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楽して生きたい拳闘士  作者: 猫背
第1章
31/59

30話

「ゔぉえぇぇ」

「大丈夫?」

「お兄ちゃん汚ーい」

それ本当に傷つくから勘弁して。


「おいお前本当に大丈夫かよ。まだ出たばっかだぞ」

「………………おぇ」

「ゲロで返事すんな」

さーせん。


皆で仲良く?朝飯を食い、予定通りに船に乗れたのだが、こんななった。げろげろ〜。


元々乗り物には何故か弱かった。前世?ね。

今ならいけるべ、なんてのはただの希望だった。

マジ辛たん。


「小僧、もっとしっかりしろ。魔物に襲われたらどうするつもりだ」

「は?船に魔物なんかゔぉえぇぇ、ででぐんのがよ」

「……………すまん」

「こちらこそ」

食った分全部出したがこの始末。俺すげー。


少しは良くなると言われて、甲板に出てたのに全く変化が無くて泣きそう。泣いてたわ。

おかげでメッチャ迷惑がられてるけど誰も近づいてこない。

泣きながらゲロ吐いて喋ってる奴とは関わりたく無いもんな。

…………………申し訳ない。


「大丈夫?まだ収まらない?」

「うん、ごめんね。お姉様大好き」

「…………キモい」

とか言いながら背中さすってくれるお姉様マジ女神。一生ついていきます!


「ねぇ!お兄ちゃん!遊ぼ!」

鬼畜か。さすがです。

「お兄ちゃん無理だ。おじじに遊んでもらって」

「でも遊んでたら楽しくて気持ち悪いの忘れちゃうよ!」

「ごめん。ここから一歩も動けないんだ。お兄ちゃん、皆を守らなければならないから」

「甲板にぶちまけたら大騒ぎだからな」

それ。マジで危ない。


この船には獣人がほとんどなので、人族が甲板にゲロ吐いたらマジで殺されかねない。

まぁ臭いにやられて逃げ惑うかもしれないが。

その点皆は側に居てくれる優しさ。惚れてまうやろ。


「皆ありがとう。側に居てくれるだけで心が和むよ」

「いや、離れるとお前殺されるかもしれねぇからな。気づいてねぇのか?」

「……………ゔぉえぇぇ」

「それのせいだぞ」

しょうがないじゃんか。獣人心狭いな。

………………ごめんなさい。


船での移動は約1日。その間、俺はずっと地獄を見る羽目になった。

とても申し訳ないのが、飯時にも交代でついててもらってしまった。

夜になっても動けなかったのだが、お姉様はずっと側に居てくれたよ。しゅき!

キモいな。






「おい、見えたぞ。陸だ」

「やっとチビのゲロから解放されるのかー。助かった」

「俺も助かった。これで殺気と吐き気から解放される。お姉様が離れるのだけが心残りだ」

「チッ、キモい」

「そんな君もすっきゃで」

「キモい」「キモいな」「お兄ちゃん気持ち悪いね!」「チッ」

ごめんね?少し和ませようとしただけだから。

ジョークだからね?


船が港に到着し、念願の陸地に降り立つ事が出来ました。皆!ありがとう!


「皆、改めてありがとう。しゅき!」

「そんな冗談言ってる場合じゃ無くなるからな」

「ここはもう獣人の領土だからね。人族に慈悲を持ってる者なんていないよ」

「いつ襲われたり、絡まれるかわからんって事かね。了解」

「一応言っとくね。チッ」

それいる?わざわざ返してくれてありがとう。


「お兄ちゃん!このお店のお肉美味しそうだよ!」

「おおー。ちょうど腹の中空っぽだったんだよね」

「1日中空だったろ」

「はっはっは。すいませんこれ五本ください」

「断る」

あらら。串焼き屋さんに断られてしまった。泣きそう。


「すまんな。五本くれ」

「悪いが人族を連れてる奴には売れねぇよ」

「俺はお姉様の愛玩動物です」

「いや」

「んじゃ爺さん」

「アホか」

「だったらニア」

「愛玩動物って何?」

おっと、殺気を感じる。答えられなくてすまんな。


「まぁ、こいつはこの子の玩具だ。それでもダメか?」

「………四本なら売ってもいいです」

「そうか、ありがとう。いただくよ」

「チビ、金」

「あ、はい」

おもちゃか財布かどっちかにして。気持ち的にはおもちゃの方が楽しい。


「ではいただくか」

「いただきまーす!」

「うん、おいしい」

「なかなか美味い。獣王国は飯が美味いからいいよな」

「儂らは感覚が発達してるからな。食事にはかなり力を入れておるよ」

「あの、俺の分は?」

「腹ごしらえもしたし、出発しましょう」

マジで?分けたりしてくれない系パーティ?






「おい、お前何してんの」

「………………腹減って動けない」

「チッ、早くして」

「………………腹減って動けない」

「お兄ちゃん早くー」

「………………ぐすん」

「早くしろ」

鬼め!!!俺だけ1日以上飯抜きだぞ!!

正しくは体から抜けたんだけど。


俺は腹が減りすぎて、町の出口付近から動けなくなっていた。

1日抜くだけでこうなる自分がうらめしい。


「冗談言ってる場合じゃ無いって言ったろ。早く行くぞ」

「本気だって。もう皆が食い物に見えてくるくらいだぞ」

「……………それ本当に?」

「今にも襲いかかりそうな位美味しそうに見える」

「変態」「変態」「変態」「変態お兄ちゃんだ!」

なんで?どう捉えたら食い物に興奮する変態に見えんの?


結局食い物を買ってきてもらって事なきを得た。

本当に皆を食ってたかもしれないんだぞ!


それから、町を出て道なりに進んで1時間ほどした時。


「お前ら、止まれ。人族なんか連れて何してやがる」

「儂らは国へ帰る途中でこやつに雇われた。道案内としてな」

「俺はギルドの依頼でお届け物があるんだよ」

「……………嘘臭いな。荷物を見せろ」

「お前らに見せる必要が無い。どけ」

おじじが殺気を放って威嚇した。

効果てき面だったらしく、獣人グループ、まぁ3人だけど、たじろいでいる。さすがー。


「だ、だが、人族を連れてる奴を国になんか行かせられないだろ!」

「裏切り者に違いねえ!」

「ここで倒してやる!」

「貴様ら!この方を知っての狼藉か!」

え?お姉様どしたの。おじじ偉いの?やめて。


「この方は獣王国筆頭剣闘士ガレス様だぞ!頭が高いぞ!」

「知ってる?」

「黙っとけ」

兄貴も知らねえんじゃん。仲間ー。


「な、なんと!そ、それは大変申し訳ありませんでした!」

「どうかお許し下さい!」

「命だけは!どうか!」

「よい、それよりもお前達に聞きたい事があるのだが、いいか?」

「もちろんです!なんでもお聞き下さい!」

疑わないの?…………人族残念過ぎる。


「聞きたい事は大した事ではない。最近の国の様子を知りたいだけだ。暫く離れていたのでな」

「はい!最近なのですが、王が変わりました」

「何!?」

「本当!?」

「それ一大事だろ」

超ビックニュースじゃん。なんか軽くね?


「実は、姫様、現獣王様が前獣王様に決闘を挑み、見事勝利を収め、王位を継ぐ事になったのです」

「それはもう見事な闘いでした。バラン様もとても大喜びしてすぐに王位を譲ってました」

「………バラン様って誰」

「前獣王」

娘に痛ぶられるのが嬉しいの?変態じゃん。


「そうか、それはとても良いことだな。それと、儂の代わりなどはいるのか?」

「いえ、ガレス様の席は空白になったままです。前獣王様の意向でもあり、現獣王様たっての願いでもありましたので」

「そうか、ありがたい話だな。この老骨を今でも思ってくれるとは」

「姫様はお爺様をとても慕っていましたから」

あらやだ、目から汗が出てきちゃった。

人族にも見習ってほしい。


情報収集もほどほどにして、3人組とバイバイして移動開始。


「あのさ、お偉いさんなんでしょ?なんで顔知られてないんだよ」

「あまり人前に出ないのでな。もっぱら王と姫様の警護と稽古だったのでな」

「へー。よく信じてくれたね」

「疑うのは人族だけだ。同族に平気で嘘をつくのは人族だけだからな」

なんで皆こっち見んの?俺は全然言わないよね?


2日ほど野営をしながら歩くと町に着いた。

人族より人口が多いらしく、村より町の方が多いらしい。


「止まれ!人族は入る事を許さん!」

「あの、ギルドの依頼で獣王国まで行きたいんで、通してもらいたいんですけど」

「なんだと?依頼書はあるのか」

「はい、どうぞ」

マーリンさんにお願いして依頼を出してもらい、メリダおばさんに依頼書を出してもらった。

物は獣王に宛てた手紙らしい。すげぇな。


「………確かに。入っても良いが、悪さをすれば即刻処刑するからな。他の方はごゆっくりと我が町をお楽しみ下さい」

獣人優しいな。人族ホンマにクソばっかだな。

なんかごめん。


「まずは、食料を買い足そう。そしてすぐ出発する」

「え?なんで?休まないの?」

「ここでは馬車を借りられるからな。それに乗って移動すれば3日ほどで国に着く」

「なんで港町には無いのさ」

「人族に盗まれるかもしれないから港町町には無い。他の町なら人族は入れないし、まず辿り着く事も怪しいからな」

血生臭い話やめて。また吐いちゃうじゃん。


「すまない、国までの足を借りたい」

「ダメだ。我らは人族は乗せん」

馬ってケンタウロスかよ。獣人じゃん。

種類的には人馬族だと。ダメじゃん。


「まぁまぁ、どうせ後ろの荷台に乗るんだから良いだろ?」

「魔族なら構わん。だが人族はダメだ」

「報酬ははずむ。それでもダメか?」

「ダメだ。こいつを運ぶくらいなら殺す」

あかん。皆俺を睨んでる。悪いのは人族だ!俺じゃない!………………俺もか。


「ねぇ、お願い。少しの間だけだから、ね?」

「ぬぅ!い、色香になど惑わされぬぞ!」

いやメッチャ乳見てんじゃん。てかお姉様そういう事すんのね。意外。


「ダメ?ちょっとだけだから、ね?良いでしょ?」

「ダ、ダメダ、ソレハ、ダメダ」

おかしくなってんぞ。怖いからやめようよ。


「ね?お・ね・が・い」

「はい喜んで!!」

「なんかお兄ちゃんみたい」

「それはやめて」

俺は絶対こんなじゃない。絶対だよ!!


お馬さんは嬉々として走ってくれた。

道は整備されてる感じはしないけど、かなり平坦になっててあんまり揺れたりしなかった。ありがたい。


「お嬢さん!乗り心地はどうですか!」

「とても良いです。すごく上手ですね」

「も、もちろんですとも!」

上手の意味がわからん。鼻の下伸びてるし。


「なんだ?チビ。お前妬いてんのか?」

「いや、ニアに似てるって言われてかなり心に傷を負った」

「……………そう、だな。ま、まぁ俺はさすがにあそこまでとは思ってねぇよ?」

「えー?似てるよー」

「………………ははっ。そっか」

「酔わないくらいやられてるのか。まぁ気をしっかり持て。儂はお前の方がマシだと思うぞ」

それどっちにしろアウトって事じゃね?大差つけて?


お姉様のよいしょのおかげでかなりお馬さんは走ってくれたらしく、倍の速さで移動してたらしい。どんだけ良いとこ見せたいんだよ。


夜になり、お馬さんも疲れたらしいので野営することになりました。


「おいクズ。飯を持ってこい。俺は疲れて動けん。早くしろ」

「はーいどーぞー」

「ふん、もういい、あっちに行け。お嬢さん、私と食べましょう。2人きりで」

キメ顔すんな。殴るぞ。


「ええ、もちろん」

お姉様はニコニコしてお馬さんとお食事を楽しんでるご様子。本当に似てるか?俺あんな風に一緒に飯食った事ないぞ?


「小僧、妬いてるのか?」

「いや、こんな時ばっかり構ってくる皆に言いたい事あるだけ」

「ほう、言ってみろ」

「普段からもっとまともに扱って」

「……………ニア、ご飯が美味しいな」

「うん!おじいちゃんと一緒だともっと美味しいよ!」

何故目を背ける。何故話を逸らす。何故俺に優しくしないんだ!!


飯を食い終わり寝床の準備。

お馬さんは、

「2人で夜の散歩に行きませんか?」

とか言ってたが、お姉様はニアと寝るから、と華麗に回避。さすがです。


「んじゃ寝るか」

「ちょい、見張りは?そろそろ交代してよ」

「今日は人馬族の者に任せるから大丈夫だ。お前も寝ろ」

「………大丈夫?」

「貴様、脆弱なクズのくせに俺を馬鹿にするのか?」

「いや、1日走り続けてもらったから疲れてると思ってさ。しっかり休んでもらいたいでしょ?」

お馬さんは体でかいから外で座って寝るらしいし。器用だね。


「んじゃ、チビが見張りだな」

「話聞いてた?代われよ」

「こんなのが見張り出来るのか?それにこいつが側にいると腹が立って寝られん」

「なら儂がやろう。腰が痛いのだがな。足と肩もだが」

「おい兄貴」

「…………俺、マジで自信無いぞ?」

このクソ野郎共めぇ………。


「はぁ、俺がやればいいんでしょ。やれば」

「なんだと?ふざけるな。お前みたいなクズがなんの役に立つ」

「なら私がやるわ。お爺様、ニアをお願いします」

「ふむ、そうだな。これなら安心だ」

「なんですと!?いえ!全て私にお任せ下さい!完璧にこなして見せます!」

なんだその変わりよう。いいけどもう少しアピール控えて?


「でもあなたには休んでもらわなきゃ」

「で、でしたら、この人族が見張りをやります!」

結局俺なの?あんたが決めんの?


「そう、ならお願いね?お休み」

お姉様さー、投げキッスはいらんやろ。お馬さんもメロメロやし。表現古いね。


いつも通り見張りやりました。はい。

嬉しいことに何も来ませんでしたよ。はぁ。


翌朝、飯と片付けを早々に済ませて出発。


「ノア!乗り心地はどうだい!」

「ええ、とっても素敵よ」

ちょっと返し違くない?あと前見て走って。


「お兄ちゃん、大丈夫?」

「なにが?」

「なんか怒ってる様に見えるから」

「あぁ、お馬さんが前見て真っ直ぐ走ってくれないからさ、また酔っちゃった」

「おい!」「ここで出すなよ!」「ま、前見て!真っ直ぐ走って!」「お兄ちゃん!しっかりして!」

ごめんね。パンデミックだけは起こさない様に頑張るから。ゲロコンボは絶対阻止したいもんね。


ペースを落としてもらい、暴発だけは免れた。

そのせいで少し到着予定が遅れたが、皆許してくれるよね?


その日も野営する事になった。

夜には獣王国には着く予定だったらしい。はっはっは。睨まないで?


「おいクズ。飯を持ってこい」

「はいはーい、どうぞ」

「チッ、あっちへ行け。ノア、隣においで。一緒に食べよう」

たった2日でそれはキツくない?俺だったら剣抜かれてるよ?


「少し待って。クライスト、ご飯は?」

「入れた分だけ出しそう」

「ん、後で食べなさいよ。いい?」

「あいあい、ほれ、待ってるよ」

お姉様優しい。お馬さん厳しい。睨まないでよ。


「チビ、いいのか?取られんじゃねえのか?」

「確かに、雰囲気はいいな。あいつも中々いい男だし腕もいい。強敵だぞ」

「その前にさ、俺人族、お姉様獣人族、その気にしないの?」

「全くない話じゃないからな。俺のダチにも人族と婚姻の儀をしたやつがいるからな」

あぁ、結婚ね。儀式的な感じらしいね。すご。


「お兄ちゃんはお姉ちゃん好きなの?」

「仲良しになりたいくらいには好きかな」

「あんだそりゃ」

「本当の事を言わんか」

「ニアと同じくらい好きかな」

「変態」「変態」「変態お兄ちゃんだ!」

おかしくない?捉え方違うよね?


んで見張りは当然俺。ですよね。

まぁ、明日には獣王国に着くらしいから、のんびり出来るっしょ。

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