26話
「そう………折角のおもちゃ、もとい友達と暫く会えないのは寂しいわ」
「ノエルさん、隠して。俺でも怒るし泣くよ?」
挨拶に来てんのにこの仕打ち。気持ちを押し殺してるって信じてる。
「まぁ、君なら大丈夫だと思うけど気をつけて行ってらっしゃい」
「はい、ありがとうございます。またそのうち」
ノエルさんは大人だな。………興味無いとかじゃないよね?
「挨拶終わった?」
「おー、………なんでいんの?」
「見送りに決まってるでしょ」
「いや授業は?」
「師匠が行って来なさいって」
「………2人は?」
「同じく」「私は自主的に」
おい姫様。それずるいぞ。
「言っとくけどまだ準備あるからね?」
「へぇ、何するの?」
「…………言わなきゃダメ?」
「何するの。娼館でも行くの」
「そんなわけ無いでしょ。なんの準備だよ」
スッキリしてから行くかーってバカ!
…………1人でやるの辛いな。
「準備とはここでする事です」
「…………奴隷商なんかに来て何するの変態」
「旅に必要なの変態」
「変態」
俺女の子買うとは言ってないよね?はい睨まないで。
奴隷商とは、奴隷を売ってるとこである。
まんまだな。
奴隷は基本犯罪者がなるものらしい。他は聞きたく無いから知らぬ存ぜぬで通しましょ。
んで奴隷に多いのは、別の種族がかなり多いらしい。
まぁ大体が金の為、とかやらされて、とか人族滅ぶべし!だと。こわ。
「いらっしゃいませ!どんな奴隷をご所望でしょうか!」
テンション高、ついてくの辛い。
「獣人と魔族を見たいんですけど良いですか?」
「はい!では当商会の目玉商品をお持ちしますね!」
「いえ、直接見ても?」
「はいもちろんです!こちらへどうぞ!」
と案内してもらう。3人ともそろそろメンチ切るのやめてね?
中は牢屋みたい?になってた。見たことないけどね。
先に獣人がいるエリアに案内してもらった。
中の人を見ながら歩いた。子供から年寄りまで、結構幅がある。南無南無。
チラチラ見ながら歩いてると、1人目標に近そうな人を見つけてジッと見る。
「変態」「変態」「変態」「……変態」
「話聞いて?」
確かにお姉様だけどさ。俺なんで選んだか聞いてね。違うからね?
「確かにクー好みの美脚ね」
「胸も大きい。これだから男は」
「しかも歳上じゃない。これはもう確定ね」
「女の子3人も侍らせて、その上私になにかしようっての。最低」
「最低」「最低」「最低」
やめて!俺だって1人の人間だよ!心があるんだよ!
「はい冗談はその辺で。理由はアンナちゃんならわかるかな」
「やっぱり胸が!?」
「冗談だよね?」
俺のイメージそんななの?嘘だよね?
「実際のとこどうなの。顔?胸?やっぱり脚?」
「全部違うっての。腕だよ腕」
「腕も好きだったの!?最低!」
「違うっての!いつまでやんの!?俺は脚が好きなの!」
「最低だな。これだから人族は」
趣味は人それぞれじゃん。許してよ。
「話を戻しますけど、お姉様は中々腕に覚えがある人かなと思って」
「チッ」
「それで、俺これから獣王国に向かうんだけど、道案内と一応護衛的な感じで来てほしいなって」
「チッ」
「………どうかな、って」
「チッ」
ダメかなって。舌打ちしかしないかなって。
「やめといた方が良いんじゃない?クーちゃんにはもっと別の子の方が良いよ。ほら、あそこの子とか」
「なるほどね。でも小さい子だと自衛出来ないでしょ。旅の移動も長いから、子供だとすぐ疲れちゃうでしょ。休憩が多くなって時間が余計にかかっちゃうから」
「チッ」
アリスちゃん態度悪いよ。姫様でしょ。
「それなら、あの青年はどうですか?」
「あの人はダメ。弱いし体力無さそう」
「チッ」
アンナちゃんがそんな子だと思わなかった。泣きそう。
「そんなにこの人がいいの?変態、スケベ、節操無し、最低、チッ」
「舌打ち入れんの流行ってんの?俺の事そんな嫌い?」
「3人じゃ足りないなんて最低。クズね、チッ」
「お姉さんも合わせないで。泣いちゃう」
人族と獣人族って仲悪く無かった?連携バッチリなんですけど。
「はぁ、ならそこの子で」
「ダメよ」
お姉様ツンデレ?何が正解なの?
「一応理由聞いても良いですか?」
「あんたみたいなド変態と小さい子を一緒になんてさせられるわけ無いでしょ」
うーん、説得力あるなー。無いか?あと変態じゃないよ。脚フェチなだけ。……本当だよ?
「お客様、こちらの商品とこちらの商品は姉妹になります。その為でしょう」
「あぁ、そういう。……いたの?」
「いました」
静かにしていてくれてありがとう。あと情報も。
「ってことは、お姉さんはあの子と離れたくないってことか」
「チッ」
俺への返事はそれしか無いのな。舌大丈夫?
今度はお嬢さんに話しかける。
「こんにちは」
「……………」
「お兄ちゃんは、クライストっていう名前なんだ。お嬢さんの名前は?」
「……………」
「えっとね、お兄ちゃんは、小さい子が好きとかじゃ無いよ?だから怖がらなくていいよ」
「……………」
「お兄ちゃんはね、どちらかといえば、君のお姉さんみたいな人が好きなんだ」
「最低」「変態」「スケベ」「クズ」
「その連携なんなの?」
一体感すごいね。疎外感もすごい。
「お姉ちゃん………」
「喋らなくていいから、大丈夫だよ」
「お客様、どうなさいますか?私としてはですが、性奴隷ならもっと良い商品がございますが」
「話聞いてた?聞いててそれなの?」
店員さんもそのスタンスなの?
「まぁ、お客様がこちらをご所望でしたら、別にこれらの意思など関係ございませんのでご自由に出来ます。奴隷紋で言うことを聞かせることも出来ますから。体も触り放題」
「最後の違うから」
俺そんなに目が血走ってるように見える?
今は逆に必死だからそうかも。
「んじゃこの子で」
「待て!ふざけるな!」
「えー、じゃあお姉さんで」
「殺すぞクズが」
当たり強ーい。目が血走ってるよ。こわ。
「お、おねぇちゃん……」
「大丈夫、大丈夫だから。お姉ちゃんがなんとかするから」
「クーちゃん、本当にどうするの?実際使える奴ならなんでもいいんでしょ?」
「それ間違い。旅ってのは1人じゃ辛いわけよ。だから、仲間と一緒なら辛さ半分、楽しさが倍々ってね」
旅は道連れともいう。
「え?でも獣人だよ?」
「今のとこ貴族より嫌いなもの無いからいいよ」
「え、えっと、みんながみんなあぁじゃ無いからね?」
「知ってる貴族であぁじゃないの、俺とお前の師匠くらいだよ。シエルも最初はひどい奴だったなー。よく影で泣いてたよ」
「ご、ごめんなさい。でも泣いてはいなかったでしょ」
バレてるよね。でもそれぐらい傷ついてるよ。
ホントだよ?
「獣人族でないとダメなのですか?連れて行くなら人族で良いのでは」
「獣王国行くから詳しい人のがいいかなーって。それに知り合い以外の人族は信用出来ない」
町で散々大人に嫌がらせされたからな。どんなに可愛い女の子でも信用なんて出来ない。
……………本当だよ?
「ってことで、この2人を買います」
「え?」「え?」「え?」「え?」「チッ、え?」
お姉様だけブレないね。憧れますわ。
「よろしくねお嬢さん。俺の事はお兄ちゃんって呼んでいいからね」
「変態」「変態」「変態」「変態」
「………へ、変態のお兄ちゃん?」
「違うよ!?」
小さい子はすぐ影響受けるんだから!やめて!
「よろしいのですか?」
「はいよろしく。奴隷紋ってのは無しに出来ます?」
「は!?クーちゃん何考えてるの!?」
「獣王国に獣人の奴隷連れてくとかバカでしょ。俺自殺したいわけじゃないからね?」
「まぁ、そうですな。ですがよろしいのですか?その前に殺されますよ?私もまだ死にたくありません」
「大丈夫ですよ。ここに魔導師が2人もいますから。助けてね」
女の子に頼るなんて男らしくないとか言ってられないよね。命は大事。
「わかりました。でも拘束は店から出てから外しますね。危険なので」
「了解。次行きましょっか」
「ま、まって……」
「ん?どったん?」
お嬢さんから話しかけられた。ふっ、礼なんていらねぇさ。
「おじいちゃん……」
「え?」
「おじいちゃん……いるの……」
これあれですね。おねだりってやつだね。きゃわわですね。
「お姉様、おじいちゃんって誰?」
「………私達の育ての親で師匠でもある人よ」
「…………怖い?」
「人族にとってはそうかもね」
はいアウト。ごめん。俺まだ死にたくない。
「お嬢さん、ごめんね?」
「ダメ?」
「買います」
「変態」
「もういいよ!違う!」
しょうがないんだ!抗えない力が働いているんだ!
ちょっと移動。お姉様方にもご同行してもらいます。話聞いてくれるかわからんし。
「こんにちは」
「………なんだ」
迫力しゅごいぃ。めっちゃ睨まれるんですけど。
「おじいちゃん!」
「ん?ニアか?何故外に?」
「お爺様、実はこの人族に私達が買われました」
「おじいちゃんも一緒!」
「ってことです。よろしくしても?」
「目的はなんだ」
「旅のお供、ってことにしてもらっていいですか?」
「…………嘘ではない様だな」
すげー。目を見てわかる的な?みんなも出来る様になってよ。俺が正直者だってわかるからさ。
「いいだろう」
「ありがとうございやす。今後ともよろしくお願いしゃす」
「………胡散臭いな」
墓穴!ユーモアだから!
「んじゃとりあえず出口で待ってて下さい」
「まだ買うのか?」
「こいつ変態なんです」
「変態のお兄ちゃん!」
「違うよ!今度は魔族の人を探すんだよ」
変態が定着し始めてるよ。3人は俺と目を合わせようとしないし。ひどい。
獣人一行を待たせて、今度は魔族エリア。
またもチラチラ見ながら歩く。
あ、目が合った。うん、次。
「おい」
…………次、次。
「おい待て!戻ってこい!」
「ね、ねぇクー。見たことない?」
「無い、知らん。次行こ」
「待て!えっと、クライスト!クライスト待てって!」
「名前呼ぶんじゃねぇ!なんだよ!いや何してんだよ!」
まさかの知り合い。あれだよ、気まずくなるやつ。
「久しぶりだな。こんなとこで何してんだ?女漁りか?」
「なんでみんなそこに行き着くんだよ。第一周りにかわいい女の子連れてんだろ」
「かわいい?好きってこと?」
「アリス黙って」
脳内変換の仕方に異議あり。力技すぎる。
「それはいいとして何探してんだよ」
「その前にこっちから聞いていいか?デンゼルさんよ。何してんの?なんでいんの?」
ここに入ってたのは洞窟騒動の犯人だったデンゼルさんでした。意味不。
「いやー、あの後食料と金目の物をちょいと探してたらな、たまたま騎士ってのに見つかって、この通りってな」
「あっそ、んじゃあな」
さよなら、もう会う事も無いでしょう。……さよなら!
「いや待てよ!」
うるさいな。感動的な別れのシーンだろ。テイク2か?
「お前がなんで探してるか知らねぇけど、俺は他の魔族の奴らより使えるぞ。お前とも面識はあるしな」
「俺エロエロな姉ちゃん探してんだ。んじゃ」
「お前さっき違うって言っただろ!侍らしてる女とよろしくやってんだろ!」
「そ、それ本当ですか!?」
「クーちゃんいつの間に!?」
「クー最低!」
みんな同じこと言ってるよ?気づいてるよね?
「はぁ、兄貴よぅ。自分でドジってこんなとこにいるやつ連れてきたいとか思うか?」
「あぁ思うね」
「俺とは意見が合わねえな。んじゃ」
「おいおいおい!待てって!俺ならお前の好みの女紹介してやれるぞ!」
それで釣れると思わないでよ?話聞いてる?
「とにかく、俺なら役に立つって。だから早く出せよ」
「いきなり脅迫かよ。すぐ裏切ったりしない?」
目で穴開けられそうなくらい見てくるんですけど。怖いんですけど。
「人族のクズと一緒にすんな。魔族は誇り高いんだ。約束は守ってやる」
「はぁ、俺まだ何やるとか言ってないじゃん。それでいいの?」
「どうせ大した事じゃねぇだろ」
「一応、言っとくけど旅するんだよ。んで魔王国にも行くから、そこまでの道案内とかだな」
「あ?そんなもん余裕だろ。やってやる」
「…………不安だな。まぁいっか。この人も」
「はい、畏まりました」
やっと終わったよ。出る前から不安がすごい。
「それではお会計ですが、金貨3枚です」
「そんじゃこれで」
大金貨1枚を渡す。細かいの作らんと。
「はい。お釣りを持って参りますので、少々お待ちを」
ということなので待ちますか。
「小僧、お前名前は?」
「クライスト。みんなも名前教えてよ」
「嫌よ変態」
「ニア!」
「好きに呼べ」
「断る」
「兄貴は知ってるからいいっつの。まぁいいや。勝手に呼ぶね」
ニアちゃんだけが心の拠り所だよ。
「ねぇ変態」
「…………」
「ちょっと!聞いてるの変態!」
「クライスト君、呼ばれてるよ?」
「アンナちゃんさ、変態って呼ばれて返事するわけ無いよね?俺変態じゃないから」
俺の名前ヘンタイだと思ってたの?クライスト君って言ってるよね?
「変態、お金寄越しなさい」
「え?なんで?」
あ、返事しちゃった。………俺、もう戻れないよ………。
「服と武器を買うわ。だから寄越しなさい」
「いいけど買い物出来んの?相手クズだよ?」
「それなら私が付いてくよ。貴族相手なら商人は口出ししないから」
「さすがシエル様。んじゃお願い。ここで待ってるから終わったら戻って来て」
「了解」
シエルに大金貨1枚を渡して見送る。みんなシエルの言うことはなんにも言わないな。シエルも人族だよ?
「クーちゃんはすごいね。怖くないの?」
「え?全然だけど、急にどしたの」
「獣人族も魔族も、人族を恨んでるから。何をしてくるかわからないし、とても強いから」
「まぁね。でも人族とは違って決して裏切らないとも聞いたからさ。他に当ても無いし」
何より1人は辛い。つまらんし飽きる。
「お待たせしました。お釣りです」
「はいありがとう」
「それでは、またのご来店をお待ちしております」
と言って店に戻った。空気を読んでくれるいい人だったな。
少し待つと戻って来た。来たんだが。
「お姉様、その格好なんなの?」
「文句あるの、変態のくせに」
「あるよ。旅するのにそんな肌出して大丈夫か?虫に刺されるぞ?」
めっちゃ肌色面積が多い。あと腰に剣を差してる。見た目刀みたいなやつ。てか獣人なのに獣感が犬シッポと犬ミミしか無い。まぁかわいい。
「小僧は闘士じゃ無いのか?闘気を纏えば刺されんだろ」
「………そうなの?」
「当たり前だ、………しょうがない、道すがら稽古をつけてやる」
あれ?これちょっと良くない流れじゃない?
てかおじじも剣持ってる。俺拳闘士だよ?まさか使えとか言わないよね。
「おもしろそうだな。俺も魔法を教えてやるよ」
「それ本気かよ。怖いよ」
「なんでだよ。別に死にやしないっての」
また1つやること増えた。……はぁ。
皆の装備が整ったあと、道具や食料も買い足した。当然俺とデンゼルが荷物持ち。ですよね。
門の近くまで移動。暫く会えなくなるからちゃんと挨拶しよう。
「クー、お土産よろしくね」
「あんまり女の子に手を出したらダメだよ?」
「くれぐれも食べ過ぎには注意しないとダメですよ。クライスト君はいつも食べ過ぎですから」
皆軽い。違う意味で泣きそう。
「はいはい、んじゃまたね」
「気をつけてねー」
「早く帰って来てねー」
「待ってますよー」
あの時の感動どこいった?
「お前嫌われてんの?」
うるさいよ!
新しい仲間?お供?と共に門から出てく。
まだ見ぬ地へと向かって、今、歩き出した。
「こっち見ないで変態」
「あ、はい」
……………辛い。




