国産火縄銃
「やることはやっておるようじゃな、鉄山よ」
四兄弟の祖父日新斎が満足そうに微笑む。
聞いてみればこの爺は薩摩中の職人たちに号令を出し、いち早く量産の方法を確立した者には多額の報償金を出すと宣言したらしい。
俺の計画を見越して手を打っていたらしいな。
職人達はこぞって我先にと貴重な火縄銃を分解し、その機構を解き明かそうと躍起になる。
百丁ほどの損害こそ在れどもその技術革新は日進月歩で進められていったようだ。
無理矢理やらされた作業とは違い、競争するように自主的に努力した作業効率は非常に高いものであった。
そして僅かな日数で設計図が製作され、形は歪とはいえついには試作壱号までが造られるようになってしまった。
島津家という国家の威信をかけたプロジェクト、鉄砲の量産は確実に実を結びつつある。
その証拠に現在輸送隊が生産の完了した史上初の 国産火縄銃
百丁を乗せてこちら佐土原城へと向かっているそうだ。
試作品の百丁とはいえ分解により損じた百丁は最早埋め合わせが完了した。
これからは量産のノウハウを確立させ、品質を向上させ続ければいずれ天下に轟く大鉄砲隊が生まれる。
旧当主様には感謝せねばなるまいな。
基本的に老人とは皆凝り固まった考え方をする者が多い。
長年にわたって人生の指針としてきた方法は間違っているはずがなく、これからも通用していくと勘違いするものは更に多いだろう。
ところがこの爺、島津日新斎は誰よりも順応が早く時代の流れに機敏に適応している。
ここまでの勢力を引っ張ってきただけはある、非常に優秀な家の戦力だ。
「これで僕にも火縄くれるの?」
「かっかっか。勿論じゃよ、又七郎。これからはお家の皆で使っていこうな」
現在島津家が保有する鉄砲の大半は肝付家からの防衛戦の活躍により鉄山隊が保有している。
現状最も火縄の特性を理解し、巧く扱える鉄山隊に異議を唱える者はいなかった。
鉄砲を高密度で配置しこれ迄にはなかった弾幕による防御陣形は多量の人員と物資を必要とする。
千丁余りではごく限られた場所、例えば城門や砦など狭い戦地での運用を強いられていたのだ。
しかしこれからは隊の規模に応じて戦線を埋め尽くすほど、大規模に配備できる可能性も見えてきた。
これで鉄砲の不足は改善され、我が隊は他家に先駆けて最新式の軍となるであろう。




