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戦国異世界で國盗りの翁  作者: 大上
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寝覚める巨人

「九十九神よ。被我の損害状況を教えてくれ」



〈まず今回の戦での軽度負傷者でございますが島津方について千七百四十六人、大友方では千二百二十二人となっております〉


ふむ。流石強化された大友兵だ。終始有利に事を運んでいたはずではあったのだがこれ程削られるとはな。


〈次に治療に数ヶ月はかかると予想される重度負傷者でございますが島津方について三百二人、大友方では四千九百八十三人となっております〉


おお。十倍以上のレートを叩き出したか。あの弾幕の密度の中では流れ弾で皆倒れて逝くのだろう。


〈最後に戦死者でございますが島津方について九十人、大友方では五千七百七十五人となっております〉




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








大友家による旧伊東領への侵攻は失敗という形で幕を下ろした。


上回る兵員に妖(あやかし)の力を加えた強敵。

一度退けることに成功した島津家の名声は九州を越えて全国へと伝播していった。


水飲み百姓から京の御所まで戦乱を勝ち抜く猛者たちの噂でもちきりとなっている。

戦前では九一で大友の勝利と囁かれていたこの戦(いくさ)もこの意外な島津の反撃によって分からなくなってきたようだ。




確かに大友家は痛烈な初撃を浴びせられたことには変わりない。

そうではあるが毛利家の支配する中国地方への牽制、四国の覇者たる長宗我部家への港の防衛にかなりの人員を割いていたのもまた事実である。


島津を降すのに十二分な戦力を抽出したつもりであったために国を総動員して南下方針を取らなかったことが敗因であろう。







「わしはどうやら島津を安く買っておった様じゃな」


ゆったりとした着物に身を包み南蛮渡来の酒を呷る等悪い意味で余裕に興じていた大友宗麟(おおともそうりん)はもはやそこにはいなかった。


戦装を纏い頭髪を剃り上げ鋭く見渡す目付は今までのそれとは別人の威厳を放っていた。


「お待ちしておりました。殿」



深々と頭を垂れる立花道雪(たちばなどうせつ)の目元より一筋の水滴が畳へと吸い込まれる。


「何はともあれよくやってくれたな。道雪、また他の者もだ」


落ち着き、然れど垣間見得る激烈な気色を含んだ口調は前に控える数多くの将を震えあがらせた。



「此度の戦の責は龍造寺隆信めの謀叛を見抜けず、島津の要害を甘く見ていた某にあり申す。如何様な処分をお申し付け下さいませ」



悔しさ、そして己の思慮浅さ。

立花道雪は自戒する。噛み締める唇からうっすらと血を滲ませながら。



「そうであるか。ではそなたに、いやここに集まった将から末端の兵まで総てに命じる」


「持ちうる全霊を尽くし島津を粉砕せよ。毛利、長宗我部とは既に不可侵の講話が完了した。後顧の憂いはもはや存在せぬ。ここが大友家にとって始点である。存分に暴れて見せい!」



「「ははっ!」」






大友家総勢七万が島津との国境に張り付けられようとしていた。


総大将に大友宗麟が出陣し、軍を監督するのは帝級妖怪【不知火】を従え愛刀【雷切】にてあらゆるものを切り伏せる【雷炎帝】、立花道雪である。


加えて兵は【不知火】の加護を得て大きく強化されており、更に悪い事に勝ち戦続きによる慢心も無い。



快進撃を続ける島津家の行方に暗雲がかかり始めるのであった。


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― 新着の感想 ―
[一言] うんうん。 読んで良かった大満足。
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