53話
暇だ。暇すぎる。
城に来てから2ヶ月くらいたったのだが、絶賛引きこもりニート生活継続中なのだ。
魔王は最近忙しいとかでちょっかいを全然かけてこないので助かってはいるのだが、いかんせん暇すぎる。
城の中でなんか手伝ったりしようかなー。と思って何度か色んな奴に聞いたんだが、
「おくつろぎ下さい」とイラッとした顔で返される。事故に見せかけるとか考えないだけ優しいと思ってしまう現状。
そもそも城の中歩くと部屋に帰れと言われる謎の状態。城下町にすら行けないし。
逃げ出そうとして腕がもげるかもしれないくらいの力で引っ張られた時は泣いた。
グダグダしながら考え込んでいると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。
魔王はまずしないし、他に誰かが来たりしたことも無いので不思議。恐怖しか感じないよ。
「どうぞー」
「失礼する。元気そうだな」
「………急にどしたんですか、ゼノ様」
「君に朗報を持って来てあげたんだよ。喜んでくれたまえ」
「内容によりますよね」
「君が本当にフィーネを妻に娶る機会を与えようと思っている」
「断る!」
「だめだ」
なん……だと……あ、あのゼノ様が、俺を、認める、だと……。
「内容としては、最近広まった魔闘気の影響で魔法を使いながら戦う闘士が我が国でも増えてきていてな。腕が立つ者が、我こそが魔王様に相応しいと名乗りを上げているわけなんだ」
「もうわかりました。お断りします」
「そこでだ。魔闘大会なるものを開催し、優勝したものにフィーネを妻に迎える事を許そうと思ったわけだ。だから、君も参加するだろう?もう選手として登録しておいたから安心してくれ」
「とうとう決めにきましたね」
「直接手を下すと怒られるからな」
ガッデム!!なんで基本説得じゃなくて抹殺なんだよ。
「それあいつは文句言わなかったんですか」
「かなり渋ったが、少し前のあの子に言われても聞く気は無かったからな。押し通した」
俺そんな悪い事したか?むしろ国どころか世界救わなかった?
「サクラ!」
「来たな。さぁ、最後の別れをしておきなさい」
「え?大会っていつ?」
「これからだ」
「本気も本気だな」
もっと別の事に必死になってよ。娘を説得しな。
「ごめんね……」
「別にいいよ。逃げるから」
「棄権、もしくは敵前逃亡をした場合は極刑が待っているぞ」
「……内容は?」
「フィーネの目の前でゆっくり八つ裂きにしてやる」
何があんたをそうさせるんだよ。俺がどう見えてんの?
「んじゃ、魔王が俺以外の参加者を戦闘不能にさせればよくね」
「お父様に止められた」
「もうやってたのな。てことは手詰まりじゃん」
「そうだ。つまり、戦え!そして死ね!」
もう言ってんじゃん。娘の前だぞ。
「………絶対勝たなきゃダメだよ。私も、お腹の子もサクラがいないとダメなんだから」
「………え?………え!?」
何今になってどデカイ爆弾落としてんだよ。
「………………え?」
おっと、ゼノ様も知らなかったご様子。これはやらかしですね。
「…………負けるなよ」
「発案者!取り消せよ!励ましなんかいらねぇだろ!」
「もう国中に伝わってるから無理だな。他所の国からも参加者が集まっているから今更やめられんよ」
「んなもん知るか!今1番焦ってるくせしやがって!」
「う、うるさい!よ、よく考えればお前じゃなくても別に構わんではないか!」
「初孫に、お父さんはお爺ちゃんのせいで死んだんだよ。って言えるんだな」
「うぐぅ!」
かわいい我が子が可哀想で仕方ない。不甲斐ないお父さんでごめんな。
「こうなれば、勝つしかあるまいな。いいか?何があっても勝ち残れ!」
「フィーネ、お前を愛してる。今までも、これからもだ。俺が死んでも、俺を忘れないでくれ」
「サクラ……私も愛してる……ずっとだよ……」
「やめてくれ!すまなかった!知ってたらこんな事はしなかった!」
出来てなきゃやる気だったんだよね。現にやるしな。
「結局どうするの?勝てる?」
「まぁ、無理だよね。諦めよ。子供って男の子?女の子?」
「わかんない」
「んじゃ両方名前考えとくか」
「ん」
「おい待て、まだ諦めるな。なんとかしてくれ」
「んな無茶な。俺を特別枠だろうがなんだろうが出すなら勝ち目無いからな」
「殺したら負けって条件足せば?」
「他の選手に殺した場合取り立てると約束したから負けだろうが殺しに来るぞ」
逃げ場無いじゃん。さすが元魔王。
「ゼノ様!そろそろお時間です!魔王様も急いで下さい!」
「………」
「………」
「詰んだな」
皆目を合わせてお互いに感じ取った。諦めよう。
指示に従って移動し、大会に向けて行動し始めた俺たちは、完全に見て見ぬフリをする事に決めたのだった。俺は被害者なんだがな。




