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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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EP 13

工場の先輩の「リボ払い」と「パチンコ期待値」を論破する

 古物商許可の申請を終え、悪質なすり替えクレーマーを鮮やかに撃退した翌日。

 三晃紙器工業の第一工場には、朝から機械の重低音とパルプの粉塵が立ち込めていた。

 午前中の四時間、俺は第四パレタイズラインで淡々と手を動かした。

 流れてくる冷凍食品用の化粧箱を検品し、五十枚ごとに結束してパレットへ積む。

 無駄のない最小限の筋肉の動き。

 身体が勝手にルーティンをこなす間、俺の脳のバックグラウンドプロセスでは、昨夜出品した中古オーディオ機器の相場変動と、夜に出品予定のジャンク品の配送スケジュールが精密にシミュレーションされていた。

 そして――正午を告げる昼休みのサイレンが鳴り響いた。

 社員食堂の喧騒から少し離れた、工場の裏手にあるプレハブの喫煙所兼休憩室。

 自動販売機のうなり声が響く薄暗い一角で、頭を抱えて唸り声を上げている男がいた。

 入社三年目、二十一歳になるライン工の先輩・森脇浩介だった。

「……くそっ、なんでだよ。マジで意味わかんねえ……! なんで残高が全然減らねえんだよ……っ!」

 森脇の手元には、しわくちゃになった大手クレジットカード会社の利用代金明細書が握りしめられていた。

 その隣のベンチには、菓子パンをかじりながらスマホをいじっていた同期の山岸が座っている。

「どうしたんすか、森脇先輩? そんな怖い顔して」

「お、おい山岸……ちょっとこれ見てくれよ。俺、去年の冬に欲しかった大型バイクの頭金とカスタムパーツ代で、クレカを【60万円】使ったんだよ」

「ろ、60万!? すげえ、男の一括っすね!」

「一括なわけねえだろ! 俺の手取り十六万だぞ!

 毎月の支払いがキツいから、カードのアプリで『安心ラクラク定額払い』……いわゆる【リボ払い】に設定したんだよ。

 毎月の支払額を『一律1万円』に固定して、今年に入ってから毎月欠かさず一万円ずつ、もう五万円も引き落とされてるはずなんだ。

 それなのに……今届いた明細を見たら、利用残高が【58万7千円】も残ってやがる!

 五ヶ月で五万円払ったんだから、残りは五十五万になってなきゃおかしいだろ!? カード会社のバグか!? 詐欺に遭ったのか!?」

 目を血走らせ、怒りと混乱で肩を震わせる森脇。

 山岸は首をかしげ、「うーん、システムの手数料とか引かれてるんじゃないすか? でも毎月一万円なら痛くないし、放っておけばいつか終わりますよ!」と呑気な返事を返していた。

「放っておけば終わる……? 終わるわけねえだろ! 来月車検なんだよ!

 ……あーもう、こうなったら今週末の給料日、駅前のパチンコ屋の新台『エヴァンゲリオン』で一発当てるしかねえ!

 軍資金三万突っ込んで、確変引いて一撃十万発出せば四十万円だ! リボの残高なんて一撃でチャラにしてやるよ!!」

 完全に破滅の思考回路に染まった先輩の叫び。

 その姿を見つめながら、俺は冷たいお茶を一口飲み、静かにため息をついた。

(……九条のじいさんが言っていた通りだ)

『足元でお前の稼ぎを食い潰そうとする、愚かな「身内のカモ」どもに巻き込まれるんじゃねえぞ』

 まさに、目の前で資本主義のクモの巣に絡め取られ、暴れれば暴れるほど締め上げられている哀れな獲物がいた。

 放っておけば、この先輩は遠からず消費者金融に手を出し、給料を前借りし、周囲に金を無心して職場から姿を消すだろう。

 同じラインの作業員が飛べば、残業ゼロという俺の聖域が崩壊し、事業開発の時間が奪われるリスクがある。

(……リスクは芽のうちに摘んでおくか)

 俺は空になった弁当箱を片付け、ポケットから愛用のボールペンを取り出すと、テーブルの上の紙ナプキンを引き寄せた。

「森脇先輩。パチンコ屋へ行く前に、ちょっと中学生でもわかる算数をしませんか?」

「ああん? 倉科……算数だと? 高卒新人のてめえに何がわかるんだよ」

「わかりますよ。

 先輩が今、カード会社とパチンコ屋という二大巨頭に、自分の人生を丸ごと『無料提供』しようとしていることくらいはね」

「な、なんだと……!?」

 色をなす森脇の前に、俺は紙ナプキンを広げ、中央に大きく一本の横線を引いた。

 ◇ ◇ ◇

「まず、先輩のその【リボ払い】の正体から暴きましょう」

 俺は紙ナプキンの左上に、明細書から拾い上げた数字を書き殴った。

『利用残高:600,000円』

『実質年率:15.0%』

『毎月返済額:10,000円』

「森脇先輩、この『実質年率15%』という数字の意味を、本当に理解して契約しましたか?」

「意味って……年利だろ? 一年で一割五分だろ? 一万円ずつ払ってんだから、年間で十二万返して、そのうちの一万ちょっとが利息になるくらいじゃねえのか?」

「ハハッ、とんでもないお花畑だ」

 俺の容赦ない冷笑に、森脇の顔が引きつる。

「中学生の割合の計算ですよ、先輩。

 年利15%ということは、月利に直すと約【1.25%】です。

 毎月の締め日に、その時点の利用残高に対して丸々1.25%の手数料が課せられます。

 じゃあ、残高が六十万円ある初月に発生した手数料はいくらですか?」

 俺は紙ナプキンに数式を叩きつけた。

『600,000円 × 1.25% = 7,500円』

「……え? な、ななせん、ごひゃくえん……?」

 森脇の目が点になった。

「そうです。

 先輩は毎月、口座から『一万円』が引き落とされているのを見て、『一万円分、借金が減った』と錯覚していた。

 ですが、現実に口座から引かれていた一万円の内訳はこうです」

・カード会社への手数料(利息):【7,500円】

・本来の借金の返済(元金充当):【2,500円】

「ひ、引き落とされた一万円のうち……元金に充てられてるのが、たったの二千五百円……!?

 残りの七千五百円はどこ行ったんだよ!?」

「カード会社の純利益ですよ!

 先輩が汗水垂らして、油まみれになって稼いだ給料から、毎月七千五百円もの大金が、ただの『金利手数料』として右から左へ消えていたんです。

 だから五ヶ月で五万円払っても、元金は一万二千五百円しか減っていなかった。明細の残高が五十八万七千円なのは、一円の狂いもない正確な数学的結果なんですよ!」

 森脇の額から、タラリと冷たい汗が流れ落ちた。

 横で聞いていた山岸も、「う、嘘だろ……一万円払って二千五百円しか減らないって、詐欺じゃん……」と青ざめている。

「詐欺じゃありませんよ。先輩が規約に同意してボタンを押した、完全合法のビジネスです。

 さらに、ホラー映画の続きを見せてあげましょう。

 このまま毎月一万円のリボ払いを続けた場合、六十万円を完済するのに何年かかると思いますか?」

「えっ……三、四年くらいか……?」

「甘すぎます」

 俺は電卓アプリをタップし、冷酷なシミュレーション結果を突きつけた。

「完済までにかかる期間は――【約九年(百八回払い)】です。

 そして、六十万円の元金を返すために先輩が支払う手数料の累計額は、実に【約39万円】!

 トータルで【約百万円】を支払うことになります!

 二十一歳の先輩が、三十歳になるまで毎月一万円をむしり取られ続ける。

 その間、ちょっとでも追加でカードを使って買い物をしたらどうなるか?

 元金は一ミリも減らなくなり、一生カード会社に利息だけを上納し続ける【終身名誉養分】の完成です!

 ――リボ払いっていうのはね、分割払いなんかじゃない。

 貧困層から合法的に富を吸い上げるために設計された、悪魔のサブスクリプションなんですよ!」

「う、うわぁぁぁぁぁッ……!!」

 森脇は頭を抱え、ベンチの上で崩れ落ちた。

 毎月のお支払いがラクラク、ポイント還元、今ならキャッシュバック――。

 甘い言葉の裏側に隠されていた、年利15%の複利という名の猛毒。

 その牙が、自分の喉元に深く突き刺さっていたことを、男はようやく理解したのだ。

 ◇ ◇ ◇

「だ、だがよ倉科……っ!」

 森脇はすがるように顔を上げ、充血した目で俺の胸ぐらを掴まんばかりに身を乗り出してきた。

「だからこそ、パチンコなんだよ!

 手取り十六万からどうやってそんな大金返せばいいんだよ!?

 パチンコで勝って、一括で返済しちまえば、その三十九万の手数料とやらも払わずに済むんだろ!? 俺にはパチンコしかねえんだよ!!」

「……やれやれ」

 俺は首を振り、紙ナプキンの右側に、新たな表を書き始めた。

「毒を消すために、さらに致死量の猛毒を飲もうとする。典型的なギャンブル依存症の思考停止ですね。

 森脇先輩、ギャンブルにおける絶対の数学的概念――【期待値(Expected Value)】と【還元率(控除率)】をご存知ですか?」

「か、かんげんりつ……?」

「客が投じた掛け金に対して、胴元がどれだけの割合を客に払い戻しているかという数字です。

 世の中のあらゆるギャンブルの還元率を並べてみましょう」

 俺はペン先を走らせた。

・【宝くじ】:還元率【約46%】(国公認の情弱税・愚者の税金)

・【競馬・競輪・競艇】:還元率【約75%】

・【パチンコ・パチスロ】:還元率【約80〜85%】

・【ラスベガスのカジノ(バカラ等)】:還元率【約98%】

「パチンコはね、法律上は遊技とされていますが、実態は還元率約八割の民間ギャンブルです。

 還元率が八割ということは、中学生の算数で言えばどういうことか?

 一万円札をサンド(入金機)に突っ込んだ瞬間、その一万円の価値は数学的に【八千円】に目減りしているってことですよ!

 千円打つごとに、二百円をドブに捨てているのと全く同じなんです!」

「で、でもよ! 勝つ日だってあるだろ! 俺、先月だって一撃で五万勝った日があるぞ!」

「それはただの【確率のブレ(短期的な偏り)】です」

 俺は容赦なく言葉を遮った。

「統計学には【大数の法則】という絶対の原理があります。

 試行回数――つまりパチンコを打つ回数や時間が長くなればなるほど、結果は必ず、寸分の狂いもなく【設定された還元率(マイナス二〇%)】へと収束していくんです!

 一回や二回なら勝つこともあるでしょう。

 ですが、打ち続ければ打ち続けるほど、先輩の財布からは確実に投じた資金の二割が削り取られていく。

 数学的に負けることが百パーセント確定しているゲームなんですよ!」

 俺は立ち上がり、工場の窓から見える駅前の巨大なパチンコホールのネオンサインを指差した。

「先輩、あの豪華な巨大ビル、何十台もあるきらびやかな最新機種の導入費、真夏にガンガンに効いているエアコンの莫大な電気代、そして大勢の店員の給料やテレビCMの広告費……!

 あのお金は一体、どこから湧き出ていると思いますか?」

「そ、それは……パチンコ屋の売上……」

「誰の売上ですか?

 『一撃で取り返してやる!』と目を血走らせてサンドに万札を突っ込む、先輩のような【負け組労働者の財布】から巻き上げた金ですよ!

 パチンコ屋の豪華なシャンデリアの一粒一粒はね、先輩が納めた養分マネーで輝いているんです!

 リボ払いでカード会社に毎月七千五百円を貢ぎ、今度はパチンコ屋に二割の手数料を献上する。

 ――先輩、あなたはどれだけ資本家たちに自分の人生をボランティアすれば気が済むんですか!?」

 静まり返るプレハブ休憩室。

 俺の放った言葉は、もはや反論の余地など一ミリも残さない、絶対的な事実の鉄槌だった。

 森脇は両手で顔を覆い、ガタガタと震えながら呻いた。

「……じゃあ、どうすりゃいいんだよ……っ!

 手取り十六万の俺に、一体何ができるって言うんだよ……!」

 ◇ ◇ ◇

 俺はスッと息を吐き、机の上の紙ナプキンを裏返した。

 叩きのめすだけでは意味がない。

 救済策を提示して行動させ、ラインの破綻を防ぐのが真の目的だ。

「助かる方法は、三つしかありません。

 奇跡のギャンブルに縋るのを今すぐやめ、現実の数字で泥臭く止血するんです」

 俺は裏面に、三つのステップを端的に書き出した。

「ステップ1:【リボ払いの即時解除と、おまとめローンへの借り換え】。

 まず今日、スマホのカード会社アプリを開いて、これ以上のリボ利用枠をゼロに設定してください。

 そして、もし可能なら親に頭を下げて無利子で借りるか、地方銀行の『フリーローン(金利5〜7%前後)』に借り換える。金利15%の毒を、半分の金利で薄めるんです」

「お、親には怒られるかもしれないが……年利十五%を九年も払うより、土下座して正直に話した方が百倍マシだな……」

「ステップ2:【実家のバケツの穴を塞ぐ(固定費の外科手術)】。

 先輩、スマホはどこの会社を使ってますか?」

「大手キャリアだ……毎月一万二千円くらい払ってる……」

「今すぐ格安SIMに乗り換えてください。月三千円になります。

 それだけで【毎月九千円】浮く。

 さらに、毎日買っているコンビニのタバコと缶コーヒーをやめて水筒にする。これで【毎月一万五千円】浮く。

 合計で【毎月二万四千円】のキャッシュフローが、生活水準を落とさずに手元に残る」

「に、二万四千円……!」

「ステップ3:【浮いたキャッシュの全額を、元金の繰り上げ返済に叩き込む】。

 毎月の一万円に、浮いた二万四千円を足して【毎月三万四千円】ずつ元金を削るんです。

 そうすれば、九年かかると言われた返済期間は【一年半】に縮まり、三十九万円消えるはずだった手数料は【わずか数万円】に激減します!

 ――パチンコで奇跡の四十万を夢見る必要なんてない。

 固定費を削って繰り上げ返済するだけで、先輩は確実に【三十万円以上の利益】を確定させられるんですよ!」

 ドンッ、と紙ナプキンを指差す。

 森脇の瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

 恐怖と絶望の底にいた男の目の前に、明確で、合理的で、今日から実行できる脱出ルートが開かれたのだ。

「倉科……! お前……なんでそんなことまで知ってんだよ……っ!

 俺、自分がどれだけ馬鹿なことやってたか、やっとわかったよ……!

 パチンコなんて二度と行かねえ! 今夜、親に頭下げて、格安SIMの乗り換えも全部やる! 頼むから教えてくれ!!」

「ええ、設定くらいなら手伝いますよ。

 その代わり、ラインでミスして俺の定時退社を邪魔しないでくださいね」

 俺がフッと微笑むと、森脇は鼻をすすりながら、作業着のポケットをごそごそと探り始めた。

「倉科……これ、本当に大したもんじゃないんだが……。

 親父が昔買って、ずっと実家の物置に眠ってたやつなんだ。

 お前、こないだ古い機械とか集めてるって言ってただろ? もし邪魔じゃなかったら、貰ってくれないか?」

 森脇が差し出してきたのは、古びた革製のカメラケースだった。

 ジッパーを開けて中を覗き込んだ瞬間、俺の心臓がトクンと跳ね上がった。

(……っ! ニコン(Nikon)のオールドフィルム一眼レフ……名機『FM2』……!?

 しかも、単焦点の銘玉レンズ『Ai Nikkor 50mm F1.4』が装着されてる……!)

 外装にはわずかな擦れがあるものの、シャッターは軽快に切れ、ファインダーにカビはない。

 現在、世界的なレトロフィルムカメラブームで、海外のバイヤーやマニアが血眼で探している超人気モデルだ。

 ヤフオクやeBayでの実動相場は――最低でも【45,000円〜50,000円】を下らない。

「森脇先輩……これ、本当に貰っていいんですか? そこそこの価値がありますよ」

「いいんだよ! お前に三十九万の借金地獄から救ってもらった命の恩料だと思えば、タダみたいなもんだ! 持ってってくれ!」

「……ありがとうございます。大切に扱わせていただきます」

 思わぬ形で転がり込んできた、極上の仕入れ資産。

 他人の無知を食い物にするのではなく、知識で人を救った対価として手に入れた、正当な果実だった。

 ◇ ◇ ◇

 その日の夜。

 十七時定時退社で帰宅した俺は、自室で森脇から譲り受けた『Nikon FM2』を無水エタノールで丹念に磨き上げた。

 モルトプレーン(遮光スポンジ)の劣化を丁寧に補修し、レンズの埃をブロアーで吹き飛ばす。

 白背景の美しい写真を撮影し、手数料5%のYahoo!フリマへ放流。

 出品価格は、強気の【48,000円】。

 結果は――出品からわずか四十分後だった。

 フランス在住のバイヤーを代行する越境EC業者によって、満額で即決購入されたのだ。

『商品が購入されました:48,000円』

 送料と手数料を引いた純利益は、【+44,400円】。

 仕入れ原価がゼロだったため、売上のほぼ全額が純粋な利益として口座に着金した。

 さらに、前話で仕掛けていたジャンクオーディオの売却益も確定し、俺は資産管理シートの数字を更新した。

【本日の収支計算】

・前回までの総資産:404,360円

・フィルムカメラ(Nikon FM2)売却純利:+44,400円

・その他せどり回転利益(ゲーム周辺機器等):+12,240円

★ 確定総資産残高:【461,000円】

「……四十六万一千円」

 電卓の液晶を見つめ、俺の口元に笑みがこぼれた。

 高校卒業時、ポケットに三万二千円しか入っていなかった十八歳の口座残高が、四十六万円を突破した。

 目標の「種銭百万円」の折り返し地点――【五十万円の大台】が、もう完全に手の届く距離まで迫っていた。

 机の上のスマホが震える。九条源蔵からの着信だった。

「もしもし、じいさん」

『おう、工場のカモは処分できたか?』

「処分じゃありませんよ、救出です。

 リボ払いとパチンコの期待値を叩き込んで目を覚まさせました。

 お礼に譲り受けたオールドカメラを海外向けに売却して、資産は【四十六万円】に達しましたよ」

 受話器の向こうで、源蔵が「ケッ」と小気味良さそうに鼻を鳴らした。

『人のケツを拭いて小遣い稼ぎとは、ますます食えねえ奴だな。

 だが坊主、五十万の背中が見えたからといって浮かれるなよ。

 せどりでどれだけ種銭を作ろうが、てめえの身体が動かなくなったら利益は止まる。

 次のステージへ行くには、てめえの頭脳を補佐する【優秀なパートナー】が不可欠だ』

「パートナー……」

『そうだ。世の中にはな、圧倒的な才能やスキルを持ちながら、資本主義のルールを知らねえせいで、悪質なハイエナどもに時給数百円で買い叩かれて泣いてる奴が無数にいる。

 そういう原石を見つけ出し、てめえがレバレッジをかけてやるんだよ』

 源蔵の言葉が、深く胸に刻まれた。

 翌日の休日。

 仕入れの合間に立ち寄った駅前の静かなカフェで、俺はその「原石」と、運命的な再会を果たすことになる。

 神レベルの画力を持ちながら、「一枚二千円」で買い叩かれて涙を浮かべていた、元美術部の同級生――白石詩織に。

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:18歳/食品工場ライン工(手取り月14万8,000円・古物商申請中)

・総資産残高:461,000円(前話比:+56,640円)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+449,200円(不用品+セルフバック+せどり累計純利)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「リボ払いは貧民を一生縛る悪魔のサブスクだ。パチンコ屋の豪華なネオンは、負け犬どもの血税で光っていると知れ」

読んでいただきありがとうございます。

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