火縄銃に不可欠なモノ
火縄の量産が開始されたことにより島津家の慢性的な鉄砲不足は解消されつつある。
しかし銃本体だけでは敵兵を殴打するくらいにしか役にたたない代物だ。
そう、火薬が必要となってくる。
正式には黒色火薬であるがな。
火縄銃とは黒色火薬の爆発の推進力により鉛玉を打ち出す機構である。
因みに鉛玉は既に備蓄まで可能なほど鉱山で生産されている。
融点が低いため加工もしやすく簡単に量を揃えることができるだろう。
黒色火薬は現在その需要の100%を貿易、輸入により賄っている。
火縄銃本体の時と同様にその価格は暴利と表すには優し過ぎる程のものであり、またそれは命をかけて長い航海を経て日本へとやって来た交易商人の当然の権利でもある。
しかしこのまま銃の使用率が増え、そのまま火薬の消費量が比例的に増加していけば間違いなく早々に我が隊の成長限界がやって来てしまうであろう。
「鉄山様、今回の出来はいかがでしょうか?」
太助が厳重に封をされた袋を差し出した。
この物々しい物体の正体は実験段階の国内で初めて生産された黒色火薬である。
そもそも平成の時代で俺は育ち、そして暮らしてきたのだ。
勿論火薬なんてものは作ったことなど無いし、窒素がどうこうしてなんやかんやという程度の知識しか持ち合わせていない。
九十九神に聞いてみたが、海外で取れる硝石が必要とのことにより、あまり参考にはならなかった。
この時代ではそれが一般的な製造法なのであろう。
しかし原始的な火薬の生産方法を太助と共に研究開発中なのである。
生産が可能な理由、それは数十年前に読んだ一冊の本の記憶を断片的に思い起こすことに起因する。
たしか硝石、硫黄、木炭の混合物である黒色火薬はそれぞれ7:1.5:1.5の割合の混合により作られると書いてあったようなきがするのだ。
肝心の硝石の製法であるが
原理は全く判らんがまず人糞にヨモギなどを混ぜ合わせる。
そこに尿を掛け、よく混合する。
するとたしか硝酸カルシウムだったか?ができる。
最後に灰汁で煮詰めれば硝石ができると書いてあった。
実験は着々と進んで行き、気の遠くなるような回数を経て遂にこうして結実したのだ。
輸入した火薬と見比べても遜色無い品質にまで高めることができたようだ。
あとは実際に使って調整してゆくとしよう。
「よくやってくれたな、下がれ」
「ははっ」
遂に我が隊に必要な物資のすべてを自給できる目処がついた。
西部線戦は依然として苦しい状況のようであるため、残された時間は多くはない。
そろそろゆるりと動き始めるとするか。




