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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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EP 4

秋のステルス値上げと内定式直前の狂乱、そして統合HRプラットフォームで「純資産6億円突破」

 九月下旬、朝晩の風にはっきりと冷たさが混ざり始め、工場のスレート屋根の上には秋の澄んだ青空が広がっていた。

 だが、正午のサイレンが鳴り響いた三晃紙器工業の第一工場・社員食堂の空気は、爽やかな秋晴れとは真逆の、凍りつくような怨嗟と絶望の呻き声に染まりきっていた。

「……ぎゃあぁぁぁっ! ステルス値上げ! コンビニの弁当も、社食の小鉢も、全部中身が半分になってるじゃねえかぁぁぁっ……!!」

 パイプ椅子から派手に転げ落ち、コンビニのチキン南蛮弁当の底上げされた容器と、手元のレシートを交互に睨みつけながら床をのたうち回っていたのは、同期採用四年目の山岸だった。

 今年で二十一歳になった山岸だが、作業着の袖口は擦り切れ、目の下には消えないドス黒い隈が三重に張り付いている。

「おい山岸、床で暴れるな。埃が舞って味噌汁に入るだろ」

 俺――倉科湊(二十一歳・高卒四年目)が、保温ランチジャーから熱々の豚汁と、母が持たせてくれた秋刀魚の塩焼きと栗ご飯弁当を取り出しながら声をかけると、山岸は充血した目を血走らせて俺の足元へすがりついてきた。

「弁当どころじゃねえよ倉科ぁぁぁっ!

 先週から始まった『標準報酬月額改定』で、社会保険料が七千円も増額天引きされて手取り十二万円台に叩き落とされたばかりだぞ!?

 それなのに……十月からの【食料品・日用品三千品目一斉値上げ】のニュース見たかよ!?

 値段が五十円上がっただけじゃねえ! 容器の真ん中が山みたいに盛り上がって、肉のサイズは去年の半分だ!

 社食のうどんも麺が一玉から〇・七玉に減らされて、同じ値段取られてんだぞ!?

 手取りは減る、物価は上がる、食べ物の量は減る……!

 実質的な手取り、もう十万円切ってるようなもんじゃねえか!

 なんで真面目に段ボール折って四年も働いてる俺たちが、毎日空腹で腹を鳴らして飢え死にかけなきゃいけないんだよぉぉぉっ!!」

 周囲のベテラン工員たちも、手元の小さな弁当箱を見つめながら「ステルス値上げは本当にエグいよな」「マヨネーズも油も全部小さくなってるよ」「給料は一円も上がらないのに、飯の量だけ減っていくな」と、死んだ魚の目で冷めた茶をすすっている。

 俺は小さく息を吐き出し、温かいほうじ茶を一口喉へと流し込んだ。

「山岸。中学生でもわかる、シュリンクフレーション(ステルス値上げ)と実質賃金蒸発の算数をしよう」

「算数なんか聞きたくねえ! 唐揚げを元の大きさに戻せ!」

「戻るわけがない。

 企業が原材料高騰と円安に直面した際、価格を据え置いたまま内容量を減らす現象を【シュリンクフレーション】と呼ぶ。

 消費者の『値上げに対する心理的抵抗』を欺くための合法的な防衛策だが、実質的な値上げ率は二割から三割に達している。

 額面の給料が変わっていなくても、同じ金額で買えるカロリーと栄養が三割削られているということは、お前の労働の対価は【毎月確実に三割カットされている】のと同じことだ。

 価格決定権を持たず、他人に決められた給料の枠内でしか生きられない労働者は、インフレとステルス値上げのダブルパンチで、静かに胃袋から干上がっていく運命にあるんだよ」

「ぎゃあぁぁぁっ! 胃袋から干上がるってリアルに言うなよぉぉぉっ!!」

 耳を塞いで食堂の隅へと逃げ出していく山岸。

 山岸は震える指でスマホを取り出し、自暴自棄に画面をスクロールした。

「……あ、そういや倉科! 来週の【10月1日・大企業の内定式】を控えた、東京の大学四年組の狂乱ぶりを見たかよ……!?」

「同級生がどうした?」

「もう完全な貴族気取りのパレードだぜ!

 東証プライム大手に内定した連中、いま東京駅や銀座の高級スーツ店で『内定式用のオーダーメイドスーツ仕立てたわ!十万円也!』『パレスホテルで内定者懇親ディナーなう』って、ワイングラス掲げた写真をグループLINEに連投してやがるんだ!

 『来週の内定式で、同期トップとして答辞を読むことになったわw』『地方の現場配属なんてあり得ない、本社経営企画一択っしょ!』って、鼻の穴膨らませてイキがり倒してんだよ!

 『高卒の倉科や山岸は、今頃油まみれで賞味期限切れのパンでも齧ってんのかなw一生底辺お疲れ様w』って、わざわざ俺たちの名前を名指しして大爆笑してんだぞ!

 あいつら……来週の内定式でエリートとして正式に君臨する気満々で、悔しくて爪が肉に食い込むぜぇぇっ!!」

 他人の傲慢さに歯ぎしりし、パイプ椅子を殴りつける山岸。

 だが、その山岸自身も、ステルス値上げと手取り十二万円の現実に首を絞められて震えているのだ。

(山岸、お前には見えていないんだよ。

 東京の内定者どもが十万円のスーツを着てワインで乾杯し、来週の内定式でイキがっている横で……

 あいつらの内定先である東証プライム大手の社長や人事役員たちが、今夜どんな【超大型M&Aとグループ統合】を目の前にいる高卒四年目のライン工に直訴してきているのかがな)

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百九十日。

 前話(第78話)で、内定者育成&初期配属最適化AI(ES-Master Placement)を東証プライム五十社へ導入し、確定総純資産は【5億8,240万円】を突破。

 そして――来週十月一日の内定式を前に、あいつらの内定先企業群が直面していた【採用・教育DXの完全統合】。

 それこそが、就活生向けAIツールから内定者研修、配属判定までをワンストップで牛耳る俺たちのシステムに対する【巨額の資本業務提携と独占ライセンス統合オファー】だ。

「定時で上がるぞ。今夜、あいつらの内定先企業の頂点と、さらなるメガディールを結ぶ」

 午後十七時零二分、定時退社。

 タイムカードをパチンと切った俺は、秋の心地よい夕暮れの風を切り裂き、地方都市の駅前に構えたミナト・ホールディングスのオフィスへと自転車を疾走させた。

 ◇ ◇ ◇

 午後十七時三十分、合同会社ミナト・ホールディングスのオフィス。

 ダイキンの最新エアコンが静かに二十四度の快適な室温を保ち、ディフューザーからはペパーミントとベルガモット、そして上品な白檀と完熟巨峰のアロマがふわりと漂っていた。

「湊くん……! お帰りなさい!」

 扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。

 淡いバーガンディワインの上質なカシミヤ混リブタートルニットに、秋風にふわりと揺れる清楚なエクリュホワイトのロングフレアスカート。

 ショコラブラックの豊かな髪を首元ですっきりとハーフアップにまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。

 二十一歳の洗練された美しさと大人の気品を漂わせ、株式会社スタジオ・シオリの代表取締役としても堂々たるオーラを放っていた。

 部屋に入った瞬間にふわりと広がる甘い石鹸と果実のアロマに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。

 デスクの上には、最新のM4搭載iPad Proと、湯気を立てる特製の耐熱グラスが用意されていた。

「白石、待たせたな」

「ううん、全然待ってないよ! 湊くん、工場のライン作業お疲れ様……!

 これ、外は夕方になって少し肌寒くなってきたでしょ? 買収したハーブ園の無農薬カモミールと、山梨県産の初摘み完熟巨峰を煮詰めた『特製ホットリッチグレープハニーティー』だよ! 温かいうちに飲んでね!」

「サンキュー、白石。生き返るよ」

 グラスを受け取り、一口喉へと流し込む。

 巨峰の濃厚で芳醇な甘みと、カモミールの華やかな香り、そして蜂蜜の上品なコクが、冷えた身体の芯までじんわりと染み渡っていく。

 めちゃくちゃうまい。

 だが、俺は彼女の華奢な指先に、大手上場企業向け統合採用プラットフォーム用デザインシステムの集中監修による微かな強張りがあるのを見逃さなかった。

(……いかんな。また俺の経営者センサーが過敏に作動している)

 俺はデスクの引き出しから、あらかじめ用意しておいた重厚な桐箱をスッと取り出し、詩織の前に差し出した。

 銀座の老舗名門サロンが完全予約制で一日二箱のみ仕立てた『最高級・完熟シャインマスカットと長野県産ナガノパープルの極上秋色ジュエルパフェテリーヌ』と、高密度ナノグラフェン温熱と超音波ナノミスト温冷機能で指先から手根管までを深層ケアする最新型コードレスメディカルハンドエステ機だ。

「ほら、白石。これを受け取れ」

「えっ……!? これ、すごく大きな緑と紫のブドウが宝石みたいにぎっしり敷き詰められたパフェ……! それに、最新のエステ機……!?

 湊くん、私がお茶を出しただけなのに、どうしていつもこんなに高価なものをくれるの……?」

「勘違いするなよ」

 俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。

「中学生でもわかる組織財務と統合プラットフォーム調印に伴う人的資本BCP防衛の講義だ。

 純資産五億八千万円を突破した我がグループの最高アートディレクター(お前)が、秋の急激な気温低下によって浅指屈筋および手根管周辺の柔軟性を低下させ、これから即時締結される東証プライム企業連合向け採用・内定統合DXシステムの最終デザインシステム検収を〇・四秒遅延させた場合、十月一日の内定式一斉ローンチ遅延に伴う事業機会損失は【試算で最低でも月額九千万円】に跳ね上がる!

 ナガノパープルの高純度アントシアニンとシャインマスカットのレスベラトロールによる活性酸素の急速キレート除去、ならびにグラフェン温熱による指先の微細神経機能維持は、グループ中核クリエイターの【中長期的アジリティを担保するための戦略的初秋BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!

 お前への甘やかしなどではない!

 今夜生み出される何億円もの超富裕層純利益から逆算すれば、このパフェテリーヌ代などROI(投資対効果)は【実に十二億%】を超える!

 極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」

 息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。

 詩織は桐箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。

「ふふっ……あはは! デザインシステム……? ROIがじゅうにおくパーセント……?

 湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」

「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」

「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、十二億パーセントのお返しができる世界一可愛いデザインを描き続けるね!

 ……あ、湊くん! テリーヌ、紫のブドウがすっごくジューシーでジュレが透き通ってるよ! はい、あーん!」

 フォークにみずみずしいナガノパープルとシャインマスカットの果肉をたっぷり乗せ、夕陽に照らされた満面の笑顔で差し出してくる詩織。

 至近距離から漂う芳醇な果実のアロマ、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。

「お、おい……自分で食える……」

「ダメー! 六億円突破前の景気づけなんだから! ほら、あーん!」

 観念して口を開けると、パリッとした皮が弾けて濃厚で甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がった。

 めちゃくちゃうまい。

 そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。

(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、資本主義のどんな強固なセキュリティをも一瞬で溶かしてしまう……)

「ふふっ、美味しい? 湊社長!」

「……ああ、最高だ。……よし白石、本題に入るぞ」

 ◇ ◇ ◇

「白石、今から中学生でもわかる、資本家の真の領域――【東証プライム企業連合との内定式直前包括提携と純資産6億円突破】の算数をしよう」

 俺はノートPCを開き、ホワイトボードの前に立った。

「来週十月一日、あいつら同級生たちは、オーダーメイドのスーツを着て意気揚々と内定式に出席する。

 だが、その内定式で、新入社員たちに配布される【内定者専用タブレット】と【公式研修ポータル】……

 そこに映し出されるロゴマーク、何だと思う?」

「えっ……? もしかして……!」

 詩織がハッと息を呑んだ。

「その通りだ!

 株式会社スタジオ・シオリがデザインした、俺たちの完全統合HRプラットフォーム――

 ――【『ミナト・エンタープライズDX(旧ES-Master統合版)』】だ!」

 俺は画面に、東証プライム企業連合(大手IT、総合商社系、メガバンク子会社など計六十社)との最終契約調印書を展開した。

【『ミナト・エンタープライズDX』内定式直前包括統合契約】

① 契約概要:

・十月一日の内定式から来年四月の入社式、そして入社後三年のOJT研修までを完全自動化する「内定者・新入社員統合管理DXシステム」。

・内定式当日の社長挨拶ライブ配信、社内報配信、配属先適性フィードバック、資格取得学習カリキュラムをワンストップ提供。

② 契約形態:【東証プライム60社・包括長期ライセンス契約】

・システム統合一時金および年間ライセンス料:【総額 1億2,000万円(全額一括前払い着金!)】

③ 開発原価・APIコスト控除後 純利益:【+1億500万円(利益率87%!)】

「……えぇっ!? いちおくにせん万円……!? また一括で入ってきたの……!?」

 詩織の息が止まった。

「そうだ!

 あいつらが十万円のスーツを着て出席する内定式の、システムインフラそのものを俺たちが牛耳っているんだ!

 あいつらが内定式で見る映像も、解く課題も、受ける適性検査も、すべて俺たちの手のひらの上で転がされているに過ぎない!

 さらに、老舗温泉旅館『翠月亭』の秋の紅葉シーズン予約満室、古民家茶房『花咲庵』の栗・芋・抹茶スイーツ特需、D2C定期便、メディア連合の収益が全方位から雪崩れ込み――」

 カタカタ、ターンッ!

 俺はエンターキーを叩き、資産管理スプレッドシートの最終統合確定ボタンをクリックした。

 画面の中央に、黄金の輝きを放つ新たな金字塔がドカンと刻まれた。

【合同会社ミナト・ホールディングス グループ連結資産集計(9月26日時点)】

・前回までの確定総純資産:582,400,000円

・『ミナト・エンタープライズDX』包括提携確定純利益:+52,500,000円(納税引当後実質プール分)

・老舗旅館『翠月亭』秋の行楽シーズン確定純利益:+18,500,000円

・古民家茶房『花咲庵』秋スイーツ特需純利益:+7,600,000円

・BtoBエンタープライズ+大学包括+配属SaaS月割純利益:+23,400,000円

・個人向け就活SaaS+メディア連合+D2C定期純利益:+24,800,000円

・月額アカデミー(MRR 640名分純利益):+6,300,000円

・コア資産運用配当&米国債利息:+1,180,000円

・東証プライム主要株主配当金(四半期分):+2,940,000円

・法人税・消費税追加納税引当プール金:▲104,620,000円

★ 確定総純資産残高(純資産ベース):【615,000,000円(祝・純資産6億1,500万円突破!)】

★ グループ運用総資産規模(バランスシート総額):【12億2,840万円(総資産12億円突破!)】

★ グループ月間経常純キャッシュフロー:【+1億2,800万円(月利1億2,800万超え!)】

「……ろ、ろくおく……せんごひゃくまん……!! そして総資産は十二億円超えだよぉぉぉっ!!」

 息が止まった。

 『615,000,000』。

 高校を卒業したあの日、ポケットの中にあったのは、バイト代の残りわずか三万二千円。

 「高卒の工場勤務とか無理w一生ライン工頑張れよw」と同級生たちに嘲笑されてから、三年と半年。

 手取り十四万の食品工場ライン工が、

 資本主義のルールを完璧にハックし続けた結果――

 ついに、二十一歳にして純資産六億円の巨大な壁を蹴破り、

 グループ運用総資産は十二億円を突破したのだ!

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!! 湊くん、六億円だよ……! 純資産六億円突破だよぉぉぉっ!!」

 画面を見つめていた詩織の大きな瞳から、大粒の涙が滝のように溢れ出した。

 彼女はそのまま、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。

 柔らかな温もりと、想いが報われた最高のカタルシス。

「二十一歳で六億円……! 私の『スタジオ・シオリ』の口座にも、もう【五千万円】以上の純資産があるんだよ……!?

 湊くんと一緒に歩んできて、本当によかった……! 湊くんは、私にとっても、世界中の誰にとっても、最高で世界一のヒーローだよぉぉぉっ!!」

 詩織は俺の胸に顔を埋めたまま、嬉し涙で服を濡らしながら抱きしめてきた。

 俺はそっと手を回し、彼女の柔らかな髪を優しく撫でた。

「白石……お前のおかげだよ。お前が作ってくれた洗練されたデザインがあったからこそ、東証プライムの大企業が全社一括でサインしてくれたんだ。最高のパートナーだよ、白石」

「湊くん……っ!」

 詩織は顔を上げ、耳まで真っ赤に染めながら、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。

 夕暮れのオフィスに、二人だけの温かく甘い至福の時間が静かに流れていた。

 ◇ ◇ ◇

 午後二十一時、地方都市の小高い丘の上に建つ、九条源蔵の屋敷。

 欅の一枚板テーブルの前で、俺が提示した『615,000,000円』と刻まれた最新の資産管理スプレッドシートを見つめていた源蔵が、ふっと老眼鏡を外した。

 そして――。

「……カッカッカッ!! ワッハッハッハッ!!」

 屋敷の太い梁をビリビリと震わせるほどの、豪快な大爆笑が秋の夜空に轟いた。

 源蔵はバシバシと自分の太ももを叩き、テーブルを揺らした。

「内定式直前の大企業連合を丸ごと囲い込み、二十一歳で【純資産6億円】の扉を蹴破りやがったか!

 ワッハッハッハッ! 上等だ湊!

 十万円のスーツを着てイキがる阿呆どもが、てめえの敷いたシステムの上で『内定式ごっこ』をさせられる……

 ケッ、これ以上痛快な見世物はねえぞ!」

「ええ。あいつらが内定式でどれだけドヤ顔をしようと、そのプラットフォームの所有者は俺たちです。

 純資産は六億一千五百万円、月間純キャッシュフローは一億二千八百万円に達しました」

「ケッ! 月利一億二千八百万か! 工場の初任給の約九百年分を毎月叩き出す怪物の誕生だな!」

 源蔵のぎょろりとした鋭い眼光が、獲物を仕留める直前の猛獣のようにギラリと光った。

「いいか湊。日本の全世帯の上位〇・一%の絶対頂点に君臨した今、

 ステルス値上げに怯える山岸や、内定式で有頂天になる同級生どもが、何万回生まれ変わっても拝めねえ【六億円の絶対王者の絶景】へ、てめえは到達した!

 来春の卒業式まで、残り百九十日!

 このまま圧倒的な資本の暴力を研ぎ澄まし、あいつらが手取り二十万の社畜として社会に出てくるあの日、完全なる【人生の最終回答】を叩きつけてやれ!」

「はい、じいさん!」

 俺の力強い咆哮が、秋の静寂を切り裂いた。

 窓の外を見上げると、澄み切った秋の夜空に、神々しいまでの満月が輝いていた。

 高校卒業から三年と半年。

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り百九十日。

 手取り十四万の食品工場ライン工社長と、覚醒した天才美少女絵師。

 純資産六億一千五百万円を突破し、総資産十二億円の要塞を手に入れた二人の快進撃は、ここから来春の卒業式へ向けた「絶対王者の最終回答」という、伝説のフィナーレへと突き進んでいく!

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:21歳/食品工場ライン工・合同会社ミナト・ホールディングス 代表社員(祝・純資産6億円突破!)

・総資産残高:615,000,000円(前話比:+32,600,000円 ※内定式包括DX前受純利+旅館+MRR)

・グループ運用総資産:1,228,400,000円(バランスシート12億円完全突破!)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+128,000,000円(グループ連結月間純利益・過去最高益更新!)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「内定式で十万円のスーツを着てイキがる奴らはただの家畜、その内定式のシステムを牛耳って数億円を毟り取る奴が真の資本家だ。6億円の要塞を築いたてめえに、来春の卒業式での答え合わせは完全なる蹂躙になるんだよ!」

読んでいただきありがとうございます。

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