48話
翌朝、俺の泊まった部屋に集まり会議を始めた。
はいそこ、腹うるさい。
「泥棒についてなんだが、なんで捕まらないんだよ」
「奴は特殊な魔法で身を守り、転移して逃げるんだ。逃げた先は決まってない為に逃げられるらしい」
「囲んでボコせばいいじゃん」
「守りが固いんだよ。上級魔術も歯が立たないくらいの結界魔法を使うらしい」
上級がどんなもんか知らんし。というか殺意強いね。
「それって剣や闘気は防がれますか?」
「直接もだめらしい。1度、身の丈より大きな大剣で斬りつけたが、弾かれた事もあるとか」
本気で殺す気じゃん。よくそんな状況でまだ盗むな。
「んじゃ、その結界の中に転移するとかは?」
「結界はそいつの体に纏うように張られている。だから無理だな」
「なら体内に直接魔法をぶち込む」
「君は平気で酷いことを言うね」
「サクラ殿、最低限の優しさは持ってる方だと思っていたのに…」
他の奴だって散々似たような事してんだろ。なんで俺だけ責められるんだよ。どいひー。
「んじゃどうすんだよ」
「あ、魔力切れをさせて捕まえればいいのではないですか?」
「その前に転移してしまいますよ。追跡魔法も振り切られるそうですし、難しいです」
「なら魔闘気はどうなんだよ」
「おそらく効果はある。だが、奴はかなりの実力者で、拳闘士を拳で倒して逃げた事がある。だからそれ以上の実力者で魔闘気を操れ無ければ捕まえられないだろう」
「という事は、私の出番ですね!」
「さすがの泥棒さんでもお前の相手はしない」
「囮とかじゃ無いですよ!私が退治するって言ってるんですよ!」
どっちにしろ嫌だろ。俺なら一目散に逃げる。
「あの、それはやめた方が…」
「なんでですか!絶対倒しますよ!」
「いえ、1度女性が退治に向かったんですが、そのですね、奴に全身を触られて逃げられたらしいです」
「…………すみません、力不足でした」
それはしょうがない。さすがに何も言えん。
「ところでお前喋り方なんなん。キモい」
「い、いや、サクラさん怒ってるかなーって」
「サクラ殿は朝はいつもこんな顔ですよ」
「確かに怒ってる。バカに」
「い、痛い!つねらないで!」
何回言っても朝一叩き起こしてくるお前が悪い。
「んじゃ作戦は、バカが囮で、俺たちが奴を捕まえる。くらいしか無いよな」
「はっきり言って望み薄いけどね」
「いえ!私が倒してみせます!」
「お前の事は忘れん。安心しろ、骨は拾って故郷に連れて行ってやる」
「私を殺す気ですか!?」
じ、冗談じゃん。は、はは。わかった睨むな。
「おい、そういや変態っていつどこに出るかわかんなくね」
「そうだが、奴は現れてからすぐには転移しないんだ」
「なんでです?」
「奴は民衆に自分の姿を晒して罵倒を浴びてから逃げるんだそうだ。まさに変態だな」
まさか全裸コートとかじゃ無いよな。安心して下さい、穿いてませんよ。とかくだらない事してないよな。
街に移動し、巡回しまくる。いつどこに出るかわからんからとにかく歩き周るしか無いんだと。捜査の基本ってやつっすね!
「サクラ殿!あのお店に行きましょう!」
「お前だけ行ってろ」
「お金はサクラ殿が持ってるじゃないですか!」
「いや、レナちゃん、今はそんな場合じゃないからね?」
「ですが!腹が減っては戦は出来ぬと言うではありませんか!」
「んじゃお前は別行動な。俺とこいつで捕まえて俺とこいつで報酬をもらって山ほど飯食うから」
「で、出来ます!私はいつでも戦えますよ!」
「活躍次第で報酬振り分けるからな」
「って事は、私が1人で食べ放題!」
「それ、本当にいいのか?」
「こいつ絶対役に立たないから大丈夫」
「ちょっと!私はやりますよ!」
もう目に見えてるからいいよ。下手したらいなくてもいいレベル。
「きゃぁぁぁーー!!出た!!下着泥棒よ!!」
「来た!2人とも、行こう!」
「ごはん!ごはん!」
こいつマジで飯の事しか考えてねぇのかよ。頭痛くなったきた。
泥棒がいるだろう方向へ近づくと人だかりが出来てた。
間を抜けて見てみると、まぁキモい。
盗んだであろうパンツとブラをつけ、パンツをかぶり、頭にもブラを乗せてる。これは殺意湧くわな。
「うひょーー!!見て!!もっと!!僕を見て下さい!!」
うっわー。鳥肌すげぇ。これが、本物って奴か…
俺が引いてる間に2人が突入してる。こいつらすげえな。未だに躊躇しちゃうよ。
「下着泥棒!悪事はここまでです!大人しくしなさい!」
「お嬢さん、すごくカワイイ!!それに、オッパイでけぇーー!!」
「ひぃ!!!」
「レ、レナちゃん!負けないで!」
「い、いい、致しかたないようですね。わ、私が懲らしめてやります!」
「んおぉぉぉぉぉーーーーー!!!!辛抱堪らんわい!!!レナちゃん!今すぐなでなでしてあげまちゅね!!」
「い、いやぁぁぁ!!!」
あかん。完全に戦意喪失やん。
剣を抜いてはいるが、完全にただ振り回して近づけないようにしてるだけだ。
そしてにじり寄る変態。絵面が辛い。
「レナちゃん、俺に任せて!」
「貴様なぞに用は無い!」
「黙れ!行くぞ!」
変態が変態に突貫した。ゾッとするな。
だが、変態の前情報通り、変態はかなり腕が立つようで、変態が繰り出す連続攻撃を完全に見切って避けている。
何度か躱し、防ぎ、カウンターを入れられた。
重い一撃だったようで膝をついて蹲っている。エリートのくせに弱いよ。
「レナちゃん、これで邪魔者はいなくなったよ。こ、これで2人きりだね。僕と、ペロペロし合おうね!!!」
「ぎゃぁぁぁーーー!!!!」
乙女らしからぬ声を出すな。剣当たってねぇぞ。
「おい待てや」
「……なんだ、まだいたのか。僕とレナちゃんを邪魔する輩が。成敗してくれる!」
「うざ。大人しく捕まってくれや」
「ふん。捕まえたくば、力ずくでやってみろ!」
めっちゃ好戦的じゃん。逃げる気全く無いでしょこいつ。そんなにバカが気に入ったのかよ。
ド変態が俺に向かって攻撃をしてくる。
ジャブや軽い蹴り、はたまた掴もうとしたりタックルしたりしてきやがった。
俺は絶対に触れられたくなかったので、全力で避けた。ダメ!絶対!
「ほれほれ!避けてばかりでは僕を捕まえられないよ!」
「キモ、キモ、キモ、キモ、キモ、キモ」
「なんだその躱しかたは!感じてしまうじゃないか!」
「うぎゃ!!」
「ごふっ!」
「ちょ!サクラ殿!!」
…………や、やばい。ついやってしまった。
本気で気持ち悪くなって、つい魔闘気を纏って本気で纏い、つい本気で足にこめて男性のシンボルを蹴り上げてしまった。やりすぎた。ごめん。
死んでない事を祈る。
「ありがとうございました!!やっと……やっとあのクズを捕まえる事が出来ました!!ありがとうございます!!」
「いや、偶然ですよ」
「そんな事ありませんよ!素晴らしい回避!完璧な魔闘気の操作!そして鮮やかな反撃!とても感動しました!!」
「はぁ、ありがとうございます」
泥棒の首に賞金をかけてた被害者の会のトップらしきお姉さんにめちゃめちゃ喜んでもらえた。
周りの被害者の会の人達にも拍手喝采でなんかすげぇ事した気分になったよ。
ただの変態を捕まえただけなのに。
そして、変態は奴隷紋をつけ、魔力を封じられて、人族に売り付けるらしい。
あいつ喜んでたけど良いのか?
そして報酬は金貨3枚だった。めっちゃスカッとしたからと1枚もプラスしてくれた。ありがたやー。
「サ、サクラ殿、あの、報酬なんですが…」
「1枚は転移代、1枚は俺、1枚は変態だ」
「なんで!?」
「お前も頑張ったけど金貨はこれ以上分けられないだろ。半分にでも割るか?」
「う、うぅ、確かに。じゃ、じゃあ大銀貨5枚ずつに分けましょうよ」
「それじゃ3人で分けれないだろ。あとお前無駄遣いするからダメ」
「ごはん!」
「だとよ変態。男を見せろ」
「結局俺か…後変態って言わないでくれ」
諦めたようで何より。ちゃんと見せ場作ってやったんだから褒めろ。
飯をすませて魔導商会へ。変態はほとんど金を使う事になってしまった。すまない。
「いらっしゃいませ。資金の方は大丈夫そうですね」
「もしかして、もう広まってます?」
「はい。とても皆さん喜んでいましたから」
あいつすげぇ有名だったんだな。さすがド級の変態さん。
「それでは転移します。すぐですから楽にして下さい。いきます」
店員さんに言われ魔法陣的なものの上で立って待ってると、周りが光で包まれた。まぶし。
光が消えると、店の中が違う。成功?かな。
「お疲れ様でした。ようこそ、リューベンスへ」
どうやら到着。きゃわわな店員さんに出迎えてもらったよ。おいバカ腹をつねるな。
「サクラ殿、まずはどうします?ごはんにしますか?それとも宿?それとも……ごはん?」
「やめてさしあげろ。彼はもう金を持ってない」
「俺が出す前提はやめろ!」
身代わりご苦労。良くやった。
「とりあえず目的は魔王様だろ。会いに行くぞ」
「了解です!楽しみだなぁ」
「あ、あぁ、そうだね、はは」
何今更焦ってんだよ。頑張って言い訳考えるんだなエリートさんよ。
魔王城まで真っ直ぐ向かい、門まで着いた。
だが門には長蛇の列。なんじゃこりゃ。
「レナード殿、この列は?」
「これは、魔王様に謁見する為に並んでいるんだよ。だから俺達も並ぼう」
「アホか、日が暮れるだろ。なんとかしろや。コネでもなんでも使え」
「い、いや、それは、そう!俺達だけズルい事は出来ないよ!紳士だからね!」
「うるせぇ、行くぞ」
「ま、待って!ちょっと!」
何ビビってんだよ。散々自慢したんだからやってくれや。
「止まれ。魔王様に謁見したければあの列に並んでくれ」
「あ、あの、じ、実は、魔王様に、その、ちょっと、お聞きしたい事が」
「それは順番が回ってきてから言ってくれ」
「レナ・アルバークが会いに来たって言っても会わせてもらえない?」
「ぎゃあ!!サクラ殿!!」
「な、あのクライスト様の……少々お待ちを!」
慌てて門番の兄ちゃんが城に入って行く。うまくいくかね。
「サクラ殿ぅ〜なんで言うんですか〜ていうかなんでわかったんですか〜」
「いじけんなバカ。何となくだ。後で腹一杯食わしてやるから」
「むぐっ、ま、まぁ、今回は許してあげます」
チョロい。心配だよ。
「レ、レナ、さん、あの闘王様の、ご家族だったんですね…」
「い、いえ、親戚です。従兄弟ですよ」
「へ、へぇ、す、すごいなぁ……は、ははっ」
ビビってたら負けだぞ。押しまくれ。飯さえ出してりゃ食いつくぞ。
変態がそわそわしてる間に門番が戻って来た。
「魔王様がお会いになるそうです。では、ご案内します」
「んじゃいってら」
「え?サクラ殿は?」
「最初に言ってたろ。ほら、行った行った」
「いや、来ても良いんだよ?」
「行けバカ共」
ビビりを蹴りこんでさっさと城から離れる。
はいみっちょんこんぷりーと。
その足で再び魔導商会に。
「いらっしゃいませ。あれ?お客様、さっきもいらっしゃいましたよね?」
「はい。ちょっと用事が出来て。あの、ダリア王国へ転移って出来ます?」
「はいもちろんです。すぐに行けますよ。料金は金貨1枚ですが大丈夫ですか?」
「はい。それじゃ、お願いします」
「わかりました。それでは魔法陣の上へ、そこで大丈夫です。いきます」
そうして光に包まれた。金はいつか必ず返すから許してねー。
こうして俺は、人族の王国、ダリアに帰って?来ました。
エリス、待っててね!お兄たん、すぐに行くからね!




