44話
怪しい旅人を普通に信じて案内してくれる、怪しい騎士様に連れ添い2時間ほど歩いた結果、村に着いた。もうちょいだったやん。
「おや?騎士様?龍の村に向かったのでは?忘れ物ですか?」
「いえ、途中で行き倒れた彼を案内する為に戻りました」
「旅人?はて、あなた以外にこの村を通った者はおりませんが」
「マーリン様に転移魔法で送っていただきましたので、それでだと思います」
「ふむ、なるほど」
怪しまれてる気がしてビビってる。おれいいひとよほんとよ。
「そうですか、では初めましてですね。ようこそ、アクダイカン村へ」
俺よりよっぽど怪しいな。この騎士様なんとも思わないの?急に旅に出たくなったよ。
「よろしくです」
揉み手もやめてね。悪はお主だけだからな。いやわからんが。
「それでサクラ殿、これからどうするおつもりですか?」
「とりあえず、1番近い大国に行こうかと」
「では魔王国ですか。ですが、今はあまり行かない方がいいと思いますが」
「え?なんでです?」
「知らないのですか?」
墓穴?いや聞かないで行く方が怖い。地雷原だったら笑えない。
「今の魔王国は少し荒れてる、というか、沈んでるんですよ」
「なんでですか?今は結構平和ですよね」
「え?そんなわけ無いじゃないですか。天使は今でもどこにいるかわからないですし、未だシャキーンは活動を続けていますからね」
地雷が多すぎてどうしようもない。皆5年何してたの?俺の頑張りどこいった?
「あの、シャキーンって?」
「それも知らないのですか?んー、旅に出ていたから?ですかね」
「そうです!その通り!」
「え、えぇ、わかりました。でも世界中にいるはずなんだけどなぁ」
そんな有名なの?めっちゃダサい名前だからタツの悪ふざけだと思ってた。
「実は、天使大戦の後にシャキーンという組織が現れ、天使を操り世界中を混乱させたんです」
名前とやってる事のギャップ。クソ迷惑なんですけどー。
「それめっちゃ危ないやつじゃないですか」
「そうですよ。だから知ってると思ってたんですよね。まだ本拠地も勢力も調べがつかないので、いつまで戦いが続くのかもわからないんですよ」
「なるほど。それと魔王国がなんの関係が?」
「シャキーンのせいで被害が少なくない事もあるんですが、最近魔王様があまり元気が無いそうです。噂では天使大戦の折に婚約者が行方不明だとか」
「……………へ、へぇ」
なんで今メンタルやられてんだよ。時間差すごすぎだろ。
「天使大戦の直後はかなり心を痛めていて、それでも、日々努力して国をまとめていらっしゃるのですが、まだ乗り越えることは出来ないそうで」
「…………ま、魔王様も大変ですね」
「そうですね。国をまとめる事やシャキーンの対策だけでも凄い事ですのにね。とても悲しいですよ。魔王様は今でも毎日枕を濡らしているらしいですから」
もうやめて!俺も泣いちゃうから!つうかたった数日で俺の何をそんなに気に入ったんだよ。そんなにゲロが好きなの?俺以外も出せるからね?
「それで魔王国全体の雰囲気が悪くなってましてね。あ、でもサクラ殿も人族ですし、多分皆さん優しく接してくれますよ」
「え?何故に?」
「多くのシャキーン所属の人間や、天使と戦ってくれてる方が人族の方で、魔族や獣人族の中で人族の評価が変わりつつありますので」
「その方ってどんな方ですか?」
「勇者エリス様、そして兄の闘王クライスト様ですね」
「マジ!?」
「うわっ、どうしました?」
「す、すみません」
闘王って、いや、ホントごめん。多分俺が関係してんだろうな。多分。
「闘王様って交代したんですか?」
「そうですよ。あと、知ってると思いますがマーリン様も隠居するらしいです」
「え、えぇ、そうですね…」
「後継者の方も聞きました?」
「いえ、それはまだ」
「シエル様ですよ。かつての1番弟子達が師を超えて、師匠達の後を継ぐ。なんと素晴らしい!」
「大丈夫ですか?」
「あ、す、すみません。つい。あ、実はですね、クライスト様は親戚なんですよ。私のちょっとした自慢です」
言質とりました。アウトです。あなたの一族はアウトです。
「まぁそれは置いといて、とりあえず宿をとって改めて旅の準備をしましょう」
「え?龍の村に行くのでは?」
「今は誰もいなかったのですよね。では、あなたを魔王国まで送ろうと思いまして」
ありがたい。でもどうしてもやばい気がしてならん。どうしよ。
「実はまだ魔王国には行った事が無くてですね。私の目的地の1つでもあるのですよ」
行く気満々だな。疑われそうだしついてくか。怖いけど。怖いけど!
「そうですか。ではお願いします」
「もちろんです!騎士としてしっかりお守りしますよ!ふふん!」
この子結構ダメな子かも。いい子過ぎて俺の事なんとも思ってないし。よく他所に行けたな。
という事で、今日は荷造りをして1日休み。
買い物は全部支払ってもらった。これがヒモの気持ちってやつか……
感慨深いぜ!
「おはようございます!」
「………あの」
「なんですか!」
「何故部屋に?あとまだ日の出ですよね。早い」
「もう十分休んだではないですか!早く行きましょう!」
遠足前の子供ですね。おっさんにはキツイ。
レナさんに連れられ村を飛び出す事になりました。飛んでは無いよ?意識がね?
「レナさん」
「はい!なんですか!」
「あの、道ってわかります?あと、どのくらいかってのも」
「道は大体聞いたので多分大丈夫です。時間的には50日くらいですかね」
……………おっふ。死んじゃう。道も不安。
「あ、あの、馬とか、借りません?」
「当たり前です!お金がかかりますし、修行になりませんから!」
俺は修行してないんだが。まぁ金が無いので文句は言えない。唸れ!我が健脚!頼むから震えないで!
ちなみに次の町まで10日歩いた。
この子の活動時間は日が出てる時間らしく、早朝から日が完全に落ちるまで歩き倒してた。
休憩?甘えだな。足?ふっ、痛い!
だが、嬉しい事に魔物とは出会わなかった。
天使が出始めてから魔物はかなりひっそり暮らしてるらしい。
その分天使と鉢合わせする事もあるらしいが、出会わなかった。セーフ。
そして、肝心の騎士様の強さは、
「私、こう見えて強さは4000位なんですよ!凄いでしょ!」
よく死ななかったな。1人じゃウッキーの群れにすら勝てないじゃん。
「サクラ殿!着きましたね!」
「……………そだね」
「あれ?どうかしました?元気無いですが」
「俺何回休憩しない?って言った。言ってみろ」
「え?えと、毎日何度も言ってたから……100回です!」
俺の言いたい事悟れ!キレる力も無いほど弱らせるな!
「サクラ殿知ってますか?この町、アクトゥウでは大きな賭場があるんですよ!」
何故テンションが上がる。ダメな子か。行かせないよ!名前的にボラれる気がするし。悪党め!
とりあえず宿をとって休みました。
何が怖いって各自で休憩しましょうだって。
もうあかんやん。




