46話
しょっぱい悪党をドヤ顔で追っ払ったバカはほっとき馬を借りに行った。
すると、商人の団体さんが、村まで仕入れに行くらしく、護衛の一員に混ぜてもらえた。
馬車は3つで、護衛は7人いたので3人ずつに分かれて馬車に乗った。
予定では5日程で着くらしい。おうまさん大好き。
でも一個不安があるのだが、護衛を雇っている理由だ。
魔物が少ないご時世になったにもかかわらず、護衛をなぜ雇うか。なんと山賊ならぬ、野賊とやらが出てきたらしい。
天使のせいや、追いやられた魔物のせいで村などの集落が潰されたのが原因だとか。犯罪者も逃げ出したり。
まぁあまり出くわすことは無いよ。って言ってたからまぁ大丈夫かな。
これで村までの不安要素は大体大丈夫だった。
それとは別にストレスがハンパないのだが。
「ねぇねぇレナちゃん。剣は誰に教わったの?」
「あ、あのー、父上に、です」
「へぇー、でも騎士様なのにレナちゃんは細くて綺麗だね」
「はぁ、ありがとうございます」
「強い騎士様なのに細身で美人。しかも、出るとこは出てる。男がほっとかないでしょ?」
「い、いえ、そんなことは」
「そんなことあるよ!ね?付き人君」
「あ、はい」
「ほらね。もっと自信持ちなよ。俺もレナちゃんみたいな子、凄く好みだよ」
「は、はぁ、ありがとうございます」
と、この様に乗り合わせたまぁまぁイケメンの魔族のお兄さんに騎士様が口説かれている。
そして俺はバカの付き人に任命された。
最初の人員の分け方では全然気づかなかったのだが、移動し始めてからめちゃめちゃ喋りだし、とにかくバカにアタックしまくって本気でイライラする。
特にこいつのバカ食いで無駄に肉がついた乳とケツばっか見てニヤケ面で、恋人いるの?この人とはどういう関係?俺はどう?とかうるさい。はっ倒したい。
「レナちゃん。村に着いたら俺と食事でもどうかな。俺はこの人と違って稼ぎがあるから好きなもの食べさせてあげるよ?」
俺を引き合いに出すな!俺がバカに興味あるみたいだろうが!
「いえ、お構いなく」
飯を出されても惹かれないだと……バカな。
意外と男に言い寄られる事があったのかもな。見た目だけはまともだからな。
「ねぇ、それじゃ、村に着いたら今度は俺と旅をしない?俺、これでもかなり腕は立つよ。彼くらいなら赤子の手を捻る様なものだよ」
自慢はいいから褒めろ。そんなだからバカでも落ちないんだよ。
「…………へ、へぇ、凄いですね」
揺らぐな!お前の基準は何なんだ!あと俺より強い奴なんて今なら山ほどいるっつの!
「レナちゃんはどういう男が好みなんだい?」
「そ、それは、やっぱり強くて、逞しくて、私を守ってくれる様な豪傑だったら素敵ですね」
「そんなのレッドベアーかオーガくらいしかいねぇだろ」
「し、失礼な!ちなみに!失礼な人は好みではありません!」
俺もお前は好みじゃない。むしろ謝れ。
「そっか、なら俺は君の基準には当てはまってるかな?」
「そ、そう、なんですかね?」
「まぁ、レッドベアーやオーガ位なら一撃で倒せるからね。どうかな?」
「す、凄い!レナード殿はお強いのですね!」
「まぁ、そこそこかな。魔王様の直属の部隊に呼ばれた事がある程度だけどね」
「おおー!!あの魔王様に!!凄い!!」
落ち着け。揺らすな。殴るぞ。
「ちなみに、君はどんな魔物を倒したことがあるんだい?」
「………………」
「サクラ殿?具合でも悪いのですか?」
「う…」
「う?」
「ゔおぇぇぇぇぇ」
「うわ!」
「ちょ!サクラ殿!?」
お前が揺らすせいだろが!!!ぶっ飛ばすぞ!!
なんとか外にブチまける事が出来た。1番後ろでよかったー。まだ出そうだけど。
「君、だらしないな。男として恥ずかしく無いのかい?」
「無い」
「えぇー。サクラ殿、そんなんじゃお嫁さんもらえませんよ?」
残念ながらゲロカスが好みの人がいるんだな。
俺から言わせれば中身スカスカのお前のが心配だわ。
1日目は日が落ちた所で止まり、野宿で終わり。
みんなで集まって飯を食う事になった。のだが。
「あ、あのー。彼も一緒では?」
「レナちゃん、彼は礼儀を知らない下品な奴だ。彼と一緒だとみんなも気を悪くするだろう。だからこれが最善なんだ」
と言って俺をハブにして皆で飯を食ってたよ。
商人のおじさんだけはスープ持ってきてくれてほっこりした。あざー。
2日目。並びもメンツも変わらず、日の出と共に出発。
「レナちゃんはどうして旅をしているんだい?騎士様なんだろ?」
「あ、それは我が家の古くからの習わしです。世界を周り、自らの知恵と腕を高めるために行っています」
「へぇ!凄いね!美しいだけじゃなくて強く賢く在ろうとする姿勢はとても尊敬するよ」
知恵だけはもう限界一杯なんだがな。
何照れてんだ。絶対ディスられてるだろ。
「ちなみに君は?」
「特に理由無いです」
「だと思ったー。どうせ箔が付くとか女の子に自慢するためにだよね。俺はそういう姿勢は尊敬出来ないなー」
俺はお前を尊敬してるよ。反面教師の鑑だ。
「と、ところでレナード殿は何故各地を転々として生活しているのですか?魔王様の元で働けたでしょうに」
「え?あぁー、俺は魔王様は尊敬してるけど、誰かの元で働くのは性に合わなくてね。それに、旅をしてると新しい発見や、素敵な人と巡り会えるからね。君みたいな人に、ね」
「え、あ、あの、そんな、私なんて」
自己評価はちゃんと出来てんだな。初めて褒めたい。
「謙遜しないで。君はとても素敵だ」
お前は他人の評価は全然出来てないな。バカを見習え。
「そ、それより、レナード殿はどういう戦い方をなさるのですか?お強い方の戦い方はとても参考になるので!」
「うーん、まぁレナちゃんになら教えてもいいかな。君には聞いてもわからないだろうけど」
俺を挟むな。なんのアクセントにもならねぇだろ。
「元々は魔法中心だったんだけど、今は闘気も使って戦うよ。実は、魔闘気も使えるんだ」
「え!?凄い!私なんて魔術も使えないのに!」
「ははっ、良ければ教えようか?」
「はい!是非!サクラ殿も教わりましょう!」
「え?彼には流石に無理だよ。君戦った事ある?無いよね。弱そうだから」
「無いですね。全く」
事実です。戻ってから魔物はバカが倒したし、天使は見てないし、悪そうな奴は大体騎士様がドヤ顔で追っ払うしな。ゴリゴリのヒモじゃん。
「それじゃ、まずは魔力の操作から教えてあげるよ。手を出して」
「え、はい」
お巡りさん、白昼堂々とセクハラしてます。
俺は別にいいからこっち見んな。ニヤケ面見ると殴りたくなるから。
魔族の兄ちゃんはバカの手をにぎにぎしながら魔力の操作を教えてる。
ジジイにも同じやり方した事あるけど出来んのかよ。下手したら魔闘気作るとこまでやってやんなきゃ出来ねぇぞ?
「ほら、こうだよ。出来る?」
「あ、あの、こう?ひゃっ、く、くすぐったいです」
「ちゃんと集中して。ほら、こう」
「ひゃん!あ、ご、ごめんなさい」
キモい!TPO!商人のおっちゃんもこっち見んなや!前!
2日目はずっとちちくりあってオワタ。もちろん魔力操作なんて出来てましぇーん。
んで晩飯。もちろん俺はぼっち飯です。この時だけは心が安らぐ。
3日目。別の馬車の人に変わって?ってお願いしたけど丁重にお断りされた。どうやらあの魔族の兄ちゃんは嫌われてるらしい。………俺じゃないよね?
「レナちゃん、どう?出来る?」
「あ、あの、わかんない、です」
「ほら我慢。魔闘気使いたいんでしょ?」
セクハラ上司ごっこすんな。そんな古い手誰もやんねぇぞ。あと見てて普通に気持ち悪い。また吐きそう。
「うーん、やっぱり手じゃ難しいかな?」
「え、えっと、ごめんなさい。あの、手以外の方が操作を覚えやすいですか?」
「まぁ、そうなんだけど。女性には、ちょっと」
「そ、それって?」
「その、胸、とか」
「え!?あ、あの、それは」
露骨に攻めるなー。手も足も乳も変わんねぇだろうが。
「もちろんやらないよ!俺は君を大切にしたいから」
なんで急に彼氏ヅラなんだよ。大切にされたからなんだよ。美容にでもいいのかよ。
「………い、いえ!お願いします!」
バカの極み。磨いた知恵はどこいった。
「でも、肌に直接じゃないと…」
セクハラを直でぶっこむな。ゲロを直接ぶっかけるぞ。
「……だ、だ、だい、大丈夫です!だから!お願いします!」
お前本当に大丈夫か?こいつの顔見ろよ。ゲスの極みスケベだぞ。明らかに乳しか見てねえだろ。
「………わかった。それじゃ「はいどいたー」なんだ!?おい!邪魔だ!」
いたたまれなくて割っちゃったよ。まぁしゃあない。
「サ、サクラ殿?何を?」
「いーから手ー出せ」
「え?あの?」
「バカの癖に頭使うな。使うの今じゃねぇだろ。おら手」
「は、はい!」
こいつの手を強めに握り、こいつに生命力と魔力をゆっくり、少しずつ流す。
こいつに混ざり始めた辺りで闘気を作成。
問題無く作り、次に魔力を混ぜる。
最初はゆっくり混ぜ、ある程度合ったところで一気に残りを混ぜる。
テッテレー、魔闘気の完成ー。俺も操作上手くなったなー。今ので生命力も魔力もほぼ使い切ったけど。
「おら、出来たろ」
「え?え?………え?」
「魔闘気だよ!それが!」
「へ?え?これ?そうなんですか?」
「そうだっつの。もう自分で出来んな?」
「は、はい、多分」
「はぁ、もう知らんからな」
結構力入れて握ってた手を離してバカから離れて座る。………2人してこっち見んな。キモい。
3日目も問題無く終了。変化はバカが魔闘気を覚えて自分で作りまくってヘロヘロになった事と、変態魔族さんが俺をクソほど見つめてくる。
俺はそっちじゃねぇからな!エリス以外は範囲外だからな!
4日目、移動開始。
体力バカは魔闘気にハマって作りまくってる。これなら一応修行か。んで魔族の変態さんは、
「……………」
「…………何か?」
「別に」
…………めっちゃ見てる。俺を。引くな!
バカ騎士に話かけようともせずに何故か俺をじっと見つめてきやがる。 本当に襲われたらどうしよ。オラオラしちゃいそう。やれやれとか言う余裕とか絶対無いよね。
…………こっちを見るんじゃぁねぇ!
「おいバカ。いつまで魔闘気いじってんだ」
「何をおっしゃっているんですか!修行なんですからするに決まってるじゃないですか」
「ほどほどにしろって言ってんだバカ。護衛が敵が来る前から、力使い果たしてたら何の為に乗ったんだって言われるだろうが。バカ」
「うぅ、確かに。すみません」
何ジト目で見てんだよ。謝る気あんのか?
イラっとして腹を思いっきりつねってやった。
泣くなよ。魔闘気で守れよ。ごめんて。
「君、君はいつこれを教わったんだ?君みたいな凡人には出来ると思ってなかったんだがな」
「はぁ、まぁ知り合いに」
「へぇ、その方はどんな人なんだ?」
「いい人です」
「チッ、そうじゃないだろ。誰かと聞いてる」
「さぁ」
「………君、俺をバカにしてるのか?」
「いやバカにしてるのはこいつ」
「また言いましたね!ひどい!この、えと、うーん、下品!」
否定出来ない罵倒はやめろ。傷つくだろ。
「貴様、この俺が聞いてるんだ。早く答えろ」
「どの俺だよ。あと答えたろ。さぁ」
「………サー、という方に教わったという事だな?」
「さぁ」
「貴様!」
「ま、まぁまぁ!レナード殿!落ち着いて下さいよ。サクラ殿は少々面倒くさい性格の方なんですよ」
「メンドくさいバカに言われたく無い。謝れ。そして詫びとして殴らせろ」
「嫌ですよ!女の子に暴力なんて最低です!あと馬鹿って言わないで下さい!こんなでも私乙女なんですからね!」
「お、おう。乙女な、うん」
「ちょっと!なんなんですか!」
お前の乙女もなんなんですか。乙女は腰に剣ぶら下げて飯を常人の5倍食うのかよ。世界中の男が引いてるぞ。
「おい、ならば俺と勝負しようか。俺が勝ったら教えろ。いいな」
「断る」
「なんだと!?」
「俺が勝っても得しないだろ」
「なら、レナちゃんから手を引くと約束しよう」
「断る!」
「なんでより力強く返事してるんですか!サクラ殿私の事嫌いですか!?」
気づいて無かったのか?こんなにバカにしてるのに。
「ならば、この俺がなんでも貴様の願いを叶えてやろう。それならいいだろう」
「断る」
「何故だ!何が気に食わんのだ!」
「全部」
「貴様ぁ……」
「お、落ち着いて!落ち着いて下さい!」
お前もな。だから押すな。落ちる。
「貴様の願いを叶えてやると言っているんだぞ?何が気に食わないんだ」
「絶対お前叶える気ないだろ。そもそもお前に出来る範囲狭すぎ」
「なんだと!?貴様ごときの矮小な願いなぞ容易いに決まってるだろ!」
「へぇ、んじゃ、魔王様に会いたい、とかも出来んの?」
「…………で、出来るに決まってるだろ」
どこ見てんだよ。バカの乳は喋ってねえぞ。
「流石ですね!あ、あの、出来れば、私も一度だけでいいんで、お会いしたり出来ますか?」
「……も、もちろんですとも!俺に全て任せて下さい!」
「おーすげぇー」
「貴様は俺に勝てたらだがな!」
「断る」
「ちょ!サクラ殿!勝っていただかないと魔王様に会えないではないですか!なので受けます!」
「ふざけんなバカ。俺はダメって言ってんだろ」
「ならば勝負だ!男らしく一対一の決闘だ!」
「弱い者イジメのどこが男らしいんだよ。勝手に自分に有利に決めんな」
こいつらも話聞かねぇ。もう嫌。寝たい。
「ならば貴様が内容を決めろ。それなら文句あるまい」
今まで散々文句言ってたの聞かなかった?忘れた?
「サクラ殿!頑張って下さい!」
なんでお前そんな乗り気なんだよ。お前こいつ嫌いだな?はっきり言えよ。
「はぁ、んじゃ、俺が出す問題に答えて、それが正解だったらあんたの勝ち。それでどうよ」
「チッ、わかりやすく説明しろ」
「はぁ、例えば、今の魔王様の名前は?とか聞くでしょ。んであんたが答えはフィーネ様、って言ったら正解だからあんたの勝ち。ゼノ様、って答えたら不正解だから俺の勝ち。いいな?」
「ふん、いいだろう。早く問題を出せ」
「おもしろそうですね。私も答えていいですか?」
「勝手にやればいいだろ。どうせ答えられないしな」
「またバカにしましたね!絶対正解しますよ!」
そこの変態がわからなきゃお前がわかるわけないだろ。食い物なら当たんのかな?いや無理だ。
「ちなみに3問出すから。練習がてらね?1問でも当てたら勝ちでいいから」
「いいから始めろ」
「へーい。問題でーす。そこのバカの名前は?家名も含めてお答え下さーい」
「………わ、わからん。レナちゃん、教えてくれないか?」
「う、うぅ、秘密です!サクラ殿!卑怯です!」
なんでだよ。答えりゃいいだろ。んで親に怒られろ。
「んじゃ不正解って事で第2問。俺の名前は?家名も含めてお答え下さーい」
「知るか!卑怯だぞ!」
「そうですそうです!絶対わからない問題なんてずるいですよ!」
そこの変態は卑怯じゃないのかよ。そこにつっこんでよ。
「はいはい。んじゃ第3問、魔王様の婚約者の名前はなーに」
「………貴様、俺をナメてるな?」
「………あ、あの、もしかしたら私も知ってますよ?いいんですか?」
「へいへい、答えてみ」
「ふん、答えは、闘王クライストだ!」
「私も同じです。クライスト様が、婚約者、だと思いますが」
「へー、って事はその2人って夫婦なの?」
「…………いえ、違います」
「魔王様と闘王様は婚約者なんでしょ?なのに?なんで?」
「魔王様には何かお考えがあるんだ!それが理由だ!」
「あっそ、不正解」
「な、何だと…」
「いや、さすがにそれは……」
「はい俺の勝ち。魔王様に会った時に聞いてみろよ。そしたらわかるだろ」
「貴様は正解を知っているというのか!?嘘をつくな!卑怯者!」
本当かもしんないじゃん。決めつけ良くないぞ。
「あ、あの、サクラ殿、それは無理があると思いますが」
「でもそうじゃなきゃ今頃魔王様元気だろ。お前だって婚約者がどうのこうの言ってただろ」
「それは、そうですが…」
「だ、だったら正解はなんだ!言ってみろ!」
「はぁ、正解は、ゲロカス。もしくはゲロクズ、ゲロザコのどれか」
「……………」
「……………」
なんだよ。俺だってこんな呼ばれ方嫌だからな?
それに間違ってないから。だから呆れんな。
「貴様、バカにしてるのか?」
「サクラ殿、私でも違うってわかりますよ」
「なんで違うってわかるんだよ。答えてみろバカ共」
「…………クソ!」
「ぬぬぬ、確かに違うって言えませんね。……魔王様に会わなければ」
「その通りー」
「だが、正解とも言えんだろ!」
「はいはいさいですねー」
「貴様!」
「待った!勝負はとりあえず保留と致しましょうか。魔王様に会って確かめましょう!」
「そ、それでは俺が負けたのと同じではないですか」
「私とレナード殿だけが会えば良いでは無いですか。その後なら問題ないですよね」
「……そう、ですね。仕方ない。卑怯者、勝負は一旦預けてやる。尻尾を巻いて逃げる算段でもつけておくのだな」
俺は人族だから尻尾ないよ。気付いてる?って言うと面倒か。やめよ。
4日目はバカに問題出して出してとねだられ日が暮れた。ひどく体力を持っていかれた。バカめ。
5日目。この日も問題無く移動。
バカと変態に絡まれながらっていうのを入れなければね。疲れる。




