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楽して生きたい拳闘士  作者: 猫背
第1章
30/59

29話

「あのー、すみません」

「あんだ!?邪魔だどけ!」

失敗。次ですね。


「あのー、ちょっといいですか?」

「うるせぇクソガキ!あっちいけ!」

おっと残念。次行こ。


「すみません、お話しいいですか?」

「殺すぞクソガキ!」

はいアウト。帰ろ。





「んでノコノコ帰って来たと」

「他にどうしろと」

「靴舐めたか?」

「やるわけねぇだろ!」

俺をなんだと思ってんだよ。


ニアを探しに人の多い所で聞き込みしたが、収穫は全くなかった。宿に帰る道でも聞いたが結果は変わらず。ダメなお兄ちゃんを許してくれ。


「んで、兄貴はどうよ」

「ダメだ。獣人に探知を絞っても数が多くてわからん。こうなりゃ爺さんとお嬢の鼻が頼りだ」

「ただの迷子なら笑い話に出来んだけどな」

朝一だし変な事には巻き込まれて無いでしょ。


デンゼルに探知を続けてもらいながら2人を待つ。

出来れば3人で戻って来てほしいけどね。


「ん?戻って来たな」

「何人?」

「……1人」

「おぅ」

迷子増えた?それは笑えないよ。


宿の戸を開けて入ったのはお姉様だった。

爺さんや、今度からお供をつけますね。


「どうだった?」

「………ついて来て。移動しながら話す」

…………ん?なんで?

とりあえず外に出て移動し始める。


「んで、どったん?いたの?」

「えぇ、港の地下倉庫にいたわ」

「…………なんで?」

「攫われたのよ」

朝っぱらから?よく見つからんね。


「んじゃ、爺さんは探り入れてるのか」

「今は倉庫付近を見張ってもらってる」

「そんな慎重にやんの?おじじなら1人で出来そうじゃん」

「チッ」「バカ」

メッチャおこじゃん。なんで?


「あんたバカじゃないの?もしかして相手が何かもわからないの?」

「え?全然」

「冗談だろ?少しは検討つくだろ」

「人の多い朝から人攫いやるバカ?」

「バカはお前だけだ」

なんでやねん。逆に?ってやつ?


「人の多い町で、朝から人を攫う事が出来るのは魔導師くらいしかいない。そして、私達の中で対抗出来るのはデンゼルだけ。もうわかる?」

「…………ピンチ?」

「…………チッ」

ごめん。俺が悪いよね。やめて!せめて睨んで!憐れむ顔はダメ!


倉庫に移動し、デンゼルに魔法で姿を隠蔽してもらい、爺さんが隠れているという場所に向かうと、爺さんを見つけた。


「敵は?」

「わからん。人は誰も出入りしていなかった」

「んじゃ人数とかもわからん?」

「それは気配と匂いでわかる。おそらく8人。闘士はいないようだ」

「って事は、全部魔導師か。こりゃ厳しいな」

確かに辛い。魔導師は数が多いと対処出来ない。基本的には同じ数を用意しなきゃ勝てない。


「おじじとお姉様は魔導師と戦える?」

「一対一ならなんとかなるな」

「………私は、厳しい」

まぁだよな。普通はそんなもんだ。


「んじゃ兄貴は?」

「あー、敵によるけど、人族なら5人はなんとか」

「了解。では作戦は1つだな」

「何かあるの?」

「突撃」

「バカ」「阿保」「死ね」

圧がすごい。結構真面目だよ?


「中身はこう。俺が先頭で、次にデンゼル兄が補助。んでその後に2人が入る」

「はぁ?お前本気か?どうやって入るんだよ。どこかで探知の罠が発動してバレるぞ」

「だから俺が盾になって先行くんじゃん」

「本気?あなた死ぬわよ?」

お姉様心配してくれんの?


「お姉様の気持ちはわかる。でも俺は死なないよ!」ここでキメ顔!

「いや、死んでもいいけど盾にはならないじゃない」

ドライ。ここ涙のシーンだよ。死亡フラグビンビンなんだから。


「本当にどうする。小僧は保って一瞬くらいだ。その間に敵を殲滅出来るか?」

俺が死ぬ所からの話なんですね。俺関係無くなるやん。


「いくら俺でも一瞬で8人はキツイぞ。しかも探知されるとなんぼでも対処されるだろうし」

「最悪道中の罠にかかるかもしれないし」

「道中?そんなのあったらあいつらも出れないじゃん。出るの待てば?」

「ホントバカだよな。識別出来る様にしてるんだよ。発動するわけないだろ」

あら便利。やっぱ魔法すごいわー。


「………ニア、どうすれば………」

「儂が気づいてれば……」

「万事休すか……」

「いや、だから俺が先頭にね?」

「チッ」「黙っとけ」「変態」

それは関係無くね?


「お前の魔術じゃ話にならねぇっての」

「誰が魔術使うって言ったよ」

「チッ、魔法も使えないじゃない。何するの?死ぬの?死ね」

最後のいらないよね?願望は控えて?


「ふざけるならお前は置いていく。人族なんぞ信用出来んしな」

「いいから聞きなさいな。兄貴は俺が使ったの見た事あるよな。あの闘気」

「俺は闘気なんてわかんねぇよ。魔族だぞ?」

魔族でも使えるでしょ。嘘はいけねぇぜ旦那。


倉庫裏だが、気づかれない様に魔闘気を作って纏う。量的には2割。


「どうさ」

「………すごい」

「確かに。だが、それがなんだ?闘気で魔法を防げるわけないだろ」

「闘士のくせにそんな事もわかんねぇのかよ。お前そこまでバカだったのか」

あれー?俺の中では、な、なんだそれは!?って感じになると思ったのに。


「えっと、これはちょっと特別で、魔力に干渉できるって感じ?みたいな」

「………」「…………」「………チッ」

舌打ちはやめて。もうお目目が潤ってるから。


「バカはほっとけ。爺さん、先頭任せていいか?」

「………それしかないな。罠は任せられるか?」

「まぁ気づかれるがしょうがない。敵に見つかった時に対処出来るかが勝負だな」

「なら私も前に出る。それなら対象が分散するでしょ」

あれ?俺は?


「いや、それだと俺が動きにくい。出来れば後ろを任せたい」

「わかった」

「んじゃ行くか。気合い入れろよ」

「ちょい、俺。俺は?」

「留守番」

なんでやねん。1番の戦力やん。


「小僧、お前の遊びに付き合う余裕はない」

「ごめん、お願いだから留守番してて。必ず皆で

戻るから」

「いや、俺が1番の戦力でしょ。それに本気だからね?真面目に話してるからね?」

「おいチビ。いいから帰れ」

え?メッチャ怒られてるんだけど。お姉様が怒らないとこが1番辛いし。


さすがの俺もこれは不服だ。まぁいつも不服で不遇ですけど。


「はっきり言っとくよ。俺は、メッチャ、本気、俺が、1番、強い、ここまではいい?」

「………続けて」

「ほい。んで、作戦、本気、1番、成功率高い。これもいい?」

「良くねぇだろ」

なんでだよ!

……………しょうがない。やるか。


「だったら、今から証明してやるよ」

残りの生命力と魔力を限界まで使って魔闘気を増やす。身体強化と超集中も並行して使用。


「お、お前、何する気だ?」

「行くんだよ。まだ文句ある?」

「……………い、いや、無いです」

「兄貴も少しは頭以外も使えば?」

作戦開始ですな。




爺さんに道を確認しつつ、兄貴に罠の確認と索敵を一応してもらう。まぁ、気配で探れるから別に関係無いけど。


「チビ、止まれ。足元に罠がある。………多分それを越えると魔術か魔法が飛んでくる」

「はいよ」

って事で警戒しながら進む。


「おい!バカ!」

兄貴の言う通り罠が作動し、正面から多数の魔術が飛んできた。矢の様な攻撃だったが、全部魔闘気を纏った拳で叩き落とした。セーフ。


「………すごい」

「お前、さすがに危ないぞ。俺ら側に来てたらどうすんだよ」

「あー、ごめん」

「おい」

皆みたいに謝ったじゃん。なんで睨むの?


謎に入り組んだ道を通り、奥の扉に着いた。

なんでこんなわけわからん構造してんの?って聞いたら、

倉庫のど正面から入って奥の方にデカい昇降機があって、そこから荷物を運ぶ。んで、もしも用の通路がこっちらしい。正面から行けばモロバレだもんな。


「兄貴、中どんなかわかる?」

「気配で探れよ。探知したらバレるぞ」

「多分バレてるよ。だよね」

「あぁ、もう儂らを待ち構えているな」

やっぱし。萎えるねー。


「なんでバレた?隠蔽してたろ」

「多分、この子の力が漏れてる。桁違いだもの」

「てへ」

「バカ」

しゃあない。こういう日もある。


「行くぞ」

「ああ」「おう」「ええ」

んじゃ突撃!


俺は扉を蹴破り、正面の敵に走る。

すると、敵は一斉に俺に攻撃魔術を打ち込んできた。

多分俺の事しか探知出来てなかったんだろう。

他の3人は気づかれてなかったみたいだ。


「バリアー!」

「あまーい」

敵の障壁を殴って破壊し、敵の顎を拳一閃。

まず1人。


少し離れた場所に3人固まって俺に向かって攻撃しようとしてる。

魔闘気を少し使って通しを3発打ち込む。

ちゃんと命中し悶絶させた。残り4人。


敵の方を確認すると、構えているのが3人。3人?


「動くな!ガキ共がどうなってもいいのか!?」

声が聞こえる方を見ると捕まえた子供達と子供にナイフを突きつけているおっさんがいる。

まぁ無視。構えてる3人に詰め寄る。


「な!?お前!うごっ!」

「残り3」

1人をボディブロウで沈める。

近くにいたもう1人の顎に蹴りを入れて倒す。


「サンダーボルト!」

「効きませーん」

魔闘気で魔術を弾いて敵に飛び込みワンパン。

はい終了。


「おわたよー」

「こっちも終わりだ」

兄貴の魔法でバレずに近づき倒したみたいだ。

まぁ予想通り。

爺さんの足元には血だまりと敵の首が落ちてた。

首?


「ゔぉえぇぇ」

「小僧!」

「クライスト!?」

「なんだなんだ?」

俺は死体を見て朝飯をぶちまけてしまった。

おまけに震えて動かない。やばい。


「クライスト?大丈夫?攻撃受けたの?」

「ち……ちが………ぅぇ」

クソ、吐き気が止まんねぇ。

お姉様が俺の背中をさすって落ち着かせてくれようとしてるが全然治らない。


「小僧、死体を見るのは初めてか」

「…………あぁ、げほっ」

「ほら、落ち着いて」

「おいおい、マジかよ」

「うっせ。あー、クソっ」

怖くて頭を上げられない。どうにもならん。


「お兄ちゃん?大丈夫?」

「ニア?あー、ゲロ臭いの以外大丈夫」

「本当に?無理しないで?」

優しすぎるお姉様に惚れそう。しゅき!


「小僧、死体は片付けたからもういいぞ」

「細かく刻んだとかじゃねぇよな」

「アホか。魔法で焼却」

なお悪くね?てか気づかない俺。


とりあえず救出作戦は成功に終わった。

捕まってたのは獣人の比較的小さい子達だった。

奴隷として売る予定だったらしい。

そんで、町に駐留してる騎士様に生きてる変態さん達を引き渡した。

話によると足が付かず困ってたらしい。本当か?


「お兄ちゃんありがと!」

「ええんやで。ニアちゃんはわいらの癒しやさかい」

「無事で何よりだったな」

「うん。無事で良かった」

「一件落着だな」

皆で宿に戻ってニアちゃん無事で何より会を開き、皆で無事を祝ってます。お腹すいたもんね。


「小僧、もう平気か?」

「聞かないで、思い出しちゃうから」

「つうかいつの間に食ってたんだよ」

「聞き込みしてた時。誰も相手にしてくんなくてイライラしてつい」

「おい」

しょうがないしょ。腹が減ってはなんとやら。


「本当に大丈夫?食べられる?」

「大丈夫。でもお姉様があーんしてくれればもっと大丈夫かな」

「え?じゃあ、はい、あーん」

「……………いただきます。…………おいしいです。…………なんだ!見んな!」

デンゼルのニヤケ顔がハンパなく腹立つ。

なので腹パンしてやった。はっは。吐くなよ?






「小僧、助かった」

「…………あのさ」

「なんだ?」

「それ、今?もう俺寝てたからね?それ昼間にしといてよ」

「ああ、すまんな。お前とノアが仲睦まじく見えたからな」

「………………誰?」

「ニアの姉だ」

初めて聞いたよ。今度呼んでみよ。


「お前は本当に子供だったんだな」

「急になんだよ。俺が何に見えてたんだよ」

「儂にはお前が化け物に見えてたよ。初めて魔物を倒した時、そしてニアを助けに行った時だ」

あらショック。メンタルが強くて助かった。


「だが、今日のお前を見て思ったよ。確かに力は強いが、お前は相手を殺す事を考えさえしなかった。死体を見た時の反応は予想外だったよ」

「朝飯食ってたのも予想外ってか」

「それは匂いでわかってた」

バレてるやんけ。さーせん。


「そこで合点がいったよ。お前が、獣人も、魔族も、人も、すべて同じ見方をしている事にな」

「いや意味わからん。んなの俺だけじゃねぇだろ。多分」

「さぁな。だが、少しだがお前を知ることが出来た気がするよ」

ジジイにんな事言われても嬉しくねぇよ。


「これからもあの子達を頼むぞ。あと死体にはもう少し慣れろ。じゃないと後で面倒になるかもしれないぞ」

「はいはい、なるたけがんばりますよー」

「…………ノアの事、どう思ってる」

「お、や、す、み!」

「……ふっ、また明日な」

クソジジイめ。年取ったら皆こうかよ。

あーやだやだ。

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