45話
「おいバカ」
「………バ、バカはひどいと思います」
「全額スった奴を何と呼べと?アホ?マヌケ?それともボケか?」
「い、いいじゃないですか!私のお金なんですから!」
「さいですか。んじゃお前これからどうすんだ」
「そりゃもちろん魔王国に向かいますよ!」
こいつホント良く生きてんな。普通なら絶対こんなとこまで来られねぇぞ。
結局このバカは予想通り賭場に行って負けてきたらしい。全額。
どんな事やってんのか見てみたらサイコロとかトランプだった。なんであんだよ。
しかもイカサマの嵐。魔法とかで細工されないように賭場の中では使えないみたいだが、その分手でいじりまくってた。アクトゥウしかいないな。
「魔王国に行くんですねー。ほんじゃさいなら」
「ちょ!なんでですか!一緒に行くんじゃないんですか!?」
「全額捨てるバカと一緒じゃ命がいくらあっても足りないから」
「だ、大丈夫です!騎士としてあなたをしっかりお守りする事は出来ますよ!」
「お前のせいで行き倒れる方が先だがな」
「なんでですか!」
「お前飯どんくらい我慢出来んだよ」
「……………少し」
「お前の空っぽの頭に突っ込んでもまだまだ足りない位か。ボケ」
「あぅ」
ホントしんどい。今まで会ったやつ中でぶっちぎりで面倒くさいかも。
こいつは頭がおかしいんじゃないかと思うくらい飯を食う。
補充した食料は2人で5日分。2人で分けて運んでいたのだが、こいつは自分で持ってた分を1日で食い尽くした。バカ。
こいつの金だししょうがないから俺が持ってる分を2人で分けて食った。だが、それも1日で無くなった。バカ!
元々節約して食うつもりのもの2日で食い尽くしてどうすんだよ。を少し柔らかく言ったら、魔物を狩ればいいですよね!とのこと。
魔物は5日後に遭遇しました。クソボケ!
それ以来俺はこいつにダメ出ししてるつもりだったのだが効果無し。泣きそう。
そして今回用意してある食料はまた5日分。
先んじて次の目的地は小さな農村なのだが、今度は20日。死ぬわ!
「お前次の目的地までどんくらいかわかるか?」
「わかりません!」
「冗談抜きでお前に合わせて移動したら死ぬくらい遠いからな。馬車で行こうと思ってたわけなんだよ」
「はぁ、でも修行……」
「歩きまくるのは修行じゃねぇよ!魔物なんて全然いないだろ!お前が先に鍛えるのは体じゃなくて頭なんだよ!」
「うぅ、ごめんなさい…」
なんで謝りながらお腹さするの?また怒られたいの?
「とにかく、金を稼がなきゃ旅なんて続けようがない。わかるか?」
「おす!もーまんたいです!」
めっちゃやる気削がれるから普通に返事しろな。
あと聞こえるボリュームで腹鳴らすな!
このバカに聞いたらギルドに登録して、何度か仕事して報酬を貰ってるとかなんとか。早く言え。
依頼をやろうと思った俺がアホみたい。とか思ってたのだが、預けてる分が大銅貨1枚。気が狂いそう。
大銅貨1枚だと、どんなに頑張っても1人の1日分位しか買えない。俺1人でも食料を食い尽くす量にしかならないわけだ。辛たん。
そして残念な事に魔物が全然見当たらないせいで依頼は殆ど日雇いのバイトみたいなものしかないのだ。報酬も少ない。詰んだ。
「サクラ殿!私に策があります!」
「賭場で増やすんだろ。つまり一文無しになりたいと。ん?いいこと思いついた」
「なんですか!賭場での必勝法ですか!?」
「お前体売ってこい。手早くて金になる」
「嫌ですよ!!わ、私の純潔は愛する未来の夫だけのものですから!!」
「バカなお前のせいで先に命を散らしそうなんだがな」
「うぅぅぅぅ……ごめんなさい…」
冗談だからやめろ。泣くな。睨むな。腹鳴らすなや!
バカ騎士様の腹がうるさくてしょうがないのと、どうしても稼ぎようがないので仕方なく賭場に。
賭場の話になるとなんでか腹が静まる。ホントムカつく。
賭場をやってる建物があるのだが、そこに入ると中はかなりテキトーに分かれて賭けをしている。
バカに聞いたところ、現金を賭け札に変えて遊ぶらしい。大銅貨で札10枚だった。庶民的ぃー。
「サクラ殿!サクラ殿!何で遊びますか!?賽ですか!?とらんぷですか!?それとも花札ですか!?私は賽が1番得意ですよ!」
「とりあえず全部見る。んでお前は黙って見てろ。絶対見てろ」
「わ、わかりました!私のお金ですが!サクラ殿に!遊んでもらいますぅ!」
このアホ目的忘れんなよ。俺遊ぶなんて一瞬たりとも思ってねぇよ。むしろ思えない。イラっとしたので腹を思いっきりつねった。ごめん泣くな。
トランプはポーカー、花札はこいこい、賽は丁か半か、まんまだな。賽のやつなんて言うんだっけか。まぁいい。イカサマもわかった。
トランプと花札は自分1人じゃなんとも言えないので、サイコロ勝負といきましょうか。
まずはイカサマを封じる。
中身はサイコロの比重をいじってあるのと、下からサイコロを動かして目を変えるっていう古典的なやつ。
まずは闘気を作ります。下のサマ師に狙いを定めます。通しを打ち込みます。終了。
後は普通に参加するだけ。
「おう兄ちゃん。賽で遊ぶかい?」
「ええ、参加します」
「そうかい。んじゃ、野郎ども!準備はいいな!いくぞ!せいっ!」
掛け声と同時にサイコロを振って椀に入れて下に置く。ピンゾロだな。
「おら!闘魔どっちだ!はったはった!」
「え?闘?魔?」
「サクラ殿!闘は偶数で、魔は奇数ですよ!私の読みではこれは魔です!絶対そうです!」
「闘に10枚」
「ちょ!サクラ殿!」
うるさい。目立つからあっちいけ。
「いいんだな!んじゃ、勝負!ピンゾロの闘!兄ちゃんいい読みしてんな!」
「クソ!また負けた!」
「このガキ、やるじゃねぇか。もう1勝負だ!」
「サクラ殿すごい!もう1回!もう1回やりましょう!」
痛い!興奮すんな!抱きつくな!乳より力の強さに驚くわ!
「よっしゃ!もう一丁いくぞ!せいっ!おら!闘魔どっちだ!」
「闘30枚」
「ちょーー!!サクラ殿!ここは様子見で数を減らしましょうよ!」
「小僧やるな!なら俺は魔に50だ!」
「なんだと!?なら俺は魔に70だ!」
「俺は闘に20だ!」「魔に50!」「魔に80だ!」
どんどんみんなが賭けていく。なんか俺のせいかわからんが殆ど魔に賭けてる。怖。
「よっしゃ揃ったな!では、勝負!………ピンゾロの、闘だ!」
「サ、サクラ殿!!!また勝ちましたよ!!うひょー!これでお腹一杯ご飯が食べられるぅ!!」
「なんだよ!また闘かよ!」「クソ!もう一度だ!」「よっしゃ!よぅし、もう一丁!」
皆目が怖いよ。狂いすぎだよ。
正直もうやめたい。イカサマ出来ないのバレそうだし、俺は2連勝だし。
だが、こいつの食費を考えるともう一度勝ちたいんだよな。
勝った側の取り分がよくわからんが、手元には賭け札が500枚。大銀貨5枚。普通なら馬車借りても足りるからイラっとする。
「野郎どもいいか?いくぞ!せいっ!おら!どっちだ!賭けろ賭けろ!」
「闘に500」
「…………お、おい」
「小僧、本気か?」
「このガキ!おもしれぇじゃねえか!なら俺は魔に50だ!」「俺は魔に30だ!」「俺は魔に80賭けるぞ!」
「サ、サクラ殿ぅ……。本当に大丈夫ですかぁ?ご飯食べられますかぁ?」
「いいから黙ってろ!揺さぶんな!首がもげるっつの!」
不安なのはわかるけど力任せに振らないで。頭がグワングワンだよぅ。
「小僧、本当にいいんだな?」
「ええ」
「へへっ、ご馳走さん。では、勝負!………え?ピンゾロの闘?」
「小僧!やりやがったな!」「すげぇぞクソガキ!」「お前こそ本物の賭師だ!」
「すごいすごいすごいすごい!!!サクラ殿!!大好き!!」
お前が好きなのは飯だろ!!揺さぶんな!!腹を鳴らすんじゃねぇ!!
「お、おい小僧、まさかお前、イカサマしやがったな?」
「どうやって?」
「ぐっ、そ、そりゃ、あれだ……」
「無いだろ。んじゃ、ばいなら」
「ち、ちくしょーーーー!!!!」
ふはははは。イカサマなんかするからそうなんだよ。
残念なサマ師とバカな投資のおかげで資金が倍々になって帰ってきた。最終的に札10000枚。
万券みたいなものになりそれを交換すると、あら不思議。万券が大金貨1枚になりました。ガチで外歩くとか気をつけよ。
「サクラ殿!サクラ殿!ご飯!ご飯食べましょ!ね!?」
「う、うるさい!引っ張るな!わかったから!飯な!」
「やったーー!!ご飯!ご飯!」
バカ力で飯屋に引っ張るな。腹がうるさいから元々行くつもりだったっつの。
バカの腹ごしらえを終え、出発の準備、だったのだが。
「おい小僧、待ちな」
「さっきイカサマしてたよな?あ!?」
「大人しく金を置いてきゃ命だけは助けてやるぜ?」
うざ!ストレスフル!
なんで俺だけこんないじめられてんの?こんな汚い大人は修正してやらなきゃな。
「黙れ悪者!騎士である私の目の前でよくもふざけた事を言ったな!切られたいのか!」
………やけに頑張るね。ふぁいと〜。
「い、いえ、騎士様、これには深いわけが…」
「黙れ!来るならさっさと来い!」
「に、逃げろ!」「ちくしょう!」「騎士を雇いやがって!」
………あっさり引くのね。初めて役に立ったなこいつ。
…………ドヤ顔やめろ。殴るぞ。




