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楽して生きたい拳闘士  作者: 猫背
第1章
33/59

32話

「隙ありー」

「うぐっ……ゔぉえぇぇ」

「お兄ちゃんまた吐いちゃったー」

「あんま汚すなって言ってんだろー」

いや心配して。優しさって大事。


「旦那様、全然強くならないね」

「王様から見ればそうなんでしょうね」

「実際チビじゃなくなってきたもんな」

見た目じゃねえか。


獣王国に来てから早100日、何故か出ようとするとなんやかんや言われて留まっている。

出て行きたかったら嫁にしろ、金払え、死んでわびろ、とか言いだして泣いた。


抜け出そうとしてナディに捕まり、性的な意味で襲われかけてからは大人しくしている。あかん。


抜けられない間何してたかってなると、ナディやおじじらに訓練されてた。これ強制。

俺は闘神気使わなければそんじょそこらの獣人程度の強さらしい。震えた。


実際、魔闘気で戦えばおじじや前王もかなり簡単に倒せた。

でもナディだけは違った。

ワンパンで死にかけた。ケタ違い過ぎてマジで引いた。


一辺殺されかけてから、俺の弱い所がわかった!とか言っていろいろ始めたのだが、


「旦那様才能無いね。大人しく私と子供作ろっか」

「諦めんな!俺はお前を信じてる!」

「服ゲロまみれにしながら言われてもなぁ」

それもお前のせいだからね?俺ただの被害者だから。


「にしても型は本当どうにもなんねぇな。まぁ、当初の狙い通り体は少しずつ出来てきているみたいだけどよ」

「うんうん。背も私より大きくなったし、枝みたいな体も太い枝位になったし」

それ大差ないよね。どっちにしろ簡単に折れちゃうじゃん。


俺の弱点は、体が弱い、だそうだ。

闘気は元々の身体能力の底上げみたいな使い方らしいので、闘気がどんだけ増えても体が弱くちゃ弱いまんまだ。とのこと。


俺は大抵なんかするとき闘気や魔術を使ってので体がへなへなだった。見た目もやしです。

顔は全然変わらずだったから女の子みたいだったし。


実際鍛え始めて、筋肉も付いたり、低かった背も伸びてリーチも長くなった。

たった3ヶ月ちょいの期間でこんななるか?とも思ったが、生命力の量がメタンコ多いからこれくらいは普通らしい。便利やな。


でも全然成長しない部分もあった。

センス、才能だけは全く芽が出ない。泣いた。


「旦那様、もっかいやるよ」

「お腹空いたから休憩しよ」

「一撃入れられたら考えてあげる!」

くそ、来た。


ナディとの訓練は闘気無しの組手をしている。

闘気に頼ったら、めっ、だって。イラっとした。


獣人の中でも頭1つ抜けた実力をもつ王様は、片手で組手をするっていうハンデをつけてやってくれてるのだが、これが強すぎて笑う。

今まで何度も組手をしたのだが、一度も攻撃を当てた事がないほど差がついてる。


「ほら、また防御崩れてきたよ」

「ぬぉ、ふん、危ね!ちょ、うおっ、痛っ!」

「はい隙ありー」

「んが!」

今度は頭にゲンコツを食らった。普通に悶絶。


「うぉーーーー!!痛ぇーーーー!!」

「ちょっと小突いただけじゃん。大げさだよ」

「お前には頭割れてんのが見えねえのかよ!」

頭から血が噴き出して止まらん。皆慣れてきたせいで全く心配してくれません。萎え。


「おら、こっち来いチビ。また汚しやがって。誰が片すと思ってんだよ」

「使用人」

「俺がそれなんだよ。少しはやり返してこいよ」

「あれ見てその言葉はおかしい。何をどうすれば当たるんだよ」

「気合い」

「バカか」

言うはやすし行うはきよしってな。無茶。


王様は片手のくせに攻撃も防御も同時にこなすし、避けたりすらしない。アホかよ。

俺は攻撃も防御も手足全部使ってる。避けられない位に捌けないってだけ。はっはっは。


「旦那様ー。早くー。もっかーい」

「ナディ、休憩しよう」

「子作り?」

「よし準備万端!ばっちこーい!」

「おりゃ!」

「うぎゃ!」

怒っちゃやーよ。死んじゃう。




「小僧、生きてるか?」

「俺は死んだ、もういない」

「なんだ、元気だな。お前に客が来てるぞ」

「は?死んだって言っといて」

「早く行かないとナディが襲いにくるぞ」

「案内したまえ」

本当に死ぬのは嫌だもんな。


「クー、久しぶりだな」

「クー君元気ー?大きくなったねー」

「いや、なんでいんの?」

人族二大重要人物が他所に出んなよ。帰れ。


「少し用事があってねー。それに私達だけじゃないよ?」

「は?3人娘でも来てんの?」

「ちっちっち。ご期待に添えられなくて申し訳ないんだけど、違います!さぁ、誰でしょうか!」

「メンドくさ」

「クー君荒れてるねー。お腹空いてる?」

食わしときゃいいみたいな感じやめて?確かに空になってるけれども。


2人の後ろからまた2人来た。有名人以外は顔パスじゃなかったみたいだな。

………………………おい。なんで?


「クー、久しぶり。大きくなったね」

「兄さん、久しぶり」

「エリス、お前なんでここにいる。帰れ」

「ちょっ、クー君?どうして怒ってるの?大好きな妹ちゃんだよ?」

「だからでしょ。他所の国は危ないから帰れ」

なにサプラーイズみたいな感じだそうとしてんだよ。俺は皆の思ってる100倍シスコンだぞ?


「別にいいでしょ。兄さんには関係ない。それに兄さんなんかより私の方が強いのよ。バカにしないで、バカのくせに」

「なん…………だと………」

「あぁ、クー大丈夫?しっかり」

エリスたんにバカって言われて膝から崩れ落ちてしまった。もうダメだ。


「ありゃりゃ、クー君泣いちゃったよ。エリスちゃん、言い過ぎだよ?」

「師匠には関係ありません。こんなのが兄の私の気持ち分かりますか?」

「うぐっ!………シ、シエル、俺は………もう………」

「クー!しっかりして!クー!!」

「兄さんうざい」

「あ、はい」

当たり強すぎて辛たん。あれ?目から汗が…。


「んで、用事ってなにさ。エリス合わせに来たとかなら帰れよ」

「兄さんうるさい。黙って話聞いて」

「………シエルちゃん、俺もうダメだ」

「はいはい、よしよし」

シエルちゃんは変わらず優しくて嬉しいよ。しかも少し会わない間に更にベッピンになったし。


話は皆を集めて話し合うとの事らしい。めっちゃ聞きたくない。

集めた人はナディ、ナディパパ、兄貴、ガレス、俺と、来た連中。お姉様はニアの面倒見てるとさ。


「それでは、皆さんお集まりいただいたので、早速今回の問題について話し合いたいと思います」

「マーリン様、それって手紙の事と何か関係あります?」

「ううん、それは単純にクー君を引き止めておいてほしかっただけだよ」

「そこ詳しく」

「後でね?」

なんでやねん。てかそのせいで俺ここにいる羽目になったんかい。


「それは魔王国に関係ある事か?」

「おー、バラン様鋭ーい」

「あん?そりゃどういうことだよ」

「実はね、つい数日前に魔王が変わったの」

「なんだと!?陛下は!?」

「はいはい、落ち着いて。実際はここと一緒。魔王ゼノは、娘のフィーネに王位を譲ったのよ」

「理由は?」

「ナディちゃんと一緒」

軽い。おまけに女の子強すぎ。王様しっかりしてよ。


「それと話し合いがどう関係あんだよ」

「デンゼル君知らない?魔族領にドラゴンが出たっていう話」

「お、おい、マジかよ」

最悪じゃん。この後の展開も多分最悪だよね。


「つまり、マーリン様達含め、私達獣人にもドラゴン討伐に加わってほしいって事ね」

「その通り。だからクー君を引き止めてもらったってわけ」

「俺は絶対行かん」

「期待してるよ」

聞けし!扱い雑なんだよ!


「兄さんなんかが役に立つんですか?邪魔だと思いますけど」

「まぁまぁ、それは追い追い」

「つうかなんで今更なんだよ。ここ来たの結構前だぞ」

「ドラゴンの数と居場所がバラバラでね、魔族領に来たり、来なかったりして時間かかったんだ」

……………ちょいお待ち。なんて?


「おい、それって複数いるって事か?」

「デンゼル君さすがだねー。確認した数は4体だって。上位2体。下位1体。そして!なんと!最上位が1体います!」

「……………」「………おい」「嘘でしょ……」

…………残念ながら、お悔やみ申し上げるしかないですな。


「なんだよそれ、誰が討伐すんだよ。無理だろ………。クソ!!」

「マーリン殿、何か策があるのか?」

「さすがに私やお父さん、闘王様がいても……」

「だからこそ!クー君を引き止めてもらったんじゃない!」

「断る!今度こそ死ぬ!絶対やだ!」

頭おかしいんじゃないの?俺人の子だよ?


「え?師匠、今なんと仰いました?」

「クー君に最上位を倒してもらうって」

「え?………いえ、絶対無理ですよ。だってこれですよ?」

「い、いや、チビならいける。チビ、頼む!」

「兄貴は俺に死ねと?そろそろ泣くよ?」

アホか。


ドラゴンには個体ごとにランクがある。

下、中、上、最上位の順で強い。

下でも村くらいなら潰せる。最上位は国総出でボコボコにされる位。

獣王ナディの本気でも歯が立たないくらい。

それをやれと?余裕でちびるな。


「確かに、旦那様なら倒せる。よかったー、私達は上位とかでいいって事だもんね」

「普通に話進めんな。どう考えても師匠、マーリンさん、ナディ、あと魔王の4人のが確実だろ。そっちのが皆安心でしょ」

「小僧、やれ」

「もうそれいいよ!てかジジイ魔力操作出来るようになってんだろ!やれや!」

「クー君、ごめんね?私じゃ、どうすることも出来なかったの」

………………あ、あぁ、出来ないのね。


「一応だけど、シエルは?出来んの?」

「ごめんね。二種類は出来る様になったんだけど」

「え?すげぇ」

さすがシエルたん。マーリンさん自慢の弟子だな。


「なんの話してるんですか?」

「エリスには関係ない。気にすんな」

「兄さんには聞いてない」

「黙ってろ!!」

「あぅ……ごめんなさい」

お兄ちゃんピンチ!!叱ってしまった!!嫌われたくないよー!!!!


「エリスちゃんが大事なのはわかるけど説明位してあげれば?」

「ダメに決まってるでしょ。エリスは出来ちゃうから」

「あー、確かに」

「チビ、それマジか?」

「大マジ。エリスは天才だからな」

昔はよく組手でボコられたしな。悲しい思い出。


「ふーん、でも妹ちゃんも出来たら旦那様も楽出来るじゃん。いいの?」

「お前俺に妹危険にさらせって言ってんのか?殺すぞ」

「こら、クー。怒らないの。皆怖がってる」

殺気撒き散らしたのは悪いと思うけどしょうがないやん。エリス至上主義だぞ?


「ま、まぁ旦那様1人でも簡単に倒せるもんね」

「いやナディもこっちな。可哀想でしょ」

「私は大事にしてくれないの!?」

「くっ、すまない、俺にもっと力があれば…」

「残念ながら、振り分け決まってるからね?」

「ちょい」

鬼畜か。その言い草だと俺1人って決まってるじゃん。


「して、どの様になっておりますか」

「分け方は、上位をアラド、私、弟子2人、バランさん、ナディ、ガレスさん、フィーネで倒します。下位はゼノさんと魔族の戦士達。で、残りがクー君っていう感じで」

「異議あり!」

「もう決まってるよ?」

何故先に言わないんだ………。


「で、でも、兄さんなんかにドラゴンなんて…」

「そうですよ!俺はウッキーで手一杯だもの!ベアーにも勝てないんだもの!無理だもの!」

「やれ」

「あ、はい。じゃねぇだろ。本当に死ぬかもよ?」

「そんときゃ全員死んでる。やれ」

「クソジジイ。後で絶対ぶん殴る」

「ふっ」

何が、ふっ、だよ。俺なんて、ふぅ、しか出ねぇぞ。


「お、お兄ちゃん、危ないよ?出来ないよね?」

「あぁ、俺には無理だ!」

「やらなきゃお見合いね?」

「ちくしょーー!!!!」

神は………俺を見捨てた………,


話し合いという死刑宣告は終了。

「ねぇねぇ、いつの間にナディちゃんまでタラし込んだの?ねぇ?」

「マーリンさんこうなると思ってたでしょ」

「んーん、さすがにガレスさんや、ノアちゃんニアちゃん姉妹の事は予想外だったよ」

「ですよね」

そもそも奴隷になってると思わないもんな。


「お兄ちゃん、大丈夫?本当に死んじゃうよ?」

「俺は死なないよ。エリスを幸せにするまでは絶対に死なない!何があっても!」

「妹相手に何言ってんだよ」

「変態」「変態」「変態」「旦那様は妹が好きなの……さすがに妹にはなれないよ…」

「ふはははは!なんとでも言え!妹愛は俺を無敵にするのだ!」

「おー!さすが変態お兄ちゃん!」

ニアちゃんやめて。無敵でも傷つくんだよ?痛いよ?


「小僧、実際どうだ。出来るか?」

「当たり前だろ。爺さん達が倒すより断然早く終わらせてやるよ」

「クー大丈夫?どれ位保つの?」

「今は100数える間闘える。最上位なら倒せるはずだよ」

「化け物だな」

「元々はあんたのせいだ!!弟子の教育くらいまともにやってみろや!!」

「いい師匠だろ」

どうやったらそこに行き着くんだよ。頭ん中見せてみ。


「それじゃ、そろそろ準備に入りましょ。子供達は先に休んでおく様に。特にシエルとエリスはクー君の見張りをちゃんとしてね?ノアちゃんとナディちゃんもお願いね」

「了解です」「わかりました」「任せてください」「旦那様、一緒に寝よ?」

「ナディはダメだろ。準備してこい」

「えー!?」

王様らしく仕事しなさい。


「クー、寝る?」

「妹の前では…ちょっと……お姉様やめて、それも妹の前ではダメだよ」

真っ赤なお兄ちゃん見せたらトラウマでしょ。


「ねぇ、ク、クー、どう、するの?訓練する?」

「お姉様さ、休もうよ。そんなに俺をいじめたい?泣いちゃう」

あとモジモジしないで?妹がすごく見てる。


「兄さん!兄さんは作戦の要だからもう休んでください!それと!私が見張りますので!お二人はご自由に!」

「お、ちょいエリス」

「はーい、おやすみー」

「え!?えと、おやすみ…」

もう、エリスちゃんたら!強引なんだから!


俺を引っ張って走ったけどどこ行っていいかわからず、結局俺がお手手を引っ張って寝床へ向かいました。


「ほら、エリスも疲れてるしょ。寝ていいよ」

「…でも、兄さん寝る場所無いよ」

かわえぇ。目に入れても痛くないな。いや痛いな。


「んじゃ一緒に寝よ」

「………うん」

っしゃキタコラ!!!!!どんなもんじゃい!!


エリスは反抗期真っ只中だと思ったけどお兄ちゃん大好きは変わってなかったみたいでよかった。

翌朝にお姉様にめっちゃしばかれたけどそれもまた良し!

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