25話
「今回お願いしたい事は、皆にも関係ある事だから集まってもらっても良いかな?」
「なんですか?」
「クーの手伝いとかですか?1人でなんとかしちゃうと思いますが」
おい。
マーリンさんのお話を聞くために集合。
いつもと違う感じでなんか怖い。
「もしかしてまたクーちゃんのお見合いですか?その相手を皆で決めるとかなら私は嫌ですよ」
「それは俺も嫌だよ。そもそもお見合いしない」
「まさか、とうとうクライスト君の学校入学とかですか?」
「それは無い。時間の無駄だし」
「…………魔導科ならまだ、ね?」
マーリンさんやノエルさんに教われれば確かにいいかも。
「今度の授業の講師とかですか?」
「闘士科の教師になるとか?」
「私のお嫁さんとか?」
なり盛り上がってんだよ。アリスちゃんは諦めてね?
「はい落ち着く。実はクー君には、今度の進級試験の試験官をしてもらいたいと思います」
「またそれ?メンドくさいなー」
「大丈夫。今度は10人だけでいいから。まぁクー君に実際に手合わせしてもらうんだけどね」
それはそれでメンドいな。見てるだけじゃだめ?
「……………あの、それって、つまり?」
「成績上位各科5名ずつを担当してもらいたいの。それで、この3人がそのうちの3名。残り3人も知ってるよ」
ヤンチャ3人組な。今じゃへーこらしてるけど。
「別にいいけど何すんの?」
「ただ手合わせするだけ。ちなみに、試験の合否は決めていいよ」
「え!?ちょ!それ本当ですか!?」
「もちろん」
「へぇ、それいいね」
初めて楽しい提案されてる気がすんな。
「………あの、クライスト君。合格の基準を聞いても?」
「そんなの俺を倒したらに決まってんじゃん」
「本気!?」「ちょっと待ってよ!」「それはさすがに無理だよ!」
はっはっは。かわゆいやつらめ。ちょっとニヤケてきちゃった。
「クー君がそれでいいならそれでもいいけど。多分ノエルに怒られるよ?」
「俺を選んだ人が悪い」
「ならノエルの責任ね」
めずらしくマーリンさんが俺サイド。弟子に思うところ有りってか。
「ねぇ、クーは私達の事そんなに嫌い?」
「いやいや、大好きだよー。本当本当」
「……わ、私も好きだよ」
何照れてんだよ。聞きたいのそれじゃないしょ。
「クライスト君は本当にそうするのか?」
「なんで?」
「私達は力不足だと自分達で納得出来るかもしれないが、結果全員落第となると周りが何を言うかわからないぞ」
え?どゆこと?
「特にアリスは王族だ。試験官は誰だなんだと大騒ぎになるかもしれないぞ」
「………そ、その頃にはここ出てるし」
「え?どこに?」
なんでシエルちゃんが聞くの?知ってるじゃん。
「クーちゃん出かけるの?」
「俺4年もいるけど旅の途中なんだよね。だから旅に戻るってわけ。そろそろ爺さんも良いって言うでしょ」
「……………へー、それはともかく試験はもっと簡単にしてよ。お兄様の耳に入ると大事になっちゃうよ」
アリスちゃん嘘だと思ってんな。俺嘘ついたことそんな無くね?
「はいはい。クー君も冗談はそこまでね。まぁ、クー君が厳しく採点するのは本当だと思うから、皆ちゃんと己を高める事に励むように。いい?」
「はい」「もちろんです」「………はい」
皆返事暗いよ。俺は女の子には優しいよ?
セ、セクハラしようとか思ってないからね!
「爺さん帰った」
「おお、話なんだった」
「また試験官。今度は進級試験だとよ」
「そうか」
「んでさ、これ終わったら旅に出るな」
「…………そうか」
「もう止めないのな」
「腕は俺の次くらいには良いからな。文句は無いし、おそらく問題も無いからな」
スパイ云々な。ここ最近噂すら無いもんな。
「だが、お前どうやって獣人の国や魔族の国に入る。当てはあんのか」
「ギルドの依頼とかであるんでしょ?仲悪いとはいっても貿易はしてるみたいだし。護衛とか荷物運びとかそんなので行くよ」
最悪マーリンさんにお願いすれば何とかなんじゃね?とか思ってるし。他力本願最強説。
「そうか」
「それよか自分の心配しろよ。魔闘気いつ使える様になんだよ」
「…………次会う頃には闘神気も完璧に使いこなしてる」
「へいへい」
魔術の1つでも使ってから言ってほしいもんだ。
試験は20日ほど先らしいので旅の準備だけしておく。
ギルドにいって溜まりに溜まった金を全部出してカバンに詰め込んだ。…………クソほど溜まってんですけど。
大体大金貨3枚くらい。日本円で3千万?。本当にそれくらい価値があるかはわからんけど。
あとは簡易のテントとか寝袋とか。食料は出る前にたくさん買うつもり。
あともう1つ買い物?があるがそれも出る前にだな。カバンも買お。
試験まで修行やら魔物討伐やらをしたり、マーリンさんとこに遊びに行ったりしたが3人は真剣にトレーニングしてるみたいでいつもみたいに構ってこなかった。………さ、寂しくなんか無いんだからね!
「マーリンさん、俺試験終わったら出るね。って前にも言ったか」
「うん。ちなみにどこから行くの?」
「まだ決まって無いよ。獣王国か魔王国」
「うん。おすすめは獣王国かな。クー君は闘士だからそっちのが良いと思う」
「なんで?どゆこと?」
「獣人はね、魔力を持たない種族なの。その代わり、闘気の扱いがとても上手くて、強い闘士がたくさんいるんだ。クー君みたいに拳で戦う人や、剣とか棍なんかを使う人もいるの」
「つまり、勉強になるんじゃね?って事か」
「まぁ、要約するとそんな感じかな。クー君は魔術も使えるから、もしもに対応し易いし」
マーリンさん親切。ジジイは何も言わなかったよ。雑だなー。
「ちゃんと3人には言ったの」
「前に言ったじゃん」
「シエルしかわかってなかったでしょ。ちゃんと言わないと」
「はいはい、試験終わったらね。もう明日じゃんか」
1日で終わるらしい。毎回短くしてよ。
はい試験当日。
試験会場は俺らから始めるらしい。早いって素晴らしい。
トーナメントと違ってギャラリーはいない。いるのは俺と先生が2人、それと試験を受ける10人だけらしい。俺が緊張してきた。
試験は闘士組から始まった。
最初の2人は前に授業で魔物を討伐した中々の実力者だった。
試験でも良い動きをしてたな。さすがに負けないけど。
試験では魔闘気を生命力8割から作って戦った。
今では闘気のロスを2割くらいに抑えれる様になったので大体生命力の6割くらいで出来た。
俺も鍛えてるからね?いつもサボってないよ?
3人目はジェイドだ。
今ではヘコヘコしてるが、生徒の中ではかなり強い腕前だ。
型通りの綺麗な動きで連続攻撃をしてくる。
防いだり避けたりし、疲れたところに軽く一撃を当てて試験終了。まだまだですな。
4人目はヴァン。
こいつは力押しタイプだった。
ガンガン攻撃してきた為全部防御し、疲れて下がった時に攻めて、最後に足払いをして転ばせた。
動きが雑なとこを直せば強くなるな。
トリはアンナ。
「クライスさん。よろしくお願いします。今度はあなたを倒します」
「はいよろしく。まぁがんばって」
アンナちゃん笑い方怖い。女の子でしょ。
「んじゃ試験始め」
「行きます!」
丁寧なのは良いけど言わない方がいいよね。
アンナちゃんも型に忠実な動きをするタイプだ。
流れる様な動きで攻撃してくる。つなぎが上手くて隙が無い。
だが崩し方もなくは無い。
わざと隙を作ってみる。
「そこです!」
「はい残念」
予想通り隙を見せた腹に蹴りを打ち込んできた。
だが魔闘気を集めて防いだ為ノーダメージ。
アンナの足を掴んで前に押す。
「うわっ!」
対応出来ずにそのまま転倒する。頭は腕で守ったけど簡単に倒されたちゃダメだよー。
「んー、ここまでかな?」
「え?まだ出来ます!」
「はいはい、合格だから。とっとと次呼んできて」
「………え?」
「合格。はい行った行った」
初めて組手した時より結構強くなってたな。
闘気の量も増えたし操作も上手い。型は俺の100倍上手いし。…………嫉妬なんてしてないもん!
もんはキモいな。
何とも言えないフワフワした感じでアンナは次の人と交代。倒したらとか本気にしてたの?かわいい。
「クーちゃん。私が勝ったら嫁になってもらうからね」
「嫌だよ!俺男!」
どんだけ去勢したいんだよ!百合百合すんのやめて!
魔導師組はアリスからだった。
アリスは魔術中心で手数が多いタイプだ
俺は走って逃げ回るハメになった。しんど。
「クーちゃん!そんなんじゃいつまでも私に勝てないよ!それとも嫁になる気になった?」
「なるか!するならお前が嫁だろ!」
「……え?え!?」
手が止まった!
アリスの目の前まで一瞬の間に詰め寄り、魔闘気を集めた拳で障壁を破壊。
「ほら、王手だ」
「え、あ、うぅ」
正直魔導師は厄介だな。魔闘気を纏えば攻撃は効かないけど服はダメになる。イヤン、エッチ!
キモいな、やめよ。
「………ねぇ、クーちゃん」
「なに?合格だから次の人呼んできて」
「………私の事、お嫁にしたいの?」
「別に、はい次」
「もー!!しらないからね!!」
はいはい。かわいいから全然怖くありませんよーだ。
次はフリードだ。
フリードは魔術でけん制し、デカイ魔法で攻撃をしてくるスタイル。
だが威力重視で隙もデカイ。
魔法を構築してる間に近づきチェック。
「ありがとうございました」
「はいよ。もう少し目くらましとか、足を止めさせる様な魔術の方が戦いやすくなると思うよ」
「はい!では失礼します!」
態度変わったなー。それ他の人にもやれよ?
次の2人はフリードと似た様な戦法だった。
まぁ対処も同じだよね。でも腕は良い。合格。
みんな魔術を使ってから次のを使うまでが早い。
俺は魔力の操作は超得意だけど発動が遅いんだよな。イメージが弱いからなんだとか。
最後はシエル。この子がホントに厄介。
最初に魔物狩りに行ってた時とは大違いの実力になった。
「クー、よろしくね」
「ん。よろしく。なんか暗くね?」
「………試験終わったら国を出るんだよね」
「おお、どしたん。さみしい?」
「……そうだよ」
あかん。泣きそうになってきた。なんて良い子なの!
「ねぇ、私が勝ったら、お願い聞いてくれる?」
「………勝ったらね」
「うん、行くよ!」
試験開始。
「身体強化!」
と言いながら指を鳴らす。
すると、強い光が突然現れた。
俺はとっさに目を閉じた。
するとまた指を鳴らす音が聞こえた。
魔力を察知してる余裕が無かったのでシエルの気配を見つけ、そっちに走る。
「フリーズランス!」
だが後ろから声が聞こえた。
バックステップで躱す!
が、ブラフだった様で何も聞こえない。
気配も6カ所に感じる。うげぇ、やりずら。
シエルは正直負けるかもしれないくらい強い。
戦い方は魔術と魔法の同時使用。
おまけに他の奴らと違って動き回る。
分身で気配を探さない様にしたり、閃光で目を潰したりしてくる。俺の苦手な搦め手が上手い。
しかも、俺の指導で気配も読めるし闘気も使える様になった。おまけに度胸も据わってる。
マーリンさんにはすごく褒められたよ。
クー君のおかげでシエルの才能が開花したよーって言ってた。今だけ後悔。
「クー!そんなんじゃ私に勝てないよ!」
「気配をちゃんと見極めないと!」
「早く動かないと魔法で攻撃しちゃうよ!」
分身うるせぇ!全部で喋んな!気が散るっつの!
しゃあなし。生命力1割で闘気を作り、気配のある奴ら全部に通しを打ち込む。
「くっ!」
「はっはっは!分身は潰したぞ!」
本体は俺の闘気に気づき、闘気で防いだみたいだな。だが分身は魔力の塊なので、通しで散らせることが出来た。
「さすがだね。それならこれは!」
と言って何度も指を鳴らす。それだと何の魔法かわからんから防ぎにくくて困る。
気配を探ると俺を中心に全方位から何かが高速で飛んでくる!やべ!
「身体強化!バリアー!」
自分を強化しつつ障壁を正面にはり前方に駆け出した。
ガガガガガガ!という音がし、魔法を防ぎながら魔法の包囲から抜け出す。殺す気か。
「フレアショット!」
「おい!それ怖い!」
この魔術で背中やられました。トラウマほじくるなよ。
シエルは俺の周りを走りながら何度も魔術を撃ってくる。障壁が保たないので、魔闘気を腕に少し集めて弾いたり、走って避ける。あかん。疲れるな。
「そこ!」
「は?うわっ!」
避けた隙を狙って足元に魔術を撃ち込んだみたいだ。爆発の勢いで吹っ飛ばされた。
「とどめ!」
パシン!と音がしてかなりの魔力を使ってる。
多分見たことない大技だな。………ホントに殺す気?
すると、シエルの気配がある方から大量の魔力が俺目掛けて飛んできた!マジでやばい!
一応腕で目と首を守りつつ、魔闘気全部を防御の為に全身に纏う。
………あぶねー。
「…………今の、効かないんだ」
「俺以外なら死んでるよ。恨みでもあんの?」
魔闘気全開でノーダメージ。服にも纏って良かった。魔闘気が強いからちょっとボロくなっちゃったけど。
「シエル、今のでもう魔力ないでしょ。まだやるの?」
「………まだ諦めないよ。必ず勝つから!」
「俺がね」
一瞬でシエルの後ろに回り込む。
今までは魔闘気を少しだけ纏って戦っていた。
全開ならこれぐらいはできる。ごめんな。
「はい、試験終了。合格だよ」
「…………うん」
「シエル、泣くなよ。2度と会えないわけじゃないじゃん。もしかして俺が死ぬと思ってんの?俺が泣くよ?」
「………ううん、さみしいから」
なんて優しい良い子なんだ。ジジイ、見習えよ。
これにて試験は全部終わった。1番疲れたかも。
シエルたん強いし容赦無いし。
「試験お疲れ様!合格おめでとー!」
「………」「………」「………」「わ、わー」
あかん。空気が重すぎる。怖い。
「クーちゃん、本当に出て行っちゃうの?」
「おー」
「なんで旅なんかしてるの?」
「俺もわからん」
これな。もう帰りたいくらいだし。
「クライスト君、もう会えないのか?」
「いや、出来るだけ早く帰る気だから。もしかして俺が死ぬと思ってんの?もしかしてみんな?」
「え?帰ってくるの?」
「おい」
旅する理由は帰りたいからだからね?矛盾ですな。
「そっか、クーなら本当にすぐ帰ってきそうだし、寂しがって損したかな」
「ちょい、さっきの涙は?寂しいでしょ?」
「なんだ、じゃあ合格おめでとう会をしましょうか」
姫様ホントに俺のこと嫁にしたいの?心配ってした事ない?
「じゃあクー君行ってらっしゃい会もついでにやりましょっか」
「ついでかよ。俺泣くよ?寂しいよ?」
「はいはい、良いから料理とって。飲み物も回して」
…………まぁ、こんなもんですよね。




