EP 8
東京からの帰省組。お盆休みのバスケ部同窓会
八月中旬、アスファルトから立ち上る陽炎が、視界をぐにゃりと歪める猛暑の午後。
三晃紙器工業は一週間の「お盆休み」に入っていた。
普段なら工場作業員たちが「連休最高!」「パチンコ行ってくるわ!」と羽を伸ばす期間だが、俺――倉科湊にとって、この連休は【自動販売機の増設期間】でしかなかった。
エアコンが心地よく効いた実家の作業部屋で、俺は愛用のノートPCを開き、ネットバンキングとASPの管理画面を並べてチェックしていた。
『普通預金残高:1,362,000円』
『今月確定アフィリエイト報酬:+324,000円』
「……よし、日給平均一万円以上の不労所得が、完全に定着してきたな」
思わず口元が緩む。
七月に白石詩織の4コマ図解が三万いいねの大バズりを記録して以降、SNSからブログへの流入動線は衰えるどころか、アルゴリズムに評価されて安定したアクセスを生み出し続けていた。
さらに、SNSからの大量アクセスと長い滞在時間がGoogleの検索エンジンにも好意的なシグナルとして伝わり始め、狙い撃ちしていたロングテールキーワードの順位が徐々に上昇。
記事末尾に仕掛けたマイクロコピーと成約動線の最適化により、寝ている間も、ご飯を食べている間も、口座にチャリンチャリンとキャッシュが転がり込んでくる状態が完成していたのだ。
「湊くん、お待たせ! アイスティー淹れてきたよ……!」
トントン、と控えめなノックとともに、詩織がグラスを二つ乗せたお盆を抱えて入ってきた。
淡いレモンイエローのノースリーブワンピースに、揺れるショコラブラックの髪。
第20話でプロのスタイリングを受けて垢抜けて以来、彼女の透明感と美しさは日ごとに磨きがかかっていた。
メガネを外した大きな瞳は涼やかで、歩くたびにふわりと爽やかなアロマの香りが漂う。
作業部屋のデスクの上に置かれた彼女の最新型iPad Proには、新しく執筆した『クレジットカードの多重申込みを防ぐ信用情報の基礎知識』の完成原稿が、息を呑むほど可愛らしいキャラクター図解とともに美しく表示されていた。
「サンキュー、白石。……ほら、これを受け取れ」
俺は引き出しから、あらかじめ用意しておいた老舗果実店の『完熟マンゴーパフェ』のテイクアウトカップをスッと差し出した。
「えっ……!? これ、駅前のフルーツパーラーで予約限定のすごく高いやつ……!? 湊くん、またこんな贅沢なものを……!」
「勘違いするなよ」
俺は腕を組み、冷徹な仮面を張り直して早口でまくしたてた。
「夏季の猛暑環境下におけるチーフアートディレクターの体温上昇は、集中力低下による作画解像度の劣化および納期の遅延を招く。
糖度十五度以上の完熟マンゴーに含まれるビタミンAとカリウムの摂取は、視神経の疲労回復と脳内エンドルフィンの分泌を促進させ、結果としてメディアのコンバージョン率(成約率)を最大化させるための【戦略的熱中症予防および品質保全経費】だ。
極めて論理的でドライな財務判断だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めろ」
息をつかずに言い切った俺の過保護な言い訳。
詩織はマンゴーパフェを両手で大事そうに抱え、きょとんと目を丸くしていたが――やがて、その桃色の唇をきゅっと結んで、クスリと愛おしそうに笑った。
「ふふっ……あはは! ひんしつほぜん……? エンドルフィン……?
湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……すっごく甘くて美味しいね!」
「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」
「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『保全経費』をいっぱい食べて、次の図解も世界で一番分かりやすく描くね!」
スプーンをくわえて幸せそうに目を細める詩織。
その天使のような無防備な破壊力に、俺の脳内プロセッサが一時停止しかけた――その時だった。
ブブッ、ブブッ!
デスクの上に置いていたスマートフォンが、無遠慮なバイブレーションを響かせた。
画面を見ると、高校時代のバスケ部のグループLINEからだった。
発信者は――金子拓海。
『おーいみんな!東京から帰省したぜ!今夜19時、駅前の居酒屋「和民」でバスケ部のお盆同窓会やるから全員集合な!
高卒で地元に残ったやつらも、東京のエリート大学生の俺が奢ってやるから遠慮すんなよw
特に倉科!お前、段ボール折りの仕事忙しいだろうけど絶対来いよな!ww』
画面に並ぶ、これ見よがしな煽り文句。
続いて、元カノの佐伯凛からもメッセージが飛んできた。
『私も拓海くんと一緒に行くよ〜!みんなで久しぶりに乾杯しよ!湊くんも元気にしてる?』
「……呼んでもいないのに、向こうから飛び込んできたか」
俺は冷え切った目で画面を見つめた。
高校卒業のあの日、「高卒の工場勤務とか無理w」「一生ライン工頑張れよw」と言い放って東京へと消えていった二人。
わざわざ俺を呼び出した意図など、小学生でもわかる。
東京の大学生活を見せびらかし、安っぽい優越感に浸り、工場勤務の俺を肴にして笑い者にするためだ。
「……湊くん、行くの……?」
詩織がパフェのスプーンを止め、心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
その茶褐色の瞳に、微かな不安が揺れている。
「行くよ、白石。
逃げる理由なんて何一つないからな。
――ちょうどいい。彼らが東京でどれだけ立派な『負債』を積み上げてきたのか、資本主義の冷徹な目で監査してやるよ」
◇ ◇ ◇
午後十九時、駅前の雑居ビルにある大衆居酒屋。
お盆の帰省客でごった返す店内の一番奥、掘りごたつの座敷に、高校のバスケ部の元チームメイトたちが集まっていた。
「うおっ、倉科! 来たか!」
引き戸を開けて入った俺を、真っ先に出迎えたのは金子拓海だった。
その姿を一目見た瞬間、俺の頭の中の監査システムがピピッとアラートを鳴らした。
拓海は、金髪に近い明るい茶髪にパーマをかけ、イタリア製の高級ブランドのロゴが胸元にデカデカとプリントされたTシャツを着ていた。
テーブルの上には、これ見よがしに最新型の『iPhone 15 Pro Max』と、フランスの高級ブランドのモノグラム柄の長財布がドカンと置かれている。
手首には、分厚いダイバーズウォッチがギラついていた。
そしてその隣には、バッチリとメイクを決め、流行りのオフショルダーのトップスを着た佐伯凛が、拓海の腕にべったりと身体を預けて座っていた。
「よお倉科! 探したぜ! 座れよ!」
拓海はわざとらしく大きな声を張り上げ、上座の席から俺を見下ろした。
「悪りぃな、お前をこんな高い店に呼んじまってよw
地元の工場で手取り十四万だろ? 毎日同じ段ボールを何千枚も折る仕事だっけ? 飲み会代の四千円払うのもキツいんじゃねえかと思ってさ! 安心しろよ、今日の会計はお前以外で割り勘にしてやるから、お前はタダで飲み食いしていいぞ!ww」
下品な笑い声を上げる拓海。
周囲の元部員たち数名が、気まずそうに苦笑いを浮かべる。
凛もまた、憐れみと優越感が混ざり合った視線を俺に向け、わざとらしく胸元の髪をかき上げた。
「ちょっと拓海くん、やめなよぉ。湊くんには湊くんの身の丈に合った暮らしがあるんだから。
でも湊くん、本当に大変そうだね……。作業着焼けとかしちゃってない? 拓海くんはね、東京でマーケティングの勉強してて、サークルの人脈で六本木のバーとか連れてってもらってるんだよ? やっぱり、東京の大学に来てよかったって心から思うな〜」
二人の哀れみの言葉を浴びながら、俺は静かに靴を脱ぎ、末席の座布団へと腰を下ろした。
「烏龍茶を一つ頼む」
店員に注文を告げる俺の表情は、凪いだ水面のように静まり返っていた。
怒りも、惨めさも、動揺も一ミリたりとも湧かない。
ただ、目の前の拓海の身なり、仕草、そして発言の端々からこぼれ落ちる「財務データ」を、頭の中で冷徹にスキャンしていた。
(……中学生でもわかる算数だ)
拓海が着ているハイブランドのTシャツ。
首回りが微妙にヨレており、おそらくメルカリで状態の悪い中古品を一万円前後で買い叩いたものだ。
手首に巻かれたダイバーズウォッチは、文字盤のフォントの歪みとインデックスの夜光塗料の粗さから見て、スーパーコピー(偽物)か、型落ちの中古品。
そして、テーブルの上に置かれた財布の角は擦り切れ、中からはみ出しているのは――複数の消費者金融のカードと、大手クレジットカードのカードだ。
「おい倉科、聞いてんのかよ?」
俺が黙って烏龍茶を飲んでいるのを「悔しくて言葉も出ない」と受け取った拓海が、ジョッキのビールをあおりながら、さらにニヤニヤと身を乗り出してきた。
「お前さ、大学行かなかったこと、今になって後悔してんだろ?
親が金ないからって諦めたのお前じゃん。俺の親父なんてサラリーマンだけど、俺は自分で頭使って【月十万円の不労所得】を確保して東京満喫してんだぜ!」
「月十万円の、不労所得……?」
俺が静かにオウム返しすると、拓海は待ってましたとばかりに胸を反らせた。
「そうだ! 日本学生支援機構の【第二種奨学金】だよ!
大学に入学してから毎月、俺の口座に自動で十万円が振り込まれてくるんだ! 親の仕送りとバイト代にプラスして、毎月十万の純利益! これがあるから、東京で家賃払っても毎週末クラブで遊べるし、欲しい服も全部一括……あ、いや、リボ払いで買えちゃうわけよ!
国の制度を賢くハックして稼ぐのが、本物のエリート大学生のやり方なんだよな〜!ww」
「そうなんだよね〜!拓海くん、本当にスマートで頼りになるの!」
凛がうっとりとした表情で拓海の肩に頭を乗せる。
その光景を見つめながら、俺の喉から、深く、乾いた息が小さく漏れ出た。
「……はぁ」
「ああん? なんだよ倉科、ため息なんかついて! 羨ましすぎて息もできねえか?w」
「いや……」
俺は烏龍茶のグラスをコトッと置き、冷え切った眼光で拓海の目を真っ直ぐに見据えた。
「お前の頭の悪さに、心底寒気がしただけだ」
◇ ◇ ◇
ピシリと、座敷の空気が凍りついた。
拓海のニヤケ面が引きつり、周囲の元部員たちが息を呑む。
「な……んだと、テメエ……!? 負け惜しみ言ってんじゃねえぞ高卒の工場員が!」
「金子、今から中学生でもわかる算数をしよう」
俺はテーブルの上の紙おしぼりの袋を引き裂き、胸ポケットから取り出したボールペンを走らせた。
「お前が『毎月十万円の不労所得』と呼んでいるものの正体だ。
日本学生支援機構の【第二種奨学金】……この制度の法的な定義を、本当に知って契約したのか?」
「ほ、法的な定義ぃ? 奨学金は奨学金だろ! 学生を支援するための金じゃねえか!」
「違うな。
第二種奨学金の正体は、支援でも給付でもない。
――【卒業後に利息を上乗せして返済しなければならない、ただの有利子借金】だ!」
ドンッ、とペン先で紙を突く。
「毎月十万円を四年間借り続けた場合、お前が大学卒業時に背負う元金の総額はいくらになる?
十万掛ける四十八ヶ月――【480万円】だ!
しかも第二種は【有利子】だ。
現在、日銀の金融政策の転換によって日本の金利は上昇傾向にある。将来的に上限である年利3%近くまで金利が跳ね上がった場合、利息だけでいくら上乗せされると思ってる?
百万円以上の利息が付き、総返済額は【約600万円】に膨れ上がるんだよ!」
「ろ……ろっぴゃくまん……!?」
拓海の顔から、サッと血の気が引いた。
隣の凛も、「えっ……? 奨学金って、返さなきゃいけないの……?」とおろおろと視線を泳がせている。
「金子、行動経済学における最悪の心理的罠――【メンタル・アカウンティング(心の会計)】を知っているか?」
「メ、メンタル……?」
「人間はな、同じお金であっても、額に汗して稼いだ給料は大切に扱い、口座に勝手に振り込まれてきたお金や臨時収入は『あぶく銭』と錯覚してパーッと浪費してしまう認知バイアスを持っているんだ。
お前は今、毎月振り込まれる十万円を『自分の所得』だと錯覚し、ブランド品を買い、見栄を張って酒を飲んでいる。
だが、現実はどうだ?
お前は稼いでいるんじゃない。
【二十二歳以降の自分の命の時間を、前借りしてドブに捨てているだけ】なんだよ!」
俺の容赦ないロジックが、拓海の急所を正確に抉る。
「さらにホラーな算数を教えてやる。
四年後、大学を卒業したお前を待ち受けている、大卒の平均初任給はいくらだ?
額面で約二十二万円。
そこから所得税、住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険を天引きされたら、銀行口座に入る手取り額は【約十七万〜十八万円】だ」
俺は紙に、新卒の家計収支を殴り書いた。
「東京で一人暮らしを続ければ、家賃で七万、光熱費と通信費で二万、食費と生活費で五万が消える。
残る自由なお金は、わずか【三万〜四万円】だ。
そこに――奨学金四百八十万円の返済が、毎月【約二万五千円】、二十年間にわたって口座から自動引き落としされる!
さらに、お前が今調子に乗って使っているクレカのリボ払いの返済が乗っかる!
……金子、お前の手元にいくら残る?」
「あ……あ……」
「残らないよ。【毎月赤字】だ!
二十二歳から四十代になるまでの二十年間、お前は毎日満員電車に揺られ、上司に怒鳴られ、手取りの中から借金を返すためだけに生きる【返済マシーン】になるんだよ!
結婚もできない、家も買えない、車も持てない、貯金もできない。
それが、お前が今『エリート大学生の特権』だとドヤ顔で見せびらかしている、四百八十万円の借金地獄の正体だ!」
「ひ、ひぃぃぃ……っ!!」
拓海は喉をヒクつかせ、ガタガタと震え出した。
手首の偽物時計が、カタカタと情けない音を立てる。
東京でお洒落な服を着て、イキがっていた男のメッキが、冷徹な数字の鉄槌によって粉々に砕け散った瞬間だった。
凛が引きつった顔で拓海からサッと身体を離し、信じられないものを見るような目を向けた。
「た、拓海くん……嘘でしょ……? あの服も、この間のデート代も……全部ただの借金だったの……!?」
「ち、違う! 凛、これは国の制度で……! 俺は将来、大手IT企業に入って年収一千万稼ぐから余裕で返せるんだよ!」
「大手IT? 三流私立文系で、サークルで酒飲んで遊んでるだけのお前に、年収一千万を払う企業がこの資本主義のどこにあるんだよ」
俺は冷たく言い捨て、最後の一口の烏龍茶を飲み干した。
「金子。奢ってくれるって言ってたが、結構だ。
借金まみれの人間から施しを受ける趣味はない」
俺は財布から、千円札を一枚取り出してテーブルに置いた。
「烏龍茶代、四百円だ。お釣りは取っておけ。
四年後の返済資金の足しにでもするんだな」
座敷を後にするため、俺は立ち上がった。
「ま、待てよ倉科……っ!」
背後から、拓海の震える声が追いかけてくる。
「偉そうに講釈垂れやがって……! じゃあテメエはどうなんだよ!?
手取り十四万の工場で、一生安月給で油にまみれて生きるテメエの方が、俺より惨めな負け組じゃねえかよ!!」
負け犬の最後の遠吠え。
俺は振り返りもせず、居酒屋の引き戸に手をかけながら、静かに告げた。
「言ったはずだぞ、卒業式の日に。
――四年後に、すべての答え合わせをしようってな」
ガラリと戸を開け、俺は店を出た。
◇ ◇ ◇
居酒屋の外に出ると、八月の熱帯夜の風が頬を撫でた。
駅前のロータリーの喧騒。
深く息を吸い込むと、胸の奥につかえていた過去のしこりが、完全に消え去っているのを感じた。
かつて、自分を振って東京へ去っていった元カノと、見下してきた同級生。
彼らに対する怒りも、恨みも、もう何一つ残っていなかった。
ただ、資本主義のルールを知らない者が自滅していく姿を、冷徹に確認しただけにすぎない。
「湊くん……!」
ロータリーの街灯の下から、鈴を転がすような澄んだ声が響いた。
振り返ると、そこには白石詩織が立っていた。
淡いミントグリーンのサマーニットに、風に揺れるマーメイドスカート。
両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、少し不安そうに、でも俺の姿を見つけた瞬間にパッと顔を輝かせて駆け寄ってきた。
「白石? どうしてここに……?」
「だって……湊くん、一人で行っちゃったから……心配で……。
あ、これ……! 駅前のカフェで、冷たいレモネード買ってきたの! 湊くん、烏龍茶しか飲んでないでしょ……?」
詩織は少し息を切らしながら、水滴のついたテイクアウトカップを俺に差し出してきた。
その額には、走ってきたのか、微かな汗が光っている。
「……わざわざ待っててくれたのか」
「うん……! 湊くんが嫌な思いしてないかなって思ったら、居ても立ってもいられなくて……。
湊くん、大丈夫だった……?」
上目遣いで、俺の顔を覗き込んでくる詩織。
その純粋な瞳、心からの優しさに触れた瞬間――俺の胸の奥が、ジンと熱くなった。
他人の看板や見栄でしか男を測れない凛と、
俺がどんな状況にあっても、真っ直ぐに俺自身を信じて隣にいてくれる詩織。
投資の世界において、これほどリターンが高く、かけがえのない「無形資産」が他にあるだろうか。
「ああ、大丈夫だ。
……むしろ、最高にスッキリしたよ」
俺はレモネードを受け取り、喉を潤すと、詩織の頭にそっと手を置いた。
サラサラとした黒髪が、指先を心地よく撫でる。
「えへへ……湊くんの手、あったかいね……」
詩織は嬉しそうに目を細め、耳まで真っ赤にしてはにかんだ。
その破壊力抜群の笑顔に、俺の頭の中の計算機がまたしてもバグりそうになる。
「……コホン! 白石、歩きながら帰るぞ。
レモネード代の百八十円は、事業パートナーへの【夜間警備出勤手当】として、明日の経費精算で倍にして返還するからな」
「ふふっ、もう! また経費って言ってる……!
でも、湊くんと一緒なら、どこまでも歩いて帰りたいな」
詩織は俺の隣に並び、そっと自分の歩調を俺に合わせてくれた。
スマートフォンの画面を見る。
今夜もまた、俺たちの城はネットの海で働き続け、新しい成約通知を刻み続けていた。
借金を所得と錯覚し、見栄のために生きる者たちが自滅の坂を転がり落ちていく横で――
俺たちは、自分たちの力で積み上げた本物の資産とともに、次のステージへと確実に歩みを進めていた。
【現在の倉科湊ステータス】
・年齢/肩書:18歳/食品工場ライン工(特化ブログ運営・月間黒字化定着)
・総資産残高:1,362,000円(前話比:+478,000円 ※ブログ確定報酬+受託利益合算)
・月間不労/事業キャッシュフロー:+382,000円(アフィリエイト+受託Webライティング純利益)
・【今日の源蔵のマネー格言】:「借金は将来の自分の時間を前借りする悪魔の契約だ。月10万の奨学金を『小遣い』と錯覚する阿呆には、20年間の返済地獄という名の特大の領収書をプレゼントしてやれ」
読んでいただきありがとうございます。
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