42話
「おい、サク」
『なんだひとでなし』
「それやめろって。お前が嫌がったんだろ」
『忘れた』
「大事なことばっか忘れんな」
嫌な事が多すぎて抜けてくんだよ。
つまり世間が悪い。
天使大戦(俺だけ必死こいたのに皆で戦ったみたいな呼び方)の後、俺とヤスは死んだ。
と思いきや、ギリギリ踏みとどまったらしい。
俺とヤスの魂は一欠片くらいの状態になり、ヤスの元の体に引き戻され、俺も一緒にくっついてった様だった。
元々そういう魔法をかけてたらしい。
それ最悪俺だけ死んでるよね?
結局俺は魂だけになり、ヤスと同居してたが、こんな優男のヘナチョコボディに居たくないとごねたら、ヘンテコな人形に魂を入れられた。
そしてほっぽられた。
ひどい!あたいを見捨てるなんて!
天使大戦から5年。ずっとヤスとヒマを潰し倒してる。前の世界に行く事も出来ないどころか、体が無いのでナンパも出来ない。
これじゃエリスを抱きしめてあげられないじゃないか!
ってヤスにキレたら体を作るとか言って本当に作ってきた。5年かかったとか言いだしたけど、5年で20歳の俺を作ってきやがった。
見た目完全に前世?の俺。なんでお前が知ってやがる。あんなところやこんなとこも見せたこと無いのに!
「サク、体どう?違和感無い?」
「ちょっとケツに……まさか、お前!」
「そんなわけあるか!俺は花以外興味無いし!そもそも男なんか論外だ!」
「ふざけんなボケ!花は俺の妹だ!お前みたいなミソっかすにやった覚えはない!」
「だったら結婚式のお前のスピーチ見せてやるからな!」
「断る!」
本当だったらお兄ちゃん心折れちゃう。
お前の兄では無いからな!!
「体に変なとこは無い。だからこそキモい」
「なんでだよ」
「お前がなんで俺の体を作れるんだよ。盗撮でもしてたのかよ」
「そんなわけないだろ。お前の骨とか映像から読み取ってデータを打ち込んだんだよ。そうしたら機械が勝手に作ってくれたんだ」
めっちゃ未来的やん。
って思ってるけど、魔界はそんな事ない。
魔界は元々俺らのいた世界で、俺が生まれ変わった方が作った世界らしい。魔法すげー。
だが天使のせいで世界中トラウマになったのか、技術の進歩が異常に遅くなったらしい。
何千年と時間が経ったらしいが、車が空飛ぶくらいしか大きな変化は無いとのこと。充分すごいだろ。
5年ヒマこいてる間に聞いた話は、惚気話か俺の事ばっかりだった。うんざり。
そんなつまんない事しか言わない男はモテないんだからね!キモい。
「サク、これからどうする?」
「特に決めてない。出来れば死ぬまでニート」
「ここには置いとかないからな」
「クソほど部屋余ってんだろ。5部屋くらい寄越せや」
「家賃払わせるからな。滞納してる分も」
「今度は俺がいじめるぞ」
「お前本当最低だな」
元いじめられっ子ヤス君ドン引き。さーせん。
「あと、遠藤と子供のいろんな映像とか写真あるけど見るか?」
「……………み、見ーーーーーーー」
「どっちだよ」
「見ない。忘れてんのに見るのはなんか申し訳ない」
「そうだな。お前今はまだ嫌いな事しか覚えてないからな。お前は遠藤にぞっこんだったんだけどな」
「お前いいのか?俺は今体を手に入れたんだぞ?何するかわかるよな?」
「なんだよ」
「お前に痛みを思い出させてやる。拳で!」
「俺は抵抗するで」
「飽きた」
「おい」
今は魔法の時代だよ?何言ってんの?
「そんで、向こうに戻れんの」
「お前戻りたかったのか?」
「まぁ、エリスが嫁に行くまでは見守ってあげないとな」
「お前の妹じゃない」
「心のお兄ちゃんだ!」
「お前風に言うと、クソストーカーだな。浜辺に首まで縦に埋めたい」
「お前鬼だな」
「前にタツに言ってたよ。サクが」
あらやだ。それ忘れてる頃のやつね?全く。
キモ。
「一応行けなくは無いけど、魔力の都合で今は片道しかない」
「タツに連絡つかないのかよ」
「全くね。あっちから1回も来ないし、デンゼルとか他の連絡員が1度も帰って来ないんだよ。おかげで不安がいっぱい」
「とうとう裏切られたのか。お前なんかのトップ似合わないもんな」
「俺たち皆似合わないだろ。サクのせいだ」
お、俺のおかげで出世出来たか。はっはっは。許せ。
「でも本当に行くのか?」
「あ?なんでだよ」
「今のお前じゃさすがに死ぬかもしれないぞ」
「いや何度も死にかけてるし。1、2回死んでるしな」
「んじゃ3回目がすぐ来るぞ。そんだけ弱ってたら」
「しゃあなしだろ」
「鍛えろってこと」
「絶対嫌だ」
また人身御供にされる。生贄は飽きた。
だが、確かにすごく弱くなった。
生命力も魔力も人並み?位だし、魂は常人よりヘタレてるらしいし。
皆俺を酷使しすぎじゃね?使用料払って。
そして困ったのが、闘神気は使えないのだ。
体が壊れるのと、闘気や魔力が少なすぎるので出来ても1秒もたない。というより作る事すら無理。出来て魔闘気。これも量的に微妙。
魂が完全に普通の人と同じ強さになったからもはや届かぬ力なのだ。生命線が無くなったってやばいよね。
「そうか、まぁサクならなんとかなるよな。空間の先は一応龍の村に繋げるし、大丈夫か」
「おう。んじゃよろしく」
「わかった。気をつけろよ」
ヤスに空間を開かせ、向こうに移動する。
エリスたん、待っててな!




