細糸を手繰って
わが隊は現在大規模な野戦に向けて戦場となるであろう場所に多様な仕掛けを築いている。
大部分の兵力を西へ輸送したという偽の情報を裏付けるためそれほど多くの人員を工事へと割けない状態であるものの、我が隊は持ち前の力を活かして次々と作業を進めている。
次々と土塁が築かれ馬防柵が打ち立てられていった。
しかしこの東部の戦域へと大友兵が集まってきており、補充速度が予想よりも速いようだ。
この調子で行けばこちらの防備が整う前に敵兵が必要量前線に揃ってしまうだろう。
「鉄山殿、もうじき時を置かずに戦が始まりそうですな」
物見櫓より帰還した旧伊東家当主である伊東義祐は物憂げにこぼした。
敵は既にこちらと同等かそれ以上の兵力を配備しているのにも関わらず連日更に多くの兵が補充されてゆくのだ。
妖の力も相まって対する我らの絶望性を肌で感じ取っているのだろう。
「うむ。忍びの報告からでも近々出陣してくると聞いている」
見積もって開戦までは長くて一週間、早くて明日といったところであろうか。
理想のタイミングとしては防備構築の完了後にこちらから出陣し、遅れて出てきた敵を迎え撃てればよい。
しかしながら肝心の工事の完工率は未だに半分程度のであり、おそらく最低でもあと五日はかかるだろう。
こればかりはどうしようもない。いくら鞭を打ったところであの人手ではそのくらいはかかってしまう。
そこで俺は一つの手を打っておいた。
これは成功すれば御の字、失敗して当然というようなものであり、成功率は軍を率いる頭脳の性格的なものに依存するであろう。
仮に成功した場合は敵の出陣を多少なりとも遅らせることができるはずだ。




