嵐の前の静けさ
「ダンナァ!目が!!!目が見えるよ!!」
大友軍とのにらみ合いが続く中、つかの間の平穏を享受している。
じっとしているばかりでは兵の体を鈍らせてしまうため、個別に組を抽出し鍛練にあたらせているのだ。
鉄砲の鍛練を指揮していると隊の中より驚きの声が相次いでいる。
「目が見えるのは当たり前だろう。それとも目玉二つでは多すぎると申しているのか?」
「違ぇよダンナ!今までよりすげぇ遠くのものが見えるんだよ!」
弥吉が興奮しながら話す。
弥吉だけではない。参加している全てにその効果があらわれたようで、射撃の的中率が僅かに上昇する結果となって表れた。
これはこの前の肝付戦で討ち取ったひょうすぼうから奪った[隊視力強化]のスキルのためであろう。
しかし所詮はこの時代の火縄銃である。
いくら遠くを見渡せようが放たれた玉は一定距離を過ぎれば大きくカーブしてしまう。
まだ伝来して間もないので改良は難しいだろう。
だからこその質を量で補う火縄銃の高密度集中運用が現実的な方法である。
「鉄山様。職人達への量産の契約、ほぼ要求通りの結果となりましたぜ。奴らは火縄の分解に興味津々ですぐにでも設計図を作るって張り切ってましたよ」
やったぞ!これで数百の鉄砲を数千人で使い回す演習とは決別できる目処がたった。
薩摩まで往復してきた太助をその場で訓練に参加させながら更に強化されるであろう鉄山隊を構想する。
もちろん費用は全額大名である貴久がやりくりしてくれることとなっている。ありがたい。
それに伴い火薬や銃弾の量産も急がせねばならんな。
砲身だけあっても鈍器としてしか役に立たないし、戦のたびに多くの資源を消費する我が隊は島津家一の金食い虫だろうて。
まあ金と戦を天秤にかける愚か者は一人もおらんで助かったがな。
そもそも戦争とは金がかかるものである。
故に国力や市場の発展度合い、金山銀山の有無などはその国の戦力に直結するのだ。
簡単に言えば金持ちは強くて貧乏は弱いということだな。
「三郎、只今戻りました。」
「うむ。ご苦労であったな。報告はあとで聞かせて貰おう」
「はは」
村で助けた三郎はあの後俺になんとか恩返しがしたいらしく、仕官を申し出てきた。
あの怪我は弥吉に切りかかろうとした屍から身を呈して守った時につけられたためだと言うことも聞いた。義理も固そうではある。
身のこなしが軽く忍びの才能があると感じたため薩摩忍者衆に鍛えなおして貰いに行かせたのだが、最近になって予想以上に才を開花させて立派な忍者として活躍している。
今回は大友の探りに行かせたのだが、さて、どんな情報をつかんだのだろうか。
「これが今回集めた情報の全てでございます」
「うーむ」
状況はあまり良くないようだ。
北九州全土を掌握した大友家は滅ぼした龍造寺家、有馬家領内の復興は済ませたようだ。
今は総勢八万の軍勢の殆どを中国地方への防備を除いて島津家と我らの同盟国である相良家国境に張り付けるつもりらしい。
それにしても八万か・・・・
我らの兵力は肝付家、伊東家の分を足したとしても七万いくかどうか。
数でも劣り更に相手は妖の力で強化された兵士達である。
セオリー通りに行けば降伏を選択肢に入れてもいい程度だ。
無論そんなことは絶対にするつもりはないがな。
しかし・・・どうする・・・・
これは苦しい戦となるやもしれんな。
先ずは火縄の量産を急がせねば。




