敵戦力の情報
先ずは情報だ。
九十九神によると当主の名は大友宗麟であり、戦国における最も武勇の優れた武将の一角である立花道雪を配下に持つ大名であるという。
現在の情報を正確に知りたいと要望を出したところ、最新の情報は不可能だとのことだ。
この九十九神のシステムは、俺の転生した時から更新のされないコンピューターのようなものだということもわかった。
つまるところ転生時に確定していた事柄はわかるが、刻々と変化する世界を逐次調べられるというものではないようだ。
仕方があるまい。おとなしくこの時代の諜報機関、忍者を使うべきである。
「鉄山殿・・・・おりますかな?」
背は低いが筋骨隆々な中年が部屋の外から顔を覗かせた。
少々物憂げな表情を見せている。
「おお、これは義祐殿。どうかしましたかな?」
「どれ、少し世間話でもと思いましてな。あと某はあなたの隊へ与力として付随致します故、敬語は不要ですぞ」
「・・・・・・そうか。してどんな要件だ?」
この人は元伊東家大名である伊東義祐その人である。
一月前までは大名であったがこれ以上大友家の進行を防ぎきれないと悟り、島津家に降伏する決断をした。
激動の期間であったために目の下には大きな隈が出てしまっている。無理もない。
「大友家はゆっくりと国境沿いの兵を増やしつつあるそうですな」
「うむ。時期は判らぬが確実に攻め込んでくるだろう」
「本来であればこの地はとうに大友の手へと落ちていたでしょうなぁ」
「だろうな。しかし現在は大勢の島津兵が防備を固めている故、当初の兵力ではこの城を攻略できぬだろう」
「はぁ。度重なる三倍程度の兵力からの侵略を退けこそすれども、それが十倍。更に妖の力まで振るわれては為す術もありませんからなぁ」
大きくため息をつく伊東義祐はこれまでの伊東家の軌跡や大友との関係を吐露する。
この男は大名の身でありながら常に先陣を切って敵陣へと突撃し、多くの首をあげている猛将である。
その武もさることながら常に前を騎馬で駆ける大将の姿は味方を大きく鼓舞したことだろう。
伊東兵の強さは並だが、皆領主のために命をなげうつことも厭わない覚悟を持っている。
死をも恐れぬ兵は最も相手にしたくないものだ。
また、大友家の兵力は伊東家が戦術でどうこうできる範囲を超えるまでに膨れあがってしまった。
伊東家を取り込んだ今の島津家と比べて五分、若しくは僅かに此方が負けているといったところか。
加えて大友家お抱えの妖怪[不知火]は非常に厄介だと言う。
兵員の身体能力強化に加えて、憑依した愛刀[雷切]を手に暴れまわる立花道雪は最早自然災害のような強さを発揮するという。
「ちょっと待て、おい九十九神よ。憑依とは何だ?妖怪に憑かれた人間は脱け殻のようになるか取り込まれるのではないのか?」
〈殆どがそのどちらかとなり果てますが、稀に妖を実力や魅力で屈服させ利用する者もおります〉
参った。強大な力は単調であればいくらでも御す方法があるが、使うのが頭の冴えた人間となるとな・・・
「十分に大友家の強大さを理解していただけましたかな?」
大きな肩を消沈させながら義祐が言った。
「詳しい話は島津の方々を前に追々致しますぞ。では某はこれにて」
「そうでした」
立ち去ろうとする義祐は去り際に話した。
「帝級妖怪[不知火]を従え[雷切]を振るう立花道雪を、人々は畏敬の念を込めて[雷炎帝]と呼ぶようになったとか・・・・十分にご注意なされよ」
再び静まり返った部屋で思考を巡らす。
「雷炎帝か。大層な二つ名だな」
小さく紡いだ言の葉はいつまでも耳の中でこだましている。
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駄文失礼致しました。




