頂天になる同級生どもが、何万回生まれ変わっても拝めねえ【七億円の絶対王者の絶景】へ、てめえは到達した!

 来春の卒業式まで、残り百六十五日!

 このまま圧倒的な資本の暴力を研ぎ澄まし、あいつらが手取り二十万の社畜として社会に出てくるあの日、完全なる【人生の最終回答】を叩きつけてやれ!」

「はい、じいさん!」

 俺の力強い咆哮が、秋の静寂を切り裂いた。

 窓の外を見上げると、澄み切った秋の夜空に、神々しいまでの満月が輝いていた。

 高校卒業から三年と七ヶ月。

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百六十五日。

 手取り十四万の食品工場ライン工社長と、覚醒した天才美少女絵師。

 純資産七億円を突破し、総資産十四億円の要塞を手に入れた二人の快進撃は、ここから来春の卒業式へ向けた「絶対王者の最終回答」という、伝説のフィナーレへと突き進んでいく!

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:21歳/食品工場ライン工・合同会社ミナト・ホールディングス 代表社員(祝・純資産7億円突破!)

・総資産残高:704,000,000円(前話比:+51,500,000円 ※ふるさと納税メガ純利益+旅館+MRR)

・グループ運用総資産:1,428,400,000円(バランスシート14億円完全突破!)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+134,800,000円(グループ連結月間純利益・過去最高益更新!)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「ふるさと納税で返礼品を貰って喜ぶ奴はただの消費者、国家の税制インフラと地方アセットを繋いで億のキャッシュを吸い上げる奴が真の資本家だ。7億円の要塞を築いたてめえに、来春の卒業式での答え合わせは完全なる蹂躙になるんだよ!」

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