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楽して生きたい拳闘士  作者: 猫背
第1章
39/59

38話

「飽きた」

「ちょっと、兄さん」

「しょうがなくね。どっちも全然進歩しないし。おまけに魔王に至っては未だに闘気すぐ出せないし。見てると飽きるじゃん」

「ならちゃんと教えろゲロスケベ!」

なぜケツを見てるとわかった。てか教えてるだろうが。


魔王城に来てから7日ほど経った。

来てからほとんど訓練してるのだが、まぁ上達しない。

難しいから簡単に出来ないのはわかんだけど、見てる側は飽きてしまう。ごめんちゃい。


ただイラっとすんのが、ヘボ魔王は闘気を全然使えない。

纏えるようになったが、全く実戦で使えないレベル。

更にムカつくのが、魔闘気はかなり余裕で作れてる。だが実戦では使えない。おバカ。


爺さんの方は単純に制御に苦戦してる。あれはまぁしょうがない。

俺と同じく死にかけるくらいの土壇場にならないとすぐには上手くならないだろうからな。

それ提案したら普通に怒られた。ずるい。


「闘気くらいすぐ作れるようになれや。そんなだから闘神気を作る事すら出来ねぇんだよ」

「うるさい!ゲロ!アホ!教え方が下手なんだよ!」

「エリスも教えてんじゃん」

「姉さん、ごめんね」

「ゲロのせいだから!エリスは悪く無いよ?ありがとう」

その気持ち、カケラでいいから俺側に分けて。


「はぁ、だる」

「ちょ、兄さん。どこ行くの?」

「ちょいとお花を摘みにー」

「べ、別に花もらったって嬉しく無いから!」

「ね、姉さん、あの、兄さんは用を足しに」

「……………そう言え!」

はっきり言った時蹴ったじゃん。


ここ数日、今の状況も全く進展していない。

少しだけ問題なのが、獣人組が調査から全然帰ってこない。

理由は多分、マーリンさんの調査結果から推察すると、異空間が見つからないからだろう。これも問題。


マーリンさんは、獣王国や人族の王国の周辺も調査してくれたらしいのだが、1つも見つからないらしい。

マーリンさん予想では、開け閉め出来る、時間で閉まる、誰かが閉めてる、とかだった。

痕跡なんかも全く無いから結構辛い。

天使の数とか、どの辺が1番あったとか知れたらいかったんだけどねー。

さすがに数はわからんだろうけど。


他の懸念も全くわかってない。

魔王や魔王パパは全く動きなし。マーリンさんの予想は外れてると思いたい。

ナディも連絡無し。そのまま獣王国に帰れ。

デンゼルは下っ端として雑用の毎日らしい。昨日会ったら愚痴られた。そして俺に八つ当たり。なんでや!


状況も訓練も変わらなすぎる。

本当なら怖いと思うんだろうが、性格的にしゃあない。飽きた。

というわけで、今日は初の外出をしてみます。

城下町で情報収集をしようというわけですよ。

わいは働き者やけん。皆、期待して待っててな!


城の門の脇にある扉から抜け出して、町をお散歩してきます。

門番にチラッと見られたが、めっちゃにこやかに送り出してくれた。ええ人やん。


とりあえず、町をふらふら歩き回ってみる。

手持ちはエリスちゃんにもらった銀貨1枚のみ。

残りは全部管理されてます。エリスちゃんはいいお嫁さんになるなぁ。

金は何故か共通らしく、他所の国でも使えた。そういうとこも雑だよな。


「よう兄さん。お一人かい?」

「ども。ちょいと息抜きに散歩でも、と思って」

「そーかい、なら腹ごしらえでもどうだい。安くするぜ」

「おー。人族でも食わしてもらえんのか。それは嬉しいな」

「当たり前だろ?飯を食うのに人種なんざ関係無いからな。ほれこれでも食いな」

と言って屋台おっちゃんが串焼きを一本くれた。素早い。


「ちなみに、これいくら?」

「そうだなぁ、金貨2枚ってとこだな」

「高ぇ!!」

バカかよ!とんでもねぇ肉でも使ってんのかよ!


「なんだと?これでも格安にしてやってんだぞ」

「いや、こんな値段なら普通腹いっぱい食っても大量の釣りが帰ってくるだろ」

「てめぇ、文句つけるたぁいい度胸してるじゃねぇか」

メンドくさ!パッと返して逃げよ。と思ってると客が来た。ぼられるぞ。



「すみません。一本下さい」

ほへー。姉ちゃんが屋台に串焼き買う事あんだな。珍しい。

「はいよ。銅貨1枚だ」

「はい。ありがとう」

「毎度。…………オラボウズ。早く金払え」

「今の見て出すほどイカレてない」

むしろよく言えたな。人種云々は金額次第じゃんか。


店主のおっさんに串焼きを力で返して逃げた。

他の屋台も同じ流れで何度か声かけられた。せめてパターン変えろや。


その辺をチョロチョロ歩いてると、装飾屋とかいう店があった。エリスになんかプレゼントしたら好感度あがるよな?入ろ。


「チッ、いらっしゃい。チッ」

舌打ちはなんで見るの?挨拶はなんで見ないの?


品物を見ると、結構かわいいアクセサリーが並んでいた。

ネックレスや指輪、チョーカー、ブレスレットにアンクレット、他にも結構置いてる。地味に居心地悪い。降りてこい女子力。


「チッ、何かお探チッ、ですかー。チッ」

その噛み方初めて聞いたよ。不思議と心が痛い。

「妹に贈り物したくて、何かオススメとかありますか?」

「チッ、でしたらチッ、このチッ、首輪とかどうチッですかー、チッ、ドブネズミみたいなあなたなら、その妹にもぴったりだと思います。チッ」

前半舌打ちしか聞こえないし。ディスる時だけはっきり言うのやめて?

ただ、見た目は結構かわいいチョーカーなんだよなぁ。値段次第か。


「そうですか、ちなみにお値段は?」

「チッ、大金貨1枚でいいですよ」

「高!!」

お前らバカか。買わせる気無いなら店に入れんな。ストレス溜まるわ。


「チッ、これでもチッ、贈り物チッ、って言うからチッ、チッ、かなりチッ、チッ、………チッ」

「最後まで頑張れよ。ちょっと言葉足すだけだろ」

舌打ちじゃ気持ちしか伝わらないよ?

……………言葉より深いと思ったの俺だけ?


他の物もいくつか値段聞いたけど全部一緒。

最後舌打ちで返してきたから店から出ました。ですよね。


また少し歩き回り出したんだが、なんか見られてる。なんでや。


「おいそこの兄ちゃん、ここで何してんだ?」

「え?ナンパですか?ちょっと、困るんですけどマジでー。チョベリバー」

「は?お前何言ってんだ?わけわかんねぇよ!」

やっぱチョベリバは古かったか。だからって怒るとは思わなんだ。


「人族のクズが俺らの国に何の用だ。わざわざ殺されにでも来たのか?」

基本人族殺すべしなのね。あとそんな理由で来ません。俺のどこを見てドMだと思ったんだよ。


「一応旅って事で」

「は?旅だ?嘘くせぇな」

「おい、こいつ、戦士に突き出そうぜ」

「そうだな。絶対悪さしに来やがったんだ」

「誰か!戦士の方を呼んで来てくれ!」

「お前そこを動くなよ!逃げようとしたら容赦しないからな!」

何集まって来てんだよ。パンダじゃねぇぞ。


「どうかしましたか?」

………………おい。

「この人族、怪しいんです。捕まえて下さい」

「…………………はい。わかりました」

「おい」

「なんだ?反抗すんのか?魔王様に言いつけてやる」

「俺こそ言いつけるぞ。他所の手先め」

「お前ふざけんなよ!それ冗談じゃすまねぇだろ!」

「兄貴だってシャレにならねぇだろが!」

デンゼルさん何してんすか。勘弁してよ。


「戦士様?もしや、知り合いで?」

「いえ違います」

「おい嘘つき。魔王様に告げ口してやる。あとマーリンさんに。尋問祭りだな」

「待った!こいつ俺のダチだったわ!いやー、ちょっと見ない間に大きくなったもんだな!」

「………………」

兄貴もようやく俺の気持ちをわかるようになってくれるだろう。白い目でガン見されまくってるからな。


兄貴のしょっぱい演技で冷めたのか、周りの人だかりがどんどんはけてった。


「お前こんなとこで何してんだよ」

「兄貴もな。暇なの?」

「アホか。お前みたいな不審者を捕まえるために町を巡回してんの」

「なんでそんな下っ端みたいな事してんだよ」

「まぁ、あれだな、初心に帰るってやつだ」

「前のあれしくじったからだろ」

「……………お前のせいだな」

「明らかに自分だろ」

実験もギルド員に見つかってるからほとんど自分のミスやん。


「んなことより、お前魔王様と天使対策の特訓してんだろ?なんでこんなとこいるんだよ」

「飽きたから散歩」

「うわ、最低だな」

「クソ魔王もあんま上達しねぇからな。毎回おんなじでつまらん」

「本来の目的忘れてね?」

実際あんま当てにしてないからな。爺さんはともかく、魔王は今でも出来ると思ってない。


「それよか兄貴さ、天使の事知らん?」

「まぁまぁ知ってる」

「おい、教えろよ。チクって減給させるぞ」

「アホか。お前にそんな権限ねぇだろ」

「魔王にはあんぞ」

「お前すげぇ嫌われてんだろ。んなこと言ったら今度こそ殺されるだろ」

「今は嫁(未定)だぞ」

「何があった!?」

ほんとそれ。


「マジかよ……。まぁ天使の事は近い内にお前経由で伝える気ではあったんだよ。魔神様の都合次第なんだがな」

「了解。それ以上は俺の前で言わないで」

「メンドくさがんなよ。妹の為なんだろ」

「うぐっ、まぁ、皆集めて、だな」

1人で背負いたくないメンドくささ。

……………なんか騒がしいんですが。


「おい兄貴、なんか、変くね」

「軽く流すなよ。かなり大事な話してんだろ」

「確かに。でもか弱い人族には怖いんですよ。急にざわつくと」

「嘘つけ。………確かにうるせぇな。なんだ?」

怖いから知らない振りしよ。

「ゲロカスーーー!!!!どこだーーー!!!」

「……………お前か?」

「知らん、が、こっそり城に戻りたい」

「おい」

俺は悪くない。時代が悪い。あと世間。


とりあえず声から離れるように移動。


「見つけた!!!逃げんなゲロクズ!!!」

「ちょっ!なんでわかるんだよ!」

「魔法に決まってんだろ!っておい!逃げんな!悪化するぞ!」

いやでも超スピードで迫られたら怖いじゃん。

魔王様はどえらい形相で目の前まで飛んできた。

いや怖いわ。


「おいゲロカス」

「なんでござい」

「何してる」

「散歩」

「ど直球だな」

変化球でも余裕で打ち返されるじゃん。


「心配した」

「別に死んだりしないっつの」

「浮気するだろ」

「してない」

「嘘つけ」

「嘘か!!!」

「してねぇ!!」

俺が魔族に好かれる絵が見えんのか?地獄絵図しか想像出来ねぇだろ。


「罰だ」

「処刑しましょう」

「兄貴を先にぶっ飛ばす」

「魔王様、やってしまいましょう」

「うるさい」

「あ、はい」

うぇーい。怒られてやんのー。わかった。睨まないで。


「んで、罰って何だよ」

「………デ、デート」

「チビ、何かわかるか?」

「…………罰だな」

「そうか、短い付き合いだったな」

「勝手に殺すな」

そんなに俺をいじめて楽しいか。楽しそうだなおい。


「ほら、早く」

「ふっ、断る!」

「死ね!」

「断る!」

「ゲロクズ!」

「断る!」

「………………なら帰る」

「断らぬ!」

「いやお前も帰れよ」

え?怒られるじゃん。


「はぁ、んじゃ帰るか。兄貴またなー」

「おー。死ぬなよー」

不安。その煽りカットで。


「フィーネ、行くぞ」

「あ、あぅ、ゆ、許してない、から、から!」

「二回言わんでいいしょ」

嫁(未定)は手を繋げば許してくれる。チョロ。

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