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戦国異世界で國盗りの翁  作者: 大上
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苦渋の決断

「今しがた伊東家より降伏の使者が参った」



貴久はゆっくりと呟いた。

昼に将を集めたことから何かあったと考えていたが、これは重要な案件である。


「父上はいつの間に降伏勧告をお送りになっていたのですか?」



「いや、儂は伊東家に対してまだ一度も降伏勧告をしていないのだ」




「ではなぜ急にそのような使者が?」




「これは伊東家の最後の意地なのかもしれんな」



話を聞いているうちに伊東家のこれまでの状況がなんとなくわかってきた。


宮崎県辺りに位置する伊東家は北に大友家と接しており、度々攻め込まれていた経緯がある。

その大友家が今や龍造寺、有馬を併呑し北九州を統べる大大名となってしまった。

元々二か国を勢力下においていたために今や全国で最も天下に近い勢力である。


今の伊東家に撃退できる実力はないだろう。




「それで返事は如何なさいましたか?」



「時が惜しい。いつまた大友家が挙兵するともわからぬ故、細かい条項は無視して受け入れるつもりであることを伝えた」




「良き対応じゃったと思うぞ。まずは伊東家の居城に兵を輸送し防備を整えるのが得策じゃろうなあ」



日新斎が鼻毛を引き抜きながら涙目で答える。

他に異論があるものはいないようだ。



「では始めに鉄山隊を送る。守りにおいてこれ以上にふさわしい者はおらんだろう」


「ははっ。おまかせ下され」


皆当然であるような体で納得してくれたようだ。

三男歳久もうなずいている。

ようやく信頼して貰えたのかもしれん。ずいぶんと時間がかかったものだ。



「次に義弘隊、歳久と父上の隊を順に向かわせる。到着次第防備を強化せよ」


「父さん、僕も行きたいよ」


四男坊の又七郎が駄々をこねている。

こいつも義弘に次ぐ天賦の武勇をもっているもののまだ元服を終えていないため、隊を率いるには早いだろう。



「又七郎、兄ちゃんと鉄砲の訓練しながら皆の勝利を待っていよう。お前は私と内城の防衛という大切な仕事があるのだからな」



ぶーぶー文句をいう四男を長男義久がなだめる。


又七郎は何度か俺のトレーニングに参加し、若いながら全ての種目を完遂している。

また、鉄砲に強い興味を示しているため、目を輝かせながら二つ返事で納得した。










街道の整備は後回しだ。

先ずは鉄砲隊に適した狭間に城門を改築しなくてはならない。

急ピッチで作業にを進める。



伊東家は元々八千の兵を保有しており、優秀な当主である伊東義祐(いとうよしすけ)によって損害を軽微に留めながら何度も大友家を撃退してきた勢力である。

兵も皆強く、練度士気共に高水準だ。


しかし島津家の戦術に慣れていないため、直接我らが統制するのはこの短期間では厳しいだろう。


そこでこれ迄通り伊東義祐を将として隊を編成し、共に大友戦へ加えることにした。





敵は強大である。

肝付家とは比べ物にならないほどの国力を有しており、偵察の忍びによれば当主である大友宗麟(おおともそうりん)の腹心である立花道雪(たちばなどうせつ)は妖(あやかし)を使役しているらしい。

我らと同程度の国力ではあるが、まともに戦えば妖の能力により十中八九敗北するであろう。



だが今回は策を練る時間もあるし、場合によっては前線の城を鉄砲櫓によって要塞化することもできるだろう。



まともに戦って負けるならばまともに戦ってやらなければよい。

武士道精神、正々堂々なぞ自らの矜持を示す以外にクソほど役に立たん。

勝ってこその戦(いくさ)である。




謀略の全てを尽くして奴らの力を削ぎ落としてやろう。










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