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戦国異世界で國盗りの翁  作者: 大上
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肉斬骨断

「奴等は何を入念に造っておるのじゃ?」


前線の情報を聞いた大友宗麟(おおともそうりん)は訝しむ。

島津兵が少ない人員ながらおそらく戦場となるであろう平野に何かを築いているという報せが入ったのだ。

かなりの兵力を西へ輸送しているとの報告が入ったために破れかぶれの防御が目的であろうか。


「土塁や柵・・・にしましては規模が大きく、何重にも重ねて設置しているようでございます」

有馬晴純(ありまはるずみ)が答える。


白兵の戦においては地の利というのは戦局に大きな影響を及ぼすことはいうまでもない。


確かに櫓を強固にしたり、布陣する場所を敵より高地とすることは有効な手段ではあるもののここまで大がかりな土木工事は聞いたことがないのだ。


「何を企んでいるというのだ。多少防御力があがったとしても絶えず攻め寄せる我が強兵が突破出来ぬとでも考えているのかもしれんのう」


「その通りでございますとも、殿。幾重にも柵などを張り巡らせたとしても一度前を抜いてしまえばそれは敵の撤退を阻む迷路と成り果てることでしょう。島津は自分達で墓穴を掘り網目の棺をこさえているに過ぎません」


「そうであろうそうであろう!な、晴純よ、そちも飲まんか!」


「ははぁ、ありがたく頂きましょう」


南蛮より渡来した葡萄酒をあおりながら今後すぐにでも発生するであろう戦に思いを馳せる。



「殿、あれは今まで戦ってきたものとは何か異なるように感じまする」


立花道雪が心中の懸念を吐き出す。



「無策に動いた行動としましては明らかに統率がとれ過ぎていますれば、おそらく佐土原の守将は何かしらの目的を為そうとしていると考えるべきが得策かと存じまする」




これ迄多くの勝ち戦の指揮を採ってきた立花道雪は敗北し往く大名家がおおよそとりうる最後とは毛色が違っていることを本能で感じ取っていた。


「ううむ、確かにいつもとは違ってみえるのう」

歴戦の将の進言に些か慎重となる大友家当主。







そしてこれこそが鉄山の打った計略の一つなのである。



入念な準備を掛ける大がかりな工事を伴う戦略。



歴史を辿れば豊臣秀吉が打ち立てた一夜城という陣城であろうか。


それは木を用いるなどした巧みな隠蔽によりごく短い期間中に築かれた支城である。

実際は一夜で建築された訳ではないのだが戦局に大きな影響を与えたことは想像に難くない。


敵兵からしてみればで今までドンパチやりあっていた野戦陣地に急に前線基地が現れるようなものであろう。




今回の重馬防柵や重土塁も建設にあたり大友家に知られたくないのであれば夜間であったり遮蔽物の影であったりのうちに建設するべきだろう。




しかしあえて全ての工事を昼間のうちに行っており、これみよがしに敵の斥候へと見せ付けている。



これは大友軍の中の慎重派の武将へと猜疑心を吹き込み、大規模進行を遅らせる事に期待したものであった。



が、望みは薄いと鉄山はみている。


しかもこの手は敵軍に事前情報を開示する必要があるため、また戦前に破壊工作を行われる可能性もあるため、ハイリスクローリターンと言わざるを得ない手である。


そうまでして鉄山が欲したもの。




それは時である。




現状勝っていない方が強者を御するためには何かしらの武器をもたねたばならぬ。


同じ面で打ち当たれば力の強い方が勝つのが道理であろう。


しかし体だけ大きな者が小さき者によりその腹を角で突かれれば死ぬ事があるように、戦の全てが戦力に依存するという訳ではない。



そして今回の設備がその 角 たる役割を果たしてくれると信じているために何としてでも完成した状態で口火を切りたいのだ。




「あと少し、僅かでいい」





「躊躇え、大友宗麟よ」



呟く言霊は夏虫の声に乗り、夜空へと消えていった。



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