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戦国異世界で國盗りの翁  作者: 大上
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戦果の轟砲

戦場に煙が立ち込める。

しかし絶えず供給される硝煙は風に吹き流されても決して晴れることはない。


先ほどまで静寂に包まれていた城門は怒声、苦悶の声、砲声によって全く別の場所と成り果てていた。



陣太鼓の音に合わせて鉄山鉄砲隊はサイクルを刻む。

射撃、弾ごめ、構えの三段構えの形態は驚くべき回転率を誇り、射撃手の練度と相まって凄まじい威力を発揮していた。


いくら加護のある兵士とはいえゲリラ豪雨のように浴びせられる弾幕になすすべはなく、みるみる死体が増えてゆく。


千人程の先鋒は開戦時に全て射程範囲内に入っていた。

そのため痛烈な初擊によってほとんどの兵士は負傷し、脱出できた者は皆無であった。



一瞬のうちに全兵力の1割程を失ったひょうすぼうは口をあんぐりと開け、馬の上で硬直していた。

何の能力も持たない人間の集団に遅れをとったことがにわかに信じられない、そんな事を考えている顔である。



他の部隊は射程外ということもあって、奴のフリーズが収まるまで待ってやることにしよう。

おそらく敵軍は一方的な攻撃を嫌がり、ひとまず陣へ帰還し何らかの対策を練って再び攻めこむだろうな。




そんな事を考えていると、なんと肝付軍は再び城門へと進軍を開始したのである。



馬鹿な!この短時間で我らの攻略方を思い付いたのか!



と焦ったのは一瞬であった。



奴の顔は冷や汗にまみれ、不安をかき消すように周囲を怒鳴り付けているのが見えた。

脳の処理能力を越える事態に直面し、力では負けるはずの無いご自慢の兵士達を雑に送り込むことに躍起になっている様であった。



これはありがたい。ここで本隊に壊滅的な打撃を与えることが出来れば奴の作戦能力は大きく減少することになるだろう。




続々と射程を踏み越える肝付兵が不憫でしかたがない。

無能の元で働くのはさぞかし大変であろう。




しかしこれは戦争なのである。

情けなどかけていては自国の人間がより多く死ぬことになるだろう。

こればかりは割りきる他はない。




既に三段構えの陣形は整っている。


砲手は約千人、敵の戦力とは大きな差があるため、一度に処理できる人数には限りがある。

正直に言えば二万丁ほど火縄が欲しかったのだがな。

追々殿に進言するとでもしよう。


二千人ほどが狙える位置に踏み込んだか。

そろそろ頃合いだ。



手を開き真上に振り上げる。


砲撃前の合図に鉄山隊に緊張が走った。

前列の部隊が狭間より肝付兵に狙いをつける。



一呼吸の後の号令によって再び戦場は轟音と硝煙に包まれた。



結果は先ほどと大体同じとなったようだ。

果敢に城門をこじ開けようと突出してくる者、隊列を崩さずにゆっくり前進する者等様々であるが、皆等しく降り注ぐ銃弾によって崩れ落ちてゆく。


ただ一つの違いは後続の部隊が次々と投入されてくることであろう。

いくら敵を撃ち抜こうともより多くの数が投入され、こちらの対応できる範囲を越えようとしていた。


その証拠に数人単位ではあるが城門へとたどり着くものまで現れ初めていた。


もう一つまずい事態が発生している。

この従来では想定しない火縄の高密度運用に火薬と銃弾が足りなくなってきているのだ。

このままでは敵を殲滅する前に枯渇してしまうだろう。




敵兵は無謀な突撃によって大きく数を減らしてはいるものの、文字通り肉の盾を地でいくが如く、じりじりと城門へとりついている。


三千人程までは減らしたであろうか。

此方の最後の火縄が轟音を鳴らした。


安全地帯に位置するひょうすぼうはニタニタと笑っている。

明らかな弾幕の減少におそらくは此方の物資不足を確信していることであろう。


火縄の音が絶えたことを見計らって奴の本隊も進軍を開始した。


小さくふさいでしまった狭間のお陰で被害こそ抑えられたものの弓での迎撃はできない。


敵兵は衝角を用いて城門の破壊を試みている。

いくら鉄で強化が施されているとはいえ、筋力が強化された兵相手に長くは持たないであろう。




万事休す。ここまでか。






諦めかけていたその時。

鉄城門が勢い良く開け放たれ、内部より島津貴久、義弘本隊約八千が敵へと突撃を開始した。


それと同時になんと敵後方より義久の別動隊約二千がひょうすぼうの隊を急襲したのだ。



これはどういうことだと呆気にとられていると、義弘が城門の俺に向かって大声で状況を知らせた。



これだけ敵を減らせば後は自分たちで何とか対処できること。

兄の隊は反対側の門より出陣し、奇襲の機を伺っていたこと。

それを隠すために火縄の爆発音と硝煙は大いに役立ってくれたこと。



これはありがたい!

そうだ。戦争は一人でするものではなかったな。

頼れる味方というものは何とも心強いものである。



加護の恩恵を受けているとはいえ多勢に無勢、途端に変化した戦場、絶たれた退路と肝付軍が混乱に陥るには条件が整いすぎていた。


次々と兵は討ち取られてゆき、残すはひょうすぼうとその数人の取り巻きだけとなっていた。


そこに中央突破を果たした義弘隊が凄まじい強襲をかけた。

手練れと思われる親衛隊を次々と切り伏せ切り伏せ、ついにひょうすぼうまで迫る。


ひょうすぼうも槍を手に奮戦しているが、相手は鬼島津である。

敵とすれば厄介であった敵も味方となればなんと頼もしいことか。

何度か打ち合った後についには剣先が喉に迫り、首を綺麗に切り落としてしまった。






【鉄山は10のスキルポイントを獲得した】

【スキル強貪欲により、隊視力強化を獲得した】



これには驚いたな。

てっきり自分が殺めた相手にのみ発動する能力かと思っていたのだが、もしかすると自分の参加した合戦の味方の戦果にも適応されるのかもしれん。






戦場には島津兵の勝鬨が何度もこだました。


中心はひょうすぼうの首を掲げて雄叫びを上げる義弘である。

捕虜となった肝付兵も正気を取り戻したようで、皆力なくうなだれている。

厳しい戦いではあったが、人の力でも妖に勝利出きることを証明できたことは大戦果であろう。




何はともあれ俺の初陣は成功裏に終わった。

百点満点の出来だったとはいえないが、今は反省は後回しだ。

勝利に沸き立つ仲間と喜びを共有してくるとしよう。






























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