欺瞞への進言
「殿、やはり少し違和感を感じますぞ」
相良家が風前の灯となり残りの処理を部下へ任せた立花道雪は大友家の本城である府内館へと呼び出されていた。
夜の間を照らす行灯は台へと置かれている戦略図の影を揺らしてゆく。
道雪はこの遠回りに島津家を追い詰めてゆく作戦に異議を唱えている。
「確かに西部の島津兵は日に日にその数を増している事は夜間の篝火数の増大により確認されておりまする」
「しかし奴らは山岳丘陵地帯を選んで陣を構築しており、巧みに遮蔽物を使ってのけている故にその全容は未だ不透明なままでございます!」
「道雪、こちらにも策があるのだ」
「龍造寺隆信の情報を元にした策で御座いましょう」
立花道雪はいまだに新規加入した有馬晴純と龍造寺隆信を信頼しきれてはいないようである。
この戦国の世において例え滅亡したとはいえども強かに狡猾に今まで家を存続させてきた大名たちが、何かしらの目的を持って臣従しないはずがないと踏んでいる。
「道雪よ、彼らは一度滅びたものの新たに我らの同士として共に天下へと進んでくれている。今この世界で最も天下へと近いのは我が大友家である。仮に謀心があったとしてもこのまま大勢力の重鎮として功を立てる事の方が自分達に利する事だとわかっておろうて」
「しかしですな、殿。この戦国の世において最も頼りになり、また尤も畏れるべきものこそ無尽蔵に湧き出る野心にございますぞ!二番手その他では満足出来ぬ曲者も五万と居りますればーーーー」
「もうよい道雪よ。お主は前線で働き通しであった故にちと疲れておるようじゃな。人を信じて任せるということも時には重要なのじゃよ」
「ーーーーーーーーー畏まりまして御座います。では失礼。」
軍議の間をあとにした立花道雪はしずしずと帰路についた。
「敵兵を前にしたときの勇猛さ、状況を鑑みる知将の素質全てをとっても比類なき優れた武将よ。我が天下にはなくてはならぬ男だ。」
「ちと考えすぎる事が玉に傷だがな」
満足そうに再び葡萄酒を煽る大友家当主大友宗麟は大局を俯瞰する己の目付けを疑おうとはしない。
忍びを通して裏付けされた情報は間違えようはないし、部下が探りを入れたものとの整合性も取れている。
石橋を叩きすぎて橋を落とすとは言うが二回叩いただけでは判らぬことは多い。
ましてそれが思い込ませるために張られた策であったならば尚更であろう。
兵将共に東部である伊東家との国境北部へと輸送が完了しつつある。
相良家の併合が完了し、西部の防備が整い次第旧伊東領より島津家へと進行する。
妖の力を武器に決戦を挑み島津家をねじ伏せ、九州を統一してゆくゆくは京をものみこんでやろうて。




