41話
空間を移動すると、入った通路がすぐに塞がった。
周りを確認すると、近くに何もない。
注意しながら歩いてオリジナルを探すんかい。ダル。
『サク、多分近いよ』
「キモっ!喋れんのかい」
『まぁね。ほら、集中』
「お前が切らしたんだろ」
ガチで幽霊に取り憑かれてるみたいじゃん。
時止めたりしてくれる奴ならありがたいけど。
周囲は何もなく、とにかく真っ白い空間が続いてる。目が痛い。
床もあるのかないのかよくわからん。
とりあえず真っ直ぐ歩いた。
すると、人影が見えてきた。
『サク、あれだ』
「全然何も感じないけど。あれ強いのか?」
『多分あれでもかなり力を取り戻してるよ。注意しないと』
メンドくさ。まぁしゃあない。
天使に近づき様子を見てみよう。
どんどん近づいて行くと、ゆっくり天使が動きだした。
「つうかなんで天使なんだよ」
『急になんだよ。俺らが作ってる時につけた名前がエンジェルちゃんだったんだよ』
「だっさ!」
『つけたのサクだぞ』
「だとは思った」
どうせこいつらもダサいのつけてただろうけど。
天使の姿がはっきり見えるところまで近づいたんだが、天使もこちらを見てる。
すげぇニヤニヤしてる。キモいし高性能感がうざい。
量産型であれだからオリジナルもこんなか。
「おいカス、なんか言う事あるか?」
「でひゃひゃひゃひゃひゃ」
「キモっ!」
『気をつけろって』
しょうがないじゃん。つうか俺の前の声と同じだし。絶対タツがこれにしたろ。
「んじゃそろそろ、壊れろや!」
俺は闘神気を限界まで纏い、天使に突っ込んだ。
『おい!サク!」
「てひゃ!闘神だ!また殺せる!また遊べる!」
「キモい!死ね!」
天使の顔面に右ストレートを打ち込む。
が、ぶっ飛ぶどころか1ミリも動かない。
そのままボディにも1発入れたが反応無し。ヤバくね?
『サク!」
声に気づいた時には顔面付近まで天使の拳が迫っていた。
「ぐぉ!痛え!」
とっさに腕を出して防いだが、威力に負けてふっ飛ばされた。マジかよ。
天使を見ると、ニヤニヤして俺を見てやがる。
かなりうざい。
『サク、あいつはお前の動きを元に作った奴だ。お前の動きは完全に見切られてるぞ』
「キモい。タツがケモノ耳を語ってる時くらいにな」
『声も動きもお前と同じだからな。俺もキモいと思ってる。本当にクジで勝って良かったよ』
何故イカサマしなかった。俺よ。
なんてふざけてると天使が歩いて近づいて来た。
イラっとしたので、ダッシュで天使に再度突っ込んだ。
今度は限界まで近づく。カウンター狙いで。
肉薄すると、天使が軽く左でジャブを放った。
スッと避けて懐に入り込み、アッパーを打つ。
クリーンヒットしたと思ったが、またも微動だにしない。
一旦バックステップで距離をとる。
が、天使が突っ込んで来た!早い!
ワンツーを打ってきたので下がりつつ躱す。
そして右の中段蹴りを放ってきた。下がって躱す。
隙が出来たので、すぐさまボディブロウを打ち込んだが、全然効いてない。あかん。
またすぐ下がった。どうしよ。
「全然効かないじゃん。どうしよ」
『関節が1番強度的には弱いはず。でもそれじゃ全然ダメとか言ってたよ』
「マジか。思い出せればなー」
『来るぞ!』
天使がまた迫ってきた。
落ち着いて待ち構えてると、攻撃してこない。
と思ったら、抱きつこうとしてきた!キモ!
とっさに横に飛び退けて、体制を戻す。
だが、天使がいない。
『後ろ!』
声に反応し、後ろを振り返った瞬間、腹に蹴りを食らってしまった。
ものすごい衝撃で声どころか息が出来ない。
闘神気纏っててこれかよ。辛たん。
『おいサク!また来るぞ!』
「ごふっ」
まだ血を吐いてる途中ですが、天使がニヤケ顔で顔面にストレートを打ってきた。
躱して思いっきりカウンターを顔面に叩き込み、腕を振り抜いた。
すると、今度は効いたのか、ぶっ飛ばすことが出来た。なんでや。
「あれどういう仕様だよ。げほっ」
『細かい所は俺は知らないよ。変な機能とかは全部タツだ』
「って事は絶対さっちゃんに殴られたな」
『おしい。蹴られた』
ありゃ、残念。でも、なんとなくわかった。
あのクソ天使は魔法と闘気を使えるようにしたヘンテコロボットだ。
恐らく攻撃と防御をする時に、闘気を操作し、一点集中させて威力を増してるんだな。
カウンターには間に合わず、ダメージが通るってとこか。
もっかい試そ。腕と腹痛い。
天使を見るとニヤケ顔に少し凹みが出来てて更にキモかった。つうか硬い。
今度は俺からまた突っ込んだ。
天使はその場で待ってる。
俺はどんどん近づく。
天使を殴れるまで近づいたが、お互いまだ動かない。しょうがない。
先制で腹に1発軽く入れた。ん?少し凹んだ。
ヤバい!と思った矢先、天使の拳が腹に突き刺さった。
早くて防御すら間に合わず、そのままふっ飛ばされる。
『サク、大丈夫か』
「がふっ、げほっ、うぉえ。し、死ぬ」
『まだ動けるな。あんまり狙い過ぎるなよ。動きが完全にバレてた』
「でしょうね。これどうすりゃいいんだよ」
『普段やらない動きで攻めよう』
「バカか。絶対反撃される」
読まなくても攻撃ぶっこまれるぞ。
「うひ!ひゃひゃひゃひゃひゃ!」
「うわキモ」
『サクとタツを足したらあんなだよな』
「後でしばく」
もう一丁仕掛けるか。
またダッシュで天使に近づき、顔面にパンチを打つ。
余裕で躱されたが、そのままこいつの頭を掴んで飛び膝蹴りをかました。効いた!
着地してすぐにまた顔面をぶん殴る。
そのまま連打をとにかく打ちまくった。
が、隙間を縫うようにカウンターの蹴りでまたふっ飛ばされる。クソ。
「ちくしょー。なんで腹しか狙わねえんだよ」
『サクも顔しか狙ってないだろ』
「今の全体だろ。あれ効いてるかな」
『多分な。あれ喜んでるだろ?』
「確かに。キモ」
さっきから攻撃するたびどんどん顔がキモくなっていってる。
物理で変形させたのもあるが、ニヤケ方が酷くなってる。
「もっと!もっとこい!もっと闘おう!」
「クソ!休ませろ!」
天使が迫ってきたので、今度は俺も突っ込んだ。
クソ天使が勢いのままタックルしてきた。
それを横に躱しながら足払いする。
それが当たり、マジで転びやがった。
すぐにマウントをとり殴りまくったが、全然効かない。
「うひゃ!もっと!もっとこい!」
「キモい!いいから壊れろや!」
「あひゃ!ひゃ!ひゃひゃひゃひゃひゃ!」
何度も殴ってるが効かない。それどころかどんどんキモくなってく。
1発思いっきり打ち込もうとした時、
「あひゃ!」
「ぐあ!」
天使のパンチが腹にきたと思ったが、威力が想像より桁外れに強かった。
何度もバウンドしながらぶっ飛ばされた。死ぬ。
『おい、しっかりしろ』
「か、かなりキツイ」
『でもあれが多分最大出力だ。あれを何とかすれば勝てるぞ』
「闘神気でこんだけボコボコにされてんのにどうすんだよ」
『…………やるぞ。次で決めよう』
「…………チッ」
結局命がけかよ。ダル。
「来るのか!来い!来い!こぉぉぉぉぉい!!」
『奴も次で最後か』
「あれに勝てんのかよ」
『やるしかないだろ』
「イラっとした」
『おい』
天使から尋常じゃない強さを感じる。これをやれと。最悪だな。
「来ないなら!行くぞぉぉぉ!!!」
『来た!やるぞ!』
「クソが!」
天使が一瞬で詰めて来て、俺を殴ろうとした。
だが、残った闘神気と魂を使い、天使の拳を避ける。
だが、もう1発殴ってきた。それに合わせて俺も拳を打ち込む!
「うぉらあぁぁぁ!!!」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
『サク!押し切れ!!』
お互いの拳がぶつかり合い、拮抗する。
全力で殴ってるが少しも押せない!クソ!
「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
「クソがぁぁーーー!!!」
「やれ!サク!!」
クソ!!いけ!いけ!いけ!!いけ!!いけ!!
「おらぁぁーーーー!!!」
「でひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
『いけ!!いけ!!!!』
魂の減りがヤバい!クソが!!
「壊れろや!!!!」
「楽しい!!楽しい!!!」
「うらぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」
魂が、消える、クソ………
「あひゃひゃひゃ!!楽し……い……たの……」
「………………クソが………やっと……」
『サク………やったな』
「………はぁ、そうだな」
天使は動かなくなった。エネルギーが無くなったんだろう。
そして、俺はボディを完全に破壊した。
おわたー。ダル。
「おいサク!天使が止まった!やったんだな!」
「………」
「おい!何寝てんだ!おら、傷治してやるよ」
「…………」
「………お前、いつまで寝てんだよ。治したぞ。早く起きろ」
「………うぅ」
「………おい、ヤスはどうした。それにクライストの魂も無いぞ。どこやった」
「…………あ、あの」
「…………なんだ」
「……クライストは、俺です」
「……………あいつらは?」
「わかりません。天使を破壊して、そのまま、消えた感覚しか……」
「……そうか、そう、か」
「お兄ちゃん!」
「小僧、遅い」
「クー君やったね!」
「旦那様さすが!子作りしよ!」
「さすがクライスト殿。娘にふさわしい方だ」
「バラン、ノアも忘れんでくれ。小僧、もちろん2人とも嫁にもらってくれるな?」
「チッ、生きてたか。惜しいな」
「良くやったチビ!」
「………違う」
「え?姉さん?」
「聞いてくれ。オリジナルは倒した。闘神サクラと魔神ユウトの手で完全に破壊する事に成功した。この世界は天使の脅威から救われた。だが、同時に2人の英雄が、死んだ」
「………え?お兄ちゃんが?でも、そこに」
「俺は、………クライストです。サクラでも、ユウトでもなく、ただの、クライストです」
「つまり、ゲロカスは魔神と一緒に消えたのね」
「そうだ」
「…………そうか」
「クー君……」
「まぁいいわ。とりあえず世界全体に伝えないとね。天使を倒したって」
「ね、姉さん?」
「エリス、あとクライスト、来なさい。凱旋よ」
「龍神様、魔神様は、チビは、本当に……」
「死んだ。魂は1つしか無い」
「そう、ですか」
「旦那様が……うそ……」
「……ナディ、我々も行こう」
「………はい」
「王よ、しっかり。そんなではまた小僧にバカにされますぞ」
「わかっている。行くぞ!」
「マーリン、帰るぞ」
「………いいの?」
「ああ」
「……わかった」
「デンゼル、お前はどうする。魔界に帰るか?」
「いえ、もう少し、この辺りにいます。天使の残骸を消さないと」
「わかった」
「サク、ヤス。バカどもが」




